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2015 年度博士前期課程学位論文要旨 別紙様式 3( 修士申請者用 ) 学位論文題名 ( 注 : 学位論文題名が英語の場合は和訳をつけること ) モンテカルロシミュレーションを用いた PET/CT における散乱フラクションの推定 学位の種類 : 修士 ( 放射線学 ) 首都大学東京大学院人間健康科

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別紙様式1(修士申請者用)

修 士 学 位 論 文

(注:学位論文題名が英語の場合は和訳をつけること。)

モンテカルロシミュレーションを用いた

PET/CT

における散乱フラクションの推定

(西暦) 2016 年 2 月 5 日 提出

首都大学東京大学院

人間健康科学研究科 博士前期課程 人間健康科学専攻

放射線科学域

学修番号:14897621

氏 名:細川 翔太

指導教員名: 福士 政広 )

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別紙様式3(修士申請者用)

2015

2015

2015

2015 年度

年度

年度

年度

博士前期

博士前期

博士前期

博士前期課程学位論文要旨

課程学位論文要旨

課程学位論文要旨

課程学位論文要旨

注:1 ページあたり 1,000 字程度(英語の場合 300 ワード程度)で、本様式 1~2 ページ(A4 版)程度とする。

Positron Emission Tomography(PET)の画質は、撮像条件や体格により画質が大きく異な る。画質評価指標である雑音等価計数率(Noise Equivalent Count Rate:NECR)を撮像対象 の体積で除した Noise Equivalent Count Density(NECdensity)が一定となるように撮像時間を

調節することで体格に依存しない一定の画質を得られるとの報告がされているが、Body Mass Index(BMI)が高い被写体では撮像時間の最適化による画質改善効果が不十分であり、 視覚的評価結果と乖離が生じている。この原因の 1 つとして、NECR を算出するために必要 な散乱フラクション(全同時計数における散乱同時計数の割合)を体型の異なる全ての被 写体に対して一定の値(固定値)を使用していることが挙げられる。これは、PET 装置で 使用されるシンチレータのエネルギー分解能に制限があるため、被写体ごとの散乱フラク ションを実測することは困難であり、画質評価の精度を制限している因子となっている。 そこで、本研究はモンテカルロシミュレーションを用いて被写体ごとの散乱フラクショ ンを推定することを目的として以下の検討を行った。まず初めに、シミュレーション下に おいて実機同様の PET 装置を模擬して、その体系の妥当性の検証を行った。検証では、実 測およびシミュレーションで得られたサイノグラムを画像再構成して、得られた PET 画像 を比較した。次に、従来法である NEMA 規格の散乱体ファントムから得られたサイノグラ ムの内挿より散乱成分を推定する方法(内挿法)と提案法であるシミュレーションの計算 過程より散乱成分を推定する方法(直接法)の比較を行った。最後に、人体模擬ファント ム(CTU-41、京都科学)の散乱フラクションを求めて従来の固定値と比較検討した。 シミュレーションおよび実機より得られた PET 画像において、ホット球の最大値を示す ピクセルの位置およびバックグラウンド対ホット球のカウント比が良好に一致し、本研究 で作成したシミュレーション体系の妥当性を確認した。内挿法と直接法を用いた 20 cmφの 散乱体ファントムにおける散乱フラクションは実測値と同等の値となり、また、10~50 cm φの散乱体ファントム場合においても両者の算出法によって得られた結果に有意な差(最 大誤差 2.3 %)は確認されず、提案法である直接法の妥当性を確認した。直接法により推定 した人体模擬ファントムにおける散乱フラクションの検討では、撮像領域の違いにより変 動があり(最大 13.3 %の差)、その平均散乱フラクションは 20 cmφ散乱体ファントムの値 よりも 5.7 %低値を示した。そのため、従来法である散乱体ファントムの散乱フラクション を用いて算出した臨床画像の NECdensityは過小評価している可能性が示唆された。 本研究で構築した計算体系は、CT 画像および PET 画像の情報を使用して計算することが 可能であり、体格の異なる被写体ごとの散乱フラクションの推定が可能であることを示し た。これにより、本研究は、PET 臨床画像の画質評価指標に用いられる NECdensityの算出精

度の向上に寄与すると考えられる。

学位論文題名

(注:学位論文題名が英語の場合は和訳をつけること) モンテカルロシミュレーションを用いた PET/CT における散乱フラクションの推定 学位の種類: 修士(放射線学) 首都大学東京大学院 人間健康科学研究科 博士前期課程 人間健康科学専攻 放射線科学域 学修番号 14897621 氏 名: 細川 翔太 (指導教員名:福士 政広)

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1 内容 内容 内容 内容 第 1 章 序論 ... 2 1.1 研究の背景 ... 2 1.2 研究の目的 ... 3 1.3 研究の構成 ... 3 第 2 章 PET の原理および各種技術... 4 2.1 PET の概要 ... 4 2.2 PET の歴史 ... 5 2.3 PET の原理 ... 5 2.4 PET の構成 ... 9 2.5 各種補正法 ... 10 2.6 PET における定量 ... 15 第 3 章 PET の性能試験と画質評価... 16 3.1 PET の性能試験 ... 16 3.2 PET 画質評価 ... 19 第 4 章 医学分野に応用されるモンテカルロシミュレーションコード ... 24 4.1 シミュレーションコードの例 ... 24 4.2 ボクセルファントム ... 25 4.3 FSD ... 27 第 5 章 シミュレーションによる散乱フラクションの推定 ... 29 5.1 目的 ... 29 5.2 方法 ... 29 5.3 結果 ... 36 5.4 考察 ... 44 5.5 結論 ... 47 第 6 章 まとめ ... 48 参考論文 ... 49 謝辞 ... 52

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2 第 1 章 序論

1.1 研究の背景

陽電子断層撮影 Positron Emission Tomography(PET)は、分子イメージングの中心的な役 割を果たす検査法であり、疾患の早期発見、再発診断、病期診断そして治療効果判定など において有用性が報告されている1-4) 。PET は古くから行われてきたシンチグラフィに比べ 感度、分解能、定量性に優れ Computed Tomography(CT)による形態画像と重ね合わせる ことでよりスループット、診断精度が向上し全国の医療機関に普及した 5) 。日本核医学会 PET 核医学分科会によると、2015 年 9 月 5 日時点において 367 施設において PET 検査が行 われている。PET 検査の中でも特に18

F-Fluoro deoxy glucose(FDG)-PET は全身の疾患に有 効であり、現在において早期胃がんを除くすべての悪性腫瘍(悪性リンパ腫を含む)、てん かん、心疾患(虚血性心疾患およびサルコイドーシス)が保険適応となっている6) 。 さらに、新しい抗がん剤などのがん治療法の治験における評価基準として FDG-PET が用 いられている。治験では多施設の協力のもとに共同研究を進め、大量の症例数を迅速に集 めることが可能となる。しかし、各施設における PET 画像の画質が標準化されていなけれ ば正確に治療効果を評価することは困難であり、ある施設の結果が他の施設に当てはまる とは言い切れない。PET の画質はトレーサーの投与量、装置の種類(画像再構成法や各種 補正法)、撮像時間、投与後の待機時間などに影響を受ける。特に装置の違いによる影響は 大きく、撮像条件を統一するのは困難であり得られた画像を評価することで一定の画質が 担保されているかを確認することが現実的である。日本においては、FDG-PET/CT において 最適撮像条件の検討のためのファントム実験法や臨床画像の評価に用いる物理学的指標を PET 撮像法標準化ワーキンググループにより提案され7)、この物理学的指標を用いて各被写 体の体格に依存しない画質を得る撮像条件の検討がいくつか報告されている8-12) 。放射線科 医による視覚評価は臨床画像の画質評価において最も重要であるが、視覚評価による画質 の標準化は困難であり視覚評価との相関が強い物理学的指標を高精度に算出することが求 められる。しかし、上記のガイドラインにはなお不十分な点があり、改良する余地がある。 PET における物理学的指標には雑音等価計数率 Noise Equivalent Count Rate(NECR)が広く 用いられており、NECR の中にはボディファントムを使用して求める Noise Equivalent Count Phantom(NECphantom)や臨床画像を使用して求める Noise Equivalent Count Patient(NECpatient)、

