これは折れ線の長さが上に有界であることを示している。ゆえに φ は長さを持つ。
2. (分割の幅が十分小さければ、折れ線の長さとRiemann和の差はいくらでも小さい)さて、
[a, b]の任意の分割∆ ={tj}rj=0 に対して、折れ線の長さ ℓ(φ,∆) と、積分
∫ b
a
∥φ′(t)∥dt の Rieamann 和S(∥φ′∥,∆, ξ}rj=0−1) (ただし ξ:={tj}rj=0−1)との差は
ℓ(φ,∆)−S(∥φ′∥,∆, ξ) =
∑r j=1
∥φ(tj)−φ(tj−1)∥ −
∑r j=1
∥φ′(tj−1)∥(tj −tj−1)
=
∑r j=1
(∥φ(tj)−φ(tj−1)∥ − ∥φ′(tj−1)(tj −tj−1)∥) であるから、(∥a∥ − ∥b∥≤ ∥a−b∥ という不等式を用いて)
|ℓ(φ,∆)−S(∥φ′∥,∆, ξ)|=
∑r j=1
(∥φ(tj)−φ(tj−1)∥ − ∥φ′(tj−1)(tj −tj−1)∥)
≤
∑r j=1
∥φ(tj)−φ(tj−1)∥ − ∥φ′(tj−1)(tj−tj−1)∥
≤
∑r j=1
∥φ(tj)−φ(tj−1)−φ′(tj−1)(tj−tj−1)∥
=
∑r j=1
∫ tj
tj−1
[φ′(s)−φ′(tj−1)]ds
≤
∑r j=1
∫ tj
tj−1
∥φ′(s)−φ′(tj−1)∥ds.
φ′ はコンパクト集合 [a, b] 上の連続関数だから、一様連続である。ゆえに任意の ε > 0 に対して、
∃δ0 >0 s.t. ∀s1, s2 ∈[a, b] |s1−s2|< δ0 =⇒ ∥φ′(s1)−φ′(s2)∥< ε b−a. 分割の幅 |∆|= max
1≤j≤r(tj −tj−1) が δ0 より小さければ、
|ℓ(φ,∆)−S(∥φ′∥,∆, ξ)|<
∑r j=1
∫ tj
tj−1
ε
b−a ds ≤ ε b−a
∑r j=1
(tj −tj−1) =ε.
3. (長さ L(φ) が積分
∫ b
a
∥φ′(t)∥dt に一致すること) まず L(φ)は、定義によって、折れ線 の長さの上限であるから、
∃∆ =e {etj}erj=0 s.t. L(φ)−ε≤ℓ(φ,∆)e ≤L(φ).
次に積分の定義から、
∃bδ >0 s.t. |∆|<δb =⇒ ∫ b
a
∥φ′(s)∥ds−S(∥φ′∥,∆, ξ) < ε.
∆e の細分 ∆ =b {btj}brj=0 で、 b∆<min{δ, δb 0}を満たすものを取り、ξb={btj}brj=0 とおく。
細分であることから、ℓ(φ,∆)e ≤ℓ(φ,∆)b であるので、
L(φ)−ε ≤ℓ(φ,∆)b ≤L(φ).
b∆< δ0 であることから、
ℓ (
φ,∆b
)−S(∥φ′∥,∆,b ξ)b≤ε (ただし ξb={btj}brj=0).
b∆<δbであることから、
∫ b a
∥φ′(s)∥ds−S(∥φ′∥,∆,b ξ)b < ε.
ゆえに L(φ)−
∫ b a
∥φ′(s)∥ds
≤L(φ)−ℓ(φ,∆)b +ℓ(φ,∆)b −S(∥φ′∥,∆,b ξ)b+
S(∥φ′∥,∆,b ξ)b −
∫ b a
∥φ′(s)∥ds
≤ε+ε+ε= 3ε.
ε は任意であったから、
L(φ) =
∫ b a
∥φ′(s)∥ds.
