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外部経済 と先手有利性

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経営 と経済 第87巻 第3 200712

外部経済 と先手有利性

Abstract

lnthispaperweconsidertheoutputlevelofequilibrium inCournot duopolygamewithperfectinformation.Itisknownthatthereisfirst moveradvantageinordinalperfectinformationCournotgameandout putlevelofthegameequilibiriaissmallerthanitofStackelberggame.

ButthisisnottrueinCournotduopolygamewithperfectinformationif thereisexternaleconomyononefirmofduopolyfirms.Inthiscase,be causeofpositiveslopedreactioncuⅣeofthefirm withexternalecon‑

omy,StackelbergequilibriumpointlocatesontheleftsidetoCournote qulibrium point.TllereforeStackelbergleadercannotincreasehis productionlebelfromitofCournotNashequilibriathroughthebestrep‑

lycurve.Andundersomeconditions,secondmoveradvantagewilloc curinduopolygamewithperfectinformation.

keyword;firstmoveradvantage,Cournotduopoly

29

1 序

従来,数量戦略 による完全情報シ ュタッケルベルグ複 占ゲームのナ ッシ ュ 均衡戦略では,その均衡戦略 か ら得 られる先手第 1企業の生産量 と利得は, クール ノー同時手番ゲームの均衡戦略か ら得 られる第 1企業の生産量 と利得 より大 きい ことは と明 らかであ って,その意味でかな らず先手有利 になるも の と考 えられて きた。 ところが,この ことは,両企業の最適反応関数が とも

(2)

に右下が りで,た とえば第 1企業の等利潤線の形状が横軸 (第 1企業の生産 量 を示す軸)にたい しておおむね凹であるために起 こることである。 この と

き,先手第 1企業に とっては,後手第2企業の右下が りの最適反応曲線状を 可能な限 り右下方向に移動 した くなる誘引がある。 この ことは,右下が りの 線形需要関数 と,費用逓増ない しは費用一定の性質をもつ費用関数の組み合 わせか ら得 られ るゲーム均衡では常に正 しい分析結果である。そのかぎ りに おいて,第 1企業は,クールノー同時手番ゲームの均衡か ら得 られる生産量 および利得 より,シ ュグッケルベルグ均衡 における生産量および利得 に魅力 を感 じるのである。

しかし,最適反応 曲線が右下が りでなかった ら結論はい くぶん異なった も のになる。また,等利潤線の凹凸が通常の もの と逆 であって もやは り結論は 異なる。従来, このケースの分析 をお こなっている例は皆無 といってよいは どす くない。 この理 由は,最適反応曲線が右上が りである とい うことと,等 利潤線の凹凸が通常の もの と逆 になる ということがほぼ表裏一体の内容 とな っていることに関連 している。 さ らにまた, これ らの状況を発生 させるため には,費用関数特性 にかな りの異常 さが もとめ られることが指摘 される。外 部経済を考慮 しない通常複 占経済モデルで多用 されている費用逓増型の費用 関数あるいは費用一定型の費用関数は,通常の右下が りの需要関数を想定す る限 り,最適反応曲線 をかな らず右下が りに して,多少の数値の設定変更を お こなった ところで, この ような先手有利性は くつがえらない。 もちろん, 生産量水準に関係な く,限界費用がに負値 を とる費用関数 を想定すれば,最 適反応曲線が右上が りであるとい うことと,等利潤線の凹凸が通常の もの と 逆 になる という状況は実現 される可能性がある。すなわち,最適反応曲線は 通常モデル とは逆 に右上が りとな り,等利潤線の形状 も逆の凹凸 となる。 と

ころが,最初か らこの ような負の費用を想定 しようとするものはいない。 ま た,最適反応曲線および等利潤線 の形状が通常のクールノー複 占モデル とは 逆 になっている として も,先手第 1企業が最適戦略を選択する ときにはた し

(3)