Noise Equivalent Count Density(NECdensity)が提案されている。それぞれの物理学的指標を算

出する際に、被写体毎の散乱フラクション(3.1.3 項参照)が必要であるが、実際に使用さ れている散乱フラクションは NEMA NU 2-2007 で規定された散乱体ファントムから求めた 装置固有の値(固定値)であり、ボディファントムや臨床において被写体毎に測定したも のではない。散乱線は放射能分布や減弱体の構造に依存するため、固定値を用いることは 不適切であると考えるが、個別のファントムや臨床撮像で散乱線を測定することは非常に 困難であるため、やむを得ず固定値を用いている7) 。このため、これらの物理学的指標と視 覚的評価結果が合致しない1つの原因と考えられている。

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3 1.2 研究の目的 実測することが困難な被写体毎の散乱フラクションを、モンテカルロシミュレーション により推定した。本研究では、その基礎検討として以下の項目について検討した。まず第 一に、シミュレーション下において PET 装置の模擬とその体系の検証を行った。次に、シ ミュレーションの計算過程より散乱成分を推定する方法(直接法)の妥当性を検証した。 最後に、直接法を用いて各種ファントムにおける散乱フラクションを求め、固定値との違 いを明らかにした。これらから、被写体毎の散乱フラクションが推定可能であることを示 し、散乱フラクションへ影響する因子と、その大きさに関して検討した。 1.3 研究の構成 第 1 章では、本研究の背景および目的を含めた概要について記述した。 第 2 章では、PET の原理および技術について記述した。PET 装置を模擬するにあたり、構 成や原理について理解することは重要であると考える。 第 3 章では、PET の性能評価項目および評価法の一部について記述した。本研究の主なテ ーマである散乱フラクションの算出方法およびその問題点について言及した。 第 4 章では、モンテカルロシミュレーションコードの一例と特徴について記述した。 第 5 章では、第 3 章で挙げた散乱フラクションの問題点を解決するべくモンテカルロシミ ュレーションを用いて、PET 装置の模擬と検証おこなった。その計算体系を用いて各ファ ントムにおける散乱フラクションを明らかにした。 第 6 章では、本研究内容についてのまとめを記述した。

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第 2 章 PET の原理および各種技術 2.1 PET の概要 陽電子断層撮影(PET)は、名称の通り陽電子を用いることで断層画像を得る検査法であ る。陽電子は陰電子と対消滅し 511 keV の消滅放射線を 180°反対方向に放出する。この 2 本の消滅放射線を装置の検出素子によって同時に検出し、検出した 2 つの検出素子を結ぶ 線上に陽電子が存在しているという仮定のもと画像化を行う。陽電子を放出する中性子不 足核(11 C、13N、15O、18F など)を酸素、糖分、アミノ酸などの化合物中に置換することで トレーサーとし、体内を循環させることでその分布を機能画像として得ることができる。 同様な検査として古くから行われてきたシンチグラフィは単一光子により画像化を行うも ので、陽電子からの消滅放射線により画像化を行う PET はこのシンチグラフィと比較し、 ①感度が高い、②分解能が良い、③被曝が少ない、④定量性が良い、⑤低原子番号の核種 を用いることで生体内物質に標識が可能といった利点がある。しかし陽電子放出核種は比 較的半減期が短く検査施設内のサイクロトロンにより合成を行わなければならず、膨大な 費用を要することが導入の妨げとなっていた。2005 年 8 月に日本メジフィジックス(株)より FDG のデリバリー供給が開始され、サイクロトロンを持たない施設においても検査が可能 となり、検査可能施設の数が増加した。2015 年 9 月の時点においてはサイクロトロン保有 施設(149 施設)よりもデリバリー施設(218 施設)が多い(図 2.1.1)。この PET 検査施設 の増加も FDG 検査の保険適応拡大へ貢献した要因の一つである。条件は付くものの概ね悪 性腫瘍(早期胃がんを除き、悪性リンパ腫を含む)、てんかん、心疾患(虚血性心疾患およ びサルコイドーシス)に対して認められている。他に保険適応となっている15 O-酸素ガスや 13 N-アンモニアによる検査や11C-メチオニンを始めとする保険適応外の放射性薬剤を使用し た検査も行われている5) 。これらの薬剤の有用性を評価し、普及させることが PET 検査の 更なる発展につながると考えらえる。 図 2.1.1 PET 施設数の推移

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5

(引用元:INNER VISION/2009.10、日本核医学会 PET 核医学分科会) 2.2 PET の歴史

世界初のヒト用 PET 装置が 1975 年にアメリカのワシントン大学で開発された13)

。この装 置は PETT III と呼ばれ 48 個の NaI(Tl)を検出器として用いており、6 角形状に配置され た。検出器は回転運動と各辺に沿った平行運動を行い解像力はおよそ 20 mm であった。そ の後、40 年間にシンチレータを NaI(Tl)から Bi4Ge3O12(BGO)、Lu2SiO5(LSO)へ置き

換え Time of Flight(TOF)、Point Spread Function(PSF)など新しい技術が開発され、現在 の解像力は 3~4 mm となっている。

3D 収集の PET の研究は 1980 年末より始められ14)、1990 年代にいくつもの 2D・3D モー ドの切り替えが可能なセプタ除去可能型 PET 装置(CTI Exact HR、GE Advance など)が製 品化された。3D 収集は 2D 収集よりも体軸方向中心において感度が 7~8 倍高いとされ低被 曝化、短時間収集が可能となった。その後の技術の改良もあり現在の臨床 PET の地位を確 立させた。(図 2.1.2) 図 2.1.2 PET 断面解像力の推移 (引用元:http://messena.la.coocan.jp/VM/MITVM/PET/TANAKA04/text10.html) 2.3 PET の原理 2.3.1 陽電子崩壊 陽子の質量は中性子の質量よりわずかに小さいので、単独の陽子が中性子に壊変するこ とはない。しかし、原子核の中では陽子数が中性子数に比べて多い場合、クーロン力によ る反発のエネルギーが高くなり、陽子が中性子に壊変した方がエネルギー的に安定になる

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6 場合がある。このとき陽子は中性子に変わり、陽電子とニュートリノが放出される15) 。 p → n + β+ +ν 2.3.2 陽電子飛程 陽電子の最大エネルギーEmax はβ+壊変前後における中性原子のエネルギーの差から 1.022 MeV だけ差し引いた分となり、陽電子の放出エネルギー分布は 0 から Emaxまで連続的 に分布するが約 Emax/3 で最大頻度を持つ。陽電子はこのエネルギーに応じた飛程を持ち、 わずかながら分解能の劣化をもたらす(図 2.3.2.1) 。 図 2.3.2.1 陽電子の飛程16)

近年、登場した Positron Emission Tomography/Magnetic Resonance Imaging(PET/MRI)で は被写体は静磁場の中に置かれることになり、当然そこから放出される陽電子も磁界の影 響を受け、飛程は制限される。しかし、現在製品化されている MRI の静磁場強度(3T)と 比較的低エネルギーの陽電子を放出する18 F ではそれによる空間分解能の向上は難しい17)。 2.3.3 電子・陽電子対消滅 陰電子と陽電子が衝突すると互いの消滅し、2 つの電子の静止質量に相当するエネルギー を消滅放射線として放出する。互いの運動エネルギーが厳密に 0 である場合、2 本の消滅放 射線は 180°反対方向へ放出され運動量保存則が成り立つ。 2.3.4 角度揺動 上記の電子・陽電子対消滅は実際には 180°方向からずれる。これは 2 つが衝突する時点 において電子および陽電子のどちらか一方あるいは双方が運動エネルギーを少なからず持 っているためである。この現象を角度揺動といい、その大きさは 0.5°程度であると報告さ れている18)。図 2.3.4.1 に示すように PET のガントリー径が大きくなるほど分解能へ与える 影響は大きくなり、全身用 PET の場合(リング径 D=90 cm、θ=0.5 とした場合)1.96 mm の誤差が生じる。ガントリー径の小さい小動物用 PET であれば 2 mm 以下の分解能も可能

