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⑷ 誰 で

ドキュメント内 法 文 化 論 序 説 ︵ 六 ︶ (ページ 109-113)

もが 認め る﹁ 視覚 美の 世界

﹂に つい て︑ それ は﹁ 絢爛 たる 卑近 美﹂ であ り︑

﹁隈 取り の美 学﹂

﹁見 得と 見 立て と立 回り

﹂で ある

①ま ず︑

﹁色 が絢 爛華 麗で 多彩 なこ と﹂ 一〇 九頁

︒︶ 舞台 装置

・衣 裳・ 化粧

・諸 道具 の多 彩で 配合 のい いこ と︑ その 美意 識は 浮世 絵に 通じ

蕭条 たる 幽玄 美

の能 に対 する

﹁芸 術的 に高 級な る卑 近美

﹂︵ 岸田 劉生

︶で ある

︒非 常に 多い 赤は 官能 的刺 激を よび おこ す美 とい うこ と で卑 近と いっ たと 思わ れる

︒ 視覚 美で 最も 際立 つも のは

﹁隈 取﹂

︒﹁ 隈と は一 般に 陰影 のこ と︒ 白く 塗っ た顔 に骨 格に 沿っ て色 の線 をえ がき

︑ 片ぼ かし にし て筋 肉と 影を つけ る︒ その 色や 線の 数や 太さ

︑形 など によ って 役柄 の性 格を 表現 する

一一 二頁

︶ ので ある

︒赤

・藍 また は黒

・黛

︵代

︶赭 の三 系統 あり

︑そ れら の組 合せ は一

〇〇 種に のぼ る︒ 役柄 には

︑超 人的 豪 傑︑ 超能 力の 敵役

︑超 自然 の存 在と いっ たロ マン の世 界の 役が ある

︒ その さい

︑赤 は正 義の 豪傑 で︑ 荒々 しい

﹁暫

﹂は

﹁筋 隈﹂

︑﹁ 国性 爺合 戦﹂ の和 藤内

・﹁ 菅原 伝授 手習 鑑﹂ の梅 王 丸は 目の 縁だ けの

﹁む きみ

﹂で あり

︑同 一役 柄で も登 場す る場 によ り︑ 隈取 の有 無が あり

︑種 類が あっ て一 様で は ない 藍 ︒ 系は 超能 力を もつ 悪人

・悪 霊の たぐ いで

︑﹁ 般若 隈﹂

︵﹁ 道成 寺﹂ の蛇 体︶

︑﹁ 鬼女 隈﹂

︵﹁ 紅葉 狩﹂

﹁戻 橋﹂ の鬼 女︶

﹁亡 霊隈

﹁船 弁慶

﹂の 知盛 が︶

︒ 黛赭 系は

﹁土 蜘﹂ の蜘 蛛の 精︒

歌舞 伎の 登場 人物 は人 間だ から

︑超 次元 の存 在を 主人 公と する 能が 仮面 をつ ける のと 異な り︑ 超人 的キ ャラ クタ ーを 表す 場合 には

︑仮 面の 代わ りに 隈取 とい う方 法を 考え たの だと 思う

︵一 一三 頁︶ が︑ あく まで 人間 の性 格を リ アル に強 調す るた めの もの にす ぎな い︑ と著 者は いう

︒ 次に

︑隈 取に

﹁ぼ かし

﹂を 使う のは 日本 画を 想像 すれ ばい い︒ そこ には

﹁余 白﹂ を重 視し

﹁気 韻生 動﹂ を生 命と する 日本 画の 心に 通ず るも のが あり

︑隈 取は 人間 描写 のリ アリ ティ ーの うえ に日 本画 の美 意識 が加 わっ た独 自の 化 粧法 であ る︒

②﹁ 見得

﹂も 隈取 と同 じ元 禄・ 享保 のこ ろに 始ま った

︑﹁ 要所 要所 でポ ーズ をと り︑ 数秒 間静 止す ると いう 演技 方法

﹂で ある

︒こ れに は︑

﹁不 動見 得﹂

・﹁ 石投 げ見 得﹂

︵﹁ 勧進 帳﹂ 弁慶

︶︑

﹁柱 巻き の見 得﹂

︵﹁ 鳴神

﹂︶

︑﹁ 元禄 見得

︵﹁ 暫﹂ な︶ どあ るが

︑幕 切れ につ いて は﹁ 引張 りの 見得

﹂﹁ 絵面 の見 得﹂ と呼 ぶ︒

﹁絵 面の 見得

﹂が

﹁見 立て

みた てた 絵︶ にな って いる のは 極め て日 本的 だと 讃美 する

﹁立 回り

﹂に 大事 なの は﹁ とん ぼ﹂

︒夜 の暗 闇の なか の立 回り は﹁ だん まり

舞台 は明 るく 手さ ぐり の動 作︶ とい う︒

﹁役 者・ 役柄

・女 形﹂ は省 略︒

③﹁ 芸・ 型・ 伝承

﹂に つい て︒ 歌舞 伎の 芸は

︑役 柄の 多様 さに 対応 して 多様 をき わめ てい るが

︑共 通し てみ られ る特 徴に つい てあ げて みよ う と︒ まず

︑古 典演 目に 関す るか ぎり

︑役 者の 型・ 様式 はき まっ てい て演 出と いう こと はな い︒ 正に 役者 の肉 体的 伝 統に よる とい う特 徴が ある

︒そ こに

︑視 聴覚 を大 事に する 芝居 であ るこ との 証し があ る︒ 従っ て︑ 身体 の大 きさ

・ 芸の 上手 下手

︵器 用か どう か︶ より

︑容 姿・ 芸風 の﹁ 大き さ﹂ が役 者に は欠 かせ ない こと が最 重要 とな る︒ つま り︑ そこ には

﹁型

﹂が あっ て︑

﹁成 田屋 の型

﹂と か﹁ 音羽 屋の 型﹂ とか いわ れる こと にな る︒ ただ し︑ 自由 度が あっ て︑ 一つ の役 にも いろ いろ な型 が生 まれ るこ とは いう まで もな い︒ とく に義 太夫 狂言 の時 代物 には 型が 多く

