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室見川におけるアユの産卵選好性に及ぼす影響因子の把握

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Academic year: 2022

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(1)VII‑053. 土木学会西部支部研究発表会 (2013.3). 室見川におけるアユの産卵選好性に及ぼす影響因子の把握 福岡大学工学部 学生員○上田 亮 正会員 山崎惟義・伊豫岡宏樹・渡辺亮一 1.はじめに アユは清流の象徴や環境の保全を図るために注目 度の高い魚である(図 1) .また,アユは水産資源価 値が高く, 内水面においてサケに並ぶ高い経済価値 がある.全国では 7 月になるとアユ釣りを楽しむ人々 が増え,多くの漁法がある.また, 「日本書紀」 , 「古 事記」, 「風土記」などの古い書物にも出てきており, 日本では昔から人々と自然のつながりを見ることが でき,生育には良好な河川環境や河川と海の連続性 が保たれていることが必要である等,しばしば,健 全な河川環境の保全・復元を図る上での指標とされ ている魚である. 研究対象である室見川は,福岡市西部を流れる二 級河川で,毎年稚アユの遡上が確認されている.し かし,農業用の堰をはじめ数多くの利水施設が設置 されており,アユをはじめとする回遊性の生物の遡 上・産卵に影響を与えていることが指摘されており, 花立堰を境にアユのサイズに有意な差があることな どが明らかとなっている.1) 本研究では,このような横断構造物がアユの生態 に与える影響として, 底質・餌の条件について調査 を行った.また,室見川のどのような環境を産卵場 所として利用しているのかは明らかにし,アユの産 卵環境の保全方法について検討した. 2.調査方法 過去の調査によりアユの生息が確認されている新 道堰から亀丸堰までの 8 地点を調査対象とし, 2012 年 9 月上旬から 10 月下旬の期間に投網により捕獲し たアユのすべての体長を測定した(図 2) .また、各 地点のアユの餌量をはじめとする生息環境を把握す るため,各地点で流速,水深,河床材料および底質 に付着しているクロロフィル量についての調査を行 った.河床材料は研究室に持ち帰り,ふるい分け試 験を行なった. クロロフィル量は,調査地点を代表 するような礫から 5cm×5cm の付着藻をブラシで採 取したものをろ過し, 90%アセトンにより抽出した 吸光法 2)により測定した. アユの産卵期間である 10 月中旬~12 月上旬には 生息分布調査で生息が確認できた範囲で産卵調査を 行った.調査方法は,羽生(天然アユを川にたくさ ん遡上させるための手引き 2000)²⁾を参考に産卵に 有利な環境といわれている瀬で礫を取り上げ, 付着 した卵の有無を確認した. 3.調査結果 室見川におけるアユの生息分布状況の調査結果は, 調査を行った 8 地点のうちアユが採取されたのは新 道堰,矢倉橋,亀丸堰の 3 地点を除く 5 地点であっ た.しかし,下流側の小田部大橋,橋本橋,乙井手 堰,花立堰ではアユの個体数がいずれも 10~20 個体 以上であったのに比べ,上流側である都地河原堰で は 5 個体と非常に少なかった.しかし, 淀川(室見川 における利水施設によるアユの移動阻害に関する研究. 2011)¹⁾の結果と同様, 体長を比較すると都地河原. 図-1 室見川で捕獲したアユ. 図-2 室見川の調査地点(Google マップより). 堰で採取されたアユのほうがサイズが大きかった. (図 3) 調査結果は小田部大橋下,橋本橋下,乙井手堰, 花立堰,矢倉橋下の 5 地点で卵を発見することがで きた. (図 4)このうち,小田部大橋下と橋本橋下の 瀬では,産卵行動を確認することもできた.一昨年 まで産卵が 確認できていた新道堰では,魚道の入り口で盛んに 産卵が行われていたが, 今年度は堰が倒されていた ため,調査地点が干上がっており産卵は確認できな かった.水深,流速,河床材料についての調査結果 を表 1 および図 5 に示す. クロロフィルの測定結果を図 6 に示す.クロロフ ィル量は花立堰の下流で最も,そこから下流に向か うにつれ低い値となった.花立堰の上流の都地河原 堰は調査を行った地点では最も低くなり,花立堰と 都地河原堰では 2 倍以上の差があった. 4.考察 今回行った産卵状況調査によってアユが産卵を行 っている範囲は,下流は小田部大橋から上流は矢倉 橋までであった.特に水深 10~60cm,流速 50~ 100cm/s の中礫が多いところに多く産卵しており, 適した環境であるといえる.しかし,もっとも多く の卵が発見できた橋本橋とあまり発見できなかった 矢倉橋では水深,流速,河床材料に大きな差はなか ったものの,発見した卵の数では 10 倍以上の差があ. ‑955‑.

