博士(工学)孫 領 学位論文題名
耐熱合金の高温腐食と強度に及ぼす 雰 囲 気 と 応 カ の 相 互 作 用
学位論文内容の要旨
耐 熱 付 料 の 高温 腐 食 は 応 カが 付 加 さ れ るこ と に よ っ て 著し く 加 速さ れる 。しか し、そ の機購 には 不明 な 点 が 多 く 、 防 食 法 も 確 立 さ れ て い な ぃ 。 本 研 究 は 、Fe―25Crフ ェ ラ イ ト 系 お よ びFe―18Cr8Niと Fe−25Cr20Niオー ス ト ナ イ ト系 ス テ ン レ ス 鋼を 対象に 、973K;Ar、02、N2‑0. l%S02雰囲 気にお いて、 一 定 応力 、 繰 返 し 応力 、 あ る い は 、一 定 歪 み 速 度を 負 荷 し た 条件 下 で 、高温 腐食 と応カ の相互 作用に 関す る 機構 の 解 明 を 行っ た も の で あ る。 本 論 文 で は、(1) 試糾の 変形に よる酸 化皮 膜の破 壊挙動 、(2) 応カ に よる 皮 膜 の 破 壊が 及 ぼ す 加 速 的な 高 温 腐 食 挙動 の 解 明 、 また 、(3)試料 表 面 に 形 成す る スケ ール が材 料 強 度 に 及 ぼ す 影 響 、 に つ い て 検 討 し た 。 得 ら れ た 成 果 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。
第1章は緒 論であ り、 本研究 の背景 と、目 的及び 意義 につい て述べ た。
第2章 で は 、 実 験 に 使 用 し たFe‑25Crお よ びFeー18Cr8NiとFe一25Cr20Ni鋼の 化 学 組 成 と金 属 組 織 を 示し たo実 験 方法 で は 、 特 に、 試 験 片 の 変 形量 を 正 確に 測定 するた めの手 法とデ ータ 補正法 を提案 した。
腐食 性 雰 囲気(N2‑0. l%S02)で形成 する 腐食生 成物を 同定す る一助 とし て、Fe,Cr,Niの973Kにお ける酸 化 物 、 硫 化 物 の 相 安 定 性 を 熱 力 学 的 に 検 討 し た 。 ま た 、 実 験 試 料 の 分 析 手 法 に つ い て 述 べ て い る 。 第3章 で は、973K;Ar雰 囲 気で 形 成 し た 酸化 皮 膜 、 次 いで 、 一 定 応 カを 負 荷 し た 際 の識 阿 の ク リープ 挙動 と 酸 化 皮 膜の 破 壊 に つ い て、 そ れ ぞ れ 明ら か に し た 。Ar雰 囲 気 で予 備 処理 すると 、試料 表面に 厚さ 約O. lpunの 酸 化 物皮 膜 が 形 成 する 。Fe‑25Crの 場合 、高 純度のCr20が素 地と 密着し て形成 するの に対し て、Fe―18Cr8NiとFe‑25Cr20Niの 場 合は 、Crz0と(Fe,Cr) 304が 同 時 に形 成し ており 、界 面に空 隙が観 察 さ れ た 。Fe‑25Crの ク リ ープ 変 形 に お いて 、 ク ラ ッ クの 明 瞭 な 発 生は 定 常 ク リ ー プか ら 第3次 クリ ー プに 移 行 す る 時点 で 発 生 し 、 皮膜 に は 応 力 軸に 対 し 垂 直 方向 に 多 数 の クラ ック が規 則的に 生じた 。この クラ ッ ク は 粒 界か ら 始 ま り 、 粒内 部 へ と 発 達す る 。 粒 内 部の ク ラ ッ ク の間 隔は 粒内 よりも 狭い。 クラッ ク の 間 隔(L)は 定 常 ク リ ー プ 段 階 で の ク リ ー プ 速 度 (EO) とLoc(fo) ¨ の 関 係 が 得 ら れ た 。 Fe−18Cr一8NiとFe一25Cr20Niで は 、Fe―25Crに 比 較 して、 合金の 結晶粒 サイ ズが小 さいの で、粒 内に 対 する 粒 界 の 面 積が 相 対 的 に 大 きく 、 試 料 の 変形 は 主 と し て粒 界 部 が 担 う。 クラ ック は粒界 部から はじま り、そ の方向 は応力 軸に 垂直で ある。
