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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 柏 崎 晴 彦      学 位論文 題名

Yeast functional assay 法によ るヒト口腔扁平上皮癌における p 53 遺 伝子変 異の検 出感度と診断規準

学位論文内容の要旨

背景・目的

  癌 は,正常 細胞の遺 伝子に複 数の変異 が累積することにより発生すると考えられてい る .とりわ け癌抑制 遺伝子p53の 変異は口 腔扁平上 皮癌のみな らずヒト 腫瘍において最 も 高 頻 度に み ら れる 遺 伝子 変 異 で, 癌 の悪 性 度 のー つ の指 標 と なる 可 能 性がある .   従 来ま で のp53の 変 異を 調 べ る方 法(SSCP法 ,DNA塩基配 列の直接 決定法, 免疫組織 化 学的検査 法など)では,1)p53蛋白の機能解析ができず,2)検索サンプル中の少数細 胞 にある遺 伝子変異 を検出で きなぃ, といった問題点があった.加えてこれら従来の解 析 法は操作 が煩雑で ,しかも 信頼でき る結果を得るためにはかなりの経験を要するなど の 問題点が ある,これらの方法の持つ欠点を克服するため,p53の機能異常を特異的かつ 鋭敏にしかも簡便に検出する方法の開発が試みられてきた,

  Iggoらが開発したyeast functio nal assay法は,p53の転写活性化機能異常を酵母コロニ ー の色彩の 変化で検 出する方 法であり ,従来の欠点を克服できる可能性がある.そこで 今回,ヒ卜口腔扁平上皮癌のp53変異の検出におけるyeast functio nal assay法の有用性,

お よ び 臨 床 応 用 す る 上 で の 問 題 点 を 検 討 す る た め に 以 下 の 研 究 を 行 っ た 1)p53の変異が 既に報告されている口腔扁平上皮癒翁‖胞株を用いてyeast functio nal assayを 行い,本 法の口腔 扁平上皮 癌におけ るp53変異解析システムとしての有用性を検 討する.

2)yeast functio nal assayの非特異的バックグラウンドおよび検出感度の解析を行う,

3) 臨床材料 を用いてyeast functio nal assayによるp53変異のスクリーニングと塩基配     ―381−

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列の 決定を行 い,今後の臨床適用にふまえて本法の利点,意義および問題点を検討する

材料と方法

1.細胞株および臨床材料

  細胞株゛:ヒト口腔扁平上皮癌細胞株SAS,HSC‑2,HSC‑3,くニa9‑22,KBおよびKSC‑1細 胞を 使用した .この他 に,ヒトp53発現ベクタ ーを組み 込んだラ ッ卜肝癌 細胞株WHp53 を用いた.

  臨床 材料:ゴ ヒ海道大学歯学部付属病院口腔外科において採取した22例の口腔扁平上 皮癌組織を用いた,また,非腫瘍サンプルとして,正常口腔粘膜,肉芽組織,瘢痕組織,お よび口腔扁平上皮癌組織由来の線維芽細胞を用いた,

2. yeast functional assay

  細胞 あるいは 組織から 抽出した 全RNAでRT‑PCRを行い ,p53 cDNAを増幅 した.これと p53 cDNAの両 端の配列 を持つ発 現ベクタ ーとを同時に酵母ヘ導入し,両者間で相同組換 えを 起こさせ た.これ により発 現するp53蛋白 が酵母染色体上のp53蛋白認識配列に結合 して 下流のADE2遺 伝子の転写を活性化するか否かをコ口二ーの色(白;野生型p53,赤;

変異 型p53)で判定 した.

3.被 検p53 cDNAの単離 と塩基配 列の決定

赤の酵母コロニーからプラスミドをalkalinc Iysis法によりぉ‖出し,Dyc Dcox}/4̲により被 検p53 cDNAの塩怒配列を決定した.

4. yeast functional assay法の検出感度の検定

  野 性 型p53のPCR産 物 (本研究 でp53変異を 認めなか ったKI3細胞 由来)およ び変異型 p53のPCR産物(本研究でp53変異が同定されたKSC‑1細胞由来)をそれぞれ,100:0,97:3, 94:6,90:10,87:13,83:17,62:38,42:58,33:67,0:100の割合で混合レたものについてそれ

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ぞれ4回ず つyeast functional assayを行い,赤コロニーの平均値を算出レた,