(2) 土木学会西部支部研究発表会 (2013.3). り,下流側を好んで産卵していると考えられる.室 見川の縦断図から,卵を多く発見した小田部大橋と 橋本橋は河床の標高が 1~5m 程度,卵をほとんど見 つけられなかった矢倉橋と都地河原堰は標高 15m~ 20m 程度で 10m 以上の差があった.他の河川の例で は 20m 程度の標高でも産卵している例が多くあるの で,産卵の可能性はあるといえる.²⁾ 花立堰と都地河原堰のクロロフィル量を比較する と,これらの 2 地点でのアユの体長の差は餌環境の 影響ではなく,これまで指摘されていたように 1)花 立堰が魚道小型のアユにとって移動障害となってい る可能性が高い.花立堰より上流で産卵が少なかっ たのは, 産卵するアユ自体が少ない可能性もある.. 12. 30. 卵の数[個]. 10. 5.今後の課題 昨年の課題となっていた花立堰の魚道の問題は未 だに改善されておらず,アユの移動障害は解消され ていない.今後,魚道の改修を行うことで花立堰上 下の体長の差が改善されると考えられる.またアユ は下流で主に産卵を行っているにもかかわらず,室 見川下流では多くの砂が堆積している.この問題を 解消し,アユの産卵に適した環境を作ることで産卵 数が増加し,室見川にアユが増えると考えられる.. 8. 卵数. 25. アユの数. 20. 6. 15. 4. 10. 2. 5. 0. 0. 捕獲したアユの数[匹]. VII‑053. 図-4 調査 1 回あたりに見つかったアユの卵の数. 100. 質量百分率[%]. 80. 参考文献 1) 淀川慎矢他:室見川における利水施設によるアユの移動 阻害に関する研究,平成 23 年度土木学会西部支部研究発 表会講演概要集 CD-ROM Ⅶ-34,2011 2) 羽生功 監修:天然アユを川にたくさん遡上させるための 手引き-海産アユ種苗回帰率向上総合検討調査報告書-, 天 然ア ユを川 にたく さん遡上 させる ため の手引 き , pp9-18,2000. 60. 巨礫(257㎜~1024㎜) 大礫(65㎜~256㎜). 40. 中礫(17㎜~64㎜). 小礫(2㎜~16㎜). 20. 砂(2㎜以下) 0. 3) 建設省河川局監修:河川水質試験方法(案)1997 年版 試. 図-5 各地点の粒度試験の結果. 験方法編,技報堂出版株式会社,pp918- 922,1997. クロロフィル[μg/㎠]. 4) 彌田雄太他:都市河川におけるアユ復活に向けた基礎的 研 究 , 平 成 22 年 度 土 木 学 会 西 部 支 部 研 究 発 表 会 CD-ROM II-42,2010 5) 田中快昇他:都市河川に生息するアユに与える魚道改修 効果の検証-室見川におけるアユ再生に向けた現地観測平成 21 年度土木学会西部支部研究発表会 CD-ROM II-38,2009. アユの体長(㎝). 25. 10 8. 6 4. 2 0. H23平均値 H24平均値. 20 15. 図-6 各地点のクロロフィルの値. 10 5. 表-1 各地点の平均水深と平均流速. 0. 地点 産卵有無 水深(cm) 平均流速(cm/s) 新道堰 × 78.6 3.5 小田部大橋 ○ 30.3 76.2 橋本橋 ○ 19.8 71.4 乙井手堰 ○ 29.7 76.1 花立堰 ○ 26.5 78.6 矢倉橋 ○ 45 64 都地河原堰 × 30 65.4. 図-3 各地点のアユのサイズ. ‑956‑.

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