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MTT インセンティブ制度導入に向けたラボックスの開発

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Academic year: 2022

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(1)

MTT インセンティブ制度導入に向けたラボックスの開発

JR

西日本  正会員 ○片岡 武

JR

西日本  正会員  江原 学  

1.はじめに 

 京阪神及び北陸方面の高速線区では、乗心地向上を目的に長波長軌道狂い整備を主体とした MTT 整備を行っ ている。少ない経費で乗心地の良い線路をつくっていくためには、MTT による整備効果を向上させることが大 変重要で、この整備効果も静的な測定データよりも列車荷重のかかったマヤ車の動的な測定データで評価する ことが望ましい。当社では、前述の線区において平成 17 年度より MTT の整備効果を動的検収し、検収結果に 応じて報奨金を与えるインセンティブ制度を導入した。本稿では、インセンティブ制度導入に向けて行ったラ ボックスの開発内容について紹介する。 

2.インセンティブ制度の概要 

 当社の線区では、線路等級及びその重要度に応じてマヤ車の検測周期が 1 年間に 6 回、4 回、2 回と異なっ ているが、軌道狂い進みの影響を考慮し、マヤ車が年 6 回走行する線区に限定してインセンティブ制度を導入 した。検収項目は、当該線区の乗心地向上を目的として、MTT 施工前後の 20m 弦通り狂いの標準偏差(以下、

σ値)の良化率としている。 

3.軌道狂い進みの影響 

 当該線区では、MTT 施工からマ ヤ車が走行するまで 2 ヶ月程度か かる場合がある。この間の軌道狂 い進みが大きいと MTT の良化率に 大きく影響することになる。そこ で、軌道狂い進みの実態の調査を 行った。具体的にはマヤ車が走行 する 2 週間前までに MTT 施工を行 った箇所に対して、MTT 施工直後

のマヤ車の 100m ロットσ値とその次のマヤ車でのσ値を比較検証した。図1から、20m 弦通りの狂い進みは 10m 弦高低の狂い進みと比較して 2%程度と小さく、動的検収が可能と判断した。 

4.ラボックスに求められる機能 

 踏切や橋梁等の構造物が介在する箇所で MTT 軌道整備を行うと、構造物の軌道整備を行っていなくても構造 物内の軌道狂い波形も変化する。軌道狂いを正矢法で把握すると、原理上、整備区間以外の軌道狂い波形も変 化する。このように MTT 軌道整備前後のマヤ車の軌道狂い波形を比較すると、軌道狂い波形が変化する区間と MTT 軌道整備区間は一致しない場合が多い。また、構造物前後には大きな軌道狂いが整正できずに残っている 場合が多く、このような箇所を MTT で軌道整備する場合は、構造物内の軌道狂いの変化を含めて MTT の整備効 果を評価することが重要である。 

 そこで、MTT 軌道整備前後のマヤ車の軌道狂い波形をもとに、実際に軌道狂い波形が変化した区間を探し出 し、その区間での 20m 弦通りσ値の良化率を算出できるようにラボックスの開発を行った。この開発での主な 検討項目を以下に示す。 

1)軌道狂い波形のずれ補正 

キーワード ラボックス,動的検収,MTT,インセンティブ, 20m 弦通りσ値 

 連絡先  〒530‑8341  大阪市北区芝田 2−4−24     西日本旅客鉄道株式会社  鉄道本部  施設部  TEL06‑6375‑8960

y = 1.0196x R2 = 0.8473

- 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

- 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 直後のマヤ (mm) 直後の次

のマヤ (mm)

図1.σ値の軌道狂い進み 

y = 1.1026x R2 = 0.813

- 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

- 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 直後のマヤ (mm) 直後の次

のマヤ  (mm)

10m 弦高低狂い  20m 弦通り狂い  土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-163- 4-082

(2)

