購買管理における概念の再構成 : 適質選定を中心 として
その他のタイトル The Reorganization of Concept in the Purchasing Management
著者 冨山 忠三
雑誌名 關西大學商學論集
巻 11
号 6
ページ 515‑536
発行年 1967‑03‑20
URL http://hdl.handle.net/10112/00021501
515
変様させるのは必然である︒ 式
は︑
購買管理の研究対象
購買管理に用いられる諸種のテクニックは︑多くの購買担当者や経営者の経験に基づく概念の累積や思索︵技術
のおかれた環境や条件との適合関係についての認識的努力︶の脈絡的組織網を通して形成されるので︑その存在様
その間の意味関連性を明らかにしない限り無差別に使用に堪えるものではない︒
意味論には︑原子論的な意味単位論・操作的意味論・機能論的な意味論など諸種あって︑それぞれ﹁意味の意味﹂
(M ea ni ng o f m ea ni ng )
につ
いて
異な
る解
釈を
して
いる
︒
(S te ph en Ul lm an n, P r i nc i p le s
o f
S
em an ti cs
山口
秀夫
訳﹁
意味
論﹂
< i
参 i
照︶
本稿
では
﹁意
味﹂
を関
係概
念と
して
考え
てい
る︒
いうまでもなくテクニックというものは︑なんらかの目的を達成するための手段であって︑目的と用具との媒介
としてのみ︑その存在を保ちうるものに過ぎない︒そしてテクニックのおかれた環境の変化相︵市場の変化・生活
様式や消費性向の変化など︶は︑在来の意味関連性を変化させ︑目的と用具との連結の性質・度合・態様・価値を
賠買
管理
にお
ける
概念
の再
構成
︵冨
山︶
購買管理における概念の再構成
ー適質選定を中心として'~
冨山
忠
516
そこで多くの購買担当者や経営者の経験内容にあるテクニックも︑科学的研究の場では︑技術のおかれる環境や
条件をふまえて︑それらとの関連における変化相を観察し︑全般的関連性も思考して経験的概念は認識的概念への
昇華を図らねばならない︒この科学的研究コースは︑単に購買管理の問題に関するだけでなく︑学問一般に課せら
れる宿命的コースといいえよう︒
さて購買管理の研究の場合︑諸他の配給問題と同様に︑現実的外囲的接触面が頗る雑多である︒したがって︑そ
の複雑な関連性を観察しながら研究の正常コースを辿ることは決して尋常一様の努力ではできない︒そこで研究対
象や研究方法の限定が厳しく要求されざるをえない︒
一般に研究対象の規定は研究方法を規定し︑研究方法は対象規定に重要な作用をおよぽすといわれるが︑この両
者の相互規定関係は︑購買管理における対象規定にも適用されるのである︒問題は右の規定関係をどのように摂取
し展開するかにあるが︑ここでは︑はじめに把え方を取り上げて︑その把え方から把握される対象の内容に接近す
るコースをとった︒
購買管理における研究対象の把え方に二つの方法が考えられる︒その︱つは行動概念として︑他の一っは購買主
体の意思と購買活動の流通形式である組織の概念としての把え方である︒
行動概念として購買管理の研究対象を思考するということは︑対象を購買作業もしくは購買過程の中に求めるこ
とであって︑購入物資の適質・適量・適時・適所・適法等を選定する購買諸行為の関連事項がその対象となる︒ ねばならない︒ 購買管理における概念の再構成︵冨山︶
さらにまた目的自体もー購買管理の目的のみでなく経営全般の目的についてもー固定的なものではなく︑経営者
の意図・意識構造の変化によっても動揺するので︑購買管理におけるテクニックの存在様式は流動性のものと知ら
一四
517
に価しないこともありうるのである︒ 即物性概念の横成
一 五 (SF•Heinritz/PV.
購買主体の意思・組織の概念として購買管理の対象を思考すると︑購買主体の支持する特定の目的・計画︵商品
化計画︶が摘出され︑購買活動を流す枠組
(f ra me )
である組織が取り上げられる︒
ここに商品化活動
(M er ch an di si ng )
とは︑適正な財貨もしくはサービスを適正な時期に︑適正な供給先から遥正
な価格で適量に提供するための活動をいう︒購買活動はひっきょうこの商品化活動を主調とする営業活動の︱つで
っあ
て︑
なら
ば︑
その行動の適正性は︑
にお
いて
︑
それ自体の目的から規定されるだけでなく︑諸他の経営活動とくに販売活動からも
規定されるのである︒すなわち店舗構造・商品展示.接客の形態および方法・広告宣伝等の販売促進活動との関連
はじめて意義をもつところのものである︒したがって︑もしこの関連性を無視して購買活動が独走する
その価値は著しく低下するか無効に帰することになるであろう︒
さて購買管理の研究対象を行動概念として把える場合︑
商品化活動にあることは前述のとおりとして︑次にその内容を具体的に明らかにしなければならない︒
商品化活動の客体である購入物資の﹁適質﹂という言葉であるが︑
ない︒購買用語としての﹁適質﹂とは︑製造・販売への適合性を意味するので︑品質自体の優秀性が必ずしも適質
通常︑品質とは︑技術的特性を意味する︒すなわち財貨の物理的・化学的特性︑分析値︵純分度・延性・硬度な
ど︶加工性︵標準加工法の下では︑製造の均一性・多産性が保持され︑不良品の発生が少なく︑機械調整の煩労が
僅少なこと︶操業性︵馬カ・速度・回転率など︶耐久性その他一般に要望される特性をいう︒
購買管理における概念の再構成︵冨山︶ その内容が購買作業の中にあることおよび内容の実体が
それは単に﹁良質・廉価﹂を意味するのでは
518
c
B 購買管
理に
おけ
る概
念の
再構
成︵
冨山
︶ F ar r e ll , Pu rc ha si ng Pr i n ci p l es an d A pp li ca ti on s,
4 t
h e d
. 1
96 5, p .