外部経済 と先手有利性 31

てその ような最適点が安定的にあるいは一意に存在 しうるか どうか とい う懸 念 もある。

か くして, この ような構造を もつクール ノー複 占モデルの解析はおこなわ れなかった とみるのが妥当である。 ところが,か りにその ような難点があ る として も,外部経済 とい う事態が現実に存在 している。本稿では,具体的な 数量戦略クール ノー複 占ゲームを特定 して,外部経済が もた らす効果を分析 する。その結果 として,かな らず Lも生産量優位の意味での先手有利性が発 生 しないことを論証する。い うまで もな く,あ らゆる外部経済がつねにその ような効果を もた らすわけではないから, どの程度の外部経済があれば先手 有利性が減少するか とい う論点が本稿の中心的な分析課題 になる。なお,起 こりうる状況の分類は多岐にわたるか ら,それ らを網羅 して分析す ることは む しろ論点を不明確 にして しまう恐れがあ る。 このため,本稿では, もっ と

も劇的な様相 を見せ る状況に とくに論点を しぼることとした。なお,先手 ・ 後手問題には,GalOr,E.(1985)の先駆的業績があるが,本稿での分析は, 最適反 応 曲線形状 に よる利潤 比較 をお こな って いるか ら,Hamilton,∫., andS,Slutsky.(1990)に類似 した分析視点であるといえるか もしれない。

2 モデルとその解析

ここでは, 以下 の よ うな線 形 の需要 関数 (1)が想 定 され る。 ここで ,

xlは第 1企業の生産量であ り,x2は第 2企業の生産量 である。需要切片(a) は本稿 を通 じて常 に正値 を とるもの とす る。また,需要 曲線の傾 き(b)もつ ねに正値である と仮定する。 よ く知 られているように,ギ ッフ ェソ財の場合 には,傾 き(b)は負値 となることがあるか ら,本稿の分析は このケースをふ くまないことになる。ただ し,分析の手法その ものはまった く同一であるか ら, このケースをふ くまないことが決定的に本稿の分析方法の一般性をそ こ なってはいない。

(4)

p‑a‑b(xl+x2) (1)

また,第 1企業お よび第2企業の費用関数は(2), (3)である と仮定する。

後半の式の右辺第 2項が本稿モデルの特徴であ り,通常のモデル と異なる と ころであ る。 この項 は外部経済 の効果 を示す ものであるが,第二項 の係数

(β2)が正値であれば外部経済効果を示 し,負値であれば外部不経済効果を示 す ことになる。 この ような外部効果は,各企業の獲得利潤水準 にかな らず影 響 をあたえるが,その影響が,先手の有利性 を減少 させ るかどうかは,ひ と つには,第二項の係数 (e2)の大 きさが各企業の最適反応曲線の傾 きを どの程 度 まで変更 しうるかにかかっている。通常は右下が りの最適反応曲線が,外 部経済係数のために仮 に右上が りになるとすれば,その効果はただ各企業の 獲得利潤 を変動 させ る とい うことに とどま らない。本稿では,外部経済の効 果 を判定 しようとしているのであ るか ら,基本的に,係数(β2)は正値 を とる

もの とす る。ただ し, この ことは,限界費用 ( ‑ C2‑e2Xl)カミっね

∂∬2

に正値であることを意味するわけではない。なお, この係数 (β2)は定数 と仮 定する。

C1(xl,x2)‑ CIXI

C2(xl,x2)‑ C2x2‑e2x2Xl

この結果,第 1企業および第2企業の利潤関数は(4), (5)になる。 この利 潤関数 にたいして,以下の ような最適反応関数(6),(7)が もとめ られる。 こ の とき,最適反応曲線の傾 きは,(b)および(‑b+e2)の正負に依存 して決 ま る。外部効果が存在 しない とき(β2‑0)には,縦軸を∬2とした場合の最適反応 曲線はつねに負の懐 きとな り,また,第 1企業の最適反応 曲線の傾 きはいつ で も第 2企業の最適反応曲線の傾 きよ り (絶対値で)大 きい。

7Tl‑ (a‑b(xl+x2))x1‑ CIX1

7T2‑(a‑b(xl+x2))x2‑ (C2x2le2x2Xl)

(5)

