線音 楽と の融 合を はか った のが 一八 世紀 後期 に生 まれ た山 田流 であ り︑ 浄瑠 璃 の三 味線 と箏 およ び尺 八と の三 曲合 奏と いう こと にな る︒ 同じ 三曲 合奏 とい って も︑ 西洋 のト リオ が対 位法 的あ るい は和 声的 に組 み合 わせ てい るの に対 し︑ 日本 の三 曲合 奏は
︑そ れぞ れが 似た よう な旋 律を ユニ ゾン で合 奏す ると いう 形に なっ てい る︒ そこ に日 本音 楽の 同じ 旋律 によ る 共同 演奏 の喜 びと いう 内的 な音 楽追 求の 姿が 読み とれ るの では ない かと いう
︵二 一〇 頁︶
︒ 近年 は箏 とオ ーケ スト ラの 合奏
︵箏 コン チェ ルト
?︶ を聴 く機 会が まま ある が︑ これ など は︑
﹁コ ラボ 文化
﹂の 見 本の 一つ だと 筆者 には 思え る︒
⑺
三味 線音 楽に 入ろ う︒ 江戸 時代 の町 人生 活に とっ て三 味線 は必 需品 に近 かっ たと いえ るが︑そ の現 れ方 は︑ 次の 四種 であ る︒ 一に 歌舞 伎︑ 文楽
︵義 太夫 の伴 奏︶
︑二 にお 座敷
︵専 用の 長唄
︑浄 瑠璃
︑端 唄︑ 小唄
︑都 々逸 など
︶︑
三に 一般 家庭
︵長 唄ほ か︶ で︑ 箏の よう に場 所を とら ず歌 の主 要な 伴奏 楽器 とし て︑ 器楽 的・ 旋律 的・ 打楽 器的 な 演奏 に優 れた 楽器 であ った
︒四 に民 謡三 味線 があ げら れる
︵津 軽三 味線 が有 名︶
︒ま た︑ 芸術 音楽 とし ての 面か らで は﹁ 語り もの
﹂︵ 浄瑠 璃︶
︑﹁ うた いも の﹂
︵長 唄・ 地唄
・端 唄︶ の伴 奏楽 器と 分け て考 える こと もで きる
︒
・中 国︵ 三絃
︶か ら沖 縄︵ 三線
︶を 経て 大坂 に伝 わっ たと され る三 味線 は︑ 人形 浄瑠 璃と 結び つい た義 太夫 が一 七世 紀末 と古 く︑ 新内
︵一 八世 紀︶
︑清 元︵ 一九 世紀
︶と 続く わけ であ る︒ しか し︑ こう 説明 され ても 古典 芸能 に詳 しい 知識 人な らい ざ知 らず
︑一 般読 者に は︑ どこ かで 聴い た音 だと 琴線 に触 れる こと はあ って も︑ その 判別 は不 可能 に近 いと 思う
︒ 伝統 文化 だ とい うも のの
︑そ れが 伝統 音楽 に対 する 我々 の 感性 であ る︒ しか も︑ そこ に西 欧的 合理 性は ひと かけ らも なく 法文 化に は程 遠い
︒
①こ こか らが
︑小 泉の 聴き 分け 方の 説明 であ る︒ まず
︑声 の出 し方
︵と くに
﹁語 りも の﹂ の場 合︶ に気 を付 け︑ そ の発 声法 に合 った 三味 線が 使わ れて おり
︑そ の音 色の 違い を聴 くだ けで 判る とい うわ け︒ つま り三 味線 には
︑太 棹・ 中棹
・細 綽の 三種 があ り︑ 太棹 は音 が重 厚で 線が 太く
︑響 きは 曇っ たよ うな 感じ の音 色︑ 細棹 は派 手で 明る く 淀み のな い透 明な 音を 出す 音楽 が適 して いる こと にな る︒ そこ で︑ 重厚 な義 太夫 は太 棹︑ 一番 軽快 な長 唄は 細棹 に なり
︑中 棹は 地唄 と新 内で 使わ れる
︒た だ地 唄は 太棹 によ く似 た性 格を もつ が澄 んだ 音色 にな り︑ 新内 はハ リの あ る力 強い 音で 情緒 的な 表情 をも つ音 色が でる 構造 にな って いる
︒つ まり
︑一 口に 三味 線と いっ ても
︑種 類は 多く
︑ それ ぞれ 違っ た音 色を だす よう に工 夫さ れて いる
︵詳 細な 説明 があ るが 省略
︶︒
②次 いで
︑﹁ 語り もの
﹂﹁ うた いも の﹂ につ いて 述べ る︒ 語り もの
︑つ まり 浄瑠 璃の なか で今 日ま で残 って いる の は︑ 義太 夫・ 常盤 津・ 富本
・新 内・ 清元
︵古 曲に は宮 薗・ 一中
・河 東あ り︶ であ る︒ しか も︑ 義太 夫が 古浄 瑠璃 の要 素を 保ち
︑そ の後 の語 りも の音 楽に 強い 影響 を与 えて いる こと を考 える と︑ 義太 夫を 最重 要と 考え てよ いだ ろう
︒ 実は
︑情 緒的
・
煽
情的 な性 格の﹁豊 後節
﹂︵ 一中 節か ら派 生︶ がひ とと き大 いに はや った が︑ 幕府 の強 い圧 迫に より
絶え てし まっ た︒ 常盤 津・ 富本
・清 元・ 新内 は︑ この 豊後 節か ら生 まれ たも ので
︑そ れら を豊 後浄 瑠璃 と呼 ぶこ と もあ る︒ 義太 夫が 長い 命脈 を保 って いる のは
︑い うま でも なく