68 )
しかし購買用語としての品質とは︑
せ含むところの複合体
(f or mu la of co mp ou nd )
としての意味をもつのである︒
ここに商業的要素とは︑市場性すなわち当該物資が市場に出場する可能性および市場での活動能力
( s a l a b i l i t y )
を含む内容
のものを意味し︑経済的要素とは物資の経済的生産性をいう︒その生産性は﹁会計的思考﹂で測定される関係にある︒それらの詳細については後段で詳述する︒
そこで筆者は︑
A が︑その特性については次のような項目が対象となる︒ 即物的思考即物的に購入物資の品質を思考する場合︑物資を構成する材料や部品の特性を検討することになる
販売物資︵売品︶については︑1物理的・化学的特性︑2サイズ・容積︑3形態・容姿︑4仕上り精度︑
5加
工性
︑
類し︑その各個について研究をすすめることにした︒
3信頼性
(d ep
en4dability) ︑
可転性
( v e r s a t i
l i t y ) ︑
そのような技術的視角よりみる属性だけでなく︑商業的・経済的要素をも併 それらの品質概念を︑適質選定の問題の中で︑山即物性概念︑図市場性概念︑③経済性概念に分
6操業性等である︒
使用機械および装置については︑1
生産 性︑ 作業および保全用消耗品については︑
2耐
久性
︑
5
運転および保全の能率性・経済性
(e co no my )
等である︒
1使用の容易性2能率性
3効用の持続性4経済性等である︒
これらの諸特性は︑測定し規定しうるものたるを要し︑また業界慣用の名称︵銘柄・等級など︶で表現の可能なも のが望ましい︒︒この測定と表現の可能性がないと︑注文書あるいは仕様書における品質について取引当事者間に品 質概念の一致を欠ぐことになり︑実物見本の提示や煩雑な説明を必要とするようになる︒実際問題として購入の都
一六
519
度適性検査を行なうことは非常に煩雑であるし非能率な事態を招来するであろう︒
品質に対する概念は︑右のような項目について構成されるのであるが︑各購入物資について前記の特性の全部が
吟味されるのではなく︑
要するに︑右に述べた品質即応の概念は︑諸種の用具やテクニックを使用してえた自己または他人の経験を内容
ば品質に上・中・下の各等級があるとして︑ とするいわば経験的概念であるが︑その品質が購入物資にとって適性であるか否かの判定の段階では﹁適合性﹂の意味は品質自体に関する即物的規定だけでなく︑他の関連項目との関係において成立する観念的産物である︒例え
その中のどの等級をもって適性とするかは購入の目的や必要性に鑑み︑
市場性や経済性との関連も考慮して決定されるのである︒
またこれを選定業務の執行機関との関連で考察すると︑品質の技術的専門的特性に関することであれば︑生産部
門もしくは技術部門がその適性を決定するが︑当該物資購入の有利性・経済性の検討ということになれば︑購買.・販売•財務等の各部門の意見を調整して決定されねばならない。その間に必然的に概念の再編成が行なわれる。
以上述べたように︑事態についてであれ︑論理についてであれ︑思考コースにおいては経験的概念は︑その概念
のおかれた周辺の関連事項を認識しつつ再構成されねばならないのである︒こうして形成された概念を筆者は認識
的概念と名づける︒ その若干の項目についてのみ検討して適格性がきめられるのである︒
市場性概念の構成
購買管理における概念の再構成︵冨山︶
一 七
さきにも述べたように︑購買は単に廉価良質の物資を購入すれば︑こと足りるというものではなく︑需要者の欲
求を満足させる物資を適正価額で適量に購入することでなければならない︒しかし現代の大量販売の時代には︑単
520
需要の行動様式
行動様式として顕現した需要の探究において︑依拠すべき資料の主要なものを大別すれば経営内部的資料と経営
外部的資料とに区分できる︒前者はさらに山過去の販売実績︑③顧客の問合せ・要求︑③販売員の誘導的質問に対
する応答︑④戻り品・取替品に関する資料︑固貸付課の資料に分類される︒後者は︑⑥他店の営業状態︑⑦売手の
提供する資料︑⑧中央市場の情報︑⑨業界の新聞雑誌︑皿顧客研究所・買物相談所等の資料などに細分される︒
山販売実績諸資料の中で最も重要視され︑利用されるのは過去の販売実績である︒とくに日常品
( st a p le go od s)
に関する限り︑この資料は極めて貴重視される︒多くの場合︑販売実績の数値は︑生のままで使用するよりも分析的に整理される方が利用価値が高く、商品の移動・在庫量の変化のみでなく、常時標準在庫量、最大•最小限度量、
流行的性格をもつ商品は︑流行の変化によって過去の実績が必ずしも将来の動向を指示しないので︑
合のように効用を挙げえない︒しかしこのことは流行品の販売実績が資料として無価値であるということを意味し
ない︒在庫すべき流行品の種類・大小・値頃︒質料などを決定する上に︑現実的・客観的参考資料となることは否 一回の発注量などにも重要な関連性をもつのである︒ ー
