念のため: Ω = {x ∈ Rn;∀ε > 0 B(x;ε)∩Ω ̸= ∅} = {x ∈ Rn;∃{xm}m∈N s.t. (i)∀m ∈ N xm ∈Ω,(ii) limm→∞xm =x}. (a ∈Ω (a は Ω の接触点) の代わりに、a は Ω の集積点と する、という流儀もある。)
注意 2.1.2 (収束の条件を =⇒ を使って表す) 上の条件の書き方は、次のように書いた方が 分かりやすいかも知れない。
∀ε >0,∃δ >0, ∀x∈Ω, ∥x−a∥< δ =⇒ ∥f(x)−A∥< ε.
しかし、条件の否定を作るなど、定義の中の書き方が便利なこともある。
xlim→af(x) =A ではない⇔ ∃ε >0, ∀δ >0, ∃x∈Ω∩B(a;δ) ∥f(x)−A∥ ≥ε.
注意 2.1.3 特にx∈Ω としていることを強調したいときは、
x∈limΩ,x→af(x) = A あるいは lim
Ω∋x→af(x) = A と書くことにする。
注意 2.1.4 (細かい注意) lim
x→af(a) =A を、
∀ε >0,∃δ >0,∀x 0<∥x−a∥< δ =⇒ ∥f(x)−A∥< ε
が成り立つことと定義している本がある (特に古い本に多い)。0<∥x−a∥ という条件を加え て、x=a の場合を除外する、ということである。(微積分で) 極限を使うケースで多いのは、
微分係数の定義 lim
h→0
f(a+h)−f(a)
h のような、分母を0 に近付ける場合なので、分母が0と なることを避けるという意図であろう。この講義で採用した定義を用いた時は、0はそもそも 関数 h 7→ f(a+h)−f(a)
h の定義域に含まれていない (分母を0にするから)、と考えるわけ である。
1変数関数の場合と同様に、以下の命題が得られる (証明は省略する)。
命題 2.1.5 (和、差、スカラー倍、積、商の極限) Ω は Rn の部分集合、a ∈ Ω で、f, g: Ω→ R は lim
x→af(x) =A, lim
x→ag(x) =B を満たし、λ∈R とするならば、次の(1), (2) が成り立つ。
(1) lim
x→a(f(x) +g(x)) =A+B, lim
x→aλf(x) = λA, lim
x→af(x)g(x) = AB, lim
x→a|f(x)|=|A|. (2) B ̸= 0 ならば lim
x→af(x)/g(x) = A/B.
命題 2.1.6 (和、差、スカラー倍、内積の極限) Ω は Rn の部分集合、a ∈ Ω で、f, g: Ω → Rm は lim
x→af(x) = A, lim
x→ag(x) = B を満たし、λ ∈ R とするならば、x → a のとき、f(x) +g(x)→A+B, λf(x)→λA, (f(x), g(x))→(A, B),∥f(x)∥ → ∥A∥.
命題 2.1.7 (極限は成分関数ごとに考えればよい) ΩをRnの部分集合、f: Ω→Rm,a∈ Ω,A∈Rm とするとき、
f1(x) f2(x)
... fm(x)
:=f(x),
A1 A2 ... Am
:=A
とおくと、
xlim→af(x) = A ⇔ ∀i∈ {1,2, . . . , m} lim
x→afi(a) =Ai.
命題 2.1.8 (合成関数の極限) U はRnの部分集合、V はRmの部分集合で、f:U →Rm, f(U) ⊂ V, g: V → Rℓ とする。a ∈ U, b ∈ V, lim
x→af(x) = b, lim
y→bg(y) = c ならば、
xlim→ag(f(x)) = c.
証明 ∀ε >0 に対して、lim
y→bg(y) =c より、∃δ1 >0 s.t.
∥y−b∥< δ1 =⇒ ∥g(y)−c∥< ε.
xlim→af(x) = b より、∃δ2 >0 s.t.
∥x−a∥< δ2 =⇒ ∥f(x)−b∥< δ1. このとき (y=f(x) とすることによって)
∥x−a∥< δ2 =⇒ ∥g(f(x))−c∥< ε.
