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モノグリセリドによるスポンジケーキの起泡性に関 する研究

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(1)

モノグリセリドによるスポンジケーキの起泡性に関 する研究

著者 越智 知子, 土屋 京子, 大塚 洋子

雑誌名 東京家政大学研究紀要 2 自然科学

巻 38

ページ 31‑37

発行年 1998

出版者 東京家政大学

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010621/

(2)

モノグリセリドによるスポンジケーキの起泡性に関する研究

越智 知子ホ,土屋 京子**,大塚 洋子*

      (平成9年10月2日受理)

Studies on the Foaming Effect of Monoglyceride with Sponge Cake Tomoko OcHI, Kyoko TsucHIYA and Yoko OTsuKA

      (Received on October 2,1997)

緒  言

 スポンジケーキを製造するために用いられてきた方法 は,卵の起泡性を利用した共立て法や別立て法などがあ るが,時間がかかり,でき上った生地も不安定なので,

すぐに焙焼しなければならなかった.

 越智らは,全材料混合法により数種の乳化剤を混合し た市販の起泡剤を添加してスポンジケーキを製造すると,

起泡性および泡の保持性が改良され,ケーキの組織が良 く,柔らかいなどの利点があると報告している1).

 ケーキ生地調製用に利用される起泡剤としては2) 3),

常温で固体結晶であるグリセリン脂肪酸エステル(モノ グリセリド)が中心的に使われているが,常温付近で調 製されるケーキ生地に,そのまま固体状態で添加しても ほとんど起泡性を示さない.また,モノグリセリドはラ メラ相とのα一ゲル相が特に起泡性に優れている4)〜6)

と言われているが,モノグリセリドは水に対する溶解度 が低いので,使い方が重要になってくる.そこで,モノ グリセリドの起泡性に関与する要因について検討したの で,その結果を報告する.

 卵:新鮮市販卵

 砂糖:明治製糖製上白糖

 小麦粉:日本製粉製 ハート(薄力粉)

2.調製法

(1)混合ゲル状物の調製

 LPCとMGの混合ゲル状物の調製は,表1に示した 材料を用い,LPCに水とソルビトールを加えて加熱溶 解後,MGを加えて溶解した後放冷し,1時間後に使用

した.

表1 MGとLPCの混合ゲル状物の材料配合割合

料 A

B C D

D一ソルビトール    水

  LPC

  MG

−←Qソ00

9臼置01電⊥ −Qりρ0﹂4 9自FD 

ームQσ4ハ0 り自﹁01 −Qり998 9倉rD 

(2)スポンジケーキの調製

スポンジケーキの材料の配合割合を表2に示した.

表2 スポンジケーキの材料配合割合

乳化剤ケーキ 普通ケーキ

方  法

1.材料

 モノグリセリド(グリセリン脂肪酸エステル,以下M

G):理研ビタミン製 エマルジーMS(以下MS),

  理研ビタミン製 ポエムM−300(以下M−300),

  武田薬品製 エマルジーOL(以下OL)

 酵素処理レシチン:キューピー製 卵黄リゾレシチン       (以下LPC)

卵水 粉糖

混合ゲル状物

28.9 28。9 28.9 11.6

1.7

29.4 29.4 29.4 11.8

0

 *元 東京家政大学

**栄養科 調理学第2研究室

 乳化剤スポンジケーキは,卵,砂糖,小麦粉,水,混 合ゲル状物をミキサーで泡立て,全材料混合法により生 地を調製した.この生地をケーキ型に入れ,180℃のオー ブンで25分間焙焼した.焼成後のケーキは,恒温恒湿室

内(25℃/50%)で1時間放冷後,24時間放置した後に

測定と評価を行なった.