第4章 で は、Fe‑25Crに 対し て 、973K;N2‑0. l%S02雰囲気 で、一 定応カ また は繰返 し応カ を負荷 した 際 の 酸 化 物 皮 膜 の 破 壊 と 腐 食 挙 動 に つ い て 検 討 し た 。 無応 力 状 態 で は、 約1岬 のCr20主 体の 皮 膜 が 形 成 し、 良 い 耐 食 陸を 示 し た 。 一 定応 カ を 負 荷 した 場 合 、20MPaまで は、 変形量 はO.1% 以下(36ks)であ り、
皮膜 の 破 壊 に よる 急 速 な 腐 食 は観 察 さ れ な かっ た し か し 、皮 膜 中 の(Fe,Cr) 304が増 加し、 スケー ルも 厚く 成 長 し 、2肛m程 度 で あっ た 。25MPa以 上 の一 定 応 カを負 荷す ると、36ks以内 で加速 的な変 形が生 じ、
皮膜 に は 応 力 軸に 垂 直 方 向 に クラ ッ ク が 形 成さ れ る 。 皮 膜が 破 壊 さ れ ると 、予 備処 理の際 に合金 表面に Feの 濃 イ 嵋 が贓 尹 る こ と から 、Fe鬪 拗を 含 む ノ ジ ュー ′1/ガ漉 食カ ミ急激 に発達 すると 考えら れる 。試 料の変 形がさ らに進 むと 、スケー′レは面餅匕物と睡餅匕物が繰返した多層構造に成長する。30MPaの応;カを 負荷 し た 場 合 、14.lksで3. 駲 の変 形 が 生 じ 、 その と き の ス ケー ル 厚 さ は約30pmであ った。 試阿の クリ ープ 強 度 は 、Ar雰 囲 気 に 比べ 、N2印 .1燭Q雰 囲 気で 著 し く 低 下し た 。 一 方、36ks、士30MPaと 士40MPaの 繰返 し 応 カ を 負荷 し た 結 果 、 試糾 の 変 形 量 は0.1% 以 下で あ っ た 。 なお 、 無応 カと比 較する と、士4卿a
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の応 力 負荷 では スケ ール 中 の(Fe,Cr) 304が 増 加し 、被 膜の成長が加 速される傾向が見られた。
第5章では、Fe―18Cr8NiおよぴFe‑25Cr20Niに対し、973K;N2‑0. 196S02雰囲気で一定応カを負荷し た際の皮膜の破壊挙動とスケールの成長について検討した。無応力状態では、Fe−18Cr‑8Niには36ksで 厚さ3Lun程度のスケールが形成しており、比鞠拘良い耐食陸を示したが、Fe―25Cr20Niの場合は、部分 的にFe‑Ni硫化物が 形成し、スケールが20‑30ym程度まで厚く成長していた。応力負荷による試料の変 形条件下では加速的 な腐食が生じた。すなわち 、Fe−18Cr8NiとFe‑25Cr20Niに+lOOIVPaを負荷した場 合、変形量は36ksで約O.弼であり、スケールには明瞭なクラックは観察されなぃが、Fe酸f匕物、また は、Fe・Ni硫化物がスケールの上部に発達し、後者がより厚しヽ。+145MPaの応力負荷では、試糾の変形が 進行し、両試料共に、スケールは急激に破壊され、多層構造のスケールが形成した。Fe‑25Cr―20Ni表面 を#150のSiC紙で研 磨すると、鏡面研磨訓蝌こ比 べ、保護的なCr203層が形成し、スケールの成長とク リープ変形の際のス ケールの成長および剥離は 抑制される。なお、Fe―18Cr8NiとFe‑25Cr20Niは、Ar 雰囲 気 に比 べ、N2‑0. l016S02雰 囲気では クリープ強度が著しく低下す ることが明らかとなった。