これは lim
x→ag(f(x)) =cを示している。
注意 2.1.9 (重要: 多変数関数の極限は「成分変数ごとに極限を取ったもの」ではない) Ωを R2 から原点 (0,0)を除いたものとし(Ω :=R2\ {(0,0)})、f: Ω→R を
f(x1, x2) = 2x1x2
x21+x22 ((x1, x2)∈Ω) で定める。(x1, x2)→(0,0)としたときの極限について考えよう。
xlim1→0f(x1,0) = lim
x1→0
2x1·0
x21+ 02 = lim
x1→00 = 0,
xlim2→0f(0, x2) = lim
x2→0
2·0·x2
02+x21 = lim
x2→00 = 0 である。しかし、直線 Lk:={(x1, x2)∈R2;x2 =kx1} を考えると、
f(x , x ) =f(x , kx ) = 2·x1·kx1
= 2k
((x , x )∈L ∩Ω)
であるから、Lk に沿って、(x1, x2) が (0,0)に近付くとき、
lim
Lk∋(x1,x2)→(0,0)f(x1, x2) = 2k 1 +k2. この値は k に依存するので、 lim
(x1,x2)→(0,0)f(x1, x2) は存在しない。
この関数の正体は、極座標を用いて考えると分かりやすいかもしれない。x1 =rcosθ, x2 = rsinθ (r≥0,θ ∈[0,2π))とおくと、
f(x1, x2) = 2rcosθ·rsinθ
(rcosθ)2+ (rsinθ)2 = 2 sinθcosθ = sin 2θ
であるから、r によらず θ のみで値が決まり、θ = mπ/2 (m ∈ Z) で値は 0 だが、つねに 0 というわけでない。
多変数関数の連続性を定義しよう。
定義 2.1.10 (多変数連続関数) Ω を Rn の部分集合、f: Ω→Rm とする。
(1) a ∈Ωとするとき、
f が a で連続 (continuous)def.⇔ lim
x→af(x) =f(a)
⇔ ∀ε >0, ∃δ >0, ∀x∈B(a;δ)∩Ω ∥f(x)−f(a)∥< ε.
(2) f が Ω で連続def.⇔ ∀x∈Ωで f が連続。
注意 2.1.11 n = 1 の場合は、すでに知られていること (1 変数関数の連続性) と同じである (矛盾しない)。
注意 2.1.12 (ベクトル値関数の連続性は、各成分関数の連続性である) f =
f1
... fm
とする
とき、命題 2.1.7 から、
f が a で連続 ⇔ lim
x→af(x) = f(a)
⇔ lim
x→afi(x) =fi(a) (1≤i≤m)
⇔ fi が a で連続 (1≤i≤m).
注意 2.1.13 (重要: 多変数関数の連続性は「成分変数ごとの連続性」ではない) f: R2 → R を
f(x1, x2) =
2x1x2
x21+x22 ((x1, x2)̸= (0,0) のとき) 0 ((x1, x2) = (0,0) のとき) で定める。既に見たように
lim
(x1,x2)→(0,0)f(x1, x2)
は存在しない。ゆえに f は (0,0)で連続ではない。
xlim1→0f(x1,0) = 0 =f(0,0),
xlim2→0f(0, x2) = 0 =f(0,0)
となるから、「各変数に関して (0,0)で連続」であるが、連続とは限らない関数があるわけで ある。
例 2.1.14 (定数関数は連続) Rm の要素 c を任意に選んで、f(x) =c (x ∈Rn) で f: Rn → Rm を定めたとき、f は Rn で連続である。実際、任意の a∈Rn に対して明らかに
xlim→af(x) = c=f(a) であるから。
例 2.1.15 (1 次関数は連続) A∈M(m, n;R), b∈Rm とするとき、
f(x) = Ax+b (x∈Rn)
で定まる f: Rn→Rm を 1 次関数と呼ぶが、これは連続である。
(証明1) a を任意の Rn の要素とするとき、1.3 節で学んだノルムを用いると、
∥f(x)−f(a)∥=∥(Ax+b)−(Aa+b)∥=∥A(x−a)∥ ≤ ∥A∥∥x−a∥ →0 (x→a) であるから、
f(x)→f(a) (x→a のとき).