(31)

(3)

越智 知子・土屋 京子・大塚 洋子

 普通スポンジケーキは,卵と砂糖をミキサーボールに 入れて37℃に加温して泡立て,水を加えてさらに泡立て た.これに小麦粉を加え,E(比重0.41で混ぜ不足), F

(比重0.48でちょうど良い),G(比重0.53で混ぜ過ぎ)

まで混合撹搾した.この生地を,前述の乳化剤スポンジ ケーキと同様に焙焼,放置,測定,評価をした.

3.測定法

(1)生地の比重測定

 生地の比重は,65ml容量のプリン型に充填,秤量し,

水重量で除して算出した.

(2)生地の静的粘弾性測定

 クリープメーター(山電製RE−3305)を用い,パラレ ルプレートによる一定応力でのクリープ試験を行なった.

直径55mmのプランジャーを用い,同径の試料台の中央

に生地を置き,上下の円盤の周辺まで試料が広がり密着 するまで予備荷重を加え,密着後は直ちに除重した.回 復動作が安定状態に達した点を開始点とし,試料の高さ

を読み取った後,1分間の荷重を加え,1分間の除重を

して測定した.

(3)生地の動的粘弾性測定

 レオログラフゾル(東洋精機製)を用い,生地をステ ンレスセルに詰め,1分間に5℃上昇するよう設定し,

25℃で安定した5分後の値を読み取った.

(4)スポンジケーキの比容積の測定

 菜種法により容積を測り,ケーキ容積の重量に対する 百分率として求めた.

(5)スポンジケーキの静的粘弾性測定

 前述の生地の静的粘弾性測定と同様の装置を用い,一 定応力におけるクリープ曲線を求めた.ケーキの内相部 を(2.5×2.5×2.0)cmに切り,直径40mmのプランジャー を用いて10分間荷重を加えた後,10分間除重して測定を

行なった.

(6)スポンジケーキのテクスチャー特性値測定

 レオロメーター(アイテクノ製RDR−1500)を用いて

記録曲線を得,硬さ,凝集性,弾力性を算出した.ケー キの内相部は(2.5×2.5×1.3)cmに切り,直径13mm のプランジャーを用いて測定した.

(7)スポンジケーキの官能検査

 調理学研究室の教員と学生あわせて8名で,評価項目

(きめの細かさ,きめの良さ,内相の均一さ,硬さ,ふっ くらさ,しっとりさ,口どけ,粘り,総合評価)に従い,

7段階評価(−3〜+3)の評点法により,混合ゲル状

物A,B, C, Dを用いたケーキにっいて官能検査を行

なった.

結果及び考察 1.モノグリセリドの種類と生地の起泡性

 MS, M−300,0Lの3種とLPCとの混合ゲル状物

(B)の生地の起泡性の結果を図1に示した.

 !.3

1.1

0.9

0.7

0.5

0.3

0. 1

   02468101214

       時間(分)

図1 モノグリセリドの種類による生地の起泡性

         ●MS ▲M−300■OL

 時間の経過に伴い,MSは短時間で比重が最も下がり,

良く泡立って硬い生地になった.M−300は比重は減少し

たが,MSより大きく,比重が最小値になっても液状の ままであった.OLはほとんど変化がなく,ずっと液状 だった.以上から,生地の起泡性にっいてはMSは良い

がM−300は悪く,またOLは特に悪いことが認められた.

2.生地の起泡性と泡立て時間

 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物の起泡性を

知るために測定した生地の比重の結果を図2に示した.

 MSの増加に従い比重は小さくなり,良く泡立っよう になったが,MS量の少ないAの生地は比重が大きく,

あまり泡立たなかった.比重が最小値に達する時間はB,

C,Dの生地ではAより短かく,ほぼ10分に認められた が,6分以後の差はわずかであったため,本研究の泡立

て時間を6分とした.