長さを持たない曲線 すべての曲線に対して、長さが定義できるとは限らない(折れ線の長さ の上限が存在しない、すなわちいくらでも長さの大きい折れ線が取れることがある)。長さを 持たない曲線の存在は早くから知られていたが、最近ではフラクタル(fractal) の典型例とし て現われるため、詳しく研究されている7。次に示すのは、フラクタルとして有名な Koch 曲 線 (Koch curve) である。この図形 Γは、
図 1.2: Koch 曲線
Γ = Γ1∪Γ2∪Γ3∪Γ4, Γ1 ≡Γ2 ≡Γ3 ≡Γ4
と分解できるが、実は各小部分 Γi は、全体Γ と相似で、相似比は Γi : Γ = 1 : 3 (i= 1,2,3,4)
となっていることが図から読み取れる。これからもし Γ が長さを持てば、矛盾が導かれるこ とが分かる。
1.6.2 参考 : 平面曲線の曲率
ベクトル値関数の微積分の話題として、平面曲線の曲率を取り上げる(付録 H.1 では、空間 曲線の曲率・捩率を解説している)。
C を R2 内の正則 C1 級曲線 x=φ(t) (t ∈[α, β]) とする。
弧長によるパラメーターづけ [0, t] の範囲の弧長s=ℓ(t),C (全体) の長さL は、
ℓ(t) :=
∫ t α
∥φ′(u)∥du, L:=ℓ(β)
で定義される。ℓ: [α, β]→[0, L]は、C1級で、ℓ′(t) = ∥φ′(t)∥>0を満たすので8、狭義単調増加 で全単射であり、逆関数ℓ−1: [0, L]∋s 7→t∈[α, β]もC1 級である。Φ :=φ◦ℓ−1: [0, L]→R2 は C1 級の曲線で、像は C と同じである。t=ℓ−1(s) とするとき、
Φ′(s) =φ′(t)(ℓ−1)′(s) =φ′(t)· 1 ℓ′(t) であるから、
∥Φ′(s)∥=∥φ′(t)∥ · 1
|ℓ′(t)| =∥φ′(t)∥ · 1
∥φ′(t)∥ = 1.
φ(t), φ′(t), φ′′(t) をx(t) = (
x(t) y(t)
)
, x′(t) = (
˙ x(t)
˙ y(t)
)
, x′′(t) = (
¨ x(t)
¨ y(t)
)
と表し、Φ(s), Φ′(s), Φ′′(s)をx(s) =
( x(s) y(s)
)
, x′(s) = (
x′(s) y′(s)
)
,x′′(s) = (
x′′(s) y′′(s)
)
と表す9。
曲線 Φ の曲率 e1(s), e2(s) を (1.20) e1(s) := dx
ds = (
x′(s) y′(s)
)
, e2(s) :=
( 0 −1 1 0
)
e1(s) =
(−y′(s) x′(s)
)
で定める。∥e1(s)∥=∥e2(s)∥= 1,e1(s)·e2(s) = 0が成り立つ。幾何学的には、e2(s)は e1(s) を左に 90◦ 回転したものである。
(e1(s),e1(s)) = 1 (s∈[0, L])を微分して、e′1(s)·e1(s) = 0. ゆえにe′1(s)⊥e1(s) であるか ら、e′1(s) は e2(s) に平行である。ゆえに∃κ(s)∈R s.t.
(1.21) e′1(s) = κ(s)e2(s).
8正則性の仮定から、つねにφ′(t)̸= 0であるから。
9t に関する導関数を˙,¨で表すのは、Newton力学に由来する(その場合、tは時刻である)。
この κ(s) を曲率と呼ぶ。同様に∥e2(s)∥= 1 から、e′2(s)⊥e2(s),そして
(1.22) e′2(s) = ρ(s)e1(s)
を満たす ρ(s) の存在が導かれるが、実はρ(s) =−κ(s) である。実際、e1(s)·e2(s) = 0 を微 分して得られる
e′1(s)·e2(s) +e1(s)·e′2(s) = 0 に (1.21), (1.22) を代入して、
κ(s) +ρ(s) = 0 が得られる。まとめておくと、
(1.23)
{
e′1(s) = κ(s)e2(s) e′2(s) =−κ(s)e1(s).