外部経済 と先手有利性

∂∬史‑(1 a‑2bxl‑bx2)‑C1‑0

A8x型‑(2 a‑bxl‑2bx2)‑C2+e2X1‑0

この最適反応関数 か らクール ノーナ ッシ ュ均衡戦略を もとめ ることがで き るが,その確定数値 を算出することはかな らず Lも本稿の 目的ではないため 割愛 している。外部経済のない通常ゲームの場合,第 1企業の最適反応曲線 は右下が りで,その上では,右下方向にい くほど第 1企業の生産数量は大 き

くな り第2企業の生産数量 は小 さ くなることか ら,第1企業の利潤は次第 に 大 き くなることが 自明である とこれまで考 え られてきている。 そこで,本稿 の数量戦略複 占ゲームモデルで もその ことが確認できるか検証 しておこう。

第 1企業の最適反応関数か ら,最適反応曲線上での第 1企業 と第2企業の生 産数量関係が(8)であることがわかる。

x2‑‑2xl+ (8)

これを第 1企業の利潤関数に代入すると,第1企業の最適反応曲線の傾 き が無限大 とな るような特殊な状況を除けば,以下の結果(9)が得 られ る。 き わめて簡単な2次項が導出されているが,興味深い結論である。

7m‑(a‑b(xl'(‑2xl・隻手 )))xl‑C11

‑((a‑(a‑cl)‑C1)xl‑(‑b+2b)x2

‑bxf 甘)

この結果か ら,第 1企業 に とっては,最適反応 曲線上 にそって生産拡大す ることが利潤拡大につながることがわかる。 この結果は,いわば 自明の こと

ともいえよう。 ところが,第2企業に とって も,やは り,最適反応 曲線上 に そって生産拡大することが利潤拡大につながることがわかる。 この計算は方 法はまった く同様であるが,多少煩雑 になるので省略す る。特筆すべ きこと は, この結果が外部経済ない し外部不経済が存在 していて も存在 しな くて も

(6)

(β2が正値あ るいは負値であるか どうかにかかわ らず),生産量ゼ ロ (利潤 ゼ ロ)が利潤最大点になる場合は別 として,常 に成立する とい うことである。

外部不経済があるときには生産拡大は利潤減 につながる という予測にたい し て, この結果は決定的な反論 になる。

また,ギ ッフ ェソ財を想定 した場合に発生するであろう分析結果に言及す ることができる。 とい うのは,仮 に本稿で検討 している復 占ゲームがギ ッフ ェン財を対象 としているのであれば,需要曲線の傾 きは正値 (したがって本 稿モデルに置 きかえれば≦0)であ り,この場合,第 1企業は 自分の最適反 応 曲線上 で生産数量 を限 りな く生産縮小 してい くことにな りそ うに思われ る。ただ し,実際はそ うな らない。 この場合,利潤 を最大にする生産量は無 限大に発散 して しま う。 この とき数学的に得 られる利潤極大条件を検討 して み る と,外部経済が存在 しない ときには両企業の生産量関係が(α‑ cl‑ (2∬1

+x2)bとな り,a‑ cl0であるとすれば, 2xl+x2は常に負債でなければな ら ないことになる。ギ ッフェソ財の場合,特殊 な需要切片や費用条件を想定 し なければ,最適反応関数は第 1象限をさえ通過 しない。

3 ゲーム均衡 と最適反応曲線

第 1企業お よび第2企業の両方 に,外部経済がまった く影響ない場合,す なわち,β20のケースであるが, この とき,第 1企業 お よび第 2企業の最 適反応 曲線(10), (ll)は,従来分析 と同様 な形状 になる ( 1)。第 1企業 の最適反応曲線の傾 きのほうが第 2企業の最適反応 曲線の傾 きより (絶対値 で)おお きくなっている。また,第 1企業q)等利潤線は第 1企業の最適反応 曲線 を頂点 として,一方の漸近線 が縦軸である。第 1企業の等利潤線 を示す 関数は(12)になる。なお,次の不等式の成立 を仮定する。

a‑cl0,a‑C2≧0,b‑e2≧0

(7)