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7 であるがヒト用の全身を対象とした装置では、角度揺動による制限を大きく受ける。 図 2.3.4.1 角度揺動による LOR と真の対消滅座標の乖離19) 2.3.5 同時計数 陽電子飛程や角度揺動などの誤差を含むものの、陽電子由来の 2 本の消滅放射線を検出 した 2 点を結ぶ線 Line Of Response(LOR)上に陽電子放出核種(トレーサ)が存在すると 仮定して画像再構成を行う。2 本の消滅放射線はある短い時間幅の中で検出しなければ、別 の陽電子由来の消滅放射線どうしを同時計数する確率が高くなる。この同時計数時間幅(タ イムウィンドウ)をいかに短くすることができるかで、後述する偶発同時計数のカウント の含有率が決まる。このタイムウィンドウは装置が 2 つの信号が同時計数回路により判別 されるまでの時間分解能により決定され、シンチレータの種類や光電子増倍管 Photo Multiplier Tube(PMT)の性能等に左右される。PET で計測されるカウントの種類を以下に 示す。 シングルス:放出される 2 本の消滅放射線のうち片方が検出されたもの。 全同時計数:以下の真の同時計数、散乱同時計数そして偶発同時計数の合計。 真の同時計数:2 本の消滅放射線が被写体内で散乱を起こさず、検出素子で全エネルギーを 付与され同時計数されたもの。トレーサーの分布を反映しているのはこの真の同時計数だ けである。 散乱同時計数:片方または両方の光子が被写体または PET 装置などで散乱を起こし同時計 数されたもの。散乱後に検出素子で検出されるため、厳密にはエネルギーが 511 keV より低 下しているが同時計数エネルギーウィンドウの間であれば同時計数とされる。装置のエネ ルギー分解能が良いほどエネルギーウィンドウを狭め散乱フラクション(全同時計数に対 する散乱同時計数の割合)を減らすことが可能である 20) 。しかし、近年シンチレータとし て用いられている BGO や LSO はエネルギー分解能が比較的悪く 511 keV の単一エネルギー の光子を検出するにもかかわらずエネルギーウィンドウは 375~650 keV 程度に設定されて

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8 いる。エネルギー弁別で除去しきれない散乱線成分は散乱補正法により補正する 20) 。カウ ント数は放射能濃度に比例する。 偶発同時計数:別の陽電子放出核種由来の消滅放射線どうしを同時計数したもの。偶発同 時計数の LOR はトレーサー分布を反映しておらず雑音となる。放射能濃度の 2 乗に比例す るため、放射能濃度が高くなると急激に増加し信号対雑音比 Signal to Noise Ratio(SNR)を 悪化させる 20) 。同時計数時間幅(タイムウィンドウ)に比例するため、同時計数時間幅を 狭めるほど偶発同時計数を抑えることができる 20) 。偶発同時計数はシングルスにより推定 する方法、遅延同時計数回路により実測し補正する方法がある20) 。 2.3.6 位置演算 受光素子はシンチレータ内で発生する光を電子に変換し、電気信号として取り出すため に用いられる。放射線の吸収によって発生する蛍光は小さく、PMT を使用することで SNR を高くしている。ンチレータのサイズを小さくするほど解像力は向上するが、PMT の小型 化に限界があることや性能を維持することが困難であり、現在は多数個のシンチレータに 小数個の PMT を結合して、複数個の PMT 出力強度の比から位置を演算するコーディング 方式が主流である21,22) 。位置弁別の例を図 2.3.6.1 に示す。 図 2.3.6.1 位置弁別による座標の推定 2.3.7 波高弁別(エネルギー弁別) 2 本の消滅放射線があらかじめ設定されたエネルギーウィンドウ内のエネルギーを持っ ているかを判別する。エネルギーウィンドウ下限値よりも低い場合には散乱線成分とみな され、同時計数からは除かれる 20) 。エネルギーウィンドウ上限値よりも高い場合にはパイ ルアップ(同時あるいは非常に短い時間間隔で入力された信号がお互いに重なり合うこと) とみなされる20) 。

A

B

C

D

X =

 −  +  − 

 +  + + 

Y =

A − C + B − D

 +  + + 

(11)

9 2.4 PET の構成 2.4.1 概要 互いに反対方向に放出される消滅放射線を効率よく検出する必要がある。現在は有効視 野を囲むようにリング状に検出素子を並べたものが主流である。PET においてはシンチ レータと PMT を組み合わせたシンチレーション検出器が広く用いられている20) 。多数の検 出器を使用するため安価で単純な構成が望まれる。 2.4.2 シンチレータ 消滅放射線を吸収して微弱な蛍光を発生するシンチレータとしては、第 1 に検出効率と 光電比の高いものが望まれる。光電比とは、シンチレータ内に入射して相互作用する放射 線の総数に対して、エネルギー511 keV のすべてがシンチレータ内で吸収される放射線の数 の割合である21) 。表 2.4.2.1 に代表的なシンチレータの種類と特性を示す。シンチレータの 発光量が多くなると発光の立ち上がり時に起こる揺らぎが少なくなり、同時計測時間(タ イムウィンドウ幅)を短くすることができる23) 。 表 2.4.2.1 シンチレータの特性21)

Scintillator NaI(Tl) BGO GSO LSO YSO Decay time(ns) (ratio) 230 60/300 (1/10) 60/600 (7/1) 40 70 Light output(PMT) 100 15 20 75 120 Light output(APD) 100 30 40 85 125 Peak emission(nm) 410 480 430 420 430 Refractive index 1.85 2.15 1.85 1.82 1.80 Density(g/cm3) 3.67 7.13 6.71 7.35 2.7 Atomic number 50 73 58 65 34 1/μ(mm)[511 keV] 30.7 11.6 15.0 12.3 44.4 1/μ(mm)[140 keV] 4.1 0.85 1.57 1.08 12.9 2.4.3 2D 収集と 3D 収集 検出器リングの体軸方向を区切るリング状の遮蔽板をセプタといい、このセプタを使用 した場合を 2D 収集、使用しない場合を 3D 収集という。セプタを使用することで各リング にまたがる LOR が制限され、散乱同時計数および偶発同時計数が低下する。セプタの材質 としては高密度で高実効原子番号のタングステン、タングステン鉛合金などが用いられる 20)。2D 収集における全スライス数は 2n-1 で表される(n:リング数)。3D 収集はセプタに よりリング間の LOR が制限されていないため、2D と比較し感度が上昇する。中心のリング ほど感度が高く、端部のリングほど感度が低くなる。スライス方向における LOR の制限 (Maximum Ring Difference:MRD)を行わない場合、感度は中心のリングをピークに三角 形の形状をとる。MRD を制限するなど、感度が均一になるように補正したとしても端部の リングにおける計数を稼ぐために各ベッドをオーバーラップして収集する必要がある。

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LOR は n2通りの組み合わせができ、そのまま 3 次元画像再構成をする方法と 3 次元データ を 2 次元データへ変換(リビニング)して 2 次元画像再構成を行う方法がある。リビニン グはデータ量、再構成時間を大幅に軽減することが可能であり 3D-PET の普及に大きく貢献 した。代表的なリビニングの方法を以下に示す。

Single slice rebinning(SSRB)24):

検出された 2 つのリング間の中点のスライスにおける平行サイノグラムへデータを加算 する。傾斜サイノグラムと平行サイノグラムの距離が大きくなるほどボケが大きくなる。 このボケは検出器のリング中心から離れるほど大きくなる20)

。 Multi slice rebinning(MSRB)25):