すなわち、f は a で連続である。
(証明2) A= (aij), b= (bi) とおくとき、任意の i∈ {1,2, . . . , m} について、
fi(x) :=
∑n j=1
aijxj+bi
とおくと、f = (f1, . . . , fm)T. 各 fi は多項式関数であるから、後述の系 2.1.18 によって、Rn で連続である。ゆえに f も Rn で連続である。
連続関数はたくさんある
ことを示すために、いくつか命題を用意しよう。
命題 2.1.16 (多変数実数値関数について連続性は遺伝する) ΩはRnの部分集合、a∈Ω で、f, g: Ω→R は a で連続、 λ∈R とするとき、次の(1), (2) が成り立つ。
(1) f+g, λf,f g, |f| も a で連続。
(2) g(a)̸= 0 ならば f /g も a で連続。
証明 命題2.1.5より明らかである。
命題 2.1.17 (多変数ベクトル値関数について連続性は遺伝する) Ω は Rn の部分集合、
a ∈Ω で、 f, g: Ω →Rm は a で連続、λ ∈ R とするとき、f +g, λf, (f, g), ∥f∥ も a で連続。
証明 命題2.1.6より明らかである。
系 2.1.18 (多項式関数は連続) 多項式関数は連続である。すなわち P(x1, x2,· · · , xn) を 実係数の多項式とするとき、
Rn∋
x1 x2 ... xn
7→P(x1, x2,· · ·, xn)∈R
は連続関数である。
証明 各 i (1 ≤ i ≤ n) に対して、関数φi: Rn ∋ t(x1, x2,· · · , xn) 7→ xi ∈ R の連続性が不 等式
|xi−ai| ≤ ∥⃗x−⃗a∥ から導かれる。後は例2.1.14 と命題 2.1.16 から明らか。
同様にして、有理式(多項式/多項式 の形をしている式)は分母が 0にならない点全体の集 合で関数を定義し、それは連続であることが分かる。
命題 2.1.19 (連続関数の合成は連続) U ⊂ Rn, V ⊂ Rm, f: U → Rm, g: V → Rℓ, a∈U, f(U)⊂V,f はa で連続、g はb:=f(a) で連続=⇒ g◦f: U →Rℓ は a で連続。
証明は命題 2.1.8 による。
ここまで来れば連続関数の例はいくらでも簡単に作ることができる。
例 2.1.20 (連続関数の具体例) 以下の各関数は R2 で連続である。
f(x, y) = 1 +x+ 2y+ 3x2+ 4xy+ 5y2, g(x, y) =e−(x2+y2),
h(x, y) = sinx x2+y2 + 1, φ(x, y) = log(1 +x2+y2).
分母が 0 になりうる分数関数については、いくつか演習問題を用意してある1。
1テストでは、ついつい微妙な状況を出題の種としてしまうためか、「連続関数の例をあげてください」とい う素朴な質問に答えられない人が結構いる。ここら辺は教師の方も反省すべきかも知れない。大学2年生が知っ ている関数を使って組み立てたものは大抵連続である。
2.1.2 連続関数と不等式で定義される集合
ある種の開集合は、それが開集合であることが簡単に証明できる。特別な場合に限ってのこ とであるが、非常に便利であることが多い。
補題 2.1.21 f: Rn →R は連続関数とするとき、{x∈Rn;f(x)> 0} は Rn の開集合で ある。
証明 A:={x∈Rn;f(x)>0}とおく。∀a ∈A に対して、f(a)>0である。f は a で連続 であるから、∃δ >0 s.t.
∥x−a∥< δ =⇒ |f(x)−f(a)|< f(a).
このとき、∥x−a∥ < δ であれば、f(x)> f(a)−f(a) = 0. すなわち x∈ A. ゆえに A は開 集合である。
この補題を認めると、以下の命題は簡単に証明できる。
命題 2.1.22 f: Rn→Rは連続関数、a, b, c∈R,a < b とするとき、次の各集合はRn の 開集合である。
(i) {x ∈ Rn;f(x) > a} (ii) {x ∈ Rn;f(x) < b} (iii) {x ∈ Rn;f(x) ̸= c} (iv) {x ∈ Rn;a < f(x)< b}.
命題 2.1.23 f, g:Rn→R は連続関数とするとき、次の各集合はRn の開集合である。
(i){x∈Rn;f(x)< g(x)} (ii) {x∈Rn;f(x)̸=g(x)}.
命題 2.1.24 f: Rn→Rは連続関数、a, b, c∈R,a < b とするとき、次の各集合はRn の 閉集合である。
(i) {x ∈ Rn;f(x) ≥ a} (ii) {x ∈ Rn;f(x) ≤ b} (iii) {x ∈ Rn;f(x) = c} (iv) {x ∈ Rn;a≤f(x)≤b}.
命題 2.1.25 f, g:Rn→R は連続関数とするとき、次の各集合はRn の閉集合である。
(i){x∈Rn;f(x)≤g(x)} (ii) {x∈Rn;f(x) = g(x)}.
例 2.1.26 (開球は開集合) Rn の開球 B(a;r) は開集合である。実際、f(x) :=r2− ∥x−a∥2 は多項式なので Rn全体で連続であり、B(a;r) = {x∈Rn;f(x)>0}であるから、補題2.1.21 によって、開集合であることが分かる。
例 2.1.27 (シングルトンは閉集合) Rnの1点からなる集合(シングルトンと呼ぶ){a}は閉集 合である。実際、f(x) :=∥x−a∥2は多項式なのでRn全体で連続であり、{a}={x∈Rn;f(x) = 0} であるから。