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2. 送電鉄塔系の三次元解析

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Academic year: 2022

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(1)

地盤−基礎体−構造物の相互作用を考慮した送電線鉄塔系の安定性解析

東北大学 学生会員 ⃝箕輪健太郎 東北大学 正会員 山川優樹 東北大学 正会員 池田清宏 東北大学 学生会員 中市翔也

1. はじめに

送電鉄塔は大きく分けて鉄塔・基礎・地盤という構成要素からなる.鉄塔は細長部材で構成されており,幾何学的 非線形性が卓越して分岐・座屈での破壊が支配的である.基礎の変位は地盤の変形により発生し,その挙動は地盤の 材料非線形性が支配的である.このように構成要素ごとに特徴的な力学特性を有するため,それぞれ独自の方法で設 計・照査がなされるが1),構成要素間の相互影響が考慮されることは稀である.

送電鉄塔に作用する風荷重・着雪荷重・地震力などの外力の中で鉄塔および基礎に対して最もクリティカルなのは 一般的には風荷重であり,近年でも強風による鉄塔の倒壊や基礎の破壊事故が発生している.鉄塔や電線に作用した 風荷重により基礎の変位が生じ,それに起因する鉄塔の部材損傷や全体倒壊事故は実際に発生しており,構成要素間 の相互影響の考慮が必要であることを示している.

以上のことから,送電鉄塔系全体を考慮した合理的設計のためには,鉄塔−基礎−地盤の連成挙動を解明すること が不可欠である2).本研究では,また,地盤−基礎−鉄塔連成系の三次元有限要素解析を行い,構造系全体での安定 性検討の重要性を示す.

2. 送電鉄塔系の三次元解析

(1) 解析モデル

地盤−基礎−鉄塔連成系モデルを用いて,構成要素間の相互作用と鉄塔の倒壊形態について検討を行う.解析対 象とした連成系の有限要素モデルおよび2つの荷重条件 (mode-A, B) を図–1に示す.図に示す通り,4つの基礎 を基礎-1, 2, 3, 4と称する.比較の対象として,鉄塔脚部の変位を拘束した鉄塔単体解析も併せて行った.鉄塔は Timoshenko梁要素でモデル化した.基礎は弾性体とした.地盤にはDrucker–Prager弾塑性モデルを用いた.

(2) 鉄塔単体解析

はじめに,鉄塔脚部の変位を拘束した鉄塔単体解析の結果を示す.図–2に,鉄塔頭頂部の荷重(合力)と水平変 位との関係を示す.荷重−変位曲線の初期段階の勾配はmode-AとBで若干の差があるが,急激な荷重低下を示す 挙動は共通している.しかし,最大荷重はmode-Bの方が2倍以上大きい.また,mode-Aでは荷重は一旦低下した 後に一定の残留値を示しているが,mode-Bでは急激に荷重が低下して崩壊に至っている.部材座屈状況を図–3に 示す.コンターは部材の梁要素の回転角(radian)を表している.Mode-Aでは圧縮側(脚部-3)の主柱材が座屈によ り大きく変形している.一方,mode-Bでは圧縮側(脚部-2, 3)の主柱材の座屈に加えて,脚部直上とその上方1パ ネル目の圧縮を受ける斜材の座屈も顕著である.

(3) 地盤−基礎−鉄塔連成解析

実際の送電鉄塔では,風荷重等が鉄塔を介して基礎に作用する.その引揚力・押込力により基礎に変位が生じ,そ れが鉄塔部材に損傷が及ぼしたり,全体座屈荷重が低下したりすることが考えられる.本節では地盤−基礎−鉄塔の 全体系モデルを用いた解析と鉄塔単体解析とを比較し,こうした現象が鉄塔系にどのような影響を及ぼすかを調べる.

x y z

ᇶ♏-1

ᇶ♏-2 ᇶ♏-3

ᇶ♏-4

5.9m 5.9m

3.0m

mode-A

mode-B x y

1 2

3 4

1 2

4 3 F

F

F

モデル全体図 荷重条件 –1 全体系の解析モデル

20 0

50 100 150

0 10

㕲ሪ㡬㒊ࡢỈᖹ᪉ྥኚ఩ (cm)

㕲ሪ㡬㒊ࡢỈᖹ᪉ྥⲴ㔜 (kN)

: mode-A : mode-B

–2 鉄塔の荷重−変位関係(鉄塔単 体解析)

0.2

0.0 (rad.) ኚ఩ࡢಸ⋡ࡣ ಸ

x y z

1

2 3 4

0.2

0.0 (rad.) ኚ఩ࡢಸ⋡ࡣ ಸ

x y z

1

2 3 4

(a)mode-A (b)mode-B –3 鉄塔部材の座屈状況(鉄塔単体解析)

Keywords: 送電鉄塔,逆T型基礎,地盤−基礎体−構造物の連成挙動

〒980-8579仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-06, Phone: 022-795-7420, Fax: 022-795-7418, E-mail: yamakawa@civil.tohoku.ac.jp

土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)

