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上の例と良く似ているが不連続な関数の例として

ドキュメント内 多変数の微分積分学1 講義ノート (ページ 150-158)

付 録 C 期末試験の採点から — 教師の憂 鬱な時間

不連続な場合の例 1 上の例と良く似ているが不連続な関数の例として

f(x, y) =



xy

x2+y2 ((x, y)̸= (0,0)) 0 ((x, y) = (0,0)).

これは直線 y =kx 上で考えると、原点以外では f(x, kx) = x·kx

x2+ (kx)2 = k 1 +k2. これはk によって値が異なる。ゆえに極限 lim

(x,y)(0,0)f(x, y)は存在しない。ゆえに f は (0,0) で連続ではない。

不連続な場合の例2 最後に少し難しい例をあげておく (間違えて連続であると解説してある 本があった)。

f(x, y) =



x2+y2

x+y (x+= 0) 0 (x+y= 0).

結論から先に言うと、実はこのf は(0,0)で連続ではない。そこでy=kxにそって(0,0)に近 づけたときの極限を調べる方法をやってみよう。k ̸= 1 とすると = 0 であるとき x+kx̸= 0 となるので、

f(x, kx) = x2+ (kx)2

x+kx =x1 +k2 1 +k .

これは x→0とすると 0 という共通の極限に収束する。これを見て、

lim

(x,y)(0,0)f(x, y) = 0

と結論した人が多かった。しかしこれは間違いである。k が任意であっても、それを一度固定 してしまってから、y=kx にそって (0,0) に近づけるというのは「特殊な」近づけ方に過ぎ ないのである。

それでは解答。(x, y) が半径 r の円周上にある場合を考える。x = rcosθ, y =rsinθ (θ [0,2π]) と書けるので、x+= 0 のとき

|f(x, y)−f(0,0)|=|f(rcosθ, rsinθ)0|

=

(rcosθ)2+ (rsinθ)2 rcosθ+rsinθ

= r

cosθ+ sinθ

= r

2 sin(θ+π/4).

右辺の分母は θ を 3π/4あるいは 7π/4 に近づけるといくらでも 0 に近くなる。そこで r が どんなに 0 に近かったとしても、θ を 3π/4 の十分近くに取れば1|f(x, y)−f(0,0)| の値は いくらでも大きくなる —不連続性を証明するには1 よりも大きいことを言えば十分。念のた め論理式で書いておくと

∀r >0, ∃θ [0,2π]\ {3π

4 ,7π 4

}

s.t. |f(rcosθ, rsinθ)| ≥1.

ゆえに

lim

(x,y)(0,0)|f(x, y)−f(0,0)|

は 0 でない (本当は極限すら存在しない)。ゆえに f は (0,0) で連続ではない。

仮想の問答 「上の解説は、問題の解き方に関しては、『色々な場合がある』と言っているだ けで、どうやればいいのか方針を説明できていないと思うんですが。」「うーん(『だけ』と言 うことはないだろうに)、分母と分子が 0に近づく速さを比較するわけなのだけど、あまり一 般的な方針はないですね。比較的多くの場合に使える目安としては、分母と分子の『次数』を 考えるというのがあります。

xy

x2+y2 = 2次 2次

なんてのは、次数が同じだから、分子が勝って 0に収束することにはならない。

xy

x2 +y2 = 2次 1次

は分子の次数が高いので、勝ちそうだ(0に収束しそうだ)という見通しをつけるわけです。た だこれで行くと、最後の例も

x2+y2

x+y = 2次 1次

となって、0 に収束しように見えるのが難点ですね。まあ、この分母は原点以外でも0になり うるというのが少し特殊なんだけど。」「完璧でなくてもいいけれど、何か便利そうな手は他

1具体的にθをどう取ればいいか書けば完璧であるが、そこまでする必要はないだろう。そんなに難しいこと

にないですか?」「これは試験テクニック的な感じがして、こればかりを覚えてもらっても困 るのですが、このように分母、分子ともに xy のバランスの取れた式である場合は、最後 の例でもやったように、極座標を使って式を表現するというのがあります。例えば

xy

x2+y2 = rcosθ·rsinθ

r2cos2θ+r2sin2θ = cosθsinθ = 1

2sin 2θ.