検出された 2 つのリング間の複数のスライスにおける平行サイノグラムへデータを加算 する。体軸方向の歪みを生じさせる20) 。 Fourier rebinning(FORE)26): 傾斜サイノグラムを 2 次元フーリエ変換した S(ω,n,z0,σ)の周波数空間上の d =±n/ωの情 報の大部分は、実空間の座標原点からの距離が d の線源分布の寄与による、という性質 (frequency-distance relation:FDR)を利用して寄与の大きい平行スライスへデータを加算し ていく。 2.5 各種補正法 2.5.1 偶発同時計数補正 偶発同時計数は 2.3.5 にも示したように、2 つの核種由来の消滅放射線を同時に検出する ことによるもので、本来の陽電子放出核種の位置情報を持たない。そのため、測定データ から精度よく減算する必要があり、これを偶発同時計数補正という。偶発同時計数補正に は以下の遅延回路を用いた方法とシングルスより推定する方法、反復画像再構成アルゴリ ズムに組み込む方法などが使用されている。 遅延同時計数法: 遅延同時計数で得られた計数は、即発同時計数内の偶発同時計数と発生確率が等価であ るため、即発同時計数から偶発同時計数を差し引くことで偶発同時計数を補正することが できる 27) 。しかし、遅延同時計数自体も統計雑音を含むため、偶発同時計数補正に伴う雑 音の増加が問題になる 27) 。偶発同時計数分布の統計雑音を低減する手法として、遅延同時 計数を平滑化する方法が提案されている27) 。 シングルス計数率法: 同時計数回路のタイムウィンドウ幅を 2τとすると、検出器対(i、j)の偶発同時計数率 Rijは次式で与えられる。 Rij=2τSiSj ここで、Siと Sjは各検出器のシングル計数率である。シングル計数率は同時計数に比べ てはるかに多く検出できるため、遅延同時計数から推定した偶発同時計数に比べて統計精

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11 度を著しく改善できる 27) 。しかし、遅延同時計数とシングル計数では計数損失の割合等が 必ずしも一致するとは限らないことなど、即発同時計数(タイムウィンドウ内で同時計数 されたもの)に含まれる偶発同時計数の総量を必ずしも再現できない要因がある27) 。 2.5.2 散乱補正 散乱補正は PET の補正中でも最も困難な補正の 1 つである27) 。これは計測時には真の同 時計数と区別が出来ないためその分布等から推定するしかないためである 27) 。減弱体が複 雑な形状をもち、かつ Radio Isotope(RI)の分布が複雑であるほど散乱補正が難しくなる傾 向にある 27) 。単純な形状の一例である均一円筒ファントムでは比較的精度良く補正できて いるが、実際の臨床等では散乱補正精度が落ちる場合がある 27) 。補正法にはいくつかの方 法があり分類すると主に1)散乱分布テールからの推定法、2)複数エネルギーウィンド ウ法、3)コンボリューション・デコンボリューション法、4)シミュレーションベース 法に分類することができる 27) 。しかし、PET 装置それぞれに異なる方式の補正が用いられ ているのが現状である。現時点ではゴールドスタンダードになりうる散乱補正の方法はま だない27) 。 2.5.3 減弱補正 物質中にある線源から放出されたガンマ線は物質中を通り検出器に入り検出される 27) 。 しかし、線源から放出されたガンマ線のすべてが検出器に到達できるわけでなく、一部の ガンマ線は線源と検出器間に存在する物質と相互作用を起こし、偏向等を生じて検出器に 到達できない 27) 。このために線源と検出器間に物質が無い場合に比べ、検出されるガンマ 線は少なくなる27) 。減弱の影響は図 2.5.3.1 に示すような式で表され、検出確率として求め られる27) 。減弱を生じる物質を減弱体と呼ぶ27) 。一般に空気中の減弱はゼロとして取扱い、 減弱体は被験者本人とベッド、ヘッドレスト、服装、固定具等から構成される 27) 。線源自 身もどんなに小さくとも有限の大きさを持つ為に必ず減弱の影響を受ける 27) 。減弱の影響 を受けると、実際に検出されるガンマ線が少なくなるためにそのままでは PET 画像上のピ クセル値が低くなり定量性が損なわれる 27) 。またこの低くなる量は場所によって異なり本 来同じ放射能濃度であるべきものが場所により異なる値になり、Region of Interest(ROI)等 で例えば筋肉と腫瘍の値の比を正しく求めることが出来ない等の影響がある 27) 。線源から 放出したガンマ線が検出器 A、検出器 B で検出される確率は2つのガンマ線が検出される 確率は図 2.5.3.1 の式で表される27) 。同時計測される確率は2つのガンマ線が検出される確 率になるので検出器 A、B それぞれで検出確率の積になり、図 2.5.3.1 の下に示す27) 。この 式には線源の位置を表すパラメータ d は含まれてなく A と B を結ぶ同時計測線上にある線 源は位置に依存せず同じ減弱の影響を受けることを表している27) 。この特徴により各 LOR の減弱補正が正確に行うことができ、PET が単一光子を検出する Single Photon Emission Computed Tomography(SPECT)に比べて定量性が高いと言われる一番の理由である。

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12 図 2.5.3.1 光子が検出器に到達するまでに受ける減弱 検出器 A および検出器 B で検出される確率     検出器 AB で同時計数される確率    =    2.5.3.1 ブランクスキャン PET スキャナ内に何もない状態で外部線源を用いて行うスキャンのことを言う。次に示 すトランスミッションスキャン(後述)と共に減弱補正に使用する。ブランクスキャンは 検査毎に行わず、毎朝 PET 検査が始まる前に PET 装置のチェックも兼ねて行われる場合が 多い27) 2.5.3.2 トランスミッションスキャン LOR 上のどの点においても受ける減弱は同じであり、それは線源が被写体外にある場合 にもあてはまる27)。この線源を被写体の周りを回転させることで各 LOR ごとに減弱補正係 数を求める。2 つの検出素子番号を i、j とすると上記のブランクスキャンとトランスミッシ ョンスキャンに対する同時計数値をそれぞれ Bij、Nijとすると Bij/Nijが減弱率となる 20) 本来、PET におけるトランスミッションスキャンは外部線源に68Ge/68Ga や137Cs を用いて、 RI を投与する前に行われる。トランスミッションスキャン、RI(FDG)投与、1 時間の待

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機そしてエミッションスキャンという流れを PET 寝台において同一姿勢のまま行う必要が ある。しかし、この方法では 1 人の検査時間が非常に長くなりスループットが悪くなる。 そこで、トランスミッションスキャンをエミッションスキャンの直前に行う Post injection transmission scan や Emission/Transmission 同時収集法が用いられるようになった。現在は PET/CT が普及したことで、減弱補正には CT 撮像から得られたμマップを使用することが 可能となり短時間でノイズの少ない補正が可能となっている。 2.5.4 計数損失補正(デッドタイム補正) 放射能濃度のダイナミックレンジが広い検査を行う場合、入射光子数に比例してイベン ト検出できることが理想であるが、放射能濃度が高くになるにつれ2つ以上の光子がほぼ 同時に入射する確率が高くなり、本来の入射光子数を記録できなくなる計数損失が発生す る 27) 。計数損失補正係数は次のように取得される。半減期が既知の陽電子放出核種(測定 開始時で 370 MBq~3.7 GBq 程度)を円筒ファントムに封入し、10 半減期以上の時間を掛け て真の同時計数率と偶発同時計数率またはシングル計数率を測定する 27) 。計数損失の無視 できる低濃度領域の真の同時計数率を減衰補正して、測定時刻毎の理想的な真の同時計数 率を求める 27) 。真の同時計数の実測値と理想値の比を、その時刻の偶発同時計数率又はシ ングル計数率に対応付けることで補正係数テーブルを作成する 27) 。検査における計数損失 補正は、検査時に計測された偶発同時計数率やシングル計数率を用いて補正係数テーブル を参照することで実施される27) 。 2.5.5 放出割合補正(Branching fraction 補正) 放出割合補正とは陽電子放出核種が核種固有の放出割合(Branching Fraction)に従って崩 壊するため、これを補正することである28) 。FDG の Branching Fraction は 0.967 である29) 。 2.5.6 減衰補正 減衰補正とは投与した放射性同位元素の撮像中の減衰を補正することである。 2.5.7 ノーマライズ PET スキャナは、同時計数の組み合わせ毎に幾何学的条件や検出器特性が異なるため、 有効視野内において検出感度のばらつきが存在する 23) 。このばらつきを補正する目的で、 円筒ファントムあるいは回転線源を用いて検出器を均一照射し、同時計数対の感度差を取 得するのがノーマライズスキャンである 23) 。得られた感度差を規格化しその逆数をエミッ ションデータの画像再構成時に適用して、エミッションデータを感度補正する23) 。 2.5.8 分解能補正 分解能補正には円弧補正(Arc correction)と呼ばれているものと部分容積効果の補正の 2 種類がある27) 。 円弧補正(Arc correction):

