第 5 章 シミュレーションによる散乱フラクションの推定
5.5 結論
47
であっても皮下脂肪の厚さは異なる 47)ため、BMIなどの指標よりも検査画像から皮下脂肪 の割合とFDGの分布を確認するべきであると考える。
5.4.6 人体模擬ファントムにおける散乱フラクションの推定
線源を均一に配置した人体模擬ファントムの散乱フラクションは 38.7 %であり、本研究 における直径20 cm散乱ファントムの結果と比較して9.6 %低い値となった。そのため、直
径 20 cm散乱ファントムの結果は今回使用した人体模擬ファントムよりも大きな被写体を
想定していると考えられる。しかし、本検討では線源が均一に配置しているため、線源が 体表面まで存在することや脳や膀胱からの視野外散乱線を考慮していないことに注意しな ければならない。臨床画像を用いて検討した場合、人体模擬ファントムと同等の体格であ ったとしても、散乱フラクションは今回の結果よりも高い値を示すと予想される。各ベッ ドにおいて散乱フラクションの値は10 %以上異なる。頸部・胸部に相当するベッド①~③ と比較して、腹部・骨盤に相当するベッド④と⑤は、体積あたりの真の同時計数が半分ま で低下している。これは、各ベッドにおいても撮像時間を調節する必要性があることを示 唆している。また、ベッド④と⑤は空気をほとんど含まず、ほぼ同じ体積であるのに対し 散乱フラクションが2.4 %異なる。これはベッド④が視野外散乱線による影響をより多く受 けているためであると考えられる。5ベッド平均の散乱フラクションのFSDが0.5 %以下と なる計算時間は線状線源を挿入した散乱ファントムにおける計算よりもかなり時間を要し た。これは線源の配置の際に、配置の元としたPET 画像のピクセル値を格納した配列を参 照しているため、線状線源を用いる場合よりも処理が多くなっていることが原因であると 考えられる。臨床画像を用いた検討をする際には、同様の手順で行う必要があるため計算 時間が問題となる。
48 第6章 まとめ
核医学における投与量や撮像法は標準化の遅れている分野であり、FDG-PET の有用性が 認められ、多施設共同臨床試験や治療効果判定の需要が高まった今日において早急に取り 組まなければならない課題である。画質の標準化のためには、その画像の画質を反映した 精度の高い物理学的指標の算出が必要である。画質評価指標として有用性を認められた NECRの算出において、被写体毎の散乱フラクションを使用することの重要性は認知されて はいるものの、現実的には実測することができていない。現状では、散乱フラクションは 円柱状の散乱ファントムに線状線源を挿入して撮像し、得られたサイノグラムの内挿から 散乱成分を同定している。しかし、このファントムより得られた散乱フラクションがどの ような体型の被写体を想定しているのか、標準体型を模擬しているとされるボディファン トムと同等の値となるのか、被写体の状態や装置の条件によりどの程度の変動があるのか など明らかにされていない問題点がある。そこで、本研究の 5 章において、その問題を解 決するべくモンテカルロシミュレーションを用いて取り組んだ。PET 装置を模擬して画像 化を行い、実機より得られたPET 画像と比較することでシミュレーション体系の正当性を 示した。さらに、従来の内挿法と同等の結果が得られる提案法(直接法)の精度を検証し た。最後に、ボディファントムおよび人体模擬ファントムにおける散乱フラクションを明 らかにした。本研究ではCT画像よりボクセルファントムを作成し、PET画像より線源の位 置および強度を決定している。これは、臨床画像を用いて同様に検討可能であることを示 している。
PET における散乱フラクションは、モンテカルロシミュレーションによって装置を模擬 することで推定可能であることが示された。本研究の結果より、散乱ファントムを併用し たボディファントムは、人体模擬ファントムの散乱フラクションと同等の結果となった。
ボディファントムは人体を模擬するにあたって妥当な大きさであると考えられ、散乱ファ ントムの併用は視野外からの散乱線を模擬するのに有用であった。しかし、線状線源を挿 入した散乱ファントムから得られた散乱フラクションは、人体模擬ファントムよりも大き な被写体を想定した値であった。また、各々の被写体により散乱フラクションがどの程度、
変動するのかを具体的な数値を示して明らかにした。これらの値の変動には、被写体の体 積やFDGの分布の違い、視野外散乱線などが大きく影響していた。
至適撮像条件を検討する際に、固定値の散乱フラクションを使用して算出した NECR を 指標としても、それは計数率の減少分を補っているに過ぎず散乱成分の増加を考慮してい ない。今後は、本研究で構築したシミュレーション体系と臨床画像を用いて、多くの症例 における散乱フラクションを推定し、上記の項目から散乱フラクションを推定する一般式 を算出することを目指す。臨床の現場において、画質評価対象を全てモンテカルロシミュ レーションにより計算し、散乱フラクションを推定することは計算時間の問題もあり現実 的には困難である。被写体および装置の収集条件より散乱フラクションを推定可能となれ ば、どの施設においても被写体毎の散乱フラクションを使用することが可能であり画質の 標準化に貢献すると思われる。
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