これは r→0 としても 0に収束しそうでないのはすぐ分かる。一方、

xy

x2+y2 = rcosθ·rsinθ

√r2cos2θ+r2sin2θ =rcosθsinθ = r 2sin 2θ

だから

xy

x2+y2 r

2

で、これは r 0のとき 0 に近づく。最後の例は、繰返しになるけど f(x, y)−f(0,0) = r

2 sin(θ+π/4)

となって、ちょっと見た目には r が残っているので0に収束しそうな気もするけれど、0にな りうる分母が残っているので、そうは行かないと。二番目の例では

|sin 2θ| ≤1 と θ に関係した因子が有界になるのに、三番目の例では

1 sin(θ+π/4)

は有界でないというのが違いと言えます。」「うーん、何か複雑ですね。」「説明している方も 簡単な説明になっているとは思っていません (ごめん)。」

C.2.2 偏微分可能性のチェック

例題

f(x, y) =



xy

x2+y2 ((x, y)̸= (0,0)) 0 ((x, y) = (0,0)) は原点で偏微分可能かどうか調べよ。

よくある 間違い は

fx(x, y) = (x2+y2)·y−2x·xy

(x2+y2)2 = x2y+y32x2y

x2+y2 = y3−x2y (x2+y2)2, fy(x, y) = (x2+y2)·x−2y·xy

(x2+y2)2 = x3+x2y−2xy2

x2+y2 = x3−xy2 (x2+y2)2

としてから (x, y) (0,0) の極限を取ろうとして、それが存在しないから、偏微分可能でな い、と答えるという解答。これは根本的な勘違いである。そもそもこれでは f(0,0) = 0 とい う情報を使う機会がないので、それだけでも変だと感じないとおかしい。

尋ねられているのは、極限 fx(0,0) = lim

h0

f(0 +h,0)−f(0,0)

h , fy(0,0) = lim

h0

f(0,0 +h)−f(0,0) h

が存在するかということである。この式で f(h,0), f(0, h)については、(h,0)̸= (0,0), (0, h)̸= (0,0)なので、

xy x2+y2

という式に代入すればいいが、f(0,0)については場合わけの片割れである0 という情報を使 う必要がある。

色々文句を書いたが、正解は次のようにごくあっさりしたものになる。

fx(0,0) = lim

h0

f(0 +h,0)−f(0,0)

h = lim

h0

1 h

( 0 h2+ 02 0

)

= lim

h0

0

h = lim

h00 = 0.

fy(0,0) = lim

h0

f(0,0 +h)−f(0,0)

h = lim

h0

1 h

( 0·h 02+h2 0

)

= lim

h0

0

h = lim

h00 = 0.

ゆえに f は (0,0)で変数 x, y のいずれについても偏微分可能である。

仮想問答 「これは覚えてしまえば簡単ですね。」「そうだと思うんだけど案外と出来ないん です。」「え、一体どこを間違えるんですか?」「間違えている解答は、ほとんど途中経過が書 いていないので、採点側としては想像するしかないのだけれど、二つほど理由が考えられま す。一つは、なまじっか 0が多いので、『正解』を見ても、それがどうしてそう計算するのか 理解できず、例題と違った問題になると対応できないというもの (要するに分かっていない)。

もう一つは省略することによる計算間違いですね。そういえば

f(x, y) =



x2+y2

x+y ((x, y)̸= (0,0)) 0 ((x, y) = (0,0))

について fx(0,0), fy(0,0) を求めよ、という問題を出したとき、あっさりと fx(0,0) = lim

h0

f(0 +h,0)−f(0,0)

h = 0, fy(0,0) = lim

h0

f(0,0 +h)−f(0,0)

h = 0

と書いて間違った人がたくさん出て、とても驚いたことがあります。こういう問題の答は0に なると思い込んでいるのでしょうか。」「えーと、正解がすぐには分からないのですが、教え てください。」「『すぐ分からない』のが当たり前です。こういうのは計算しないと私でも分か りません。自分で計算してみてください。」「ええと、

fx(0,0) = lim

h0

f(0 +h,0)−f(0,0)

h = lim

h0

1 h

(h2+ 02 h+ 0 0

)

= lim

h0

h2

h2 = lim

h01 = 1.