3.生地の静的粘弾性

 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物を添加した

生地のクリープコンプライアンス曲線を図3に,粘弾性

(4)

0.8

0.7

0.6

O.5

0 4

0.3

A

BC

D

L_一 〇    2

4    6     B    10

泡立て時間(分)

12

0    6    2    8    42    L    11    .   0︐      0︵Z×帽︶nlOH×KNトヤ恥゜卜λn

㎝ 30       60

  時間(秒)

90

120

図2 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物添加生  図3 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物添加生

   地の比重におよぼす泡立て時間の影響

       地のクリープコンプライアンス曲線

定数を表3に示した.

 フック体の弾性率E。,ニュートン体の粘性率η。はB,

C,Dでほぼ同じ値となったが,比重の最も大きいAの

生地のη。は特に小さく,これはMS量がAでは不足で,

良く起泡せずに粘弾性が低くなったと思われる.さらに 徐々に遅延変形する部分に対応するフォークト体の弾性 率E、および粘性率η且では,Dの生地が特に大きく, A

の生地は特に小さい.すなわち,MSの少ない生地は粘

弾性定数がいずれも小さく,弾性変形と流動変形をおこ しやすいので,柔らかく変形をおこしやすい生地である

ことが示された.また,MSの多い比重の小さい起泡性

の高い生地は,粘弾性定数は大きく,特にフォークト体 の弾性率が大きく,遅延変形しにくいので,安定性の高 い生地を形成することが示された.一方,遅延時間につ いては大きな違いはなかった.

4.生地の動的粘弾性

 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物を添加した 生地の貯蔵弾性率G と損失弾性率G の変化を図4に

示した.

 MS量の低下に伴いG , G は低下したが, MS量の

少ないAを用いた生地においては逆転が見られた.これ

は性状の差を示すものとして考えられるので,GノとG の関係を損失正接より求め,図5に示した.

 損失正接(tanδ)は,感覚的に感知する特性を比較 的よく反映する7)と言われており,生地の弾性的およ び粘性的要素の比較として表わされる.図5より,MS 量の低下に伴いtanδはB, Cの差はわずかだが増加し

ていき,生地は弾性的要素から粘性的要素へと移行する ことが認められた.逆転の見られたAのtanδの値は1.0

〜1.09で,やや粘性的要素を持っ生地であることが示さ

表3 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物添加生地の弾性率・粘性率・遅延時間

      Eo

試料

     (N/m2)

生 地      ×104

 E1    τ1

(N/m2)  (sec)

 ×104

 ηi

(Pa・s)

x105

 E2     τ2

(N/m2) (sec)

 ×IO4

 η2

(Pa・s)

x104

 ηN

(Pa・s)

X106

A

B C

D

0.7 0.9 0.9 1.1

1.3 6.3 4.9

12.3

16.7 14.1 15.7 16.4

2.2 8.6 7.4

20.0

1.2

2.0 1.8 1.4

1.4 1.1

1,2 1.0

1.7 2.5 2.1 1.4

0.5

1.r

1.0 1.0

(33)

(5)

越智 知子・土屋 京子・大塚 洋子

︵℃\Z︶るH×ミO.︑O

13

11

9

7

5

3

   O    A       B   C   D

      MSとLPの混合ゲル状物

図4 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物添加生    地の貯蔵弾性率(G )および損失弾性率(G )の変化

れた.

 次に静的と動的の粘弾性の測定結果の関係を,図6,

7に示した.フック体の弾性率E。と弾性率G ,ニュー トン体の粘性率η。と粘性率G との間にはそれぞれγ=

0.675,γ=0.996(α=0.005,nニ4)の正の相関性が

認められた.

 以上より,MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物

を添加した生地では,Dが最も硬く, B, Cはあまり差 がなく,ちょうど良い硬さで流動性の強い生地であるこ とが認められた.すなわち,MSの量が増加するに伴い,

生地は硬さを増していくことが示された.

