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陰関数定理と逆関数定理

ドキュメント内 多変数の微分積分学1 講義ノート (ページ 109-115)

注意 2. 6.9 ( 教師のつぶやき ) この手の極値問題は「話が分かりやすい」ので、期末試験でも 定番の問題なのだが、微分法自体の理解よりも、(停留点を求めるための) 連立方程式を解く

2.7 陰関数定理と逆関数定理

陰関数定理と逆関数定理は兄弟のような定理である。定理の主張を見るだけでは分かりづら いので、少し長めのイントロを用意した。

2.7.1 逆関数に関するイントロ

要点は少なくて以下のように簡単にまとめられる(特に最後の一つだけが本質的に新しい)

写像 f:A→B が全単射であるとき、逆写像(逆関数) f1:B→A が存在する。

逆関数の存在、非存在を考えるときは、定義域、終域が大事である。両方とも適当に狭める ことで逆関数が存在するようになることが多い。

線形写像 f:Rn∋x7→ Ax∈Rn については、f の逆写像 f1 が存在するための必要十分 条件はdet= 0.

逆関数の導関数については、簡単な公式がある: 対応する点における元の関数の微分係数の 逆行列である。つまり(f1)(y) = (f(x))1 (ただし y=f(x)).

より一般の C1級関数f:Rn Rn についても、detf(a)̸= 0ならば、a の近傍でf の逆関数が存在する。これがこの節で学ぶ重要な「逆関数定理」である。

1変数関数の逆関数については既に実例を多く知っている。まずその復習から始めよう。

指数関数 exp と対数関数 log 指数関数

f˜: R∋x7−→expx=ex R は単射(1対1の写像)である。すなわち

x1 ̸=x2 =⇒f(x1)̸=f(x2).

(このことは f が狭義の単調増加関数であることから明らか。)f の値域 f(R) は正の実数全 体の集合 (0,∞)であるから、終域を R から (0,∞) に入れ替えた関数

f:R∋x7−→expx=ex (0,∞) は単射であるのみならず全射 (上への写像)である。すなわち

∀y∈(0,∞) ∃x∈R s.t. f(x) =y が成り立つ。よって f は逆関数 g を持つ。つまり

g: (0,∞)−→R

f ◦g =id(0,), g◦f =idR

を満たす27g(y) のことを logy と記すのであった。逆関数の微分法より d

dylogy= dx dy = 1

dy dx

= 1 ex = 1

y.

27集合 A に対して、idA idA(x) = x (x A) で定められる写像 idA:A A で、 A 上の恒等写像 (identity mapping)と呼ばれる。

ルート 関数

f˜: R∋x7−→x2 R

は単射でも全射でもない。しかし定義域を [0,∞) に制限して、終域も[0,∞) と替えた f: [0,∞)∋x7−→x2 [0,∞)

は全単射である。よって f は逆関数 g を持つ。つまり g: [0,∞)−→[0,∞) で

f◦g =id[0,), g◦f =id[0,) を満たす。g(y)のことを

y と記すのであった。

d dy

√y = dx dy = 1

dy dx

= 1

2x = 1 2

y (ただし = 0).

逆三角関数

f1: [−π

2 2

]∋x7−→sinx∈[1,1], f2: [0, π]∋x7−→cosx∈[1,1], f3:

(−π 2

2

)∋x7−→tanx∈R

はいずれも全単射であるから、逆関数が存在する。それぞれ g1,g2, g3 とすると g1: [1,1]−→[

−π 2

2 ]

, g2: [1,1]−→[0, π], g3: R−→(

−π 2

2 )

となる。g1(y). g2(y),g3(y) は、それぞれSin1y, Cos1y, Tan1y と書かれる28d

dy Sin1y= dx dy = 1

dy dx

= 1

cosx = 1

√1sin2x

= 1

√1−y2 (ただし = 1), d

dy Cos1y= dx dy = 1

dy dx

= 1

sinx = 1

1cos2x = 1

√1−y2 (ただしy ̸= 1), d

dyTan1y= dx dy = 1

dy dx

= 1

1 cos2x

= 1

1 + tan2x = 1 1 +y2.

