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第 5 章 シミュレーションによる散乱フラクションの推定

5.3 結果

5.3.1 シミュレーション体系の検証

作成したシミュレーション体系を図5.3.1.1左に示す。1列あたり420個のBGOを配置し、

体軸方向に24列並べている。それぞれのBGOにはcopy_numberと呼ばれる識別番号を付 けており1~10080番が割り当てられている。散乱ファントムはシミュレーションコードに 初めから用意されているマクロボディ(面や円筒などにより構成される体系)である。本 検討ではボクセルファントムとマクロボディを組み合わせて計算を行うため、DICOM画像 よりボクセルファントムを作成するサンプルコードを使用せず、DICOM2PHITS により表

4.2.1を用いて変換し、作成している。線源の発生位置および強度はPET画像より決定して

おり、PET の画素値を格納した配列を順次読み込み、ピクセルの値だけ光子を発生させた あと、次のピクセル位置へ移動させている。図5.3.1.1 右は確認のために低エネルギーの電 子線を発生させた様子を示す。

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図5.3.1.1 作成したPET装置の配置と線源の分布

図5.3.1.2はボディファントムのPET画像からシミュレーションを行い、作成したサイノグ

ラムを示す。横方向はガントリー中心からの距離を示し、縦方向はLORの傾きを示す。

図5.3.1.2 ボディファントムにおける計算より得られたサイノグラム

また、図 5.3.1.3 左はサイノグラム上で空気による減弱(ブランクスキャン)を補正し

Maximum Likelihood Expectation Maximization(ML-EM)(Iteration: 15)で再構成した画像で ある。画像サイズは360×360 mmでマトリクスは128×128である。図5.3.1.3右は、線源 の配置の元とした実機の PET 装置により撮像された画像(撮像時間:30 分、OS-EM Iteration::2、Subset:21、Post-filter:2.14 mm)である。シミュレーションにより作成した 画像と線源位置の元とした画像を比較するため、点線位置でのプロファイルカーブを図 5.3.1.4に示す。

図5.3.1.3 シミュレーションおよび実機より得られたPET画像

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図5.3.1.4 実機およびシミュレーションより得られた画像の比較

37 mm 球のカウントにおける FWHM は実機から得られた画像では 35.7 mm(360/128

[mm/pixel]×12.7 [pixel] ≒ 35.7 [mm])でシミュレーションより得られた画像では32.6 mm

(360/128 [mm/pixel]×11.6 [pixel] ≒ 32.6 [mm])であった。28 mm球のカウントにおける FWHMは実機から得られた画像では26.9 mm(360/128 [mm/pixel]×9.55 [pixel] ≒ 26.9 [mm])

でシミュレーションより得られた画像では27.7 mm(360/128 [mm/pixel]×9.84 [pixel] = 27.7

[mm])であった。それぞれのピーク位置は、37 mm球において2 pixelのずれ、28 mm球に

おいて1pixelのずれであった。

エネルギー分解能が設定した値となっていることを確認するため、エネルギースペクト ルを取得した。図5.3.1.5左は散乱体を設置しなかった場合、図5.3.1.5右は直径20 cmの散 乱ファントムを設置した場合の511 keVの光子によりBGOに付与されたエネルギーとその 強度を示している。

図5.3.1.5 エネルギー付与されたBGOの出力信号

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散乱体の無い状態における強度のピークは511 keVであり、その強度の半分となるエネルギ ーは線形補間をするとそれぞれ464.5、555.3 keVでありエネルギー分解能は17.8 %であっ た。

5.3.2 内挿法と直接法による散乱フラクション推定法の比較

直径20 cmの散乱ファントムでの最大値(図5.3.2.1)を中心となるように並び替え、加算

したサイノグラムを図5.3.2.2に示す。また、中心部の拡大図を図5.3.2.3に示す。直径20 cm における散乱フラクションは内挿法では46.1 %、直接法(Direct_Bin≦120 mm)では44.4 % であった。直接法(Direct≦FOV)では48.3 %となった。直径10~50 cmの散乱ファントム における散乱フラクションを内挿法および直接法により求めた。結果を図 5.3.2.4 に示す。

散乱フラクションは被写体の直径が大きくなるに従い増加した。直径20cmの散乱ファント ムにおける散乱フラクションのFSDが0.5 %以下となる試行回数は2000万回であり、計算 時間は73分であった。

図5.3.2.1 サイノグラムの各行における最大値

図5.3.2.2 加算サイノグラム

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図5.3.2.3 拡大した加算サイノグラムの中心部

図5.3.2.4 直接法と内挿法により推定した散乱フラクション

内挿法について、試行回数と散乱フラクションの関係を図5.3.2.5に示す。

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図5.3.2.5 内挿法における試行回数と散乱フラクションの関係