外部経済 と先手有利性

x2‑管2∬l

x2‑管 ‑ ixl

7T2 x1 x2一房

35

図 1:第 1企業,第 2企業 ともに外部経済がない場合

ところが,第 1企業の生産活動が第 2企業の生産費水準にたいして,外部 経済効果をもた らす と仮定する と,状況はまった く異なるものにな る。 この とき,第 1企業の等利潤線の形状 に変化はみ られず,横軸 にたいして凹形 と なっている。 また,通常のクール ノー複 占ゲームがそ うであるように,第 1 企業の最適反応曲線上を右下に下降するにつれて第 1企業の利潤は大 き くな

る。すなわち,第 1企業には, 自企業の生産拡大へ向かおうとする誘因があ る。

これまで と同様 にa‑cl0,a‑C2≧0の成立を仮定する。 しか し,e2‑b≦0 である とすれば,第 1企業の最適反応が(13),第2企業の最適反応が(14), 第 1企業の等利潤線 が(15) 2企業の等利潤線が(16)にな り,図2が得 られ る。シ ュタッケルベルグ均衡点がクール ノー均衡点の左側に位置 しているこ

(8)

とに気づ くが,この点が外部経済を考慮 しないモデル と異なるところである。

このシュタッケルベ)レグ均衡では, 1企業 と第2企業の両方が,クールノー 均衡における生産数量を下回っていることが注 目される。数理展開は しない が,じつは両企業に とってパ レー ト改善 となるような領域はクールノー点の 右側に広がっている。 ここでのシュグッケルベルグ均衡点は,パ レー ト効率 性の観点からすれば,きわめて条件の悪い均衡になっていることが明 らかで ある。先手第 1企業は,均衡 より生産数量を減少 させて利潤拡大を図る以外 に採 る方策をしらない。か くして,せ っか くの天恵である外部経済はその効 果を抑えられる結末 となる。

(a‑cl)‑2bxl‑bx2‑0 (a‑bxl‑2bx2)‑C2+e2X1‑0

打1

x2 xll示

a‑C2 b 7C2 xl=盲二義 百石 x2 (b‑e2)x2

a‑cl≧0,a‑C2≧0,e2‑b垂0

X2 a ‑0 2 ‑0 ‑ X1

2:第2企業にのみ外部経済の影響がある場合

(13) (14)

(15)

(16)

(9)

外部経済 と先手有利性 37

このように,外部経済効果の恩恵を受けない第 1企業が先手の ときには, クール ノー均衡点は最適戦略ではな く,クールノー点か ら左下に伸びる第 2 企業最適反応曲線上へ移動 しようとするのである。 これ とは逆に,外部経済 効果の恩恵を受ける第 2企業が先手の場合には,やは りクール ノー均衡点は 最適戦略ではないが,こんどはクールノー点か ら右下に伸びる第1企業最適 反応曲線上へ移動 しようとする。すなわち,外部経済効果を受けない企業は 生産縮小を,外部経済効果を受ける企業は生産拡大をしようとすると予想さ れる。

以下,直感的にはあ りえると思われるか もしれないが,経済学的あるいは 数学的に,その実現可能性が疑われるケースをひ とつだけ図解 しておこう。

3の場合は,最適反応関数が,α+pxl+γX2‑0とい う形式であることを 意味 している (α,β,γ≧0)。 この状況が発生するには,本稿で想定 してい る費用関数では不可能であって,さらに特殊な費用関数にすることが求め ら れる,具体的には,外部経済による費用減少効果のみな らず,外部経済がな い場合であっても費用がマイナスであるという異常な条件を満たす ことが要 請 されることもある。また,そのような条件によらなけ らば,今度は,需要

・ 、 x2 / x.