ああ、本当に 0ではないんですね。fy(0,0)もそうなんでしょうか。」「そうそう。…そういえ ば話は飛ぶけれど、この手の問題は、高校数学の範囲でもあったはずです。例えば

f(x) =



x2sin

(1 x

)

(= 0)

0 (x= 0)

x= 0 で微分可能であるかどうか調べよ、とかね。」「そうだったかも…」「そういえば、大 学院入試の面接で

f(x) =



|x|4/3sin (1

x )

(= 0)

0 (x= 0)

の微分可能性を尋ねていた先生もいました。受験生は結構あたふたしていましたね2。」「はあ。」

C.2.3 全微分可能性をチェックする

すぐに全微分可能であることが分かる関数も多い。

(1) 多項式

(2) 微分可能な 1変数関数 (log, exp, sin, cos,

x 等、ただし定義域や特異点に注意) (3) 微分可能な関数の合成

(4) 分母、分子とも微分可能な関数で、考えている点で分母が0 にならない。

不連続関数は全微分不可能 「全微分可能ならば連続」という定理の対偶「連続でなければ全 微分可能でない」はピンと来てほしい。例えばすでに何回も出てきた

f(x, y) =



xy

x2+y2 ((x, y)̸= (0,0)) 0 ((x, y) = (0,0)) は、(0,0) で不連続なことが分かるから、(0,0)で全微分可能ではない。

連続だが全微分可能でない例

f(x, y) =



xy

x2+y2 ((x, y)̸= (0,0)) 0 ((x, y) = (0,0))

は連続であることは既に見た。全微分可能性はどうか?定義に戻って考えると、

lim

(x,y)(0,0)

f(x, y)−f(0,0)−ax−by

x2+y2 = 0

となる定数 a, bが存在するならば全微分可能、そうでないならば全微分可能でないとなる (自 分で納得するまで考えること — ここらへんをうろ覚えで沈没する人が多い)。このままでは 少し難しいが、「全微分可能な場合、a=fx(0,0), b =fy(0,0)である」という定理があった3

2ここまで来ると脱線でしょうか。でもこのような問題がきちんと解けることは大事だと考える先生がいると いうことで、なるほどなあ、と感じました。

3もう少し正確に書いておくと「関数が全微分可能ならば、各変数に関して偏微分可能で、微分係数は偏微分 係数を並べたヤコビ行列に等しい。」

だから、原点 (0,0) で微分可能かどうかは、

(C.1) lim

(x,y)(0,0)

f(x, y)−f(0,0)−fx(0,0)x−fy(0,0)y

x2+y2 = 0

が成り立つかどうかを調べれば良いわけである。そこでまず fx(0,0), fy(0,0) を求めよう。結 果だけ書くと

fx(0,0) = 0, fy(0,0) = 0.

さらに f(0,0) = 0 であるから、調べるべきことは

lim

(x,y)(0,0)

f(x, y)−f(0,0)−fx(0,0)·x−fy(0,0)·y

x2+y2 = lim

(x,y)(0,0)

f(x, y)

x2+y2

= lim

(x,y)(0,0)

xy x2+y2

が 0 であるかどうか、である。このlim は、既に出てきていて(すぐ上!)、結論は「極限な し」であった。当然 (C.1)は成立しない。ゆえに f は (0,0)で全微分可能ではない。

全微分可能な例 最後は少し凝った例を。

f(x, y) =



sinx2+ siny2

x2+y2 ((x, y)̸= (0,0))

1 ((x, y) = (0,0))

の全微分可能性はどうか?まず f は (0,0) で連続で、fx(0,0) =fy(0,0) = 0 である (各自確 かめよ)。

すると、残る問題は

f(x, y)−f(0,0)−fx(0,0)x−fy(0,0)y

x2+y2 = f(x, y)1

x2+y2

= 1

x2+y2

(sinx2+ siny2 x2+y2 1

)

=

( sinx2−x2 (x2+y2)3/2

) +

( siny2−y2 (x2+y2)3/2

)

