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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 )    村 上 正 紘

学 位 論 文 題 名

    Evaluation in tumor mlCroenVironmentaftermulti‐ kinaSe inhibitorSOraf・ enibinhumanrenalCellCarClnomaXenograftby     pOSitronemlSS10ntomographyprobeS

(陽電 子放射断層撮影用放射性トレーサーによるヒト腎細胞癌移植モデルにおける     マ ル チ キ ナ ー ゼ 阻 害 剤sorafenib治 療 後 の 腫 瘍 微 小 環 境 の 評 価 )

学位論文内容の要旨

  近 年 、多 数 の がん の 分子 標 的 治療 薬 が 臨床 応用さ れている 。その治 療反応は 腫 瘍や 薬 剤の 種 類 によ り 個々 に 異 なる た め、 患者 個別の治 療反応評 価が必要 と さ れて い る。 中 で も、 腫 瘍微 小 環 境の 変 化が 治療 選択に影 響を及ば すと考え ら れ てい る が、 分 子 標的 治 療薬 に 対 する 腫 瘍微 小環 境の反応 の評価法 は未だ確 立 し てい な い。Positron Emission Tomography(PET)は非 侵襲的な 全身の機能 画 像 評価 法 とし て 、 近年 で は医 療 の みで な く獣 医療 において も、特に 腫瘍臨床 に お い て 利 用 さ れ て い る 検 査 法 で あ る 。 低 酸 素 領 域 を 評 価 可 能 な 18F̲fluoromlsonidazole(FMISO)や、細胞増殖能を評価可能な18F̲fluorothymidine

(FLT)な ど 、 ト レ ー サ ー の 種類 に よ り様 々 な機 能 を 評価 出 来 る特 徴 を持 っ て い る。 そ こで 、 抗 血管 新 生お よ び 細胞 増 殖抑 制作 用の複数 の効果を 示す分子 標 的 治 療 薬 で あ る マ ル チ キ ナ ー ゼ 阻 害 剤sorafenibを 対 象 疾 患 で ある 腎 細 胞癌

(RCC)マ ウ ス 移 植 モ デ ル に 投 与 し 、 早 期 の 腫 瘍 微 小 環 境 の 変 化 を、FMISOお よ びFLTを 用 い て 評 価 可 能 か ど う か を 組 織 学 的 評 価 と 比 較 し て検 討 す る事 を 目的とした。

  第1章 で は、 血 管 豊富 なRCC移 植 腫 瘍モ デ ルに 対 し て、sorafenibの 抗 血管 新 生効果 による血流 低下、 腫瘍飢餓 などの 腫瘍内微 小環境の 変化を組織学的に 評 価し 、 さら に 、 その 変 化をFMISOが 反 映 可能 か どう か を 明ら か にし た 。 雄性 BALB/c nu/nuマウ ス の 背側 皮 下に ヒ トRCC細 胞 株(A498) を 移植 し 、腫 瘍 モデ ル を作 成 した 。 腫瘍 径が12 mmに達 した時点で 治療群(sorafenib 80 mg/kg連日 経口投 与)と対照 群に分け 、治療を 開始した 。組織学 的評価と して、治療1、2、 3および7日後に各群 (n二ニ5) にpimonidazole投与し、2時間後に屠殺し、血管密 度 (CD31免 疫 組 織 化 学 (IHC)) 、 低 酸 素 領 域 (pimonidazole IHC)お よ び壊 死 領域(H&E染 色 ) をそ れ ぞれ 評 価 した 。 伽vivo低 酸 素 イメ ー ジン グ の 為に 、

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治療 3 および7 日後にマウス(n 二ニ5 、各群)にFMISO 投与し、4 時間後に屠殺し、

FMISO ARG に より 腫瘍内低酸素領域を定量評価した。治療開始後、毎日腫瘍 体積を測定し、腫瘍成長曲線を作成した。その結果、組織学的評価においては、

腫瘍内の血管密度が治療開始後 1 日より有意に減少し、それに続いて、治療開 始後 2 日目よ り腫 瘍内の低酸素領域および壊死領域の有意な増加が認められ た。FMISO 低酸素イメージングでは、腫瘍内 FMISO 集積は治療群において有意 に増 加し 、 FMISO ARG において、治療3 日後の治療群で 10 倍、治療7 日後の治 療群で 4 倍に腫瘍内FMISO 集積が増加した。腫瘍体積にはsorafenib 治療前後で 有意な変化は認められなかった。これらの結果は、RCC においてsorafenib 治療 による急速な腫瘍内微小血管の減少が早期に腫瘍内低酸素領域の発生を起こ し、それに続いて壊死領域が増加した事を示す。また、FMISO PET がRCC にお いてsorafenib 治療の抗血管新生効果に対する早期の腫瘍内微小環境の反応を 反映可能であることが示唆された。この事は、FMISO PET が 腫瘍飢餓 を反映 する事で、生体での非侵襲的な sorafenib 治療効果評価が出来る可能性を示して いる。

