い)。微分可能で、導関数が連続なことである。
注意 1.6.7 (1 変数ベクトル値関数は早い話が) 成分ごと毎に考えればよい。例えば、
φ(t) =
φ1(t)
... φn(t)
とすると、
φ が t0 で連続⇔ 各 i (1≤i≤n) に対してφi が t0 で連続。
φ が t0 で微分可能 ⇔各 i(1≤i≤n) に対して φi が t0 で微分可能。
例 1.6.8 (質点の運動) 質点が時間の経過とともにその位置を変えるとき、時刻 t ∈ I (I は R の区間)における位置ベクトルをφ(t)で表すと,一つのベクトル値関数φ: I →Rn が得ら れる。
ここでは独立変数をt, 従属変数をxと書くことにしよう: x=φ(t).
このとき
v(t) := dx
dt =φ′(t)
を時刻tにおける質点の速度 (velocity) と呼ぶ。また速度のノルム(大きさ) ∥v(t)∥ のことを 速さ (speed) と呼ぶ。
速度の導関数
α(t) := v′(t) = d2x
dt2 =φ′′(t) は質点の加速度 (acceleration) と呼ばれる。
例 1.6.9 (等速円運動) n = 2, r は正定数、ω は実定数とするとき、φ(t) = (
rcosωt rsinωt
) と おくと、
φ′(t) =
( −rωsinωt )
, φ′′(t) =
( −rω2cosωt
− 2
)
, ∥φ′(t)∥=r|ω|.
t を時刻、φ(t) を時刻 tにおける質点の位置を表すものと解釈すると、これは原点を中心とす る半径 r の円周上を一定の角速度 ω で移動する運動と言える。
φ′′(t) = −ω2φ(t), φ′(t)⊥φ′′(t)
に注意しよう (「加速度は中心を向く」、「速度と加速度は直交する」)。
上のように定義した連続曲線の中には、「曲線」らしくないものも含まれている。
例 1.6.10 (
ペ ア ノ
Peano 曲線 (Peano curve)) 連続曲線φ: I = [0,1]→R2 で、像が正方形であ る、すなわち
φ(I) = [0,1]×[0,1]
が成り立つようなものが存在する (平面や空間を「充填する」曲線については、ザーガン [3]
を見よ)。
注意 1.6.11 (滑らかな曲線 — 正則曲線) 本によっては、C1級の関数のことを「滑らか」と 言うことがあるが、C1級の曲線の像 (図形としての集合、形)は滑らかであるとは限らず、6、
かど
角を持つ (
とが
尖っている) こともありうる (例えば x=t3, y= t2, t ∈[−1,1])。こういう角は特 異点 (φ′(t0) = 0となる点のこと) になっているので、特異点のないC1級曲線と言えば、ホン トに像も滑らかになる。特異点のない C1級曲線のことを、せいそくきょくせん正則 曲 線 (regular curve)とい うことがある。
-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-1 -0.5 0 0.5 1
t**3, t**2
図 1.1: C1級だが滑らかでない曲線 x=t3,y =t2
6ただし、C1 級関数のグラフの形は滑らかである。
命題 1.6.12 (曲線と微分の公式) I,J を Rの区間、φ:I →Rn, ψ: I →Rn を微分可能 な曲線、 f: I → R, g: J → I を微分可能な関数とするとき、以下の (1) 〜 (5) が成り 立つ。
(1) d
dt(φ(t)±ψ(t)) = dφ
dt(t)±dψ
dt(t) (複号同順).
(2) d
dt(f(t)φ(t)) = df
dt(t)φ(t) +f(t)dφ dt(t).
(3) d
dt(φ(t), ψ(t)) = (dφ
dt(t), ψ(t) )
+ (
φ(t),dψ dt(t)
) . (4) d
dtφ(g(t)) = g′(t)φ′(g(t)).
例題 1.6.1 速さ一定の質点の運動では、速度と加速度は互いに直交することを示せ。
解答 質点の運動 φ: I →Rn が速さ一定とする。すなわち
∥φ′(t)∥ ≡C (C は定数).
これから
(φ′(t), φ′(t))≡C2. 両辺を t で微分すると、
(φ′′(t), φ′(t)) + (φ′(t), φ′′(t)) = 0 すなわち
(φ′′(t), φ′(t)) = 0.
これは速度 φ′(t) と加速度 φ′′(t) が直交することを示す。
C1級曲線の長さは、簡単に定義できる(C1級でない曲線の長さについては、1.6.1を見よ)。
定義 1.6.13 (C1級曲線の長さ) C1級曲線 φ: I := [a, b]→Rn の長さを
∫ b
a
∥φ′(t)∥dt
であると定義する。φ(t) =
φ1(t)
... φn(t)
とすれば、
∫ b a
√φ′1(t)2+· · ·+φ′n(t)2dt.
曲線を質点の運動と解釈すれば、速さを時間で積分したものが、曲線の長さということに なる。
「曲線の長さはパラメーターの取り方によらない」 φ: I = [a, b] → Rn を C1級の曲線、
f: [α, β]→[a, b]を C1級の関数で、f′ >0, f(a) =α, f(b) =β を満足するものとする。この とき、合成写像
Φ :=φ◦f: [α, β]∋s 7→φ(f(s))∈ Rn も C1級の曲線である。このとき、
Φ の長さ =
∫ β
α
∥Φ′(s)∥ds
=
∫ β α
∥φ′(f(s))f′(s)∥ds =
∫ β α
∥φ′(f(s))∥f′(s)ds
=
∫ b a
∥φ′(t)∥dt=φ の長さ.
φ の像と Φの像は、点集合(図形)としては等しいわけで、心情的には同じ曲線であるが、現 在の数学の流儀では、曲線とは写像のことで、そのセンで行くと、Φと φ は一応は別物であ る。でも、その長さはめでたく等しい、と言うわけである。この事実を
曲線の長さは、パラメーターの取り方によらない と言う。
さて、φ を正則曲線とするとき、
ℓ(t) :=
∫ t
a
∥φ′(η)∥dη (t∈[a, b]) とおくと、
ℓ: [a, b]−→[0, L] C1級, ℓ(a) = 0, ℓ(b) =L, ℓ′(t) = ∥φ′(t)∥>0 (t∈[a, b]),
が成り立つ(ここで Lは曲線 φ の長さである)。このℓ の逆関数を ψ としよう: ψ: [0, L]∋s7→ψ(s)∈[a, b]
こうして作った Φ :=φ◦ψ: [0, L]→Rn は、∥Φ′(s)∥ ≡ 1 という性質をもつ。Φ は弧長 s に よりパラメーターづけられた曲線であるという。
1.6.1 参考 : 曲線の長さの一般的な定義
曲線の長さを、曲線上に点を有限個取り、順に結んで作った折れ線の長さの上限として定義 する。正確には以下のように定義する (図を描くべきだな…)。