Title
犬腫瘍性疾患に対するウシラクトフェリンの抗腫瘍効果( 内
容の要旨(Summary) )
Author(s)
山田, 裕一
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第256号
Issue Date
2008-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/23201
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氏 名(本籍) 学
位
の 種 類学
位
記 番 号学位授与年月
日学位授与の要件
研究科及び専攻
研究指導を受けた大学
学 位
論 文 題 目壷
査 委 員 (24) 山 田 裕 一(大阪府) 博士(獣医)獣医博甲第256号
平成20年3月13日学位規則第3条第1項該当
連合獣医学研究科
獣医学専攻
岩手大学
犬腫瘍性疾患に対するウシラクトフェリンの抗腫瘍効果
主査岩手大学
教 授 佐藤
れえ子 副査帯広畜産大学
教授
三 宅 陽 一 副査 岩手大学教
授 安 田 副査東京農工大学
教 授 町 田 副査岐阜大学
教 授 北 川 準 登 均論
文 の 内容
の 要 旨獣医療の進歩に伴い増加している大建瘍性疾患に対し,抗腫瘍作用を始め,様々な生物学的活性
が報告されているウシラクトフェリン恥LF)の臨床応用を目指し,bI∬の直接的抗瞳瘍効果なら
びに生体応答調節物質但RM)としての免疫調節作用について検討を加えた。
第1章では,各種イヌ腫瘍細胞にbI∬を添加培養し,直接的増殖抑制作用を観察すると共に,そ
の機序についての検討を加えた。さらに,マウス直腸癌細胞の移植腫瘍に対する,bI∬の局所接種
の効果を検討した。イヌ腫瘍細胞に対するbI∬添加培養試験では,イヌ乳腺瞳瘍細胞における直接
的増殖抑制効果が認められたものの,イヌリンパ腫細胞に対する増殖抑制効果は認められなかった。
一方,bI∬の直接的増殖抑制作用には,Gl期における細胞周期の停止誘導が一因となっていること
が明らかとなった。また,移植腫瘍に対するbI∬局所接種試験では,bl∬局所接種による腫瘍体積
増加率の減少償向,呼d血Dl発現抑制ならびに血管新生抑制が認められ,bI∬は局所接種による増
殖抑制作用を示すことが明らかとなった。
第2章では,bI∬のBRMとしての効果の基礎的情報を得るため,bI∬経口投与が健康犬に及ぼ
す影響を検討した。健康犬に対するblR経口投与後,Hb,MCH,およびMCHCの増加が認められ,
鉄イオンキャリアーとしてのbI∬の有用性が示唆された。一方bLF経口投与により,末梢血中
CD4陽性およびCD8陽性丁細胞数に変化は認められなかったものの,NK細胞活性化サイトカイ
ンであるⅣN一γ発現塵の増加が認められた。一方で,IL・4発現畳も増加したことから,bLF経口投 与は抗腫瘍免疫の賦活化作用を有するのみならず,腫瘍進行に伴うm細胞機能抑制に対しても有 用である可能性が示唆された。第3章では,症例犬に対するbI∬の抗腫瘍効果について検討を加えた強い痛みを伴う再発性線
維肉腫に雁患した症例Nb.1では,bLF局所辞種後に痺痛の消失と,bI∬接種額域における鹿瘍体積
の減少が認められた。これらの結果から,鹿瘍罷患症例におけるbLFの鎮痛ならびに増殖抑制作用
-210一が示唆された。胸腺腫罷患の症例No.2では,胸腺腫摘出術に続発した白血球増多とCD4陽性丁細
胞増多の改善が認められ,CD射CD8比の改善と胸水の減少が認められた。これらの結果から一厘瘍
症例に対するbLFの抗炎症作用が示唆された。一方,肝臓腫瘍篠患症例No.3と乳腺腫罷患症例 Nb.4では,腫瘍に伴う免疫抑制の進行によるINF-γおよびIL-4発現の低下が認められた。しかし ながら,bLF経口投与の継続により両サイトカイン発現は再び増加した。さらにTNF・αおよびIL-1β発現を検索した症例Nb.4では,bLF投与後にこれらの炎症性サイトカイン発現の減少が認めら
れた。これらの結果から,bI∬は免疫抑制状態に陥った症例に対する抗瞳瘍免疫の賦清作用を有することが明らかとなり,さらには抗炎症作用を発拝することで】QOLの改善に有用であることが示
唆された。
以上のことから.bIガは直接的な抗瞳瘍作用を有するのみならず,BRMとして有用であることが
示唆され,犬腫瘍性疾患に対するbI∬の臨床応用に向けての新知見を提供することができたと考