   第2 章では、第 1 章と同様の腫瘍( A498 )モデルにおいて、FLT が細胞増殖抑 制作用を含むマルチキナーゼ阻害剤 sorafenib 治療後の細胞増殖能の変化を反 映可能かどうかを、細胞増殖能マーカーであるKi‑67 labeling index と比較して 検討した。治療 3 および7 日後にマウス(n= ニ 5 、各群)に3H̲FLT 投与し、2 時間 後に屠殺した。腫瘍組織を摘出し、凍結切片を作成、隣接切片を用いて、3H̲FLT ARG およびKi‑67 IHC を行った。まず初めに、3H̲FLT 集積とKi‑67 陽性細胞の分 布を比較検討し、続いて、定量評価として腫瘍内3H̲FLT 集積量とKi‑67 labeling index を計算し、比較検討した。治療開始後、毎日腫瘍体積を測定し、腫瘍成 長曲線を作成した。 3H̲FLT 集積の分布の結果としては、治療後 3 および7 日目 で共 に治 療群 にお いてFLT 集積量の明らかな増加を認めた。それに対して、

Ki ー67 陽性細胞の分布の結果としては、治療後3 および 7 日目において治療群お よび対照群の問に目立った変化が認められなかった。 3H̲FLT 集積の定量評価 の結果としては、分布の評価と同様に、腫瘍内の 3H̲FLT 集積は治療群におい て有意に増加し、治療3 日後の治療群で2.7 倍、治療7 日後の治療群で2.6 倍に腫 瘍内の 3H̲FLT 集積が増加していた。 Ki‑67 labeling index および腫瘍体積には sorafenib 治療前後で有意な変化は認められなかった。これらの結果は、予想に 反して、RCC においてsorafenib 治療が早期のFLT 集積の増加を示す事を明らか にした。そして、FLT 集積の結果と細胞増殖能を評価するKi ―67 labeling index および腫瘍体積の結果には不一致が認められた。しかしながら、この事から、

FLT PET が細胞増殖能に変化を示さない治療に対しても、生体での非侵襲的な sorafenib 治療効果評価に役立っ可能性が考えられた。

   本研究の成果より、 FMISO PET はこの実験モデルにおいて、 腫瘍飢餓 を評 価可能な検査である事が示され、治療効果評価法にもなり得る事が示唆され

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(3)

た。一方で、この実験モデルにおける治療後早期の急激なFLT 集積の増加は、

細胞増殖能を反映していないと考えられたが、治療効果を反映している可能性 があり、今後の詳細なメカニズムの検討によっては、細胞増殖能と異なる評価 法として、治療に有用な情報を与える事が期待された。これらの事により、PET 検査が治 療効果評価 だけでなく、腫瘍微小環境を評価する事が可能であり、

FMISO は 腫瘍飢餓 を評価する事で抗血管新生療法の患者個別の治療法選択 に有用である事が示された。また、FLT には細胞増殖能と異なる治療効果評価 法となる可能性がある事が考えられた。さらに今後の研究により、FMISO およ びFLT を用いて腫瘍微小環境評価を行い、分子標的治療における患者個別に対 応した最適な治療が、医療のみならず獣医療においても可能となることが期待 される。

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学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

教授 教授 教授 准教授

滝口 稲波 久下 山崎

学 位 論 文 題 名

満喜     修 裕司 真大

    Evaluation in tumor microenvlronment after multi‑kinase inhibitor sorafenib in human renal cell carcinoma xenogra二ftby     pOSitronemiSSiontomographyprobeS

(陽電 子放射断層撮影用放射性トレーサーによるヒト腎細胞癌移植モデルにおける     マ ル チ キ ナ ー ゼ 阻 害 剤 sorafenib治 療 後 の 腫 瘍 微 小 環 境 の 評 価 )