購買
管理
にお
ける
抵念
の再
構成
︵冨
山︶
に顧客の需要を満足させるというだけでは不足であって︑需要を創造していかねば販売戦略の発展性はない︒いず
れにしても顧客の欲求を的確に把え︑買わざるを得ぬような商品を仕入れ︑あるいは製造することが必要である︒
そこで需要探究に依拠するに足る客観的資料が要請されるのである︒
需要探究や市場調査に関しては︑多くの文献がある︒しかし本稿の意図は︑それらとは若干類を異にし︑購買管理の中の適質選定における概念構成に重点をおいている︒したがって︑その限りの需要探究にしか意義を認めない︒また︑ここでの需要探究の方法は︑大企業の調査機関が実施するような大規模のものではなく︑むしろ中小企業に採用可能な方法を中心として考
えた
︒
一八
日常品の場
521
定できないのである︒例えば商品の種類についていえば︑流行の変遷にかかわらず各種流行品の販売高から総売上
対比率がわかるので︑商品構成上参考資料となり︑型の大小については︑売上実績をサイズ別に分類表示しておけ
ば︑顧客層に著変のない限り︑
右のほか商品の質料・スタイル・縞柄・色彩等に関する需要傾向についても過去の実績が資料となる︒例えば過
去の実績によって需要の循環運動を知れば︑当該商品の需要が下降期に傾くやいなや︑たとい現在の売れゆきが未
だ多額を示していても仕入を手控えるであろう︒
叙上のように販売実績の分析的結果は頗る利用価値に富むが︑その資料によって得た経験的概念が実際に役立つ
その
よう
に︑
サイズに関する適質選定に役立つのである︒
一 九
には諸般の事情を勘考し︑それらとの関連において意味を見出して後のことである︒その意味関連性を無視しては
使用に堪えないのである︒
②顧客の問合せ・要求顧客の問合せ
( i n q
u i r i
e s )
および要求が需要の一端を示すものであることは否定できな
い︒通常
Wa
nt
S l i p
S
ys
te
m
(要求票制度︶を採用して問合せや要求をその票に記載し︑その票を整理・集計して
︱つの経験的概念が構成される︒しかしその結果だけに依存することは稀であって︑多くの場合︑その報告を受け
たバイヤーは︑それに自己の経験もしくは販売員から聴取した経験的資料を加えて需要の実相を考究するであろう︒
この種の資料は適質選定の参考資料として有用ではあるが︑それから得た経験知が購入行為に結びつ
くまでには︑幾段かの﹁概念崩し﹂や論理的遍歴が必要である︒その理由は︑次に例示するような偽装的あるいは
無価値な問合せや要求が予想されるからである︒
ー︑要求数が僅少で仕入に価しない場合︑もしくはたとい多数であっても︑
購買管理における概念の再構成︵冨山︶ その需要が下降状態にある場合︒
2︑現在の要求数が将来まで継続すると予見できる場合でも︑代用品で代替される可能性が強いので発注に特別の
522
購買管理における概念の再構成︵冨山︶
理由が見出し難いという場合︒
3︑要求される商品に対して︑当該商品の常客に提供している値段では販売できぬ場合︒
4︑要求数の多数が必ずしも顧客の需要の多数を表明しない場合︑例えばメーカーが自社製品の販売を促進する意
図から︑故意に小売商への要求を増大する政策をとる場合︑あるいは販売員が自己の販売能力を誇示すべく彼の
構 想 的 要 求 を 宛 も 真 実 の 顧 客 要 求 の 如 く 偽 装 し て 増 大 せ し め る 場 合 な ど で あ る
︒
・
右に述べたような諸種な事情もあるので︑この種の資料に対しては慎重な検討が必要である︒
岡販売員の誘導的質問販売員が顧客に誘導的質問をなし需要のあり方を探究する方法は︑原始的な仕方である
が︑端的な探索方法たるを失わない︒質問に当って質問の態度および技法は︑被質問者の年齢・性・職業・教養・
社会的階層等を考慮して適切なものでなければならない︒また質問の内容・場所・時間への配慮を欠ぐことはでき
ない︒さもなければ所期の目的を達成せぬばかりでなく逆効果を招く虞れさえある︒
この直接的質問法とは異なる方法にアンケート法または質問書法
( qu e s ti o n ai r e )
がある︒あるいは質問書を郵送
した後︑さらに面接質問をなす二重構造の方法もある︒そのいずれにしても︑それによって仕入品選定に資する経
験知をえようとする意図にちがいないが︑その経験的概念だけに依存して適質の選定を行ないうるものでないこと
致しないこと︑あるいはサービスに対する不満の結果生ずるものであって︑ 売品の戻り︑または取り替えは提供した商品の品質・形態・色彩・性能等が顧客の要求に合
いわば苦情の表われである︒もちろん
苦情のうちには︑商品の取りちがい︑計算ちがいなどの事務的失策もあるが︑商品の質的劣悪・変形・変色・毀損
などの営業上軽視できない問題を提起するものもある︒そのいずれにしても顧客の要求を知る上に参考資料となる はいうまでもない︒囚戻り品•取替品 二0
523