︑歌 舞伎 と結 びつ いて いる ため であ る︒ また
︑新 内は
流 し によ って 大い には やっ た時 期が あっ たが︑劇 場で 行わ れな いと いう こと で存 続が 困難 とな って いる
︒ 以上
︑み てき たよ うに
︑語 りも の音 楽が 日本 ほど 発達
︵細 分化
︶し てい る国 は珍 しい
︒義 太夫 を例 にと れば
︑一 人で 年寄 りに なり 若者 にな り︑ 男に なっ たり 女に なっ たり して
︑語 り口 によ る表 情の 使い 分け をし てお り︑ 音階 は 浮動 し︑ リズ ムは 不等 拍で
︑ま た大 きな 声を 出し たり 小さ な声 にな った り︑ 発声 法上 の工 夫は 非論 理的 でニ ュア ン スに 富ん でい ると いう 特色 を考 える と︑ 浄瑠 璃は 最も 日本 的な もの と評 価さ れる
︵二 二五 頁︶ とい う︒ 三弦 楽器 が代 表的 なも のと なっ た国 は日 本に 限ら れな いが
︑日 本で の理 由は
︑そ の断 続的 な音 が声 楽の 文句 の邪 魔を せず 伴奏 の役 目に よく 見合 った こと
︑ま たメ ロデ ィを 演奏 しう ると 同時 にリ ズム 楽器 の役 目も 果し てい ると い うこ とが あげ られ る︒
③最 後に
︑﹁ うた いも の﹂ の話 に入 る︒ お琴 の八 橋検 校が 三味 線の 演奏 家で あっ た話 は前 に述 べた が︑ それ は箏 曲の 母胎 に三 味線 音楽 があ った とい うこ との 証し でも ある
︒そ の最 も古 い例 は︑ 上方 の﹁ 地唄
﹂︵ 一六
〇〇 年ご ろ︑ 例・
﹁雪
﹂﹁ 黒髪
﹂︶ で︑ 江戸 好み の長 唄が そこ から 生ま れる
︵一 八世 紀初 め︶
︒地 唄は 箏曲 と密 接な 結び つき があ っ て︑ 生田 流で は︑ 箏が 主な ら箏 曲︑ 三味 線が 主要 なら 地唄 とい う場 合も ある くら い︒ 元来
︑地 唄と いう 盲人 社会 で発 達し た音 楽は
︑聴 覚的 に純 粋な 表情 をも って いる ので
︑唄 はつ けた しで 器楽 が主 とい う発 達を みせ
︑﹁ 手事
﹂と いわ れる 純器 楽的 部分 があ ると いう 特徴 があ る︵ 二三 六頁
︶︒ これ に対 し︑ 長唄 は江 戸の 芝居 小屋 をバ ック に発 達し たの で︑ 三味 線は 凡ゆ る人 間生 活の ドラ マ的 表現 に応 ずる よう にな り︑ 浄瑠 璃の 手を 用い たり
︑雅 楽の 真似 をし たり
︑能 の音 楽を とり 入れ たり と︑ 幅の 広い 表現 がで きる た
め︑ 凡ゆ る伝 統音 楽の 唱法 を取 り込 むこ とに なる
︒こ うし て︑
﹁う たい もの
﹂と いう 三味 線音 楽は 日本 人の 音楽 的 表現 とし てと いう 幅の 広い ヴァ ラエ ティ を持 つも のと なり
︑凡 ゆる タイ プが たた みこ まれ てい ると いう のが 現状 で ある し ︒ かし
︑三 味線 のオ ーケ スト ラと の合 奏は
︑箏 や尺 八に 比べ ると 極め て無 理で ある こと は︑ その 演奏 領域 や効 果 を考 える と頷 ける と思 う︒ その 微妙 なリ ズム や音 色︑ 細や かな 旋律 の装 飾に こそ
︑伝 統音 楽が 努力 を重 ねて えた 魅 力が ある ので あっ て︑ 純粋 な形 で保 存す べき 責務 があ る︑ と結 ぶ︵ 二四 一頁
︒︶
・三 味線 音楽 ほど 複雑 なも のは ない と思 う︒ それ らを 解説 する のに 便利 なの は音 楽辞 典で ある が︑ それ の説 明を かり ても 読者 をい らだ たせ るだ けだ ろう
︒こ の後 は︑ 筆者 流に 小泉 著を 参考 にし てそ の厄 介な 系譜 を整 理す ると
︑浄 瑠璃 から 派 生し た義 太夫 節︵ 一六 八四 年成 立︶
︑一 中節
︵一 七〇 七年 成立
︶︑ 豊後 節︵ 一七 一七 年成 立・ 四〇 年廃 絶︶
︑阿 東節
︵一 七一 七年 成立
︶が あり
︑廃 絶後 の豊 後節 から 派生 した 宮薗 節︵ 一七 三〇 年成 立︶
︑新 内節
︵一 七四 五年 成立
︶︑ 常盤 津節
︵一 七四 七年 成立
︶︑ 加え て富 本節
︵一 七四 八年 成立
︶と それ から 生ま れた 清元 節︵ 一八 一四 年成 立︶ があ る︒ 長唄 は一 八世 紀初 めに
︑そ れか ら萩 江節 が一 七六 九年 に分 派す る︒ 俗曲
・端 唄・ 小唄
︵端 唄の 一種
︶・ 歌沢 は幕 末に 生ま れ流 行し た︑ とな る︒ つま り︑ 何と も繁 雑で
︑こ れら の聴 き分 けは プロ しか いな いと しか いい よう がな い︒