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グリセリンの物性に関する研究 - J-Stage

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Academic year: 2023

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化学と生物 Vol. 50, No. 9, 2012

696

本 研 究 は,日 本 農 芸 化 学 会2012年 度 大 会(開 催 地  京 都 女 子大学)での「ジュニア農芸化学会」において発表され,銀 賞 を 表 彰 さ れ た.融 点18℃ を も つ グ リ セ リ ン が 冷 蔵 庫 で 凍っていなかった事実との遭遇から,「なぜ?」という疑問 をもち,グリセリンの結晶化条件の検討や過冷却状態での安 定性について丹念に調べている.

  本研究の目的,方法および結果(講演要旨集と ポスターを部分的に改変転載)

【目的】 グリセリンは,その融点である18℃以下に冷 却しても結晶化することなく,過冷却状態になる.グリ セリンの過冷却状態は安定で,さらに冷却を続けても結 晶化することなく液体状態を維持,もしくはガラス状態 になる.このようなグリセリンの性質に興味をもち,

(1) グリセリンの結晶化条件を検討し,(2) グリセリン の物性をグリセリン類似化合物と比較しながら調べた.

【実験方法,結果,考察】

1) グリセリンの結晶化方法の検討:文献

*

(特別 な 温 度 制 御 装 置 を 用 い て,グ リ セ リ ン を 室 温 か ら

−20℃まで20分以内に冷却,その後−80℃までゆっく り (5℃/h) で冷却し,2‒3時間保持した後,1℃/minで 昇温させる)を参考に,グリセリンの結晶化を試みた.

グリセリンをドライアイス‒エタノールを用いて約

−60℃まで冷却後,ドライアイスの自然気化にまかせ て グ リ セ リ ン の 温 度 を 徐 々 に(半 日 か け て ) 室 温 

(10℃) まで上昇させた.その結果,特別な装置を使う ことなく既報よりもはるかに簡単に,グリセリンの結晶

化に成功した(図

1

2) グリセリン類似化合物の過冷却状態と相変化の 観察:グリセリンの過冷却状態での安定性や難結晶性と 比較するために,グリセリンに類似の化合物(1,2-プロ パンジオール,1,3-プロパンジオール,ジヒドロキシア セトン,エチレングリコール,エリトリトール,キシリ トール,ソルビトール,フェノールなど,ヒドロキシ基 を有する物質)の過冷却状態での挙動を調べた.液体窒 素などの寒剤を使って過冷却状態にした後,物理的な刺 激を与えて,相変化に伴う昇温および見た目の変化を観 察した.その結果,1,2-プロパンジオールおよびソルビ 京都府立桃山高等学校

大澤亮介,佐々木貴都,丹羽元樹,姫野 航(顧問:加藤正宏)

グリセリンの物性に関する研究

図1グリセリンの結晶化に用いた装置 a).液体グリセリン 

b).実験で得られたグリセリンの結晶 c とそれを種結晶と して得られた単結晶 d

*参考文献:M. E. Mobius  : 114, 7439 (2010).

(2)

化学と生物 Vol. 50, No. 9, 2012 697 トールは,融点以下の過冷却状態で物理的刺激を加え続

けても昇温や見た目の変化は観察されず,グリセリンと 同様の挙動を示した.一方で,1,3-プロパンジオール,

ジヒドロキシアセトン,エチレングリコール,エリトリ トールおよびキシリトールでは,物理的刺激により昇温 と結晶化が観察された.フェノールは,過冷却状態にな ることなく結晶化した.わずかな(化学)構造の違いが 過冷却状態での安定性や結晶化のしやすさに影響を及ぼ すことがわかった.

  本研究の意義と展望

グリセリンの過冷却状態での安定性や難結晶性はよく 知られており,そのため酵素や生体サンプルの低温保存 や不凍液としてよく用いられる.グリセリンは100年ほ ど前までは結晶化が困難な物質とされていたが,現在で は過冷却にした後ゆっくりと温度を上げることで実現で きることが知られている.グリセリンの結晶化には厳密 な温度管理が必要とされているが,特別な装置を使わず に身近な材料でグリセリンの結晶化を成功させたところ は素晴らしい.発表者たちもまさか結晶化が成功すると は思っていなかったらしく,最初は驚いたそうだ.

グリセリンの過冷却状態での安定性の理由については まだ解明されていない点もあり,現在でも精力的な研究 が進められている.類似の化学構造をもつ化合物と比較 してその理由を推察しようとしているところは,研究に おける基本的な姿勢を伺わせる.今回の実験結果をもと にグリセリンと同様の振る舞いを示した化合物の過冷却 状態での物性について調べていくことで,共通点が見い だせれば面白いだろう.

目の前の現象に対して「なぜ」と素直な問いかけも ち,文献を調べ,それを明らかにするための方法を考え る.研究者の卵としての素質を感じさせる発表であっ た.

  (文責「化学と生物」編集委員会)

図2表彰ポスターと賞状と一緒に

参照

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