他店で売れ足の迅速な商品は︑鑑識課または試験室に提供して分析・研究し自店の販売品と比較検討をなす必要
も生ずるであろう︒
購買管理における概念の再構成︵冨山︶ ればならぬ場合も多い︒ であろう︒しかしこの種の資料に基づく経験的概念が仕入商品の選定にどの様に利用されるか価値づけられるかは︑苦情の理由と現物との比較検討・苦情訴者の人物考察など諸種の状況を思慮した後でなければならない︒
貸付販売において﹁与信表﹂
(C re di t, ex te ns io n l i s t )
は︑需要の測定に利用することができる︒
これに基づいて︑顧客の年齢・性・職業・所得等と需要の質・量・価格などとの相対関係を知ることができる︒も
ちろん信用貸の顧客は一部分であって︑全顧客の需要を代表するものでなく︑また掛売の物資が当該顧客の消費物
資の全部を代表するものでもないから︑この種の資料の利用価値が仕入商品選定に当って︑どれ程の価値があるか
は一概にきめられない︒したがって本資料は︑単独的使用ではなく︑他資料の補助的資料として取り扱うことが至
当であろう︒
⑥他店の営業状態需要の探究に関し︑経営外的資料の︱つは︑他店の営業状態︵マーケティングの遂行状態・
潜在需要や新製品の開発活動・資金調達の状況等︶である︒問題は他店の営業状態を如何にして探知するかにある︒
これには通常︑実地視察と広告研究の二途がある︒実地視察は︑最も端的な直接的な効果をもたらすが︑相手に発
見されない巧妙な方法をとらねばならない︒そこでいわゆる産業スパイともいうべき
Sh op pe r
を動員することも
行なわれるのである︒
広告は地方的なものでも全国的なものでも綿密に審査する必要がある︒さらに望ましいのは当該広告と顧客の反
応との関係を知ることであるが︑それは決して容易な仕事ではなく︑専門的研究機関の提供する資料に依存しなけ 固貸付課の資料
524
購買管理における概念の再構成︵冨山︶
売手の提供する資料は︑経営規模の大小によって多少の差はあるが︑ともに利用価値を認められ
ている︒近来︑売手が需要探究に努力する傾向が強くなり︑その研究調査の結果を︑小冊子等で発表するものが増
大してきた︒また流行報道社なるものが出現して流行の現状・将来の展望などを会員に報告することも行なわれる
ようになった︒これらの資料が需要の探究に利用されるのである︒しかし売手の中には︑需要探究よりも︑自店の
製品の売り込みに専念する業者も少なくない︒したがって彼等の提供する資料が公正妥当なものであるか否かは︑
良識によって判断するよりほかはない︒
⑧中央市場の情報多くの小売業者は︑中央市場と連絡を保ち︑その情報を受けている︒事実︑中央市場の機能
の︱つはバイヤーに対して市場における新規商品・人気のある商品について情報を流すことにある︒この情報は︑
メーカーの提供する資料・流行に対する周到な観察・大都市における販売促進策の内容などを検討して形成される
のであって需要測定の資料として貴重なものにちがいない︒
⑨業界の新聞・雑誌経営規模の大小を問わず︑すべての小売商が需要探究に業界の新聞・雑誌から資料をとっ
ていることはいうまでもない︒ことに流行品を主商品として取り扱う業者にとっては︑この種の資料の利用価値は
高い
だろ
う︒
U O l
需要研究機関の資料広義に解すれば︑需要に関する情報を収集・整理して︑その動向を研究せんとする活動
は︑すべて需要研究の範ちゅうに入れられるが︑ここでは経営外的な専門的機関の研究に限定して述べよう︒情報
収集の方法には質問票の利用・面接法あるいはその両者の併用がある︒前者に比して後者は経費高にはなるが︑回
答率の高いこと︑質問先の選択のできることに優れ︑また需要の動向のみでなく︑配給に伴うサービスや包装など
に関する情報を得ることもできる︒流行品の需要探究には個別訪問の代りに集団訪問の形で調査を行なう︒例えば m売手の資料
525
S ty l e c ou nt
(スタイル調査︶のため特別の調査員を︑目指す公衆の集まる食堂・劇場・ダンスホールあるいは街路
上に派遣して︑そこに集まる人々の衣服·帽子•履き物等を観察させて、その質料・型・色彩等に関する資料をと
らせるのである︒そのような不特定多数を対象とするのではなく特定の少数グループを組織して︑
ら意見を聴取する方法もある︒例えば﹁モニター制﹂とか﹁友の会﹂ーこれには経営内的なものもあるがーを
組織して︑その会員に特定商品を提示して批判させ︑その意見を参考資料とするが如きである︒そのほか﹁買物相
談所﹂を設けて︑そこに集まる顧客の質問や要求から需要の動向を察知する試みも広く実行されているのである︒
以上述べたような需要探究の手段・方法の選定には︑資料の収集・整理・解釈そして購入の決定にいたる一連の
作業があるが︑それは全くバイヤーの責任と良識に依存するのである︒したがって︑いみじくもいわれる如く﹃バ
イヤーの成功・不成功の差は︑知らされた事実を適正に解釈するか否かによってきまる︒﹄のである︒そのことを︑