結 果 ・ 考 察

1. yeast functionalassayに よ る ヒ ト 口 腔 扁 平 上 皮 癌 細 胞 株 のp53変 異 の 検 出   既 にp53の 変 異 が 報 告 さ れ て い る4系 の ヒ 卜 口 腔 扁 平 上 皮 癌 細 胞 株(SAS,HS C‑2, HSC‑3お よ びCa9‑22細 胞 ) に お い て は , い ず れ も100%の 赤コ ロニ ーを 認め た, ま た, 赤コ 口 二 ー か ら 抽 出 し た プ ラ ス ミ ド のDNA塩 基 配 列 の 決 定 に よ り 既 知 の 報 告 と 同 一 の 変 異 が 見 い 出 さ れ た . 筆 者 が 樹 立 レ た ヒ ト 口 腔 扁 平 上 皮 癌 細 胞 株KS C‑l細 胞 に お い て も 100% の 赤 コ 口 ニ ー を 認 め , 塩 基 配 列 の 決 定 に よ りp53 cDNAの 遺 伝 子 変 異 を同 定 した ,こ れ に 対 し て ,p53変 異 が 報 告 さ れ て い な いKB細 胞 で は 赤 ゴ 、 ロ ニ ー は5% で あ っ た .

2. veast functionalassayの 非 特 異 的 バ ッ ク グ ラ ウ ン ド お よ び 検 出 感 度 の 解 析   KB細 胞 で 認 め ら れ た5% の 赤 コ ロ ニ ー が 非 特 異 的 な バ ッ ク グ ラ ウ ン ド で あ る か 否 か を 検 討 し た . ま ず9例 の 非 腫 瘍 組 織 ( 口 腔 正 常 組 織 ・ 肉 芽 組 織 ・ 瘢 痕 組 織 な ど ) に お い て yeast functio nal assayを施行すると,2.9‑10%(平均値5.2土2.7070)の赤コロニーが検出さ れ た . ヒ ト 野 生 型p53発 現 ベ ク ク ー を 組 み 込 ん だ ラ ッ ト 肝 癌 細 胞WHp53に お い て ヒ トp53 のyeast functio nal assayを施行したところ赤コロニーは7.8070であった.これらの結果,非 腫瘍 組織 に おけ る赤 コロ ニー の出 現頻 度( ノく ック グラ ウン ド)は3‑10a/oの範囲であること が示された.

  次に,ycast  functio nal assay法の検出感度を検定するために,野.|生型と変興型p53のPCR 産物 を極 々の割合に混合 してycast.functio nal assayを行った.その結果,サンプル中の変異 型p53 PCR産 物 の 割 合 と 赤 コ ロ ニ ー の 比 率 は 正 の 相 「矧 関係 を 示し た. また ,野 性型p53の PCR産 物 の み の 場 合 ,4.8土1.8%の 赤 コ ロ ニ ー が 検 出 さ れ た の に 対 し , 野 性 型 と 変 興 型 の p53 PCR産 物 を94:6の 割 合 で 混 合 し た 場 合 ,9.1土1.3% の 赤 コ ロ ニ ー が 検 出 され 危険 率 0.01以 下 で 有 意 差 が 認 め ら れ た , こ の 結 果 よ り , 機 能 的 な 変 異 の あ るp53 mRNAが サ ン プ ル 中 に6% 以 上 あ れ ばyeast functional assayで 検 出 可 能 で あ る こ と が 示 さ れ た .

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3.  yeast functional assayに よ る ヒ 卜 口 腔 扇 平 上 皮 癌 組 織 のp53変 異 の 検 出   22例のヒト口腔扁平上皮癌組織についてyeast functional assay法を行った.赤コロニー が20% 以上認められたのは22例中14例で,複数の赤コ口ニーの塩基配列決定によりp53の 欠失,ナンセンス変異あるいはミスセンス変異がクローナルに同定された.17%の赤コ口 ニーを示レた例では赤コロニー6個中2個に同一のp53変異を認めた.しかレ,13,9および 8%の 赤コロ ニー を示 レた 組織 ではp53 cDNAにク 口ー ナル な変 異は認められずランダム な変異が検出された.これらの結果から,yeast functional assay法におけるp53変異のcut‑off 値は赤コロ二土の比率20%とするのが妥当と判断された.

まとめ

  以上 より ,本 法は ,1)サンプル中に機能的な変異のあるp53 mRNAが6%以上あれば検 出 可能 であ り、2) 多くの 症例 で塩 基配 列を 決定 する こと なレ にp53の変 異を 検出でき ることから,臨床適用に十分な検出感度ならびに,迅速性と簡便性を兼ね備えていると考 えられた,

(5)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨

     学位論文題名

Yeast functional assay 法によるヒト口腔扁平上皮癌における p 53 遺伝子変異の検出感度と診断規準

   審査は、審査員全員の出席のもとに、申請者に対し、口頭試問により、提出 論 文 の 内 容 と そ れ に 関 連 し た 学 科 目 に つ い て 行 わ れ た 。    癌抑制遺伝子p53 の変異はヒト腫瘍において最も高頻度にみられる遺伝子変 異で、癌の悪性度の指標のーっとなるものと考えられている。p53 変異の検査 法としてはこれまでにも幾っかの方法が開発されているが、いずれも精度や信 頼性、簡便性などに問題があった。yeast functional assay 法は、酵母の旺 盛な遺伝子相同組換え能を利用したもので、染色体上にp53 夕ンパク認識配列 を組込んだ酵母株を用いて、p53 の転写活性に係わる機能異常を酵母コ□ニー の色彩の変化で検出する方法であり、従来の検査法に比べて多くの利点を有し ている。

