痙性筋に対する持続的伸張の効果 一H波振幅と筋トルク値からの検討一
1 大城 昌平 1 横山 茂樹
2 穐山富太郎 1 松本 司
3 岩本 龍仁 2 中野 裕之
要旨 痙性筋に対する持続的伸張法の効果にっいて,H波振幅,および筋トルク 値の変化から検索を行った.その結果,H波振幅は伸張前と比較して伸張直後には減 少傾向を示したが,有意差はなかった.筋トルク値は伸張解放直後から5分後まで有 意に低値を示した.これらの結果から,痙性筋伸張後の効果は脊髄レベルでの興奮性 の変化に加えて,筋・腱線維の伸張性や筋・腱受容器の被刺激性の変化による効果が 大きいものと推察された.
長崎大医療技短大紀6:87−89,1992
Key words:持続的筋伸張・H波振幅変化・筋トルク値
〈目 的〉
運動療法の手段の一っに,痙性筋の抑制や 短縮筋の伸張を目的として筋への持続的伸張 法が用いられる4).我々は筋への持続的伸張 の効果を脊髄前角細胞の興奮性の変化からと
らえ,健常者を対象として下腿三頭筋へ持続 的伸張を加えたとき,H波振幅は伸張前に比 べ減少することを報告した7).今回は脳卒中 片麻痺患者の痙性筋に対し,筋への持続的伸 張解放後のH波振幅の変化と,筋トルク値の 変化から持続的伸張の効果にっいて検索を行っ
た.
〈対象,及び方法〉
対象は成人脳卒中片麻痺患者8名(男性5 名,女性3名,平均年齢58.7才)で脳出血2 名,脳梗塞6名である。運動麻痺の程度は Bmnnstromの回復段階で皿からIVで,痙性
の程度は穐山によるspasticity score1)で中 度6名,重度2名であった.
実験方法は被験者に臥位にて股関節軽度屈 曲位・内外旋中間位,膝関節中間位を保持さ せ,足関節底屈10度位をコントロールとし,
足関節底屈10度位にて下腿三頭筋に10分間の 持続てき伸張を加えた後,①伸張解放直後,
②解放3分後,③解放5分後の3回,H波振 幅,及び筋トルク値を測定した.足関節の角
長崎大学医学部附属病院 光仁会病院
2 長崎大学医療技術短期大学部
一87一
大城昌平他
度設定はアンクル・ストレッチャー(酒井医 療社製SD603)を用いて,保持させた,
H波の導出方法5)は刺激装置(MEコマー シュル社製ME6012)と高出力型アイソレー タ(同社製ME6212)を用いて,脛骨神経を 膝窩部で電気刺激し,下腿三頭筋上により表 面電極に導出した.試験刺激は持続1msec,
1Hzの単発刺激で行い,刺激電流値は6m sec間隔の閾下2発刺激でH波の閾値を求め,
これに1.2から1.4を乗じた値とした2)3).記 録は導出した波形を加算平均装置(日本光電 社製DAT1100)を通して16回加算平均し,
ブラウン管オシロスコープ(同社製VC10)
で観察し,X−Yレコーダー(同社製)で記 録した.筋トルク値の測定はアンクル・スト
レッチャーに内蔵された足関節底屈方向への トルク表示(kg・㎝)をその値とした.
〈結 果>
コントロール時のH波振幅(peaktopeak),
および筋トルク値を100%として,各測定時 のH波振幅,筋トルク値を%で求めた.また,
% 150
n.s.
l l
統計処理は振幅をμVに,筋トルク値をkg・
㎝換算し丁検定を行った.
1)H波振幅の変化について(図1)
①持続的伸張解放直後のH波振幅は,コント ロール時と比較して,平均値で約80%に減 少したが,統計的に有意な差はなかった.
②H波振幅は解放直後から3分後,5分後と 増加傾向を示し,3分後にはほぼ100%に 回復した.統計的にも差異はなかった.
2)筋トルク値の変化について(図2)
①筋トルク値はコントロール時と比較して,
伸張解放直後,3分後,5分後で共に有意 に減少した(P<0.01)
②筋トルク値は解放直後から5分までほぼ一 定傾向であった.
く考 察〉
100
50
○
con一. 直後 3分後 5分後 図1 H波振幅の変化(コントロール時を100%とする)
% 100
50
O
P《0.01