  がんの分 子標的療 法の治療反応は個々に異なり、患者個別の治療反応評価が 必要とさ れている 。中でも、腫瘍微小環境の変化は治療選択に重要であるが、

分子標的 治療後の 腫瘍微小 環境評価 法は確立し ていない。Positron Emission Tomography(PET)は 非侵襲的 機能画像 評価法と して、医療 およぴ獣 医療に利 用可能であり、低酸素領 域トレーサーである18F‑fluoromlsonidazole(FMISO) や細胞増殖能トレーサーである18F̲fluorothymidine(FLT)などを用い、様々な 機能 を評価で きる。そ こで、抗 血管新生お よび細胞 増殖抑制 作用を示 すマル チキナー ゼ阻害剤sorafenibを腎細胞 癌(RCC)マウ ス移植モデルに投与し、早 期の 腫 瘍 微小 環 境変 化 をFMISOお よびFLTを用 い て 評価 可 能か どうか を組織 学的評価と比較検討した。

  第1章では 、sorafeni.bの抗血管新生効果によるRCC移植腫瘍内の変化を組織 学的に評 価し、FMISOが それを反 映するか 検討した。雄性BALB/c nu/nuマウス にヒトRCC細 胞株(A498) を移植し 、腫瘍径 が12 mmに達した時点でsorafenib 治療 群と対照 群に分け 治療を開 始した。組 織学的評 価として 治療1、2、3、7 日後に各 群をpimonidazole投与2時間後に 屠殺し、 血管密度(CD31免疫組織化 学(IHC))、 低酸素領 域(pimonidazole IHC)、お よび壊死領域(H&E染色)

を評価し た。次に 、治療3、7日後に各 群をFMISO投与4時間後に屠殺し、FMISO ARGに よ り 腫瘍 内 低酸 素 領 域を 評 価した。ま た腫瘍成 長曲線を 同時に作 成し た。その 結果、組 織学的評 価では、 血管密度が 治療1日後より有意に減少し、

治療2日後より 低酸素領 域および 壊死領域の 有意な増 加が認め られた。FMISO ARGで は 、 腫瘍 内FMISO集 積は 治 療群で 治療3日後に10倍、7日後 に4倍に有 意 に増 加 し た。 一 方、 腫 瘍 体積 に 有意 な 変 化は な か った 。 これ らの結 果は、

sorafenib治療による急速な血管減少が早期に低酸素領域を発生させ、続いて壊 死領域が 増加した 事を示す ものであ る。また、FMISOがRCCにおいてsorafenib

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治 療 後 早 期 の 腫 瘍 内 微 小 環 境 変 化 を 反 映 可 能 で あ る 事 が 示 唆 さ れ た 。   第2章 では 、第1章と同様のモデルを用い、sorafenib治療後の細胞増殖能を FLTとKi‑67 IHCにより比較検討した。治療3、7日後に各群を3H̲FLT投与2時間 後 に屠 殺し 、腫瘍の隣接凍結切片を作成して3H̲FLT ARGおよびKi‑67 IHCを行 っ た。 まず 、3H̲FLTとKi‑67陽 性細 胞の 分布を評価後、3H̲FLT集積量とKi‑67 labeling indexを定量的に比較検討した。また腫瘍成長曲線も作成した。分布の 評 価の 結果 、治療後3、7日目で治療群のFLT集積分布の明らかな増加を認めた の に対 し、Ki‑67陽性細胞分布に目立った変化はなかった。定量評価の結果、

腫瘍内3H̲FLT集積は、治療群で治療3日後に2.7倍、7日後に2.6倍に有意に増加 していた。一方、Ki‑67 labeling indexおよび腫瘍体積に有意な変化はなかった。

こ れら の結 果より、予想に反し、RCCにおいてsorafenib治療後早期にFLT集積 が増加し、Ki‑67 labeling indexおよび腫瘍体積の結果と一致しない事が示され た。

  本研 究の 成果より、FMISO PETはこのモデルにおいて 腫瘍飢餓 を評価可 能 であ り、 一方で、治療後早期の急激なFLT集積増加は、細胞増殖能ではない 治 療効 果を 反映している可能性が示された。以上より、PET検査は腫瘍微小環 境評価が可能であり、FMISOは 腫瘍飢餓 を評価し、抗血管新生療法の患者個 別 の治 療法 選択に有用である事が示された。また、FLTには細胞増殖能と異な る 治療 効果 評価法となる可能性が考えられた。PETを用いて腫瘍微小環境評価 を 行い 、分 子標 的治 療に おけ る患者 個別 治療が、医療および獣医療において 可 能と なる こと が期 待さ れる 。よっ て、 審査員一同は、上記博士論文提出者 村 上正 紘氏 の博士論文は、北海道大学大学院獣医学研究科規程第6条の規定に よる本研究科の行う博士論文の審査等に合格と認めた。

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参照

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