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14 主な PET 装置では検出器がリング状に配置され検出器間で同時計測線が定義される27) その同時計数線で平行なものをグループ化して並べたものがサイノグラムであるが、リン グ状に検出器が配置されているために同時計測線の間隔は一定でなく中心部分では広く断 面内視野の端に行くほど狭くなっている 27)。しかし画像再構成時にはこれらが等間隔に配 置されていると仮定して計算が行われている。そのために同時計測線間隔が均等になるよ うにデータを再配置する必要があり27) 、これが円弧補正である。 図 2.3.8.1 中心部と辺縁部での LOR の距離の違い 部分容積効果補正法: 部分容積効果の補正は、現時点では必ずしも確率された補正ではなく、空間分解能向上 による方法や解剖学的画像と組み合わせる方法などがある27) ①空間分解能向上による方法 この方法は画像再構成アルゴリズムに空間分解能によるボケの効果等を導入して再構成 画像の空間分解能を向上させて、その結果部分容積効果を小さくするものである27) ②解剖学的画像と組み合わせる方法 脳研究や腫瘍の分野で研究的に用いられている方法である 27)。脳研究分野での例として は MRI 画像から白質、灰白質と脳全体にセグメント化しそれぞれについてボケや部分容積 効果を計算で求めて PET や SPECT の画像を補正する方法等がある27)。腫瘍の分野では CT 画像から大きさを求めその情報を用いて補正する方法がある27) 2.5.9 クロスキャリブレーション PET の計測データを画像再構成して得られる画素値は、使用した PET 装置固有の値であ る 23)。しかし薬剤分布量を定量化するためには、PET 画素値をキュリーメータやウェルカ ウンタなどの放射能測定機器の測定値に校正する必要がある 23)。この校正係数を取得する のがクロスキャリブレーションスキャンである23)。通常18 F 等の非密封線源を用いて実施さ れる23)。校正係数は、再構成画像にスライス毎、あるいはボリューム単位で乗じられる23)

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15 校正後の PET 画素値は Bq/ml(キュリーメータに校正した場合)、あるいは cps/ml(ウェル カウンタに校正した場合)であり、PET スキャナの違いだけでなく画素サイズや画像再構 成アルゴリズムなどの再構成条件にも依存しない値となる23) 。 2.6 PET における定量 2.6.1 SUV

Standardized Uptake Value(SUV)は PET における半定量的指標であり、腫瘍への FDG の集 積の程度を評価する。SUV は投与した FDG 薬剤が全身に均一に分布した状態(排泄されて いないと仮定)と比較して関心領域の放射能濃度が何倍であるかを表す。SUV は様々な因 子により影響を受ける。装置側の要因としては、収集時間、再構成方法、各種補正方法、 部分容積効果、μ-MAP の精度、クロスキャリブレーションの精度などがある。被写体側の 要因として体脂肪率、血糖値、FDG 投与前後の行動、腎機能、検査中の呼吸などがある。 また、待機時間の長さも SUV に影響を与え、一般に 1 時間後像よりも 2、3 時間後像の方 が悪性腫瘍の値が高くなり、逆に正常組織の値は低下するためコントラストがつく。この 値の変化を得る後期相も有用である。 人体の密度を 1.0 g/ml と仮定すると、SUV は被写体の体重と FDG 投与量だけで求めるこ とが可能である。体重により正規化した SUVbw は簡便で取扱い易く、最も普及しており一 般に SUV というと SUVbw のことを示している。しかし、体脂肪率が高いと人体の比重は 低くなり、また、脂肪はほとんど糖を代謝しないため肥満体の人は FDG が集積する体積が 比較的小さい。その結果として SUV が高くなる。体脂肪率が 40 %を超える場合、SUV は およそ 30%も高い値となる 27) 。この影響を補正するために除脂肪体重により正規化した SUVlbm(SUL)や体表面積で正規化した SUVbsa の有用性が報告されている30)。

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16 第 3 章 PET の性能試験と画質評価 3.1 PET の性能試験 3.1.1 空間分解能 システムの空間分解能は再構成画像上の 2 点間を分離する能力として定義されている31) この測定の目的は装置の最高性能としての微小線源の画像再構成点拡がり関数の幅を求め ることである31)。拡がり関数幅は半値幅、または 1/10 値幅にて表す31)。再構成画像におけ る空間分解能には、ポジトロンの飛程距離、ディテクタ間の距離、ディテクタの幅、シン チレータとガンマ線の相互反応率、ポジトロンのディテクタの入射角度、ディテクタでの 光子の相互作用の深さ、サンプリング角度、画像再構成条件(マトリックスサイズ、画像 再構成フィルタ等)など多くの要素が含まれる31)。線源は18 F を用いる。点線源の容積は約 0.00075 ml と少ないため、高い放射能濃度が必要になる。放射能は測定開始時に計数損失が 5 %以内、または偶発同時計数率が全同時計数率の 5 %以内のどちらかになるようにする31) 点線源は内径 1 mm 以下、外径 2 mm 以下のガラス等の毛細管を使用して作成する。毛細管 内の放射能は体軸方向長を 1 mm 以下にする31)。線源の配置位置は図 3.1.1.1 に示す。画像 再構成の際には、吸収補正を行わず、画像再構成フィルタは ramp とし、カットオフ周波数 はナイキスト周波数とする31)。画像再構成方法はフィルタ逆投影(FBP)法を用いる31)。3

方向においてピクセル長が Full Width at Half Maximum(FWHM)の 1/3 以下になるように画 像再構成時のマトリックスサイズ、ズームなどを調整する 31)。測定は体軸方向視野中心お よび体軸方向視野 1/4 での断層面内において行う31) 図 3.1.1.1 空間分機能測定のための点線源の配置 3.1.2 感度 PET の感度は与えられた線源の強度に対して真の同時計数が検出される計数率(1 秒あた りの計数)で表される31)。従来の方法では一般的に 20 cm 径の円筒形均一ファントムを用

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17 いて測定されるが、ファントム内の放射能溶液自身による吸収の影響やファントムの材質 や壁厚による吸収の影響が感度に含まれることになる 31)。ここでは線線源を用いることで 放射能溶液自身による吸収の影響を無視できるようにし、ファントム壁厚の異なる数種類 の条件で収集することで壁厚が 0 cm の時の感度を外挿する31)。感度測定では吸収体の無い 空気中での線源からの感度を求めることを目的とする 31)。ただし、放射能を封入するプラ スチック・チューブの吸収量はないものと仮定する31)。使用する線源は 18 F を用いる31)。 放射能は計数損失が 1 %以内か、あるいは偶発同時計数率が真の同時計数率の 5 %以内のど ちらかになるような濃度にする 31)。線状線源内の初期放射能は校正されたドーズ・キャリ ブレータで測定して決定する 31)。感度は放射能濃度に対する計数率になるため、ファント ムへの挿入前と挿入後の残った放射能量から算出したファントム内の放射能量 Acal(MBq) と測定時間 Tcalを記録する 31)。線状線源用のプラスチック・チューブの 700±5 mm の部分 に空気が入らないように放射能を満たして、両端を密封する 31)。アルミニウムなどの金属 製の感度測定用ファントムの壁厚を変える31)。感度測定用ファントム・チューブ番号 1、番 号 1 と 2、番号 1 と 2 と 3、番号 1 と 2 と 3 と 4、番号 1 と 2 と 3 と 4 と 5 の組み合わせの 5 回測定を体軸横断面中心と中心から 10 cm のオフセットした位置でそれぞれ行う31)。(図 3.1.2.1) 図 3.1.2.1 感度測定のための線状線源の配置 3.1.3 散乱フラクション 散乱フラクションは、全同時計数中の散乱同時計数の割合を表す。散乱同時計数は測定 するオブジェクト内での散乱、セプタやサイドシールドのような散乱線を止める機構、デ ィテクタ内での散乱、収集エネルギーウィンドウなどのいくつかの要素に起因する 31)。計 数損失と偶発同時計数の測定は、高い放射能線源に対する PET 装置の測定能力を表現する 31)。測定は、専用の散乱体ファントムの中に線状線源を配置し、真の同時計数のピークおよ び雑音等価計数のピークを測定できる高い初期放射能濃度から計数損失が真の同時計数率

