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北海道における醸造用ブドウの耐凍性に関する基礎的研究

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,201927

北海道における醸造用ブドウの耐凍性に関する基礎的研究

生物資源科学専攻 作物生産生物学講座 園芸学 堀内 玲子

1.はじめに

植物が凍結を回避し越冬するための戦略に,細胞の過冷却や細胞外凍結,器官外凍結といった凍 結挙動のあることが知られている。これまでの先行研究によると,ブドウの冬芽は過冷却により凍 結を回避するとされてきた。しかし,過冷却した細胞や過冷却打破された細胞の微細構造を実際に 観察した事例はほとんどない。そこで本研究では,試料を凍結したまま観察可能であるCryo-SEM を使用して,現在北海道で盛んに栽培されている醸造用ブドウ(Vitis spp.)品種‘MHAM’や‘ツ ヴァイゲルトレーベ’の冬芽の凍結挙動を観察し,耐凍性との関係について調査した。

2.方法

20171228日に(有)鶴沼ワイナリー(浦臼)より採取した‘MHAM’および‘ツヴァイ ゲルトレーベ’の休眠枝を実験に用いた。これらの枝から冬芽を切り取り,プログラミングフリー ザーにより5℃/hの速度で緩速冷却した。緩速冷却の到達温度は,事前の示差熱分析によって明ら かとなった試料からの発熱(氷晶形成に伴う凝固熱)を検知した氷点下温度を基準に,‘MHAM’

では-20℃と-40℃,‘ツヴァイゲルトレーベ’では-5℃と-20℃とした。また,緩速冷却を行わない 未冷却試料も用意した。これら全ての試料はフレオンにより急速凍結固定を行った後,Cryo-SEM 観察までの間,液体窒素中で保管した。Cryo-SEMで観察する際には,-110℃で試料を割断した後,

-95℃で割断面を15分間エッチングし,金パラジウムを蒸着したのちに検鏡した。観察した試料数 は,各区2~3反復とした。

3.結果と考察

-20℃および-40℃まで緩速冷却した‘MHAM’の冬芽には,器官外凍結に伴う氷晶塊は認められ なかったが,芽原基付近の細胞は,やや脱水収縮していた。一方,葉原基や分裂組織基部(以下基 部と略記)付近の細胞では,-40℃で細胞内凍結が認められた。

-5℃および-20℃まで緩速冷却した‘ツヴァイゲルトレーベ’の冬芽にも,‘MHAM’と同様に,

器官外凍結の痕跡はなく,芽原基細胞は脱水収縮していた。ただし,葉原基および基部では‘MHAM’

よりも高温の-20℃で細胞内凍結が確認された。

これらの観察結果より,ブドウ冬芽の葉原基および基部付近の細胞では,ある一定温度まで過冷 却する能力があるが,限界温度以下ではそれが打破され,致死的な細胞内凍結が発生すると推察さ れた。その打破温度は,‘ツヴァイゲルトレーベ’では比較的高く,MHAM’で低いことが明らか となり,電解質漏出法により測定された耐凍性の品種間差異の所見と合致した。

一方,芽原基細胞では,両品種ともに,葉原基および基部が過冷却打破温度に達しても過冷却状 態にあり,それらの打破温度が‘MHAM’と‘ツヴァイゲルトレーベ’それぞれ-40℃または-20℃

以下にあると考えられた。しかし,やや脱水収縮した細胞の近傍や器官外においても,まとまった 氷晶塊の形成は確認できず,脱水された水がどこへ移動しているかについては確認できなかった。

さらに,‘ツヴァイゲルトレーベ’では芽原基においても過冷却細胞と打破細胞の混在する様子が 観察され,同じ芽原基中でも細胞の過冷却能にバラツキのあることが推察された。今後は,芽組織 以外の枝幹における水動態や過冷却細胞の微細構造上の特徴などを精査する必要があると考える。

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