われわれの表現形式で表わせば﹃経験的概念は認識的概念に構成されねばならない︒﹄と要約することができる︒
経験知も技法も︑この思考のプロセスを経てはじめて使用に堪えるものとなるのである︒
r r
需 要 の 存 在 様 式
・
市場性概念は︑前段で述べたように︑需要の行動様式を認識して構成することができるが︑さらに次に述べるよ
うに︑需要の存在様式を購買心理の深層観察を通して認識し構成することもできる︒
山顧客研究ここで顧客とは︑商品購入の可能性を有する状態にある人をいい︑それが顕在的たると潜在的たる
とを問わない︒顧客研究とは︑顧客の可能性あるものの存在を測知し︑その内容を探知する研究を意味する︒
およそ顧客関係の設定・販売促進・販売技術等は︑すべてこの顧客研究の結果に依存することが極めて多い︒そ
の意味で本研究は正に販売活動における前衛的・準備工作的活動といいうるであろう︒
購買管理における概念の再構成︵冨山︶ そのメンバーか
526
潜在客は将来の販売が可能性の形で認められるという存在であるから︑現実的には︑その需要の内容を明確にし
えない︒しかしもし需要の存在が測知できるならば︑需要の質・量を推定し︑それに適応する商品購入を敢行する
ことも不可能ではない︒ただ潜在客と適質選定とを結びつけるには︑その間に関連的思考を要することが︑常客に う ︒ ②顧客層と適質選定えることができる︒ 購買管理における概念の再構成︵冨山︶
おもうに現代の大量生産・大量販売の下では︑多くの場合︑顧客は不特定多数である︒したがって顧客関係の設
定は容易でなく︑また不安定たらざるをえない︒そこで経営の合理化・能率化のためには︑商品と需要者との結合
関係を客観的に合理的に設定すぺく諸種の構案が試みられるのである︒顧客研究の発想もそこに源を発するのであ
ところで巨大な需要人口を﹁全数調査﹂することは技術的にも経済的にも不可能である︒仮りにそれが可能としても、商品の規格化•生産工程の標準化・サービスの合理化を経営方針とする現代の企業が、各種各様の需要に対
応していくことは到底できない︒そこで求める情報は︑多数需要者の平均的な要求に関するものとならざるをえな
い︒そこに﹁標本調査﹂としての顧客研究にならざるをえない経緯がある︒
適質の選定には︑顧客層を販売の可能性・継続性︑品質の階層性および収益性の視点で把
り販売の可能性
販売可能性を基準にすれば顧客を常客︵顕在的顧客︶と見込客︵潜在客︶とに区別できる︒前者に対しては従来
の販売処置でもって得意先関係が持続できるので販売努力の合理化・能率化が期待できる︒したがって販売計画や
販売予算の設定︑それにつらなる購買管理における適質選定の問題に対しても従来の方針を採用することができよ る ︒
ニ四
527
料の購入には︑継続性が一層望ましいのである︒ ので一層望ましいのである︒ 定の問題では商品関係だけを取り上げよう︒ 回販売の継続性 事業の特質によっては︑現在の顧客の維持よりも︑むしろ新規の顧客を開発する方が容易であり︑経済的である
場合がある︒また顧客の新陳代謝が甚だしく︑現在の得意先を保持するだけでは不足であって︑常に新規顧客の開 発に努力しなければならぬ企業もある︒そのような場合には︑常客と見込客との比率を調べ︑適切な割合を算定し
て︑それぞれに対処する販売処理︑
ばならない︒
続性
とは
︑
したがって購買管理における適質選定の問題も︑
二五
一般的には前述のよう その線に副って解決しなけれ
販売の継続性とは︑購入商品や購入場所を固定的に継続的に持続する傾向のある顧客との顧客関係をいい︑非継
それらに固執しないことである︒継続性は<そのように商品と場所との双方についてぃぇるが︑適質選 一般的にいって︑販売上は継続性の客が多いことが望ましい︒その方が販売処置が比較的容易であり︑かつ経済
的に運営できるからである。また生産販売の場合は、操業の継続性•平均性などのために生産コストの低減となる 一般的には右のようにいえるが︑必ずしもそうとばかり限らない︒継続性顧客に執着する必要はなく︑少数の継
続性顧客よりも︑多数の非継続性顧客を重視しなければならないこともある︒
ところで適質選定の問題と︑継続性の問題とは︑どのように結びつけられるであろうか︒
に︑継続性顧客を対象とする方が慣行が利用できるので︑適質選定が容易となり︑とくに生産販売業者むけの原材
購買管理における概念の再構成︵冨山︶ 対するよりも強いことは否定できないだろう︒
528
商業的にも一概に把握できるものではない︒ 向
が強
い︒
り品質の階層性 することはいうまでもない︒ 購買管理における慨念の再構成︵冨山︶
(C on ce pt f o P r o f i t
) は会計学的にも難解である如く︑ て︑いたずらに在来の継続性に安住して︑安易な購買管理に依存するのは賢明でない︒適質選定に更新性を必要と しかし問題は︑今日のように顧客の旧来の継続性を打破して新規継続性をつくろうとする戦略戦術の商戦におい
