付 録 B ギリシャ文字、記号、注意すべき 言い回し
B.3 その他
(⃗x, ⃗y) ベクトル⃗x, ⃗y の内積。
⃗x·⃗y ベクトル⃗x, ⃗y の内積
⃗x×⃗y 3次元ベクトル⃗x,⃗y のベクトル積。
∆x 変数x の増分(変化量)。 f′ 関数f の(1階)導関数。
f′′ 関数f の 2 階導関数。
f(n) 関数f の n 階導関数。
ただしn は非負整数。n= 0 のときは f 自身を表す。
このテキストでは、なるべく標準的な記法や言い回しを採用するように努めたが、中には標 準的な記法と言えるものがないものも多い。以下に掲げる記号は、かなり多くの本に載ってい るもので、あまり突飛なものではないが、使う場合は、最初に注意しておいた方がよいであ ろう。
¬P 「P でない」
P ∨Q 「P またはQ である」
P ∧Q 「P かつQ である」
∃!a 「a は一意的に存在する」
B(a;r) 考えている空間での a を中心とする半径 r の開球。
B(a;r) 考えている空間での a を中心とする半径 r の閉球。
⃗ej 第 j 成分が 1で、他のすべての成分が 0 であるベクトル。
「実際」 英語で言うと、以下の二つの意味に分類できる。
“indeed,” に相当 直前に述べたことの根拠を以下に述べること (理由の説明) を意味する。
少々意訳になるかもしれないが、「なぜならば」くらいに考えれば良い。
“in fact,” に相当 直前に述べた以上のことが、以下に言えることを意味する。
B.3.3 関数と関数値
高等学校の数学の教科書や参考書では、「関数 f(x) が」という書き方が普通だったと想像 する。大学で使っている数学の本にも、同じような書き方を使っているものは少なくないのだ が、“(x)”のついていない「関数 f が」という書き方が多い。この微妙な相違点について説明 する。
後者の流儀を一言で説明すると、
f(x) は関数f の x での値のことで、関数そのものはf と書かなければいけない となる。この流儀に従うと、「関数f が」と書くのが正しく、「関数f(x) が」と書くのは厳密 に言えば間違い、ということになる。決して「関数 f が」と “(x)” を省略するのは、単に面 倒だから、あるいは簡潔だからという理由で省略したのではないことに注意しよう。
高等学校では「関数 f(x) が」のように、関数はその変数を添えて表すのが普通であった。
「y が x の関数であるとき」という表現にも現れているように、関数は二つの「ともなって変 わる変数」のことだったわけである (余談だが、x を独立変数、y を従属変数と言って区別し たりする)。つまり、高等学校流の数学では、変数の名前に特別の意味を与えている。
ところが、大学で学ぶ数学では、現代の数学における標準的な解釈「関数とは写像のことで ある」を採用する場合が多い。つまり
集合 X の任意の要素それぞれに対して、集合 Y の要素がただ一つ決まる対応が あるとき、その対応を集合 X から集合 Y への写像と呼ぶ。
この立場では、関数の変数を表す文字に何を使うかはあまり問題ではない。そもそも、
f: R→R, f(x) =x2 (x∈R) というのと、
f: R→R, f(y) = y2 (y∈R)
は同じことを表しているわけである。似たことは高等学校の数学でも時々出て来たはずであ
る。例えば定積分 ∫ 1
0
f(x)dx
と ∫ 1
0
f(t)dt は同じものを表す。
注意 B.3.1 (関数は規則?) よく「集合 X の任意の要素に、集合 Y の要素をただ一つだけ 対応させる 規則 のことを、集合 X から集合 Y への写像と呼ぶ」と言う人がいるが(授業で もうっかり言ってしまうかもしれない)、これは誤解を生みやすい表現である。規則と言うと、
何か実際的な式とか、計算手順 (アルゴリズム) があるような印象を与えかねないが、そうい うものは必ずしも必要ではない。単に対応がある、だけで良い。