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18 の 1 %未満になるまで複数回行う31)。線状線源は透明なポリエチレンあるいはポリエチレン 表面加工されたプラスティック・チューブで、長さは少なくとも 800 mm、内径は 3.2±0.2 mm、 外径は 4.8±0.2 mm を使用する31)線状線源の内容量は約 5.63 ml(内径 3.2 mm、長さ 700 mm) になる31)。線状線源の中央部 700±5 mm に空気が入らないように放射能で満たし両端を密 封する31)。散乱体ファントムは外径 203±3 mm、全長 700±5 mm、比重 0.96±0.01 のポリ エチレン製円筒で、半径方向 45±1 mm の距離のところに直径 6.4±0.2 ㎜の穴を円筒の中 心軸と平行に開けたものを使用する 31)。真の同時計数のピークおよび雑音等価計数のピー クを測定できる高い初期放射能濃度から計数損失が真の同時計数率の 1 %未満になるまで 複数回の測定を行う31)。放射能で満たされた線状線源の中央部 700±5 mm を散乱体ファン トムの 6.4 mm の穴にファントム長 70 cm と一致するように挿入する31)。線状線源を挿入し たファントムを線状線源がベッドに最も近くなるように寝台に配置する 31)。ファントムは 長手方向を体軸方向と平行になるようにし、ファントム中心を体軸横断面中心および体軸 方向視野中心から 5 mm 以内に配置する31)。評価方法は体軸横断面中心を中心とする半径 12 cm の範囲を評価する31)。線状線源からの真の同時計数は線状線源の中心から半径 2 cm の範囲のみに存在し、その外側の同時計数は散乱と偶発同時駅数と仮定している 31)。各収 集 j における各スライス i のサイノグラムについてファントム中心から 12 cm 以上離れた画 素値を”0”にし、各投影角度φに対して最大値画素を線状線源の中心として線状線源の中心 がサイノグラムの中央になるように左右にシフトさせ、投影方向(サイノグラムの列方向) に加算を行い、1 次応答関数 C(r)i,jを作成する。収集 j、スライス i における散乱+偶発同時

計数 Cs+r,i,jは 1 次応答関数 C(r)i,jの中央から±20 mm の位置の左右の同時計数 CL,i,jと CR,i,jの

平均値に、中央から±20 mm 幅分の画素数をかけた同時計数と中央から±20 mm の外側に ある同時計数を加算したものになる31)(図 3.1.3.1)。

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19 3.2 PET 画質評価

3.2.1 第 1 試験

PET の 画 質 評 価 に は National Electrical Manufacturers Association / International Electrotechnical Commission(NEMA/IEC)ボディファントム(図 3.2.1.1)が広く用いられて いる。第一試験は、対バックグラウンド比が4:1で直径 10 mm のホット球の描出を担保 するための撮像条件を決定することを目的とする7)。ファントムは 10 mm 径のホット球の みを使用し、ホット球とバックグラウンドの放射能濃度が4:1となるように 18 F-FDG 溶 液を胴体ファントムに封入する7)。放射能濃度は 5.30 kBq/ml および 2.65 kBq/ml とする7) 図 3.2.1.1 NEMA/IEC ボディファントム 3.2.1.1 視覚評価 得られた PET 画像について視覚評価を行い、10 mm 径のホット球の描出能を以下の条件 に従い評価する7) ・評価は PET 認定医が行う ・実際の臨床で PET 画像の読影に使用するワークステーション端末で行う ・画像を表示するカラールックアップテーブルは Invert Gray scale とする。 ・表示ウィンドウレベルは下限を SUV=0、上限を SUV=4 とし、固定する。 ・評価基準は、10 mm 径のホット球が識別可能な場合には 2 点、識別可能だが 10 mm 径の ホット球と同程度のノイズを認める場合には 1 点、識別不可能な場合には 0 点とする7) 3.2.1.2 ファントム雑音等価計数(NECphantom)の評価 サイノグラムヘッダに記録された Prompt(全同時計数)、Random(偶発同時計数)の計 数より以下の式を用いて NECphantomを算出する 7)  !"#$= 1 − &'( ) + & ( ) + & + 1 + *+, − − − − − − − − − −3.2.1.2.1 ここで、SF は散乱フラクション、R は偶発同時計数、T+S はプロンプト同時計数から偶発

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20 同時計数を減算した値、f はファントム断面積が撮像視野断面積に占める割合である。また、 f は以下の式より算出する。 + =12&!( ここで、Sa はファントム断面積 [cm2 ]、r は断面検出器間距離 [cm]の 1/2、k は偶発同時計 数の補正方法による係数(遅延同時計数による実測の場合は1、それ以外は 0)である。 3.2.1.3 10 mm ホット球の%コントラスト(QH,10mm) 得られた PET 画像のホット球が最も強く描出されるスライスにおいて、直径 10 mm の円 形 ROI により 10 mm ホット球とバックグラウンドの測定を行い、以下の式により 10 mm ホ ット球の%コントラストを算出して評価する7) 。 34,67$$= 4,67$$ 8,67$$− 1 94 98− 1  100% − − − − − − − − − − − − − − − −3.2.1.3.1 ここで、4,67$$は 10 mm ホット球に対する ROI 内の平均画素値、8,67$$は直径 10 mm の 円形 ROI(n=12)を用いて算出したバックグラウンドの平均画素値、94はホット球内の放 射能濃度(Bq/ml)、98はバックグラウンド領域の放射能濃度(Bq/ml)である。 3.2.1.4 %バックグラウンド変動性(N10mm)の評価 得られた PET 画像のホット球が最も描出されたスライスを中央とし、±1 cm と±2 cm の スライス(計 5 スライス)上に 12 個の 10 mm 径の円形 ROI を設定してバックグラウンド の測定を行う7) 。以下の式により 10 mm ホット球に対する%バックグラウンド変動性 N10mm を算出して評価する7) 。 67$$=& 67$$ 8,67$$ 100 % − − − − − − − − − − − − − − − − − −3.2.1.4.1 ここで、SD10mmは 10 mm ホット球に対するバックグラウンド ROI 計数の標準偏差で、次式 で計算する7) 。 & 67$$==∑ B?C6 8,67$$,?− 8,67$$(/A − 1− − − − − − − − − −3.2.1.4.2) ここで、K=60(5 スライス上の 12 個の ROI。計 60 個)である。 3.2.1.5 試験結果の判定 視覚評価において評価点数の平均が 1.5 点となった収集時間で撮像することを推奨とす る 7)。 ま た 、 物 理 学 的 指 標 は  !"#$> 10.4(Mcounts) , N67$$< 6.2(%) , OP,QRR SQRR > 1.9(%)を参考値とする 7) 3.2.2 第 2 試験 与えられた臨床撮像条件にて各大きさのホット球の描出能を評価する7) 。また、十分なカ

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21 ウントのもとで、与えられた画像再構成条件での各ホット球のリカバリ係数を測定し空間 分解能を評価する7) 。 3.2.2.1 リカバリ係数 30 分のスタティック収集により得られたエミッションデータを画像再構成し、ROI 測定 を行い各ホット球 ( j ) のリカバリ係数を評価する7) 。ROI 測定では最大計数値を記録し、 下式によりリカバリ係数を算出する7) 。 ,U= U VW$$ − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − 3.2.2.1.1 VW$$:37 mm のホット球の最大計数値 U:各ホット球 j の最大計数値 3.2.2.2 臨床撮像条件に近い計数統計量における画質評価 臨床撮像条件に近い計数統計量を有するエミッションデータから%コントラストおよ び%バックグラウンド変動性を算出する 7) 。計算式は 3.2.1 と同様である。また、各ホット 球の描出能を評価する7) 。 3.2.2.3 試験結果の判定 リカバリ係数が 0.38 以上となる画像再構成条件を推奨する 7) 。また、臨床撮像条件での 画像にて、評価した%コントラストおよび%バックグラウンド変動性がガイドラインの参考 値以上(  !"#$> 10.4(Mcounts) , N67$$ < 6.2(%) , OP,QRR SQRR > 1.9 (%)である こと、視覚的にも 10 mm のホット球が描出されていることを目標とする7) 。 3.2.3 臨床画像を用いた評価 臨床画像は、被検者の体格や血糖値などに依存して画質が変化し、必ずしもファントムの 結果がそのまま成り立つとは限らない7) 。そこで、様々な被検者で一定の画質が確保できる か確認する7) 。 3.2.3.1 肝 SNR 冠状断像にて肝臓に円形 ROI(直径約 3 cm)を 3 つ描画する7) 。できるだけ肝門部およ び主要な血管系を含まないように注意する (図 3.2.3.1.1) 7) 。3 つの ROI の平均値と標準偏差 を算出し、次式により被験者ごとに肝 Signal Noise Ratio(肝 SNR)を算出する7)