顧客は︑その購入する物資の品質の階層によって分類することもできる︒すなわち高級品︵上物︶・中級品・下
級品︵安物︶顧客に種別できる︒そこで顧客構造における右の割合を勘考して適質選定を行なわねばならない︒
概して高級品は単位当りの利益率が高く︑またその購入は特殊嗜好に基づくので継続性顧客に求められることが
多い︒中級以下の商品は︑低価を求めて買廻る傾向の顧客に求められることが多いので非継続性顧客に依存する傾
一般的販売方針としては︑顧客の中に主たる対象とするものと従とするものとを決め︑その組み合せに応じて販
売計画・商品化計画を設定する︒適質選定の判定も︑この線に沿うものとなるのである︒
目収益性資本主義社会において︑収益性思考は企業経営にとって︑最大の重要かつ最終的関心事といえよう︒すべての適
質選定の認識的努力は悉くこの収益性を中心として行なわれるといっても過言ではない︒したがって収益性を基準
として顧客層を分類することも考えられる︒しかし利益概念
問題を購買管理に限定しても購入量との関係において︑例えば大量購入と小口購入における原価・運賃・保管料
等にかかわる損益、購入方法との関係において、例えば契約•特約・入札等にかかわる損益、購入先選定において、
二六
529
済性思考が︑諸思考形式の統一を可能にするのである︒
二七
供給の確実性•安定性・継続性にかかわる損益など収益性に作用する関係は多様である。さらに利益には短期的な
ものと長期的なものとがある︒そのいずれを採り︑いずれを犠牲にするかは識別し難い︒商品の中に新興商品・花
形商品・斜陽商品があって︑その中から適質を選定するということになれば︑収益性のセンスをもってしなければ
最終的決定はできないが︑その感度の適正性を如何にして判定できるか頗る難問題である︒
そのために組織的・計画的市場調査や市場分析が行なわれるのであるが︑仮りにそれによって経験的概念を得た
としても︑その累積のみで最終的決定ができるであろうか︒経験的概念を取りまく諸環境を論理的文脈の中で把え
てー事態性を論理性に構成してー経験知が新事態へ︑適合するように認識的努力をする必要はないだろうか︒実に
収益性思考は複雑であり難解な問題に当面する宿命をもつのである︒この問題は把握の要具を使用して︑あらため
て検討してみなくてはならない︒
経済性概念の構成
適質選定に関する即物性思考・市場性思考において適質と考えられる物資は︑それぞれの観点における目的・意
義・価値をもつ存在
(b ei ng )
であって︑その立場を固執する限り相互間の優劣順位は決められない︒そこで第三者
的立場があって両者を統合して最終的決着をつけねばならない︒その第三者的立場の思考形式が︑ここにいう経済
性思考である︒それが最終的決着的思考となるのは︑企業経営の最も根本的・総合的目的にストレートに接近し︑
目的的行為の評価を直裁するからである︒既述の即物性思考や市場性思考も︑それぞれ独自の思考形式をもち︑分
岐的目的に奉仕するが︑終局的にはいずれも企業の収益性を志向するという点で一致する︒この一致点において経
購買管理における概念の再構成︵冨山︶
四
530
購買管理における概念の再構成︵冨山︶
企業経営における収益性は︑実践的・行動的指標としての性格をもつのである︒したがって単なる優劣の表現で なく収益性の度合を明確に表示しうる象徽が必要になる︒そこに数値的記号が構案される由来がある︒その計測に 会計技法が用いられることは周知のとおりであって︑経済性思考は︑
展開するのである︒
購買管理に関連する会計の思考形式に二つの観点がある︒その︱つは簿記会計的観点であって︑他の一っは監査︑
とくに業務監査的観点である︒ここでは主として後者の立場をとる︒
購買管理における適質選定に関係する計算思考に次の様式がある︒
この会計的計測用具を使用して︑それ自らを
山売上高基準主義
②平均在庫高主義
③商品回転率主義
山売上総利益主義
⑤販売利益率主義
山売上高基準主義
倣すのは︑企業一般の慣行的思考のようである︒もともと顧客の欲求に相応する物資を購入せんとする業者が︑購
製造販売ならびに仕入販売において︑販売高の多寡をもって需要の多寡を反映するものと見 入の基本方針の設定に販売高に反映する需要曲線を見逃すはずがない︒しかし︑
資の選定概念を引きだそうとするのは早計のそしりを免れない︒
その故に販売高から直ちに購入物
通常︑売上高という言葉は︑販売量と販売額の双方の意味に使用されるが︑会計慣習では物量計算よりも金額計 算によることが多いので販売額の構造が問題となる︒その複雑な構造を無規して販売額の多寡と需要の多寡とを直
ニ八
531
ねばならない︒ B需要周期の類似性D購入頻度の類似性 いうまでもなく販売額は︑販売量と売上単価との乗積であるから︑
上単価の変動にある︒単価の高低は︑直ちに販売額に作用するが︑
ものではない︒単純に︑売上高基準主義によって適質選定の概念を構成することには︑ちゅうちょせざるをえない︒認識的努力すなわち主要商品別•月別売上高比較・売上単価と需要者購買力との関係等について分析的研究・調査