13

1    9    7    5

1

︵領\ZyOH×︵︑O︶辮坦慧Q留 

3 ムA ●D

   o覧

     0.7       

0.9        1.1

       フック体の弾性率(E。)×IO4(N/㎡)

図6 フック体の弾性率(E。)と動的の弾性率(G )の関係

1.1

1.0

  0.9

  O.8

e

0.7

・1 B c D

    MSとLPCの混合ゲル状物

図5 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物添加生

   地の損失正接変化

sanδ=損失正接, tanδ=G /G

5.スポンジケーキの粘弾性

 表4にMSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物を添

加して調製したスポンジケーキのクリープ曲線を解析し た粘弾性定数を示した.また,測定より得られたコンプ ライアンス曲線を重ねて,図8に示した.

 MSの量がD, C, Bと減少するに従って,フック体の

弾性率(E。),フォークト体の弾性率および粘性率(E,,

E,,η1,η,),ニュートン体の粘性率(ηN)が減少 していき,Aでは著しく増加することが認められた.ま た,遅延時間も同様の傾向を示した.すなわち,Bのケー キは粘弾性定数がいずれも小さく,弾性変形と流動変形

 9    7    5    3

︵縮\Z︶一〇一×︵ミO︶樹坦翼Q溜颪

     0      0.5     

1.0     1.5

       ニュートン体の粘性率(ηN)x106(Pa°s)

 図7 ニュートン体の粘性率(η。)と動的の粘性率(G

    の関係

(6)

表4 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物添加スポンジケーキの弾性率・粘性率・遅延時間

試料

ケーキ

 Eo    E1

(N/m2) (N/m2)

 ×IO3   x103

 τ1

(sec)

 η1

(Pa・s)

×106

 E2

(N/m2)

 ×104

 τ2

(sec)

 η2

(Pa・s)

x106

 ηN

(Pa・s)

ABCD qり90 004 Qり00 Qソ4 ×IO7

20.0

6.8 7.7 8.2

7 8

9 2

8 7

98.8 93。6

20.0

Qり農U に﹂7●

7.6

3.1 0.9 1.0 1.1

11.0

9.2 9.9

10.0

4Qり り00

1.0 1.0

17.0

5.5

41

﹃リハり

7

 6   5   4   3   2   !   0 ︵Z\領︶ΨlO一×妖Nトヤ邸トN︹

   /・〆 1ノ

 /二//

〃/

.r1,一・i−一一一F二員

決こここ::こ:二∠。

      !P

 A

       300     600     900     1200

       時間(秒)

図8 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物添加ス

   ポンジケーキのクリープコンプライアンス曲線

を共におこしやすいので,柔らかく変形をおこしやすい

ケーキであることが認められた.また,Aのケーキは粘

弾性定数が特に大きい値になり,硬くて変形の小さいケー キであることが示された.

6.スポンジケーキのテクスチャー特性値と比容積

 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物を添加して

調製したスポンジケーキのテクスチャー特性値と比容積 を表5に示した.

表5 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物添加ス

   ポンジケーキのテクスチャー特性値と比容積

料キ

 一

試ケ

比容積 テクスチャー特性値

c㎡/9

硬さ 凝集性 弾力性

(RU.) (R.U.) (R.U.)

ABCD

3.06

4.10 3.98 3.95

1.06 0.13 0.15 0.32

0,77 0.66 0.65 0.77

0.65 0.75 0.73 0.71

 比容積はB,C, Dにあまり差は見られないが,わず かながらMS量の減少に伴い比容積は増加し, Bで最高

値を示し,Aでは著しく減少した.

 テクスチャー特性値の硬さと凝集性はB,C, Dにそ

れほど差はないが,Aが硬さにおいて非常に高い値になっ た.弾力性では,Aが低い値になった.

 スポンジケーキの粘弾性およびテクスチャー特性値の

硬さより,両者ともBのケーキが最小値になった.この

時の比容積を見ると,それぞれ最大値になっているので,

スポンジケーキの大きさが測定値に反映されることが認 められた.瞬間弾性率(E。)と比容積の間にはγ=−

0.998(α=0.005,n=4),テクスチャー特性値の硬さ

と比容積の間にはγニー0.991(α =o.oos, n=4)の有

意な負の相関性が認められた.