3:第 1企業への外部経済効果が現実的でない

(10)

関数に特殊性格をもとめなければな らない。 これはただちに,ギ ッフ ェン財 を仮定す ることを意味 している。

4 後手有利の数値例

本節では,先手有利性 に外部効果による典型的な影響 を与 えるゲームを具 体的に表示する。ひ とつの例は,第1企業および第2企業が,以下の利潤関 数 をもつ場合である。 この ときは,第2企業の生産活動が第 1企業の費用水 準 を減少 させる効果を もっているが,その外部効果の程度は,両企業の生産 増大 とともに幾何級数的におおき くなる性質 になっている。

7Tl‑(20‑3(xl+x2))x1‑(5xl)

7T2‑(20‑3(xl+x2))x2‑(5x2‑4xIx2)

この ときの最適反応関数および等利潤関数 は以下のようにな る。最初が第 1企業の最適反応関数であ り, これは外部経済の影響はないか ら右下が りで ある。一方,第 2企業のほ うは外部経済の影響によって最適反応曲線が右上 が りになる。

15‑6xl‑3x2‑0 15+xl16x2‑0

クール ノーゲーム としての均衡生産量を,第 1企業x;C,第 2企業x;C, 均衡価格 をP乙,第 1企業利潤 をC,第2企業利潤 をCとす る。 これに たい して,シュタッケルベルグゲーム としての均衡生産量を,先手第 1企業

x;S,後手第 2企業xZs,均衡価格 をP;,先手第 1企業 の利潤 を,Sお よ び後手第 2企業の利潤 を7TSとす る と, これ らは各 々,以下の ような数値 に なる。僅かではあるが,クール ノー均衡 より両企業 ともに生産減 となってい る一方で先手が小数点第 2位 とい うわずかな程度の利潤増 を獲得 している。

(11)

外部経済 と先手有利性

4:第 2企業にのみ外部経済 (2と同 じ)

*

xIC= 13

*

xZC = 13

p i

* 675

7rlC=

* 3675

7T2C=

* 15

xIS =

* 75

x2S=東

・,、‑:tii'

* 225

7TIS=J L

打2S 十 等

*

.

39

(12)

どうして この ような結果がもた らされるかを考 えてみよう。 このゲームが 先手後手形式でおこなわれるとして,先手は第 1企業だ とする と,第 1企業 は後手第 2企業の最適反応 曲線上のなかか ら最適戦略を見出す ことになる。

第 1企業の等利潤線のグラフ上の頂点は第 1企業の最適反応 曲線上 にあるこ とを念頭 に置 きなが ら,最適戦略 を探すが, クール ノー均衡戦略は最適にな らないことが分かる。本稿モデルにおいては, どち らの企業に とって も最適 反応 曲線上で生産数量 を拡大 してい くことは利潤を大 きくすることが分かっ ているか らであ り,また,第 2企業の最適反応曲線 と接 していないか らであ る。第 2企業の最適反応曲線 と接する点は図4に示 している通 りである。 こ の点はシ ュタッケルベルグ均衡点であって,そこに到達 した とき (2企業 の最適反応曲線上で)第 1企業の利潤は極大である。 ところが, このシ ュグ ッケルベルグ均衡点はクールノー均衡点の左側 に存在する。外部経済を考慮 しない通常のクール ノー複 占ゲームにおいては,先手企業は,均衡点 よりさ らに右下方向にある後手企業の最適反応曲線上をめざして,生産量拡大を意 図 し,その結果,後手企業は生産縮減を余儀な くされるという図式が,まっ た く一変 している。外部経済があるために,先手第 1企業は両企業 ともに生 産量 を縮小 してい く方 向を利潤最大化行動 として選択するのである。

5

本稿では,外部経済 が存在する場合には,た とえ完全情報ゲームであって も,均衡生産量の意味での先手有利性が弱ま りうる ということを指摘 した0 い うまで もな く, どの ような外部経済効果であって もつねにその ような弱体 化を引 き起 こすわけではないが,正の外部経済があ る程度の大 きさであれば 先手有利の状況は変化 しうる。 この ことは,逆にいえば,外部不経済がある ときには,そしてその程度が大 きなものであれば,先手企業はたんに通常の 意味で有利であ るに とどま らず,圧倒的な有利性を もつことになるとい うこ

(13)

外部経済 と先手有利性 41

とになる。その とき,本稿で示 したように,外部経済があろうが外部不経済 があろうが,そのいずれであるかに関係な く,最適反応曲線上ではつねに生 産量の拡大が利潤拡大につながることを確認 したのであるが,これ も直感的 な予想に反 した結果 といえよう