2N+1

軌道狂い波形

図 2 軌道狂い波形で作成される面積  マヤ車の軌道狂いデータは、ATS 地上子の検知信号をもとに現場との位置合わせを行っている。しかし、測 定時期の異なる軌道狂い波形を重ね合わせると、2つの波形にずれが生じる場合がある。波形のずれがあると、

MTT 施工前後の軌道狂い波形が変化した区間を正しく判定することが出来ないため、MTT 施工前後のマヤ車の 軌道狂い波形のずれを精度良く補正することが大変重要である。 

 当社では、サンプリング間隔が 1m のマヤ車のデータを使用しているが、ATS 地上子間の距離とデータ数か ら求まる距離が同じにならない場合がある。そのため、ずれ補正を行う準備作業として、ずれ補正を行う区間 のデータはサンプリング間隔×データ数が距離となるようにキロ程の修正を行っている。 

 MTT 軌道整備を行っても、マヤ車で測定している軌道狂い項目の中で、軌間狂いだけはその影響を受けず、

波形が大きく変化しない。そこで、MTT 施工前後のマヤ車の軌間狂いデータを x(i),y(i)とし、式(1)によりの 相互相関係数 R(L)を求め、R(L)の値が最大となる L をもとにその他の軌道狂い波形を前後に移動させ、波形 のずれの補正を行っている。また、この補正は 50m 間隔毎に行い、局所的に波形のずれが生じないようにして いる。 

2)波形変化点の判定 

 波形が変化しているかどうかの判定は、10m 弦高低狂い波形及び 10m 弦通り狂い波形をもとに行うこととし た。20m 弦通り波形を採用しなかったのは、10m 弦通り狂いよりもデータの再現性が悪く、保守作業を行って おらず 10m 弦通り波形に変化がない場合でも 20m 弦通り狂い波形では変化する場合があるためである。 

波形変化点と判定する方法として、MTT 施工前後のマヤ車のデータをもとに①両者の差が一定値を超え始め る点を波形変化点とする方法、②両者の相関係数がある一定値以下になり始める点を波形変化点とする方法を 検討した。しかし、①の方法では、微小な波形のずれがあると両者の差が大きくなる場合があり、②の方法で は、軌道狂い波形の振幅が小さいと両者の相関係数が小さくなる場合や軌道狂いの波長が変わらず振幅だけが 小さくなる箇所では相関係数が高くなる場合があり、精度よく波形変化点を判定することが出来なかった。 

そこで、MTT 施工前後のマヤ車のデータを x(i)、y(i)とし、式(2)で計算される Y(i)の値をもとに波形変化 点を判定する方法を検討した。 

式(2)は、図の網掛けで示される面積が施工前後で減少した分をその データ数で割った値を示している。Y(i)のグラフの形状は N の値によ って変わり、N を大きくするにつれてなだらかな形状となり、N をある 程度の大きさとすれば、波形が変化した区間とそうでない区間との区 別がつきやすくなった。具体的な N の値については、波形の変化点を 判断するのが 10m 弦の狂いデータであることと、Y(i)のグラフ形状と

波形変化点との対応をチャート上で確認して検討した結果とから、N を 5 として Y(i)を計算し、波形の変化点 を決める Y(i)の閾値は、0.35mm としている。 

4.おわりに 

 本稿で紹介したラボックスの機能は、軌道狂い整備の仕上りを評価する上での根幹となる機能である。既に 山陽新幹線ではマヤ車による検収を行っているが、今回開発した機能は、今後新幹線のシステムにも応用でき るのではないかと考えている。 

( )

1 2

) ( ) ( )

( +

+

− +

= ∑

=

=

N

j i y j i x i

Y

N j

N

j

( j = − N , − N + 1 , ・・ , 0 , ・・ , N − 1 , N )

・・・式(2)

y x N

i

N i

N

L i y i x L

R ( 2 1 ) σ σ ) ( ) ( )

( +

+

= ∑

=

=

の標準偏差 の標準偏差 ずれ量

) ( :

) ( : :

i y

i x L

y x

σ

σ

・・・式(1)

土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-164- 4-082

参照

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