第6章では、応力 下における高温腐食およて附 料強度に及ぼナ予備処理の 影響について検討したこ こでは、Fe‑25CrとFe‑25Crー20Niに対し、973K;Arガス中で予備処理後N2‑0. l%SObに切り替え、応カを 負荷した。Ar予備処理(無応力)で形成した0.l岬の酸化皮膜はN2‑0. l%S02雰囲気でも良い耐食陸を維 持し、特に、Fe―25Crの酸化皮膜がFe―25Cr20Niに比べてより保護的であった。このAr予備処理で形 成した酸化皮膜が機械的に破壊されなぃ程度の低応力下では、耐劍生が維持される。一方、高応力下で は、皮膜にクラックが生じ、そこから腐食が集中して進展する。Fe−25Cr鋼の場合、クラックから幅1〜2yrn のCr酸 化 物 主 体 の 腐 食 物 が 形 成 す る が 、 皮 膜 と 素 地 の 密 着 性 は維 持 され てい るの に 対し て、
Fe−25Cr20Niの場合、クラックから幅210yrnの醐匕物‑面鼇f匕物が成長しており、皮膜の密着性は劣化 する。予備処理時に形成した皮膿めミ金属素地と良い密着性を保持するほど、耐食性が優れ、同時に材料 の強度も維持される。 ´
第7章 では、Fe‑25CrとFe−25Cr20NiのCrz0の成長に及ばすAr予備処理 の影響と応力負荷時の成長 挙動について調べた。Fe―25Crを973K;Ar雰囲気で予備処理後に02雰囲気に切り替えると、皮膜表面に 約lLtmのCrz0が成長した。低応力(または繰返し応カの負荷)で試料の変形量がO.1%以下の場合.^Cr20 の成 長 は認 めら れな かっ た+30Mpaを負荷す ると1.躡変形し、1〜岬の フレーク状のcrnが成長した 一方、2.7×10ツsの一定速度で変形した場合、変形は粒界に集中し、そこから皮膜のバックリング丶ま たは、(Fe,Cr)酸ヒ物がノジューッレ状に廊張した。Fe―25Qー20Niを973K;Ar予備処職Q雰:囲気に切替 えて+145MPaと十170MPaの応カを負荷すると、表面には1岬以下の粒决またはフレーク状の酸化物が成 長した。負荷応カが高いほど、粒伏またはフレーク状酸化物の発生頻度が高い。Fe−25CrとFeー25Cr20Ni において、Ar予備処理後Q雰囲気でクリープ試験すると、強度は地一0.1岱q雰囲気でのクリープ強度よ り著しく増加した。
第8章では、雰囲気による材料強度の変化について検討した。Fe−25Crを973K;Arと池印.1惱嗹雰囲 気で種々の変形速度 で引張試験を行い、試捧kり 引張挙動と、皮膜の破壊お よ硼食について調べたさ らに、Feセ5CrとFe―18cr8Niに対し、N2・0.1嵎鴫雰囲気で予備処理後Ar雰囲気に置換して、材料強度 の変化を調べた。FeI18Cr―,8Niに対しては、常温で引張実験を行った。Fe125crの引張強度は、2.7Xlザ
〜10ツsの歪み速度において、Ar雰囲気の方がN2一0.1帖鴫雰囲気より弘19MPa(25〜4(脚大きkヽ。試料の 変形は、歪み速度が 低いほど、試料の粒界に集 中し、材料強度が低下する傾向が認められた材料強度 の変化量の歪み速度 依存陸(strainratesensitivity)はArとN2印.1峪Qの両雰囲気においてほぼ等し い。N2・O.1燭 暖雰 囲気 で 予備 処理後Ar雰 囲気に置換すると、Feセ5crの場合は3MPa増大するが、
Fe―18Cr8Niでは殆 ど変化はしなぃ。これより、雰囲気による材料強度の差は、予備処理時に形成する 皮膜の特性により支配されると判断される。皮膜による試料強度の差は常温においても表れる。すなわ ち、Fe−18Q`・8Niを1%変形した際の強度は、1)Arで予備処理した討帯k2)表面を砌塘して皮膜を除去 した試料、3)N2印.1燭02雰囲気で予備処理した試料、の順に増大した。
第9章では、本研究で得られた結果を総括し、結論を述べた。
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