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分岐器ポイント床板の構造強化策 

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Academic year: 2022

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(1)

分岐器ポイント床板の構造強化策 

東日本旅客鉄道株式会社 ○正会員 若月 雅人 東日本旅客鉄道株式会社  正会員 堀 雄一郎       東日本旅客鉄道株式会社      和泉 和宏

1.はじめに 

分岐器の設備故障防止と省メンテナンス化を目的に 開発した

2000

形式分岐器(以下、次世代分岐器)は、

当社の東京圏で本格導入が進められ、

2008

年度末まで に約

200

組が現場導入されている。この要素技術とし て、ポイント床板に高床式床板が導入され、ポイント 部の構造強化に効果を発揮している。

今回、寒冷地域への導入を前提として、新型電気融 雪器の開発導入に合わせて、高床式床板の構造改良を 行ったので以下に紹介する。

2.次世代分岐器用ポイント床板  2.1 開発経緯 

従来の一般分岐器ポイント部では、構造的に次のよ うな課題があった。

①基本レールが軌間外側からの締結のみのため、前後 区間のレールより締結力が弱く、ボルトが緩んだ場 合、レールのふく進抵抗力が急激する(図1)。

②接着側のトングレール底部が基本レールと直接接触 する構造のため、わずかな異物の介在で転換不能が 発生する。

次世代分岐器では、これらの解消を図るべく開発を 進めた結果、ポイント床板については専用に開発した 従来より高さを低く設定したトングレール(NE70S レール)の使用を前提とした高床式床板が開発された。 

2.2 高床式床板 

高床式床板の特徴は、次のとおりである。 

①高さの低いNE

70

Sレールの採用により、トングレ ール直下に空間を設けることにより、基本レールを

両側からばねで締結(外軌側:ファーストクリップ、

内軌側:エラスティッククリップ)して締結力を安 定化した(図2)。

②トングレール接着時、トングレール底面と基本レー ルとの間に空間を設けることで、微細な異物が挟ま りにくい構造とした。

  以上の効果により、導入後はポイント部での異物介 在等による設備故障もなく、省メンテナンス効果が確 認されている。 

3.高床式床板の構造改良  3.1 開発項目 

設備故障防止と省メンテナンス効果のある次世代分 岐器を、寒冷地域での分岐器改良時にも使用できる構 造とするため、次の対策を検討した。

①熱効率の高い新型電気融雪器

②次世代分岐器に対応した空気噴射式除雪装置(エア ージェット)

③上記機能を設置可能な寒冷地用高床式床板および同 グリッドまくらぎ

④電気転てつ機用ヒーターカバー

このうち、高床式床板は新型電気融雪器が床板と一 体化する構造で検討されたことから、従来形状では対 応できないため、従来機能は維持しつつ構造改良を計 画した。 

3.2 改良品の構造検討 

 新型電気融雪器は熱効率を高めるため高床式床板の トングレール滑り面直下にケーブルを配線するため、

同部に貫通穴を

20mm

間隔で穿孔する必要がある。既 存の高床式床板では基本レールの軌間内側締結ばねが 支障するため、貫通穴の穿孔に必要な厚さが確保でき ない問題があった。

そこで、同締結ばねも含めた新しい構造の高床式床 板を開発した。改良品は基本レールを固定する下板部

  キーワード  次世代分岐器 高床式床板 基本レール締結ばね 電気融雪器

    〒

331-8513

 埼玉県さいたま市北区日進町2丁目

479

 

TEL 048-651-2389 FAX 048-651-2289

図1 従来のポイント床板  図2 高床式床板

土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

‑557‑

Ⅳ‑280

(2)

とトングレール滑り面とケーブル用貫通穴を有する上 板部の2ピースタイプとし、それに上板部と基本レー ルを下板部に締結する

2

本の棒ばねから構成されてい る(図3)。強度解析については以下の2条件の場合 について検討した。

(1)

基本レールへの列車荷重載荷時の棒ばね及び床板本 体への発生応力照査

(2)

トングレールへの列車荷重載荷時の床板本体への発 生応力照査

 棒ばねの発生応力については、疲労試験による検証 を合わせて行うとともに、量産時のコスト低減や組立 作業性の向上についても検討を行った。

4.性能確認試験  4.1 室内試験 

 改良品の耐久性を確認するため、

2

軸疲労試験により 部材の変状、棒ばね・床板の発生応力、レール変位量 を測定した(図4)。試験条件を表1に示す。

 試験結果から、棒ばねの発生応力は弾性限度を下回 り、また、ばね鋼の耐久限度線図(図5)でもばねの 破壊および永久変形に対して十分な耐久性を有するこ

とを確認した。

4.2 営業線敷設試験 

信越本線羽生田駅構内に試験敷設した寒冷地用次世 代分岐器での性能試験により、各種列車通過時の改良 品に作用する応力等を測定した(図6)。

主な測定結果を表2に示す。いずれも目安値に対し て十分余裕があり、標準偏差による発生最大予測応力 値でも問題はなく、所定の機能を発揮していることが 確認できた。

5.まとめ  

 次世代分岐器の寒冷地域への導入を前提に進めた、

高床式床板の構造改良の成果を以下にまとめる。 

①熱効率の高い新型電気融雪器が設置可能な構造とし、

既存の高床式床板との互換性を持たせた構造とした。 

②強度解析,性能確認試験の結果、部材強度に問題な いことが確認できた。 

③国産棒ばねの使用や床板本体の2ピース化により、

量産時には標準タイプで従来品より最大 25%程度の コストダウンが可能となる。 

 高床式床板は次世代分岐器の要素技術として開発が 進められたものであるが、ポイント部の構造強化に効 果が大きいため、従来形の分岐器への応用等について も今後検討して行きたい。 

参考文献 

1)佐藤泰正「分岐器の構造と保守」(財)日本鉄道施設協会 

下板部

上板部

棒ばね 基本レール

貫通穴

図3 構造改良した高床式床板

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

0 2000 4000 6000 8000 10000

平均ひずみ(μ)

変動ひずみ(μ)

測点① 測点② 測点③ 第 2へたり限度

第1へたり限 度

第2破 壊限度

第 1破壊限度 第3 破壊限度

図4 2軸疲労試験   図5 ばね鋼の耐久限度曲線

表1 2軸疲労試験試験条件

項 目 内 容

供試体種類 ①1ピースタイプ 

1

②2ピースタイプ 

1

載荷荷重 内軌側 輪重

110.5

,横圧

68.0

外軌側 輪重

97.8, 横圧 34.0

載荷回数 100万回,周波数

5.5Hz

測定項目 ①ばね応力   ②変位量

③載荷荷重   ④外観状態

図6 試験敷設した寒冷地用次世代分岐器 表2 走行試験による試験結果

測定項目 実測値 予測値 目安値 評価 棒ばね応力

(MPa) 26.7 44.1 床板上板応力

(MPa) 79.4 87.6 162 床板下板応力

(MPa) 97.5 98.8 162 レール上下変位

(mm) 0.35 0.46 3.0 レール左右変位

(mm) 0.62 0.74 5.2

土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

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参照

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