の極限が 0 になるかどうか、である。

sinx の Taylor 展開

sinx=

n=1

(1)n1

(2n−1)!x2n1 =x− x3 3! +x5

5! − · · · から、sinx2 の展開

sinx2 =

n=1

(1)n1

(2n−1)!x2(2n1) =x2 x6 3! + x10

5! − · · · が得られる。これから

x2sinx2 =

(1)n

x2(2n1) = x6

x10 +· · ·

であるが、右辺が交代級数であることに注意すると 0≤x2sinx2 x6

3!. これから

f(x, y)−f(0,0)−fx(0,0)·x−fy(0,0)·y

x2+y2

sinx2−x2 (x2+y2)3/2

+

siny2−y2 (x2+y2)3/2

|sinx2−x2|

(x2+ 0)3/2 + |siny2−y2| (0 +y2)3/2

= x2sinx2

|x|3 + y2siny2

|y|3

x6 3! · 1

|x|3 +y6 3! · 1

|y|3

= |x|3

6 +|y|3

6 0 ((x, y)(0,0)).

ゆえに f は (0,0)で全微分可能である。

C.3 極座標で合成関数の微分法を学ぶ

C.3.1 イントロ

x=rcosθ, y=rsinθ.

これで φ: [0,∞)×[0,2π)(r, θ)7→(x, y)R2 という写像ができる。一階の偏導関数は簡単 に求まり、

(C.2) xr = cosθ, xθ =−rsinθ, yr= sinθ, yθ =rcosθ.

f: R2 R という関数があったとき、

g(r, θ) = f(x, y) =f(rcosθ, rsinθ)

g: [0,∞)×[0,2π)R という関数を作ることができる。要するにg =f◦φ である。fC1級であればg もそうなるのだが、g の偏導関数はf の偏導関数を使ってどのように表され るだろうか?これは合成関数の微分法 (chain rule) の簡単な練習問題で、(C.2) を用いて (C.3) gr =fxxr+fyyr =fxcosθ+fysinθ, gθ =fxxθ+fyyθ =−fxrsinθ+fyrcosθ となる。

それでは逆に fx, fygr, gθ で表すにはどうしたら良いか?そのためには (C.3) を fx, fy に関する連立方程式とみなして解いてもよいが、ここでは f =g◦φ1 と考えて計算してみよ う。やはり合成関数の微分法から

(C.4) fx =grrx+gθθx, fy =grry +gθθy.

この式をさらに具体的に書くには rx,θx,ry, θy を求める必要がある。逆関数のヤコビ行列は、

もとの関数のヤコビ行列の逆行列であるから、

(

rx ry θx θy

)

= (φ1)(x, y) = (φ(r, θ))1 = (

xr xθ yr yθ

)1

= (

cosθ −rsinθ sinθ rcosθ

)1

= 1 r

(

rcosθ rsinθ

sinθ cosθ )

. ゆえに

rx = cosθ, ry = sinθ, θx= sinθ

r , θy = cosθ r . これを (C.4) に代入して

fx=grcosθ−gθsinθ

r , fy =grsinθ+ gθcosθ r .

よくある間違い さて、それで以上の計算を試験に出したときの出来であるが、rx,ry,θx, θy の計算あたりからつまずいてしまう。間違い方には大きく分けて二通りあって、まず

rx = ∂r

∂x = 1

∂x

∂r

= 1

cosθ (この式は間違い!)

のような「一変数の場合の逆関数の微分の公式の “機械的な” 適用」をしたのがある (もちろ ん間違いである)。もう一つはx=rcosθ から

r= x cosθ という式を導き、これから

rx =

∂x ( x

cosθ )

= 1

cosθ

∂xx= 1

cosθ (この式は間違い!)

とするものである。これはどこがおかしいかと言うと、∂/∂x を計算するときは、x 以外のす べての変数、この場合は y を固定しておいて変化率を考えるわけで、θ を定数と考えてはい けない、ということである。後を引き続き正しく計算すると

rx =

∂x ( x

cosθ )

= 1

cosθ ·

∂xx+

∂x ( 1

cosθ )

·x= 1

cosθ + sinθ cos2θ θxx

= 1

cosθ + sinθ

cos2θ ·−sinθ

r ·rcosθ = 1

cosθ sin2θ cosθ

= 1sin2θ

cosθ = cos2θ

cosθ = cosθ.

(説明のためにこういう泥臭い計算をしてあるだけで、こんなやり方を勧めているわけではな い。念のため。)

ドキュメント内 多変数の微分積分学1 講義ノート (ページ 150-158)