‑657‑

Ⅲ‑329

(2)

x y z

+0.008

−0.008 Ⲵ㔜

(cm) ኚ఩ࡢ

ಸ⋡ࡣ ಸ

Ⲵ㔜 0.5

0.0 (rad.) ኚ఩ࡢಸ⋡ࡣ ಸ x

y z

(a)地表面の鉛直変位 (b)鉄塔部材の座屈状況

x y

0.005

0.00

x y z

0.005

0.00

(c)地表面のせん断ひずみ (d)地盤内部のせん断ひずみ –4 荷重mode-Aに対する全体系の挙動

y x z ኚ఩ࡢಸ⋡ࡣ ಸ

Ⲵ㔜+0.20

−0.008 (cm)

y x z

0.5

0.0 (rad.) ኚ఩ࡢಸ⋡ࡣ ಸ

(a)地表面の鉛直変位 (b)鉄塔部材の座屈状況

x y

0.20

0.00

y x z

0.20

0.00

(c)地表面のせん断ひずみ (d)地盤内部のせん断ひずみ –5 荷重mode-Bに対する全体系の挙動

全体系の変形状況,地表面の鉛直変位分布,鉄塔部材の座屈状況,地盤のせん断ひずみ分布をmode-A, Bについ てそれぞれ図–4,図–5に示す.両図は作用荷重が最大時の様子を示してある.また,両図(b)は座屈が確認された 部材周辺を拡大表示しており,コンターは部材の回転角(radian) を表す.Mode-Aでは基礎引揚変位は小さく,鉄 塔上部の斜材で座屈が生じている.これと図–3(a)とを比較すると,鉄塔単体解析で見られた圧縮側主柱材の脚部 付近での座屈は全体系解析では見られなかったものの,上部斜材の座屈が鉄塔の耐力低下をもたらしている.一方,

mode-Bでは基礎に大きな引揚変位が生じ,鉄塔脚部付近の斜材に座屈が生じている.これと図–3(b)とを比較する

と,鉄塔単体解析と同様に斜材に座屈が見られるが,全体系解析では圧縮側主柱材の顕著な座屈は見られない.この ように鉄塔単体解析と全体系解析とを比較すると,基礎変位の影響により鉄塔の座屈の様子に違いが見られる.

次に,鉄塔に作用させた水平荷重(全載荷点の合力)と鉄塔頂部の水平変位との関係について,鉄塔単体解析(図–2 に前掲)と全体系解析とを比較したものを図–6に示す.まず,mode-Aについて示した図–6(a)を見ると,鉄塔単体 解析よりも全体系解析の方が荷重−変位曲線の初期の勾配が小さく,鉄塔頂部に大きな変位が発生しており,これは 基礎の鉛直変位によるものである.両者ともに鉄塔の全体座屈によると思われる急激な荷重低下に転じており,その ときの荷重は両者ほぼ同じである.次に,mode-Bについて示した図–6(b)を見ると,鉄塔単体解析では約150 kN の荷重に達した後に急激な崩壊挙動を示しているが,全体系解析では緩やかな荷重増加を伴いながら大きな変位を 生じており,急激な荷重低下は見られない.このことから,mode-Bの全体系解析では鉄塔自体は崩壊に至っておら ず,鉄塔頂部の水平変位は引揚側の基礎の大きな変位によるものであることが分かる.

3. まとめ

㸸㕲ሪ༢యゎᯒ 㸸඲య⣔ゎᯒ 150

100

50

0

10

0 20 30 40

㕲ሪ㡬㒊ࡢỈᖹ᪉ྥኚ఩ (cm)

㕲ሪ㡬㒊ࡢỈᖹ᪉ྥⲴ㔜 (kN)

mode-A 150

100

50

0

0 10 20 30 40

㸸㕲ሪ༢యゎᯒ 㸸඲య⣔ゎᯒ

㕲ሪ㡬㒊ࡢỈᖹ᪉ྥኚ఩ (cm)

㕲ሪ㡬㒊ࡢỈᖹ᪉ྥⲴ㔜 (kN)

mode-B

(a)mode-A (b)mode-B

–6 鉄塔の荷重−変位関係(鉄塔単体解析と全体系解析との比較)

本研究では単純な2種類の荷重モード(mode-

A, B)について,鉄塔の崩壊形態の比較を行っ

た.連成系解析により,mode-Aでは鉄塔が,

mode-Bでは基礎がそれぞれ先に破壊する結果

が得られた.このように全体系で考えた場合,

構造系の構成要素のうち最初に破壊する要素が 外力モードによって変化することには,設計上 の注意を要する.しかし,どの構成要素の破壊 が先行するかは,鉄塔・基礎の強度や変形性能 など様々な条件設定によって変わるものであり,

一概には言えない.さらに,実際の荷重モード は非常に多岐に渡る.全ての構造・荷重の組合 せを想定した耐力照査を逐一行うことは現実的

ではないが,数種類の条件に対する破壊モードを検討した上で各構成要素の強度バランスを考慮することは,構造物 全体の信頼性向上に対して十分意義がある.

参考文献

1) 電気学会電気規格調査会標準規格,送電用支持物設計標準(JEC-127), 1979.

2) 山川優樹,中市翔也,池田清宏,尾崎利行,松村政秀,北田俊行: 地盤−基礎−送電鉄塔の連成作用を考慮した三次元解析と 基礎の安定性の検討.土木学会論文集C, Vol. 64, No. 4, pp. 782–801, 2008.

土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)

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