﹁型 物﹂ と

いわ れる くら いで

︑同 じ狂 言で もそ こに 役者 の違 いを みる 楽し みが ある とも いえ る︒ 心か ら入 るか

︑形 から 入る か︑ 型の 創り 方は 各人 各様 とも

④荒 事・ 和事 につ いて

︒ 荒事 の特 徴は

︑誇 張さ れた 化粧

︑扮 装︑ 演技

︑雄 弁術

︑正 義の 英雄 のロ マン であ る︒ 初代 団十 郎が

﹁金 浄瑠 璃 から ヒン トを 得て

︑全 身を 紅で 塗り つぶ し︑ 紅と 墨で 隈取 りを して 荒業 をみ せた のが 最初

﹂︵ 一六 七三 年︶ だっ た︒

﹃暫

﹄﹃ 鳴神

﹄な どの 荒事 を創 作し

︑江 戸中 の人 気を よん だ彼 は︑ 成田 不動 を信 心し て屋 号を

﹁成 田屋

﹂と した

﹁ニ ラム

﹂演 技は

︑悪 霊病 魔退 散を 願う 江戸 観客 にと って 神仏 の超 能力 をそ こに 信じ たか った から だろ う︵ 一四 八 頁︶

︒七 代目 は﹃ 勧進 帳﹄ 初演

︵一 八四

〇年

︶を 機に

︑お 家芸 とし て﹁ 歌舞 伎十 八番

﹂を 制定

︑江 戸歌 舞伎 の表 芸と なっ た︒

﹁中 世の 能で は︑ 怨霊 や悪 鬼は 人間 より 強く

︑仏 教の 力に よっ てや っと 鎮圧 され まし た︒ しか し近 世に なる と︑ 神仏 の力 より

︑人 間の ほう が強 くな

︵り

⁝︶

⁝こ こに 中世 と近 世︑ 能と 歌舞 伎の 本質 的な 違い

一五

〇頁 が︶ みら れる 和 ︒ 事は 京都 生ま れの 和 をさ すも ので

︑﹃ 廓文 章﹄ がそ れを 最も よく 伝え てい る︒ 豪商 の若 旦那 が遊 女 との 浮名 がす ぎて 勘当 され るが

︑思 い切 れず 忍び くる とい う︑

﹁色 男︑ 金と 力は なか りけ り﹂ とい う芝 居が 和事 の 基本 パタ ーン

︒廓 の男 女の 纏綿 たる 情景

︑官 能の 世界

︑こ れが 和事 の芸 であ る︒ その 源流 は︑ お国 歌舞 伎に おけ る遊 客の 茶屋 遊び の局 面で

︑野 郎歌 舞伎 時代 の﹁ 島原 狂言

﹂に ひき つが れ︑ 一六 六四 年に 本格 的な 傾城 買狂 言が 成立 する

︒若 殿や 忠臣 が騒 動解 決の ため 庶民 に身 を﹁ やつ し﹂ て遊 廓と 馴染 むと い う筋

︒こ の﹁ やつ し事

﹂が 和事 の元 祖と いう わけ

︒そ の完 成者 が坂 田藤 十郎

︒彼 のた めに 心中 物を かい たの が近 松 門左 衛門 であ る︒

この 和事 と荒 事が 止揚 され て一 つの 舞台 とな った 例は 少な くな い︵ 代表 例は

﹃助 六﹄

︒︶ いう まで もな く︑ 荒事

・ 和事 は人 間の 本性 の両 面を 表現 した もの で︑ そこ に歌 舞伎 の豊 かさ があ ると 思う

︵一 五九 頁︶ とい う︒

⑤女 方の 魅力 は女 の単 なる 模倣 では なく

︑写 実を こえ た表 現に よっ て芸 術に まで 高め られ た創 られ た女 性像 であ る︒ お国 によ って 女性 の魅 力を 知っ た観 客は