外部経済がこの ような効果をもた らす理 由については,数理分析以外に, い くつかの説明方法があると思われる。ひ とつは,外部経済 というものの一 般的性格にもつづ く解釈である。た しかに外部経済効果の恩恵を受けない企 業に とって,生産拡大が 自企業の費用減少をもた らす ことはないのであ り, また,,外部経済効果を受ける相手企業の利潤関数に関係な く,自企業の最適 反応曲線上では利潤拡大が見込まれるのである。また,等利潤線の形状 も外 部経済効果を考慮 しないクールノー複 占モデル と変わるところはない。 した がって,外部経済効果の恩恵を受けない企業は,外部経済効果を考慮 しない クール ノー複占ゲームにおけると同様 に, 自企業の生産拡大 と相手企業の生 産 レベル縮小を意図しそ うである。そして,事実,この恩恵を受けない企業 はそのように行動 しようとしないわけではないのである。

ところが,この ように行動 しようとすることは,自分の右下が りの最適反 応曲線上を下降 してい くことを意味する。そのような下降の途上で,まずクー ルノー均衡点を通過することになるであろう。その後,外部経済の恩恵を受 けている後手企業の最適反応曲線 と自企業の等利潤線が接するところを通過 するまで下降 しようとするのである。外部経済 を考慮 しない通常のクール ノー複 占モデルであれば,後手企業は後の状況のほうが (クールノー均衡点 での生産量 より)生産 レベル縮小に追い込 まれることになっている。 ところ が,後手は外部経済の恩恵を受けるから,そもそもそのような (生産縮小に 追い込まれるような)座標平面上の場所にはいないのである。簡単にいえば, 外部経済効果があるために追い込まれることがないのである。か くして,最 初 に通過 したクール ノー均衡点での生産数量か ら自企業生産量を減少 させ て,さらに利潤拡大を図 らざるを得ないこととなる。なお,クールノー均衡

(14)

点に到達する手前を先手企業が生産数量 とするような選択は もっ とあ りえな い。なぜな ら, この選択は 自企業の最適反応曲線上 を移動 して, 自企業の生 産量 を縮減する方向だか らである。か くして,クール ノー点は先手企業に と

ってある種の角点になっていることがわかる。

つま り,外部経済効果を受けない先手企業 に とっては,ある生産数畳まで は (相手企業の利潤を も拡大 して しまうが)生産拡大が正 しい選択であるが, それが正 しい選択であるのはクール ノー均衡生産量 までであって,それ以後 の生産拡大は (た とえ物理的には可能であって も),そこに後手の最適反応 曲線 はな く,したがって現実化で きない ということである。それ以外の説明 方法 もあ るが,論点は以上の解釈 に尽 きている と思われる。なお,残 されて いる課題であるが,本稿のなかで も少 し言及 しているけれ ども,外部経済係 数がさらに大 きい とき,数理分析的に得 られるシ ュタッケルベルグ均衡戦略 が後手第 2企業の均衡生産量 を負値 としてしまうことが起 こりうるかどうか とい う問題,外部経済効果を受ける第2企業が先手の場合のシ ュタッケルベ ルグ均衡点の特徴,ギ ッフ ェン財 と外部経済ない しは外部不経済の影響が も た らすであろう後手有利性についての検討になるであろう。

[1]Amir,.R.(1995).̀̀EndogenousTimingTwoPlayerGames:A CounterExample,"

GamesandEconomicBeham'or.

[2]Anderson,S.,andM,Engers,(1992)"StackelbergversusCournotOligopolyequilibri um,"znternationalhurnalofOrganization.10.127‑135

[3]GalOr,E.(1985)."FirstMoverandSecondMoverAdvantages,"znternationalEco nomicRevieu).26.649‑652.

[4]Hamilton,J.,andS,Slutsky.(1990)."EndogeniousTiminginDuopolyGames:Stack‑

elbergorCournotEquilibria,"GamesandEconomicBehavior.2.29‑46

[5]村 田省三(2006),外部経済 と後手有利性 について」長崎大学経済学会 『経営 と経済』

第85巻第34

参照

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