 以上より,比容積の大きいB,Cは柔らかく弾力もあ るが,比容積の小さいAは硬くて弾力もなく,Dは比容

積は大きいが,B, Cより硬いケーキとなることが示さ

れた.

7.スポンジケーキの官能検査

 スポンジケーキの官能検査では各評価内容にっいて評 点の平均値を項目ごとに結び図9に示した.

    −3 −2 −1 0  1  2  3

きめ悪い      きめ良い 内相不均一       内相均一 硬い               柔らかい

パサっく      しっとりする

粘らない      粘る

図9 MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物添加ス    ポンジケーキの官能検査評価項目の平均評点        △A OB ▲C ●D

(35)

(7)

越智 知子・土屋 京子・大塚 洋子

 総合評価ではBとCのケーキにはあまり差がなく,A

とDよりは好まれていた.きめの細かさ,きめの良さ,

内相の均一さでもB,Cは良いがA, Dは良くなかった.

また,硬さ,ふっくらさでもB,Cは柔らかく,ふっく

らしているのに対し,Aは硬いケーキになった.食べた 時の硬さの評価も,機器測定の粘弾性率やテクスチャー 特性値の結果とよく対応した.

8.スポンジケーキの内部の不均一な組織形成の防止  混合ゲル状物Dを用いたケーキの内部に,不均一な組

織が形成された.この生地は本実験より他の混合ゲル状 物を用いた生地より比重は最も小さく,粘弾性は大きく,

硬い生地であった.このことが原因と考えられたので,

混合ゲル状物の添加量を減量し,泡立て時間を短縮して 比重を増加させて焙焼したが,不均一な組織形成の防止

には役立たなかった.

︵℃\Z︶︒〇一×ミO.︑O

4. 0

3.0

2.0

1.0

         a 一一一一一.一一.一・

   0

         25         65       温 度(℃)

図10 混合ゲル状物の貯蔵弾性率(G )と損失弾性率

   (Gft)の変化

   ●B−G  OB−G  ▲D−Gノ ムD−G

沫安定性が乏しくなり,生地中で排液が発生することに より不均一な組織が出現することがわかった.したがっ て,これを防止するには,泡沫安定性の優れた適性な乳 化剤の配合比によるゲル状物を用いることが有効である

と考えられる.

9.乳化剤スポンジケーキと普通スポンジケーキ

 前述の官能検査より,MSとLPCの混合ゲル状物比率 B,Cのケーキが均一できめが細かく,柔らかい結果と なったので,ここでは,さらに普通スポンジケーキ3種 と,MSとLPCの混合ゲル状物Cを用いた乳化剤スポン

ジケーキを比較した.これらのテクスチャー特性値と比 容積を表6に示した.

 普通スポンジケーキでは,最も良い生地の状態まで撹

搾したFが非常に比容積が大きく,柔らかく弾力がある

ケー」キとなったが,撹絆時間が長すぎたGは,短かいE

   L4

      D

1.2

1.0

  0.8

e

0.6

0.4

B

 次に,混合ゲル状物B,Dをレオログラフゾルを用い

て25℃と65℃における動的粘弾性を測定した結果を図lq 11に示した.Bは25℃ではゆるいマヨネーズの硬さで,

65℃に加熱してもさらにゆるいマヨネーズの硬さになる 状態で,貯蔵弾性率,損失弾性率,損失正接に変化は小

さいが,Dは25℃では硬いマヨネーズの硬さで,65℃に

加熱すると液状のさらさらした状態になり,貯蔵弾性率 損失弾性率,損失正接が大きく変化した.