︑女 歌舞 伎禁 止後 の女 方役 者に 女性 を上 まわ る美 の創 造を 期待 した

︒ そこ に女 方の 芸の 追求 が始 まる こと にな る︒ その 先達

︑芳 沢あ やめ は藤 十郎 の相 手役 をつ とめ

︑芸 談を 残し てい る が︑

﹁そ の創 造の 心は

﹃平 生を 女子 にて 暮せ

﹄と いう こと

一六 一頁 だ︶ った

︒あ やめ の芸 は﹁ 芸の 体︑ 全く 女な り﹂

︵﹃ 翁草

﹄︶

︑﹁ 真実 底か らの 女﹂

︵﹃ 役者 舞扇 子﹄

︶と 評さ れた 名優 だっ た︒ しか し︑ 女方 も時 代が 下る につ れて

︑技 術論 とな り型 がつ くら れて ゆく

︒つ まり

︑女 性的 男性 でな くて も女 性を 表現 する こと がで きる よう にな り︑ その 集大 成は 六代 目尾 上梅 幸の 芸談 に明 確に 示さ れて いる

︵﹃ 梅の 下風

﹄︶

︒そ れ をみ ると

︑日 本の 歌舞 伎は

︑﹁ 役者 の肉 体の 動き を中 心と する 上演 芸術

⁝⁝ とし ての 全体 が︑ 古典 ある いは 伝統 を なし てい る﹂ 一六 八頁 と︶ いう こと がわ かる

︒そ の顕 著な 例が

︑﹁ 歌舞 伎十 八番

﹂で あり

︑﹁ 新古 典劇 十種

五代 目尾 上菊 五郎 制定

︶で ある

﹁歌 舞伎 はす べて の点 で能 より は自 由で 柔軟 です が︑ 原則 とし て芸 の伝 承は 秘伝 の性 格を もち

︑家 系の 継承 を旨 とし てき た﹂ 一七

〇頁

︶の であ る︒ これ は日 本の 芸道 に共 通で

︑家 系で いえ ば︑ 雅楽 の家 は五 十余 代︑ 能は 観世 家な ら二 六代

︑歌 舞伎 は︑ 最も 古い 中村 勘三 郎・ 市村 羽左 衛門 が一 七代 であ る︒ 世襲 制が 原則 だが

︑実 力で 名門 を 継ぎ

︑時 に名 門を 興す とい うこ とも ある

︒ 型が ある 歌舞 伎の 特徴 は︑ 型を 踏襲 すれ ば素 人で も

形が つく

と いう 点に あり

︑地 方の 農村 歌舞 伎は

︑そ の例 であ る︒ 素人 の歌 舞伎 に比 して プロ の場 合の 特徴 は﹁ 型に 入っ て型 に出 る﹂ とい う︑ 独自 の魅 力で 既成 の型 を新 生 する こと であ り︑ 代々 の名 優は 先人 の型 を創 造的 に継 承改 良し なが ら伝 えて きた とい う点 にあ る︒

・自 我意 識に おけ る男 観念

・女 観念 を考 えた とき

︑女 形の 存在 は自 我意 識が 融通 しな けれ ばな りた たな いと 考え られ るの では ない か︒

⑥﹁ 否定 美の 創造

﹂に 入ろ う︒ これ まで の話 は美 学で いう

﹁肯 定美

﹂の 世界 であ る︒ これ に対 し否 定美 とは

︑人 生に おい て残 酷と 感ず るも の

ドキュメント内 法 文 化 論 序 説 ︵ 六 ︶ (ページ 109-113)

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