が必要である︒それらの研究の成果は販売計画の作成に不可欠な資料であるが︑
され
︑
それに適質の購入が規制されることに想到すれば右の認識的航路は避けられないコースである︒
なお売上高基準を採用する場合には︑比較計測の対象とする商品を次の如く限定する必要がある︒
A需要性質の類似性
C用途の類似性
E単価の類似性
図平均在庫高主義 F販売費用の類似性 その一方の増減によって変化する︒問題は売
その変動は必ずしも需要曲線の変動を意味する
その販売計画から購買計両が形成
販売経費の大小を無視して︑売上高一偏向の思考は﹁売上則利益﹂の誤解に基づくものであろう︒そのことに関し
ては後述することにしよう︒要するに売上高基準主義だけで適質選定の問題は解決しない︒さらに思考遍歴は続け
この主義は︑在庫高の僅少という点から選定順位を思考せんとするものである︒
って在庫高の大小は︑投下資本の効率.在庫費用・注文費用・陳腐化・損傷との関係において︑
断しなければならない︒もともと在庫品は製造業にとっては生産続行のために︑販売業には販売活動継続のために
不可欠な要素であるが︑問題は︑ 線的に連結することはできない︒
二九 その利害得失を判
その在庫の目的が購買管理の中で充分に達成されないところに発生するのである︒
購買管理における概念の再構成︵冨山︶
一般
的に
い
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いうまでもなく商品回転率とは︑ 購買管理における概念の再構成︵冨山︶一般的にいって原材料または商品の在庫目的を達成するには︑A︑在庫品の実態把握︑B︑過大在庫の縮減︑C、流入物資の有効性確保にある。在庫品の実態を把握するとは、販売業にあっては主力商品・補助商品•関連商品の分類を行ない︑その種類別に在庫量と販売量との関係を知ることである︒この関係から商品回転の遅速・有利性•平均在庫高を看取できる。
過大在庫の処置には︑販売努力による滞貨流出と沈澱商品の吸上げ工作がある︒流入物資の有効性確保には購入
金額の予算統制方式と適質購入方式が必要である︒すなわち販売業にあっては販売効率の高い商品を選定すること
であり︑製造業にとっては生産性の高い原材料を選定することである︒ここに購買管理における適質選定の基準が︑
在庫管理の立場から規定されることを知る︒在庫の限界については、業種•取扱商品・資本規模等との関連において決定すべきであるが、一般には自店の総
資産対在庫資産比率を算定し︑同種同規模の企業の平均値と比較して決める場合が多い︒在庫高の標準的指標とし
て︑中小企業庁編の﹁中小企業の経営指標﹂が参考資料となることは周知のとおりである︒
右のようにして在庫の限界が明らかになったとしても︑それだけでもって適質選定の基準が得られるのではない︒
在庫高の検討は売上高との比較計測によって︑はじめて意義を見出すのである︒ここに在庫高と売上高との関係比
率を求める商品回転率の思考形式が要請されてくるのである︒
③商品回転率主義この主義は︑形式的には売上高基準主義と平均在庫高主義との折衷法であるが︑実質的には
適質選定に当って︑商品別の商品回転率を比較して比率の大なるものから順次に購入商品の選定順位をきめようと
する思考形式である︒
一定期間にー通常一カ年であるが︑流行品や季節品については短期間例えば季
1 0
533
節周期を期間とするー在庫品に投下された資本が売上として回収される回数を示すもので︑いわば商品への投下資
本の効率をあらわすと同時に在庫品の稼動状況を示すものである︒その回転率の上昇は︑売上高︵分子︶の大と平
均在庫高︵分母︶の相対的小の数式で表現される︒
ところでわれわれの当面する購買管理の問題において︑商品回転率主義が如何なる意味で商品選定の基準となり
うるか︒この問題を検討してみなければならない︒
およそ商品回転率主義のもつ意味内容は︑端的にいえば︑商品回転の迅速性が企業利益の増進に寄与するという
ことにある︒その増進策は︑ぃ分母である平均在庫高を一定とすれば売上高を増大するか︑伽分子である売上高を
一定とすれば︑分母である平均在庫高を減少するか︑あるいは両方式を適当に組み合わせるという仕方で成立する︒
第一法である売上高の増大には︑効果的な販売活動を促進しなければならない︒すなわち商品陳列・広告・宣伝
販売技法・サービス・包装の改善等についてより効果的な方法を実施する︒また価格政策・新製品の導入および開
拓等の販売戦略を使用するなどによるのである︒
第二法である在庫高を減少するには︑商品ラインの整理・縮小あるいは単一商品の在庫量の縮減が考えられる︒
もちろんその際︑除去する商品は売行き遅足の商品とか棚ざらしの商品に限定するとか︑除去商品を欲求する顧客
に対しては類似品や代用品をすすめるというような配慮を必要とするであろう︒また単一商品の在庫量減少に伴う品不足を防ぐためには、当座仕入の迅速性の検討とか、最高•最低在庫制度の確立を必要とするであろう。