曲線 C の曲率 まず e1(s) =
( x′(s) y′(s)
)
= dx ds = dx
dt dt
ds = 1
√x˙2+ ˙y2 (
˙ x(t)
˙ y(t)
) .
e′1(s) = (
x′′(s) y′′(s)
)
であるが、
x′′(s) = d ds
dx ds = d
dt (
˙
√ x
˙ x2+ ˙y2
)
· dt ds
=
√x˙2+ ˙y2·x¨− 12( ˙x2+ ˙y2)−1/2(2 ˙x¨x+ 2 ˙yy) ˙¨ x
˙
x2+ ˙y2 · 1
√x˙2+ ˙y2 = ( ˙x2+ ˙y2)¨x−( ˙x2x¨+ ˙yx¨˙y) ( ˙x2+ ˙y2)2
= y( ˙˙ yx¨−x¨˙y) ( ˙x2+ ˙y2)2 . 同様にして
y′′(s) = x( ˙˙ x¨y−y¨˙x) ( ˙x2+ ˙y2)2 . ゆえに
e′1(s) = (
x′′(s) y′′(s)
)
= x¨˙y−y˙x¨ ( ˙x2+ ˙y2)2
(−y˙
˙ x
) . 一方、
e2(s) =
(−y′(s) x′(x)
)
= 1
√x˙2+ ˙y2 (−y˙
˙ x
)
であるから、e′1(s) =κ(s)e2(s)を満たす κ(s) は、
(1.24) κ(s) = x¨˙y−y¨˙x
( ˙x2 + ˙y2)3/2.
問 7 曲率が至るところ 0 ならば、曲線は直線 (の一部) であることを示せ。
問 8 r > 0, ω ∈R\ {0} とするとき、曲線をx(t) = (rcosωt, rsinωt) (t∈ [0,2π/ω]) で定め る。曲率を求めよ。
問 9 極形式 r=f(θ) で与えられた曲線に対して、
κ=
r2+ 2(dr
dθ
)2
−rd2r dθ2 [
r2+(dr
dθ
)2]3/2
であることを示せ。
1.7 問の答&ヒント
問1 のヒント (1) (⃗x− w, ⃗⃗ y) = 0 に w⃗ = t⃗y を代入する。(2) ∥⃗x∥2 = ∥⃗x−w⃗ +w⃗∥2 = (⃗x−w⃗ +w, ⃗⃗ x−w⃗+w)⃗ を展開して、(⃗x−w, ⃗⃗ w) = 0 を使う。(3) (2)で示した式から ∥w⃗∥2 ≤
∥⃗x∥2. w⃗ を ⃗x と ⃗y で書く。
問2 不等式の証明から、
どちらかの不等号が等号⇔ ⃗x と ⃗y は1次従属。
⃗
x と ⃗y の少なくとも一方が⃗0ならば、− ∥⃗x∥ ∥⃗y∥= (⃗x, ⃗y) = ∥⃗x∥ ∥y∥. 以下⃗xと ⃗y が共に⃗0で なく、両者は1次従属とすると、∃t∈R\ {0} s.t. ⃗y=t⃗x. このとき、
∥⃗x∥ ∥⃗y∥=|t| ∥⃗x∥2, (⃗x, ⃗y) = t∥⃗x∥2
であるから、t >0 の場合は(⃗x, ⃗y) =∥⃗x∥ ∥⃗y∥, t <0の場合は (⃗x, ⃗y) =− ∥⃗x∥ ∥⃗y∥. 大ざっぱに まとめると、⃗x と ⃗y が同じ方向と向きを持てば右側の不等号が等号になり、⃗x と ⃗y が同じ方 向で逆向きであれば左側の不等号が等号になる。
問4 A◦ = (1,2)×(3,4), Ab = {(1, y);y∈[3,4]} ∪ {(2, y);y∈[3,4]} ∪ {(x,3);x∈[1,2]} ∪ {(x,4);x∈[1,2]}, A= [1,2]×[3,4].
問5 極限がA に含まれること。(「閉集合である」という仮定が増えたから、結論も増えた わけである。)
問6 f がC∞ 級ならば、任意のk ∈Nについて、f はCk 級である。任意のk, ℓ∈N,k > ℓ について、f が Ck 級であれば、f は Cℓ 級である。f が C1 級ならばf は全微分可能である (逆は必ずしも成り立たない)。f が全微分可能であれば、f は連続かつ各変数について偏微分 可能である(逆は必ずしも成り立たない)。
問7 e′1(s) = 0 より、∃a s.t. e1(s) = a. これから ∃b s.t. x(s) = sa+b.
問8 κ(t) = 1
rsign ω. ただし sign は符号を表す(x > 0 ならば sign x = 1, x < 0 ならば sign x=−1)。