   本研究は、ヒト口腔扁平上皮癌のp53 変異の検出における本検査法の有用性 な らび に臨床 応用 に当 たっ ての問 題点 を明 らかに する 目的 で行 われた。

   まず、本検査法を用いて、口腔扁平上皮癌細胞株におけるp53 の変異の検出 を試み、これまでに p53 の変異が確認されている細胞株(SAS ,HS く冫12 ,HSC‑3 およびCa9‑ 22 細胞)ではいずれも100 %が赤コ口ニ―であり、一方p53 変異が 報告されていないKB 細胞では、赤コロニ了は5 %に過ぎないことを示した。ま た、赤コ口ニ―から抽出したプラスミドのDNA 塩基配列の決定により、既知の 報告と同一の変異を確認した。次に、申請者が樹立し、p53 変異の有無が確認 されていないヒ卜口腔扁平上皮癌細胞株 KSC‑1 細胞について検査し、 100 %が 赤コ口ニ―であり、塩基配列の決定により予想通りp53 cDNA に遺伝子変異が 同定されることを示した。

  KB 細胞で認められた5 %の赤コ口ニーが、本検査法の非特異的なバックグラ

靖  

  哲

塚 宮

田 内

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ウンドであるかいなかを検討するため、非腫瘍組織である口腔正常組織、肉芽 組織、瘢痕組織、繊維芽細胞と、ヒト野生型p53発現ベク夕一を組み込んだラ ツ卜肝癌細胞WHp53とを用いて実験を行い、赤コ口ニ一検出の割合は、前者で 2.9‑10%(平均値5.2土2.7%)、後者で7.8%であったことから、非腫瘍組織 における赤コ口ニーの出現頻度、すなわち本検査法の非特異的なバックグラウ ンド は3‑10%の範囲であることを明らかにした。またPCRの手技とDNAポリメ ラーゼの種類とを検討し、非特異的なバックグラウンドをできるだけ低くする うえで、Pfuポリメラーゼとホットス夕一トの組み合わせが最も適切であるこ とを明らかにした。

  次に 、本検査法の検出感度を検定する目的で、.野性型p53と変異型p53の PCR産物を種 々の割合に混合して実験を行い、サンプル中の変異型p53 PCR産 物の割合と赤コ口ニーの比率とは正の相関を示すことを明らかにした。さらに、

野性 型p53のPCR産物の みの場合と 野性型と変 異型のp53 P.CR産物を94:6の 割合 で混合した 場合とでは、赤コ口ニ―の出現頻度はそれぞれ4.8士1.8%、

9.1土1.3%で、危険率0.01以下で有意差があることを示し、サンプル中に機能 的な 変異のあるp53 mRNAが6%以 上あれば、 本検査法で検出可能であること を明らかにレた。

  これらの結果をもとに、ヒト口腔扁平上皮癌組織22例について本検査を行い、

赤コ口ニーが20%以上の14例において、塩基配列の決定により、p53の欠失や ミスセンス変異などの変異がク口一ナルに同定されることを確認した。また、

赤コ口ニーが17%であった腫瘍では赤コ口二一6個中2個に同一のp53変異を認 めたのに対し、赤コ口ニーが13,9および8%であった腫瘍ではいずれもランダ ムな変異であることを確認し、本検査法におけるp53変異のcut‑ off値は赤コ 口ニーの比率を20%とするのが妥当で、10‑ 20%の場合は、塩基配列の決定が 必要なことを明らかにした。

  このように、本研究は、、本検査法が多くの症例で塩基配列を決定することな し にp53の変異を 検出でき、 ,しかもサ ンプル中に 機能的な変 異のあるp53 mRNAが6%以上あれば検出可能で、従来の検査法に比べて検出感度が高く、臨 床適用に十分な検出感度と迅速性、簡便性を兼ね備えた検査法であることを示 した。

  論文の審査にあたって、論文申請者による研究の要旨の説明後、本研究なら びに関連する研究について、主査および副査より質問が行われた。いずれの質 問についても、論文申請者から明快な回答が得られ、また将来の研究の方向性 についても具体的に示された。本研究は、ヒト口腔扁平上皮癌のp53変異の検 出に おけるyeast functional assay法の有用性ならびにその精度と判定規準 を明らかにし、臨床応用への道を開いたことが高く評価された。本研究の業績 は、口腔外科の分野はもとより、関連領域にも寄与するところ大であり、博士(歯 学)の学位授与に値するものと認められた。

参照

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