 このことから,混合ゲル状物Dは,温度が65℃位に上

昇すると粘度が大きく低下するので,生地は焙焼中に泡

  O↑ 一_一一一一一一一一一一一一一         25       .65        温度(℃)

図11 混合ゲル状物の損失正接(tanδ)変化

表6 スポンジケーキのテクスチャー特性値と比容積

料キ

 一

試ケ

     テクスチャー特性値 比容積    硬 さ 凝集性 弾力性

c㎡/g (R.U.)(R.U.)(R.U.)

乳化剤ケーキ 普通ケーキ

CEFG

3.95

3.78 3.89 3.48

0.13 0.26 0.23 0.29

0.65 0.76 0.75 0.77

0.74 0.71 0.72 0.68

(8)

よりもさらに比容積が小さく,硬くて弾力のないケーキ

になった.凝集性はE,F, Gとあまり差は見られない

が,同様の傾向を示した.

 乳化剤スポンジケーキと比重が同じである普通スポン

ジケーキEを比べると,乳化剤スポンジケーキの方が比

容積が大きく,柔らかくて弾力のあるケーキになった.

これは3種の普通スポンジケーキと比べても同様の結果

となった.

 以上より,乳化剤スポンジケーキと普通スポンジケー キでは,乳化剤スポンジケーキの方が全体的にきめが細 かく,柔らかく,比容積が大きなケーキになることが認

められた.

要  約

 スポンジケーキの起泡性に対するMGの作用にっいて,

LPCとMGの混合ゲル状物を作って検討した結果,次

のようなことが得られた.

1.MS, M−300,0Lを用いて作ったLPCとの混合ゲ

 ル状物を加えて起泡した生地は,MSは良かったが,

 M−300は悪く,OLは特に悪かった.

2.MSとLPCの比率を異にした混合ゲル状物(A〜D)

 を加えて起泡した生地の比重は,MSの増加に伴い低

 下した.

3.生地の粘弾性は,静的測定より粘弾性定数はB,C,

 Dではいずれも大きく変形をおこしにくいが,Aでは

 小さく,柔らかくて変形をおこしやすいことが示され

 た.また,動的測定ではB,C, Dの生地の損失正接

 の値は,粘性的性質よりやや弾性的性質を示したが,

 Aは粘性的性質を示した.

4.焼成したスポンジケーキの粘性率,弾性率,テクス

 チャー特性値,比容積の結果より,BとCは大きくて

 柔らかいケーキとなり,Aは小さくて硬いケーキとなっ  た.Dは大きいがB, Cよりやや硬いケーキになり,

 内部に不均一な組織が形成された.

5.官能検査の結果,総合評価でBとCは好ましいと評

 価されたが,AとDは好まれない結果となった.また,

 BとCは柔らかいケーキと評価され,これは機器測定

 の硬さの結果とも対応した.

6.MSとLPC混合ゲル状物Dを用いたスポンジケーキ

 で,内部に不均一な組織が形成されたことの原因にっ

 いて検討した.Dは温度上昇により,動的粘弾性の損

 失正接が粘性的要素を示し,焼成中の泡沫安定性が低

下したことが原因と思われる.

7.混合ゲル状物を用いた乳化剤スポンジケーキと普通 スポンジケーキを比較すると,乳化剤スポンジケーキ の方が大きく,柔らかく,きめも細かく均一であるこ

とが認められた.

文  献

1)越智知子,千田真規子:家政誌22,1971,

 p280〜p287

2)越智知子:調理科学22,1989,p84〜p93 3)水越正彦:油化学42,1993,p803

4)K.Larsson, Z. Phys. Chem 56,1967, p173 5)N.J. Krog, K. Larsson, Chem. Soc,53,

 1976, p400

6)J.B. Laurisen, J. Am. Oil Chem. Soc,53,

 1976, p400

7)赤羽ひろ,佐藤洋子,品川弘子,中浜信子:家政誌

 31, 1980, p637

(37)

参照

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