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第 4 章 実験で用いる装置 38

4.3 γ 線源

TDC

TDC(Time to Digital Converter)はStart信号とStop信号を入力してそれらの時間差 を測定するモジュールである。本研究では、テクノランドコーポレーション社のC-TS 105を使用した。

CC-USB

CAMACでは一つのクレートをクレートコントローラ(Crate controller、CC)によって 動かす。本研究ではWiener社製のCC-USBを使用した。CC-USBはUSBケーブルでコ ンピューターと接続し、そのコンピューターでデータの処理を行う。

図4.9: β崩壊のファインマン・ダイアグラム。中性子nが陽子pへ変化する。素粒子と しては、dクォークがW粒子を放出してuクォークに変化する。さらに、W粒子は電 子eと反電子ニュートリノν¯eへと崩壊する。

図4.10: β+崩壊のファインマン・ダイアグラム。陽子pが中性子nへ変化する。素粒子

としては、uクォークがW+粒子を放出してdクォークに変化する。さらに、W+粒子は 陽電子e+と電子ニュートリノνeへと崩壊する。

これらの図からわかるようにβ崩壊は弱い相互作用による現象である。

γ崩壊とは原子核が電磁波を放出して崩壊する過程である:

X →X+γ

本実験で使用するγ線源においては原子核がβ崩壊したのち、崩壊後の原子核が励起状 態にあるため、さらにγ崩壊してγ線を放出する。

原子核の崩壊数はその原子核の寿命または半減期を用いて計算できる。時刻tでの原 子核の個数をN(t)とすると単位時間あたりの崩壊数はN(t)に比例する:

−dN(t)

dt =λN(t) 。 (4.2)

ここで、λは崩壊定数と呼ばれる量であり、原子核の寿命ττ = λ1 で定められる。微分 方程式(4.2)を解くと、

N(t) = N0exp(−λt)

となる。N0t= 0での原子核の個数である。半減期t1/2は、

t1/2 = log 2

λ =τlog 2 。 原子核の崩壊数の時間変化は、 dNdt

t=0 =λN0より、

−dN dt =

(

−dN dt

t=0

)

eλt= (

−dN dt

t=0

) e

t t1/2log 2

となる。

4.3.2

137

Cs

137Csはβ崩壊して137Baになり、662 keVのγ線を放出する。137Cs原子の崩壊図を 図4.11に示す。137Csの半減期t1/2は30.07年である。今回実験で使用した137Cs線源は

図 4.11: 137Cs原子の崩壊図[4]。

1987年2月1日時点で11.46µCi(±3.7%)であった。そのため、測定を行った2016年1月 20日時点では、

4.240×105(Bq)·exp (

28.99 30.07log 2

)

= 2.173×105(Bq)

である。図4.12は実験で使用した137Cs線源である。放射性物質は3–4 mm程度、中心 部が1 mm程度の幅をもつ。線源はアクリルで覆われており、さらに実験室では薄いファ イルに入れて使用する。

図 4.12: 137Cs線源の画像。線源は23 mm×10 mmの長方形のケースに入っている。放 射性物質は1 mm程度の幅をもつ。

4.3.3

22

Na

22Naは崩壊して22Neになり、1275 keVのγ線を放出する。22Na原子の崩壊図を図4.13 に示す。22Na線源によって観測されるγ線は、γ崩壊による1275 keVのγ線の他に511 keVのγ線もある。22Na原子核はβ+崩壊して陽電子を放出するが、この陽電子が物質 中の電子と対消滅して、511 keVのγ線を2つ放出するためである:

e+e+ 2γ 。

このとき、陽電子は物質中でエネルギーを失ってから対消滅するため、γ線のエネルギー は電子と陽電子の静止質量エネルギーを2つにわけた511 keVとなるのである。22Naの 半減期t1/2 は2.602年である。本実験で使用した22Na線源の2014年2月12日時点で 9.90×104 Bqであった。そのため、2016年1月20日時点では、

9.90×104(Bq)·exp (

1.926 2.602log 2

)

= 5.93×104(Bq)

である。放射能はJRIA(日本アイソトープ協会)校正値であり、誤差は±2–5%であるが、

今回は±5 %と見積もった。

図 4.13: 22Na原子の崩壊図[4]。

4.3.4

60

Co

60Coの原子核は崩壊して60Niになり、1333 keVと1173 keVのγ線を放出する。60Co 原子の崩壊図を図4.14に示す。60Coの半減期t1/2は5.271年である。本実験で使用した

図 4.14: 60Co原子の崩壊図[4]。

60Co線源の2014年2月12日時点で8.97×104 Bqであった。そのため、2016年1月20日 時点では、

8.97×104(Bq)·exp (

1.926 5.271log 2

)

= 6.96×104(Bq)

である。放射能はJRIA(日本アイソトープ協会)校正値であり、誤差は±2–5%であるが、

今回は±5 %と見積もった。

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