そのように在庫の内容の整理も必要であるが︑より重要なことは入庫する商品の厳選である︒その選定の基準と
して
︑
これまで諸種の方式を指摘してきたが︑﹁商品回転率主義﹂もその有力な一っとして挙げねばならない︒その
意味で適質選定にあたり︑本主義の存在価値が認められるのである︒
購買管理における概念の再構成︵冨山︶
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固販売利益率主義本主義は販売能率の視点から商品選定を行なわんとするものであって︑品種別に販売利益率
を算定し︑その率の大小によって選定の順位をきめようとする思考形式である︒これを前述の売上高基準や売上総 のことに触れていくことにしよう︒ 購買管理における概念の再構成︵冨山︶
囚売上総利益主義右述のように商品回転率主義は商品選定の一基準となりうるが︑回転率の上昇は利益上昇と
結ぶものでなければ企業経営にとっては意味がない︒例えば回転率の増大策として低価政策を採用した場合︑売上
高は増大しても必ずしも総利益率の増大を結果しない場合ー赤字販売│・もありうる︒また平均在庫量の減少による
回転率の増大方式において︑それが原因で売上高の減少︑ひいて総利益率の減少を招来しては︑回転率上昇の努力
も意味を失うであろう︒そこで経済性思考としては売上総利益主義の見解を導入せざるをえないのである︒
売上総利益主義を商品選定の基準とする場合は︑商品種別の売上総利益を比較して選定順位を決定するのである︒
さきに述ぺた売上高基準主義が売上高を通じて需要動向に迎合するものといえるならば︑本主義は利益確保の立場
をとるものであろう︒
この立場からいえば︑需要の多い売れ行きの良い商品を選定して売上高を増大することが売上総利益の増進に寄
与することになるが︑果してそれが利益確保になるであろうか︒金額基準の計算思考においては︑単価の高い商品
で販売回数の小なるものと︑回数大で単価小なるものとの識別が困難な場合がある︒また売上総利益が大であると
いうことが必ずしも需要充足とならない︒ゆえにもし売上総利益が大であるという理由から仕入選定を行なうなら
ば︑顧客の欲求充足を希う購買原理にもどる結果とならぬでもない︒
要するに単なる売上総利益の数値だけに依存せず︑実態的動向を見究めることが肝要である︒さらに総利益は販
売経費との関係で︑その数値の大が必ずしも販売利益の増大を意味するものでないことを知るべきである︒次にそ
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利益主義に比較すると︑それらが実数中心であるのに対して︑比率中心の思考︑すなわち売上高対売上総利益の比
率をみようとするので販売能率の測定に適合し︑生産性の高い商品を選定する意味ではこの思考形式がより優れて
しかし販売利益率が高くても販売経費に多額を要しては終局の利益収得に寄与することにならない︒その意味で
は︑販売純益主義こそ最上の主義といえる︒それにもかかわらず︑
ー販売にかかわる直接費・間接費・一般経費の識別ーが困難なためである︒そこでこの販売利益率主義が次善の方
法として採用されるのである︒
以上に商品選定を中心とする計算的思考形式を述べてきたが︑ その方式が採用されないのは︑販売経費の把握
いずれも長短あわせもつので︑にわかに優劣をき
め難いのである︒そこで実践的には前記の諸技法を組み合せて順位をきめるところの﹁点数法﹂あるいは﹁順位差
筆者は︑本論集の前号に発表した﹁大学教育における弁証法的自己同一﹂の論稿において﹁ゼミ教育の存在様
式﹂として分析・総合・批判の思考訓練の必要性を主張した︒また経験主義教育について﹁射程距離の短かい学習
者の経験のみに依存せず︑客観的文化財を媒介とする学習の必要性﹂をも強調した︒そこでそのような思考コース
の展開に必要な媒介について述べねばならぬと感じた︒その対象として日頃から手慣れた購買管理の問題を取り上
げた次第である︒
しかし購買管理の研究対象は頗る多種多様であって到底一度に処理できるものではない︒問題を限定する必要が
購買管理における概念の再構成︵冨山︶
あ と
が
き 法﹂などが採用されるようになるのである︒ いるといいえよう︒
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購買管理における概念の再構成︵冨山︶
ある︒その必要から問題を適質選定の問題に限定し︑さらに行動概念としての把え方に限定して思考した︒したが って購買主体の意思および組織の面で把えるコースは他日に譲るほかはなかった︒
そのような意図に基づいて執筆したので︑本稿の性格は︑適質選定に関する事態の情報や技法の問題を網羅的に
論述することではなく︑
それらの事項を媒体として構成される概念の発展的様相に焦点を合わせるものになったの である︒意図するところを充分にあらわしえなかった問題は︑後の稿で展開したいとおもう︒
西