以上は既に知っているはずのことである。以下二つ新しいことを紹介する。

28逆三角関数の主値を表すために、先頭の文字を大文字にする、という流儀がある。アークサインの場合、Sin1

一般の 1 変数実数値関数 一般の f˜: R R, a Ω についてf˜(a)̸= 0 ならば a の十 分近くでは逆関数が存在する。実際 f˜(a)>0またはf˜(a)<0であり、f˜ は連続であるから

∃ε >0 s.t. ˜f >0 in [a−ε, a+ε] またはf˜ <0 in [a−ε, a+ε]. 例えばf˜ >0としよう。す ると f˜は [a−ε, a+ε] で狭義の単調増加関数だから、明らかに単射であり、f˜による開区間 (a−ε, a+ε) の像は ( ˜f(a−ε),f˜(a+ε)) で、制限写像

f: (a−ε, a+ε)∋x7−→f˜(x)( ˜f(a−ε),f(a˜ +ε)) は全射である (中間値の定理による)。ゆえに逆関数

g: ( ˜f(a−ε),f(a˜ +ε))(a−ε, a+ε) が存在する (逆関数の連続性など、詳しくは H.2節)。

一般の n 変数 n 次元ベクトル値関数 一般のf˜: RnRn, a∈Ω についても同様であ る。すなわち、

f˜(a)の逆行列 f˜(a)1 が存在( det ˜f(a)̸= 0) ならば、a を含む十分小さな開集合 U が存在して、

f: U ∋x7→f(x∈f˜(U)

は全単射になり、その逆関数が存在する。これが後で詳述する逆関数定理である(証明は少し 難しい)。

2.7.2 陰関数についてのイントロ

まずは1 次元の例から始めよう。F:R2 RF(x, y) :=x2+y21 で定義する。(a, b)R2

F(a, b) = 0, (a, b)̸= (±1,0)

を満たす点とする。F の零点集合NF :={(x, y);F(x, y) = 0} は、もちろん原点を中心とする 半径 1の円周であり、(a, b) はこの円周上の点である。このときa を含む開区間 Ub を含 む開区間 V とで

(2.20) ∀x∈U !y∈V s.t. F(x, y) = 0

を満たすものが存在する29x∈U に対応する yφ(x) と書くと、φ: U →V であって、

∀x∈U F(x, φ(x)) = 0

が成り立つ。こういうφ を方程式 F = 0 から定まる陰関数 (implicit function)と呼ぶ。(陰 (implicit) よう陽 (explicit),yy=φ(x) とあらわ陽 になっていなくて、隠されていた、という意味 で陰関数).

いくつか注意しておこう。

29! は一意的に存在することを表す記号である。

(1) 最初からy=φ(x)と普通の関数(陽関数)となっているものは、取り扱いに便利なことが 多いが、中には

F(x, y) = 0

の形にしておいた方が望ましく、好まれることもある。そういう場合に、いざというとき はy =φ(x)と y について解けることが保証されると、とても助かる。そのための定理が 陰関数定理である。

(2) この例ではもちろん {

b >0 = φ(x) =φ1(x) := 1−x2 b <0 = φ(x) =φ2(x) :=−√

1−x2 である。F(x, φ(x)) = 0 を満たす φ としては他に

φ3(x) :=

{

1−x2 (x∈Q(1,1))

−√

1−x2 (x∈(1,1)\Q)

なんてのもあるが、これは微分可能でも連続でもないし、面白くもない (役に立たない)。 連続性を仮定すると実質的に φ1, φ2 の二つに限られる。

(3) a= ±1 のときは、このような性質を満たす φ はない。例えば a = 1 の場合、b = 0 で、

1を含む開区間 U と 0 を含む開区間 V をどのようにとっても、(2.20) は成り立たない。

これは少し分かりにくいが、よく考えて納得するように30。陰関数定理では、こういう点 を除外するための条件がつくわけだが、それは

det∂F

∂y(a, b)̸= 0 (解こうとしている変数 y に関する微分が0 でない) というものである。確かに ∂F

∂y(1,0) = 2·0 = 0 となっている。

(4) F(x, y) = 0 が簡単な式変形では解けないような場合も多い。例えば

F(x, y) :=y+ siny+x2−ex+ 1 = 0.