えられた。審
査
結
果 の 要 旨 本研究は,抗腫瘍作用を始め様々な生物学的活性が報告されているウシラクトフェリン(bLF) をイヌの腫瘍性疾患に臨床応用するために,bLFの直接的抗腫瘍効果ならびに生体応答調節物質 (BRM)としての免疫調節作用について検討を加えたものであり,以下の新知見を得ている。 第1章では,各種イヌ腫瘍細胞にbLFを添加培養し,直接的増殖抑制作用を観察すると共に, その機序についての検討を加えた。さらに,マウス直腸癌細胞の移植腫瘍に対するbLFの局所接 種の効果を検討した。その結果,イヌ腫瘍細胞に対するbLF添加培養試験では,イヌ乳腺腫瘍細 胞における直接的増殖抑制効果が認められたものの,イヌリンパ腫細胞に対する効果は認められ ず,bLFの抗腫瘍効果は腫瘍細胞の種類により異なることを明らかにした。一方,bLFの直接的 増殖抑制作用には,Gl期における細胞周期の停止誘導が一因となっていることが明らかとなっ た。また,移植腫瘍に対するbLF局所接種試験では,bLF局所接種による腫瘍体積増加率の減少 傾向,CyClinDl発現抑制ならびに血管新生抑制が認められ,bLFは局所接種による腫瘍増殖抑
制作用を示すことを発見した。 第2章では,bLFのBRMとしての効果の基礎的情報を得るため,bLF経口投与が健康犬に及ぼ す影響を検討し,健康犬に対するbLF経口投与後,Hb,MCHおよびMCHCの増加が認められ,鉄 イオンキャリアーとしてのbLFの有用性が確認された。一方,bLF経口投与により末梢血中CD4 陽性およびCD8陽性丁細胞数に変化は認められなかったものの,NE細胞活性化サイトカインで あるIFN一γ発現量の増加を示すことを明らかにした。また,Ⅰト4発現畳も増加したことからbLF 経口投与は抗腫瘍免疫の賦活化作用を有するのみならず,腫瘍進行に伴うTh2細胞機能抑制に対 しても有用である可能性を示した。 第3章では,症例犬に対するbLFの抗腫瘍効果について検討を加えた。強い痛みを伴う再発性 線椎肉腫の症例に対するbLF局所接種では痔痛の消失と,接種領域における腫瘍体積の減少を示すことを発見した。胸腺腫の症例では,胸腺腫摘出術に嘩発した白血球増多とCD4陽性丁細胞増
多の改善,CD4/CD8比の改善および胸水の減少が認められ,腫瘍組織に対するbLFの抗炎症作用 を明らかにした。肝臓腫瘍症例と乳腺腫瘍症例とでは,低下していたⅠ肝-γおよびIL-4発現の 増加がみられ,炎症性サイトカインであるTNトαおよびIL-1β発現の減少が認められた。これらの結果から,bLFは免疫抑制状態に陥った症例に対する抗腫瘍免疫の賦清作用を示すとともに,
腫瘍による炎症を鎮静化することで症例のQOL改善をもたらすことを明らかにした。-211-以上のように本研究で得られた成果は,bLFが直接的な抗腫瘍作用を有するのみならず,BRM として有用であることを明らかにし,犬腫瘍性疾患に対するbLFの臨床応用に向けての新知見を 提供するものであると考えられる。 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の学位論文とし て充分価値があると認めた。 基礎となる学術論文
1) 題 目:The anti-prOliferative effect of bovinelactoferrin on
canine mammary gland tumor cells
著 者 名:Yamada,Y.,Sato,R.,Kobayashi,S・,Hankanga,C・,
Inanami,0.,Kuwabara,M.,Momota,Y.,Tonlizawa,N・ and Yasuda,J.
学術雑誌名:TheJournalof Veterinary MedicalScience
巻・号・頁・発行年:70(5):2008(印刷中)
既発表学術論文
1)題 目:Adenosine deaminase activityin catsinfected with feline
immunodeficiency virus
著 者 名:Hankanga,C.,Kobayashi,S.,Yamada,Y・,Momota,Y・,
Tomizawa,N.,Sato,R.and Yasuda,J.
学術雑誌名:TheJournalof Veterinary MedicalScience
巻・号・頁・発行年:69(9):881-885,2007