&, = XYZ[\

& XYZ[\− − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − −3.2.3.1.1 ここで、XYZ[\は肝臓部の 3 スライスに描画した ROI 値の平均値、& XYZ[\は肝臓部の 3 スラ イスに描画した ROI 値の標準偏差の平均値である。

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22

図 3.2.3.1.1 肝 SNR の解析における ROI の位置

3.2.3.2 被験者雑音等価計数(NECpatientおよび NECdensity)

サイノグラムヘッダ等に記録された全同時計数(プロンプト)および偶発同時計数から 雑音等価計数(NECR)を求める7) 。各ベッドにおける NECR を NECi とする7) 。NECi は以 下の式により定義する。 Y= 1 − &'( )Y+ &Y ( ]Y− ,Y + 1 + *,Y − − − − − − − − − − − − − 3.2.3.2.1 ここで、]Yは各ベッド i におけるプロンプト同時計数(Mcounts)、,Yは各ベッド i における 偶発同時計数、)Y+ &Yは各ベッド i におけるプロンプト同時計数から偶発同時計数を減算し た計数(Mcounts)である。

測定範囲における NECi を求め、軸長で正規化したものを Noise Equivalent Count Patient (NECpatient)といい以下の式で表される 7) 。 !Y[" =∑ Y " YC6 ^/100 (_`abcd/e) − − − − − − − − − − − − − −3.2.3.2.2 ここで、n は脳と膀胱部を除いた評価対象範囲のベッド数、x は撮像長(cm)、k は偶発同時 計数の補正方法による係数(遅延同時計数による実測の場合は 1、それ以外では 0)である。 また、撮像範囲の身体体積で正規化したものを Noise Equivalent Count Density(NECdensity)

といい以下の式で表される7) 。 ["fYg =∑ Y " YC6 h!Y["  1000(k`abcd/cm V− − − − − − − − − − − 3.2.3.2.3 ここで、h!Y[":撮像範囲の身体体積(`eV)である。 物理学的指標の目安は肝SNR>10、!Y[">13、["fYg>0.2 とする7) 3.2.3.3 NECdensityの有用性と課題 臨床において最も重要とされるのは視覚評価であり、物理学的指標の値が高くとも放射 線科医の求める画質であるとは限らない。しかし、視覚評価による画質の標準化は困難で

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23

あり視覚評価と相関の強い物理学的指標が求められる。NECdensityはガイドライン中の物理

学的指標の中で視覚評価との相関係数(r)が最も強く(r = 0.57)、画質を反映する良い指標 であると言える。NECi は式 3.2.3.2.1 により求められ、Prompt および Random はサイノグラ ムヘッダ等から読み取られた被写体の各ベッドの値を用いる。しかし、散乱フラクション は装置固有の値として散乱ファントムより求めた値を使用している。本来、散乱フラクシ ョンは被写体の体格、線源の分布によって大きく異なる値であるが PET に使用されるシン チレータのエネルギー分解能による制限により実測することは困難であるため、やむを得 ず、どの体格の被写体においても固定値を用いている。これが NECi の算出に曖昧さを生じ させ視覚評価との相関を低下させている原因の 1 つであると考える。被写体の体格に依存 しない一定の画質を得るためには、体格に応じて撮像時間を増減すべきであり32) 、NECdensity の正確な算出が求められる。

(26)

24

第 4 章 医学分野に応用されるモンテカルロシミュレーションコード 4.1 シミュレーションコードの例

4.1.1 EGS5

Electron Gamma Shower(EGS)は、スタンフォード線型加速器研究所を中心に開発され た。開発の当初、高エネルギー分野での使用を主目的にされていたが、バージョン 3 の EGS3 が公開されて以降、医学物理分野をはじめより低エネルギー分野へと利用が広まった。1986 年にバージョン 4(EGS4 コード)が公開され、20 年の間、幅広い分野で利用されてきた。 2006 年にはバージョン 5(EGS5 コード)が公開された。EGS の構造として、システムコー ドとユーザコードに大別される。システムコードは、放射線物理の基礎データと各種相互 作用が扱われるサブルーチン、そして放射線が輸送される媒体データからなっている。1 つ の光子または電子入射され、エネルギーを失いながら雪崩式に起こる反応がシャワーのよ うであり、電子と光子が追跡されるプログラムは shower と呼ばれる。ユーザコードは、メ インプログラムと 2 つのサブルーチン(HOWFAR と AUSGAB)から構成されている33) 。 ユーザは解きたい問題を EGS コードにユーザコードとして与える33) 。吸収エネルギーやフ ルエンスなどの情報はサブルーチン AUSGAB 内のコードより取得する33) 。 4.1.2 PHITS

Particle and Heavy Ion Transport code System (PHITS)コード34)

は、日本原子力研究所(現: 日本原子力研究開発機構、以下「原子力機構」)が開発した高エネルギー核反応モデル組込 み核子中間子輸送コード NMTC/JAM ver.2 に、高度情報科学技術研究機構(RIST)、東北大、 原研/原子力機構の協力のもとに、重イオンの輸送計算機能を組み込んだ粒子、重イオン 輸送統合コードシステムである35) 。PHITS は、任意形状の 3 次元体型内における放射線挙 動を解析可能な汎用モンテカルロコードである。原子力分野で重要となる中性子や光子の みならず、医学物理分野や宇宙開発分野で重要となる陽子、重イオン、電子などさまざま な放射線に適用可能なため、工学・医学・理学の多様な分野で幅広く利用されている。特 に近年は、新規ユーザのほぼ半数が医学系の大学や病院に所属する研究者・技術者で、医 学物理分野への利用が急速に進んでいる36) 。ユーザ数は現在 1600 名を超えるに至った36) 。 PHITS は Fortran90 形式で書かれたプログラムであり、Windows、Mac、Linux 上で使用可能 である36) 。いずれの Operating System(OS)でもテキスト形式で書いたインプットファイル を用意することで、その内容に応じた計算シミュレーションが実行可能であり、Fortran に 関する知識がなくても PHITS を利用することができる36) 。また、PHITS にはタリーと呼ば れる仮想的な検出器が準備されており、インプットファイルでタリーの種類、設置場所、 対象放射線などを指定すれば、吸収線量、フラックス、残留放射能などさまざまな物理量 を簡単に導出することができる 36) 。また、DICOM2PHITS という外部プログラムにより Digital Imaging and COmmunication in Medicine(DICOM)の CT 画像の CT 値から物質密度・ 組成変換を行い、ボクセルファントム(後述)の作成が容易に可能である。本研究でも一部、 この機能を用いて出力されたファイルを使用しボクセルファントムを作成している。

(27)