陰関数定理はこういう場合にも適用できる。それは陰関数 φ についての、抽象的な存在 定理であって31φ の具体的な表現などは与えていないが、その代わり広い範囲の F に 適用が出来る。

(5) ところでφC1級である(実は陰関数定理が成り立つときはφ は常にC1級である)。す ると

F(x, φ(x)) = 0

30x >1ならばF(x, y) = 0を満たすyは存在しない。x <1であっても、xが十分1に近いとき、F(x, y) = 0 を満たすy 2個存在する。

31大学2年生の段階で、他に抽象的な存在定理というと、中間値の定理、平均値の定理(剰余項バージョンの

Taylorの定理)、コンパクト集合上の実数値連続関数の最大値・最小値の存在、などがある。この機会に復習し

が成り立つことから、

∂F

∂x(x, φ(x)) + ∂F

∂y(x, φ(x))φ(x) = 0, よって

φ(x) =

∂F

∂x(x, φ(x))

∂F

∂y(x, φ(x)) .

つまり陰関数定理は φ の表現については何も言及しないけれども、その導関数について は合成関数の微分法から導かれる簡単な公式がある。上の例では

x2+y21 = 0 の両辺をx で微分して

2x+ 2ydy dx = 0, これから

dy

dx =−x y

というもので、これは高校数学で習った人もいるであろう。

多次元の場合の例 上の例では x, yが 1 次元の量であったが、多次元の場合はどうであろう か。簡単な(線形の)例で考えてみよう。例えば

A ∈M(n, m;R), B ∈M(n;R), ⃗c∈Rn とするとき

F⃗(⃗x, ⃗y) :=A⃗x+B⃗y+⃗c で定められる

F⃗: Rm×Rn(⃗x, ⃗y)7−→F⃗(⃗x, ⃗y)Rn を取り上げる。

F⃗(⃗x, ⃗y) =0

⃗y について解けるか?この答は簡単で、detB ̸= 0 ならば、

F⃗(⃗x, ⃗y)≡A⃗x+B⃗y+⃗c=0 を移項して出来る

B⃗y=(A⃗x+⃗c) の両辺から B1 をかけて

y =−B1(A⃗x+⃗c)

となる。detB = 0 であるときは case by case (A, B について詳しい情報がないと分からな い).

2.7.3 陰関数についてのイントロ (2 変数関数版 )

直観的には、方程式F(x, y) = 0 は、(例外的な状況を除けば) 平面曲線を定め、適当に範囲 を限定すると、変数 xの関数 yを定めることがある(このとき、その関数 yを陰関数と呼ぶ)。

いくつか実例を並べてみよう。

(1) F(x, y) = y−φ(x) のとき、y =φ(x). F(x, y) = 0 の定める曲線は、関数 φ のグラフで ある。

(2) F(x, y) =ax+by+c (a, b, c R, (a, b) ̸= (0,0)) のとき、F(x, y) = 0 の定める曲線は直 線である。= 0 であれば、y=−a

bx− c

b と解ける。

(3) F(x, y) = x2 +y2 1 のとき、y = ±√

1−x2. F(x, y) = 0 の定める曲線は、原点を中 心とする半径 1 の円周である。(一般に、F(x, y) が xy の 2次多項式であるならば、

F(x, y) = 0 の定める曲線は、いわゆる2次曲線で、具体的には、空集合、1点、2直線、

楕円、放物線、双曲線である —線形代数のテキストを見よ)。

(4) F(x, y) = y2−x2(x−a) (a は実定数)のとき、F(x, y) = 0 は、y = 0 (x= 0 のとき),ま たはy=±x√

x−a (x≥a のとき) と解ける32F(x, y) = 0 の定める曲線は、

(a) a <0のときは原点で自己交差する曲線(原点を結節点と呼ぶ)

(b) a= 0 のときは原点で尖っている曲線(原点を尖点と呼ぶ)

(c) a >0のときは原点と、x≥a の範囲にある曲線(原点を孤立点と呼ぶ)

(5) (ヤコブ・ベルヌーイのレムニスケート, 1694年) F(x, y) = (x2 +y2)22(x2 −y2) のと き、いわゆるヤコブ・ベルヌーイのレムニスケート(連珠形, p.118)F(x, y) = 0 は yにつ いての4 次方程式であるが、2次方程式を解くことを2回行って、y について解ける。

(6) (デカルトの葉線, folium cartesii, 1638年)F(x, y) =x3+y33xyのとき、F(x, y) = 0の 定める曲線は、いわゆるデカルトの葉線で、原点において自分自身と交差する曲線である (例 2.7.7, p.117)。F(x, y) = 0 は y についての 3 次方程式である。これは y について簡 単に解くことは…?出来ないと思ったら、Mathematica は答を返して来た。あ、そうか。

でも使いにくそう。

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