図5.3.2.6に各直径の散乱ファントムにおける試行回数4000万回の時点での同時計数の数

を示す。ファントム直径が大きくなるほど指数関数的に同時計数は減っている。

図5.3.2.6 ファントム径と試行回数4000万回時点における同時計数

5.3.3 ボディファントムにおける散乱フラクション

ホット球を入れたボディファントム(バックグラウンド:ホット球=1:4)の散乱フラク

ションは34.3%であり、本研究における直径20 cm散乱ファントムの48.3%(直接法:Direct

≦FOV)に比べ14 %低い値を示した。また、ボディファントム撮像時に、散乱ファントム を同時使用した場合の結果は39.5%であり、同様に8.8 %低い値を示した。ボディファント

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ムを使用することで散乱フラクションが5.2 %増加した。

5.3.4 視野外散乱線の影響

ガントリー中心に散乱ファントムを置き、点線源を体軸方向へ移動させた場合の同時計 数の変化を図5.3.4.1 に示す。点線源がガントリー中心から遠ざかるに従って、真の同時計 数は直線的に、散乱同時計数は緩やかに減少し散乱ファントムの末端(Z方向:35 cm)でほ ぼ0となっている。Z方向8 cm以降はガントリーの視野外となり、真の同時計数は検出さ れていない。しかし、直径20 cmの散乱ファントムにおいて散乱同時計数はZ=15 cmの点 においても最大値(Z=0)に対して37 %程度、カウントされている。直径10 cmのファント ムの散乱線は視野内:視野外は1:1、直径50 cmのファントムでは視野内:視野外は3:2で あった。

10 cmφ 20 cmφ

30 cmφ 40 cmφ

0.0 1.0 x 105 2.0 x 105 3.0 x 105 4.0 x 105 5.0 x 105

0 5 10 15 20 25 30 35

Prompt True Scatter

Counts [a.u.]

Z-axis [cm]

0.0 5.0 x 104 1.0 x 105 1.5 x 105 2.0 x 105 2.5 x 105

0 5 10 15 20 25 30 35

Prompt True Scatter

Counts [a.u.]

Z-axis [cm]

0.0 2.0 x 104 4.0 x 104 6.0 x 104 8.0 x 104 1.0 x 105 1.2 x 105

0 5 10 15 20 25 30 35

Prompt True Scatter

Counts [a.u.]

Z-axis [cm]

0.0 1.0 x 104 2.0 x 104 3.0 x 104 4.0 x 104 5.0 x 104 6.0 x 104

0 5 10 15 20 25 30 35

Prompt True Scatter

Counts [a.u.]

Z-axis [cm]

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50 cmφ

図5.3.4.1 各直径の散乱ファントムにおける線源位置と同時計数の関係

5.3.5 被写体の形状および線源の分布の違いが散乱フラクションへ与える影響

被写体の体積を一定として、長径および短径を変化させた場合の結果を図5.3.5.1 左に示

す。直径20 cmのファントムでは、扁平率が0から0.75(縦:横=1:4)へ変化した場合、

散乱フラクションは9.4%低い値となった。線源の分布の違いによる影響を図5.3.5.1右に示 す。体積の大きいものほど変化が大きく、また円柱ファントムの辺縁部の線源の有無(分 布:50~100%)による影響が大きくなった。

図5.3.5.1 扁平率および線源の分布の違いが散乱フラクションへ与える影響

5.3.6 人体模擬ファントムにおける散乱フラクションの推定

人体模擬ファントムにおける散乱フラクションを推定した。人体ファントムの撮像範囲 は5ベッドに相当し、ファントムを150 mm/bedずつ移動させて計算した。結果を表5.3.6.1 に示す。

0.0 5.0 x 103 1.0 x 104 1.5 x 104 2.0 x 104 2.5 x 104 3.0 x 104

0 5 10 15 20 25 30 35

Prompt True Scatter

Counts [a.u.]

Z-axis [cm]

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表5.3.6.1 人体模擬ファントムの各ベッドにおける散乱フラクション

Section of phantom (center of Z-axis[mm])

Scatter Fraction

[%]

Source Volume (Phantom Volume)

[cm3]

True/Volume [Counts/ cm3]

Scatter/Volume [Counts/ cm3]

① ( -300 ) 37.7 3138 15 9.3

② ( -150 ) 34.3 8387 11 5.9

③ ( 0 ) 32.5 9131 13 6.3

④ ( 150 ) 45.8 7741 6.8 5.7

⑤ ( 300 ) 43.4 7607 6.8 5.2

average 38.7 7201 10 6.5

肺野が多く含まれるベッド③と腹部に相当するベッド④では 13.3 %の違いがあった。こ れら5ベッドの平均は直径20 cmの散乱ファントム(48.3%)よりも9.6 %低い値であった。最 後に、5.3.3の結果も含め図5.3.6.2にまとめる。

図5.3.6.2 各ファントムにおける散乱フラクション

5ベッド平均の散乱フラクションのFSDが0.5 %以下となる試行回数は6250万回(1ベッ ドあたり1250万回)であった。計算時間は570 分(1ベッドあたり114分)であった。

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