25 Geometry and Tracking 4(Geant4)37)

は、他の一般的なモンテカルロシミュレーションコ ードと異なり、ソフトウェア部品の集合として設計、開発されたツールキットである。オ ブジェクト指向設計を導入して C++言語で記述されており、プログラム上で部品をつなぎ 合わせてアプリケーションを構築する。ソフトウェア部品は差し替え可能であることから 多様性に優れていて、例えば、物理モデルを入れ替えて結果の違いを評価することや、利 用者独自のアルゴリズムを追加することが容易に実現できる38) 。 Geant4 は、様々な粒子が物質中で起こす複雑な反応を正確にシミュレートすることが可 能である。高エネルギー物理学や宇宙線、原子核の実験などで物理成果を導くために不可 欠のものである。以前は、Geant3 と呼ばれる FORTRAN プログラムが広く使われていた。 しかし、実験装置の大規模・複雑化、また応用分野の拡大化により管理が複雑になってき たため、オブジェクト指向技術を用いることで、機能の発展、ユーザへの多様な対応そし て保守などにかかる負担を軽減することに成功した。1994 年にそれまで個々に研究を進め てきた、欧州原子核研究機構と日本のグループが合同し、他の機関も参加して Geant4 国際 共同研究を開始した。日本グループは、Geant4 国際共同研究の開始以前から、中心的な役 割を担っている。 4.2 ボクセルファントム 従来、放射線被ばくなどにおいて被ばく量を評価するには、長方形や楕円などの組み合 わせにより臓器の形状を簡易的に模擬した MIRD 型ファントムが用いられてきた。(図 4.2.1 左)MIRD 型ファントムは、人体を大まかに模擬しているものの、実際の人体の臓器の大き さ、位置を正しくモデル化されていない。計算速度が速いという利点がある反面、精度の 高い線量評価ができないといった欠点がある。そこで、現在では CT や MRI などの DICOM データから、臓器の大きさや位置を正確に表現することが可能であるボクセルファントム が使用されている(図 4.2.1 右:Geant4 のサンプル DICOM データ)。ボクセルファントム とは小さな立方体を積み重ねることで複雑な体系を模擬したものであり、この方法を用い ることでどんな体系も模擬可能である。ボクセルを細かく、数を多くするほどより現実に 近いファントムが作成可能である。CT 画像より作成されるボクセルファントムは CT 値に 応じた物質が当てはめられる。PHITS において使用される CT 値と物質の変換テーブル 39) を表 4.2.1 に示す。近年のコンピュータの進歩により個人利用のコンピュータ上においても ボクセルファントムを作成、使用することが可能となった。

(28)

26

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27 表 4.2.1 CT 値-物質の変換表39) (Wi(pp)は要素のパーセンテージを示す) Hounsfield Units Wi(pp) H C N O Na Mg P S Cl Ar K Ca -1000--950 75.5 23.2 1.3 -950--120 10.3 10.5 3.1 74.9 0.2 0.2 0.3 0.3 0.2 -120--83 11.6 68.1 0.2 19.8 0.1 0.1 0.1 -82--53 11.3 56.7 0.9 30.8 0.1 0.1 0.1 -52--23 11.0 45.8 1.5 41.1 0.1 0.1 0.2 0.2 -22-7 10.8 35.6 2.2 50.9 0.1 0.2 0.2 8-18 10.6 28.4 2.6 57.8 0.1 0.2 0.2 0.1 19-80 10.3 13.4 3.0 72.3 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 80-120 9.4 20.7 6.2 62.2 0.6 0.6 0.3 120-200 9.5 45.5 2.5 35.5 0.1 2.1 0.1 0.1 0.1 4.5 200-300 8.9 42.3 2.7 36.3 0.1 3.0 0.1 0.1 0.1 6.4 300-400 8.2 39.1 2.9 37.2 0.1 3.9 0.1 0.1 0.1 8.3 400-500 7.6 36.1 3.0 38.0 0.1 0.1 4.7 0.2 0.1 10.1 500-600 7.1 33.5 3.2 38.7 0.1 0.1 5.4 0.2 11.7 600-700 6.6 31.0 3.3 39.4 0.1 0.1 6.1 0.2 13.2 700-800 6.1 28.7 3.5 40.0 0.1 0.1 6.7 0.2 14.6 800-900 5.6 26.5 3.6 40.5 0.1 0.2 7.3 0.3 15.9 900-1000 5.2 24.6 3.7 41.1 0.1 0.2 7.8 0.3 17.0 1000-1100 4.9 22.7 3.8 41.6 0.1 0.2 8.3 0.3 18.1 1100-1200 4.5 21.0 3.9 42.0 0.1 0.2 8.8 0.3 19.2 1200-1300 4.2 19.4 4.0 42.5 0.1 0.2 9.2 0.3 20.1 1300-1400 3.9 17.9 4.1 42.9 0.1 0.2 9.6 0.3 21.0 1400-1500 3.6 16.5 4.2 43.2 0.1 0.2 10.0 0.3 21.9 1500-1600 3.4 15.5 4.2 43.5 0.1 0.2 10.3 0.3 22.5 4.3 FSD モンテカルロシミュレーションは試行回数が多いほど、結果は真の値へ収束する。しか し、試行回数と計算時間はトレードオフの関係があり試行回数を増やすことには限界があ る。そこで、試行回数を決定する指標として Fractional Standard Deviation(FSD)40,41)が用い

られる。FSD は式 4.3.1 で表されるように、平均値と平均値の標準偏差の比であり、相対的 な統計誤差を表す。

(30)

28 FSD ≡&^ = q r1 ^sss((− 1tu6 (v= q r1 ∑ ^∑ ^wYC6 Y(

Y w YC6 (− 1 tu 6 (v − − − − − − − − − 4.3.1 ここで、&は平均値^̅の標準偏差、^̅は平均値である。

(31)

29 第 5 章 シミュレーションによる散乱フラクションの推定 5.1 目的 被写体の体格に依存しない画質を得る撮像条件を検討するにあたり、NECR を指標とした 画質評価の精度を向上する必要がある。そのためには、被写体毎の散乱フラクションを求 め、正確な NECR を算出しなければならない。本研究では、実測することが困難な PET 検 査における散乱フラクションをシミュレーションにより推定する方法を確立することを目 的とした。はじめに、①臨床画像を用いた検討の前の基礎的検討として、シミュレーショ ン体系の作成および検証を行った。次に、②その模擬した体系を用いてサイノグラムを内 挿することにより求める従来法とシミュレーションの計算過程より散乱フラクションを推 定する提案法を比較して、提案法の妥当性を検証した。最後に、③提案法を用いて様々な ファントムにおける散乱フラクションを明らかにした。 5.2 方法 5.2.1 シミュレーション条件 5.2.1.1 使用装置およびソフトウェア

本研究で用いた PET/CT 装置(Discovery ST Elite Performance, GE Healthcare, Milwaukee, WI) の構成を示す。クリスタルは、BGO (6.3 × 6.3 × 30 mm)が搭載されており、体軸方向に 24 rings、 検出器間の内径は 886 mm、transaxial field of view (FOV)は 700 mm、axial FOV は 151.2 mm、 スライス厚は 3.27 mm である。PET 画像の撮像条件は、3D 収集(最大リング差は制限して いない)、energy window を 375 − 650 keV、再構成条件は 3D-Ordered Subset Expectation Maximization(OS-EM)(Subset:21、Iteration:2)、Post Filter 2.14 mm、マトリクス 128 × 128 である。CT の撮像条件は、管電圧 120 kV, 管電流は Auto mA 機能を利用して、Noise Index を 10.0 とした。マトリクスサイズは 512 × 512 である。シミュレーションには、Geant4 ver10.037)を使用した。Geant4 は複雑な体系中における粒子の挙動をシミュレートすること が可能なツールキットである。C++によるオブジェクト指向のコードであり、広い分野にお いて利用されている。計算には、汎用型 Personal Computer(PC)(CPU : Intel® Core™2 Duo , 周波数:3.33 GHz , メモリ:3.6 GB , OS : Scientific Linux 64bit)を用いた。計算は少なくと も 15000 カウント以上の同時計数が得られる試行回数とした。線源の配置と強度は PET 画 像より決定する。PET 画像を読み込み、各ピクセル値を 3 次元配列に格納する。配列を順 次読み込み該当するピクセル位置において配列に格納された値の数だけ、光子を発生する。 配列の値だけ光子を発生させた後、次のピクセルへ移る。発生する粒子には陽電子を使用 せず、エネルギーが 511 keV の光子 2 本を反対方向に発生させる。これは、陽電子が消滅す るまでの事象を省略することで計算時間を短縮するためである。複数の検出器でエネルギ ー付与を起こした場合は付与したエネルギーに応じて重心を求め検出位置とした。散乱フ ラクションの算出の際に偶発同時計数はその影響が無視できる低計数率領域で計測するこ とが規定されているため、本研究では考慮しない。FOV の大きさは 360×360 mm とし、エ ネルギー分解能は 18 %とした42) 。また、体軸方向に斜め方向の LOR は、シングルスライス リビニングにより直交スライスへ変換する。

図 3.1.3.1  サイノグラムの並び替えと内挿による散乱フラクションの算出
図 3.2.3.1.1  肝 SNR の解析における ROI の位置
図 4.2.1  MIRD ファントム(左)とボクセルファントム(右)
図 5.3.2.3  拡大した加算サイノグラムの中心部

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