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外部経済 と後手有利性について

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(1)

外部経済 と後手有利性について

村 田 省

(2)

外部経済 と後手有利性 について

Abstract

lnthispaperweconsidertheoutputlevelsintheequilibrium ofCour notquantitysettingduopolygameandStackelbergquantitysetting duopolygameinwhichbothfirmhavelinerdemandfunctionsandquad‑

raticcostfunctions.Ifthereisasufficientlyeffectiveandpositiveouter economywhichoperatesinfavorofthefirstfirm,theconcavityofthe shapeofisoprofitcurvedisappearandtheconvexityofitnewlyturns out,whiletheshapeofthebestreplyfunctionsremainunchangedand havenegativeslgnSaSisthecaseofduopolygamewithnoouter economy.Inthiscasethesecondmoverisadvantageousintermsof profitandtheoutputlevelisgreaterthanitofthefirstmover,Stacke1 bergequilibriabeinglocatedtotheleftofCournotequilibria.Thiscon‑

ditioniscrucialtothethesecondmoveradvantage.

Keywords:Stackelbergduopolygame,linerdemandfunction,outer economy,concavityofisoprofitcurve,secondmoveradvantage

183

1.序

線型需要関数および2次項q)みの費用関数を想定するクール ノー数量戦略 複 占ゲームの均衡生産量 においては,第 1企業お よび第2企業の生産量比率 は,各企業が異なる費用係数であるような2次の費用関数の場合は,大体 に おいて,費用係数の水準 に逆比例す ることが明 らかである。これ と対称的に, シ ュグッケルベルグ数量戦略複 占ゲームにおいては,同様な2次の費用関数 を仮定する とき,クール ノーゲームにおけるような明白な比例関係は認め ら れない。 しか し,両企業の生産量の大小関係の逆転が起 こるのは,先手企業 の費用係数 と後手企業の費用係数が負の値 を とる場合であることがわかって きている。 さらに,クール ノー複 占均衡 における各企業の生産量の大小関係

(3)

と,シ ュタッケルベルグ複 占均衡生産量 における各企業の生産量の大小関係 について,費用係数の水準を負値 となるケースをふ くめて適当に とりさえず れば, どの ような大小関係の組合せ もとりうることが明 らか となっている。

ただ し,それにもかかわ らず,クール ノー数量戦略複 占ゲームにおいて, 費用係数が正値であ り, したがって,最適反応曲線 が右下が りである ときに は,先手 ・後手を自動的に とるような明白なゲーム均衡が存在 しない。 この ことについては,費用係数の符号 と等利潤曲線の傾 きをあ らわす符号 とが, 決定的なまでに対応 しているとい う事実がおおき く影響 している。費用係数 の符号が正値な ら等利潤曲線の形状 は当該企業の生産量を示す軸 (た とえば 横軸)にたい してかな らず凹になって しまうか らである。そ して,費用係数 の符号が負値で, しか もその絶対値 が大であれば,等利潤曲線の形状 は当該 企業の生産量を示す軸 (た とえば横軸)にたい して凸になる可能性があるか らである。 さらに,分析に とって不都合な ことは,費用係数の符号が負債で ある場合は,基本ゲームの想定が数量戦略である といいなが ら,そ して実際, 数量を戦略変数 に選択する とい う体裁 ない し形式 を とりなが ら,実質的には 価格戦略複 占ゲームを考察 している可能性が発生す るのである。

この点,2次の費用関数の係数が正値の場合にかぎらず,負値の場合をふ くむ とい うい きかたは,少な くとも数理的解釈は一般化 された検討になって いるにはちがいないが,経済学のほ うで,費用係数 が正値の場合を数量戦略 ゲーム と定義 してお り,費用係数が負値の場合を価格戦略ゲーム と定義 して いる とい う側面は完全には否定 しに くい。

費用係数の符号 と最適反応曲線の傾 きをあ らわす符号 とが一対一に対応す るのでなければ,先手 ・後手を 自動的に とるようなゲーム均衡 が存在するこ とを容易 に論証で きるのであるが。残念なが ら,実際にはその ような対応関 係が存在するために,先手 ・後手 を 自動的に とるような明白なゲーム均衡の 存在は容易には確認 されない。 したがって,その意味では,先手 ・後手 とな るクール ノーゲームの均衡 を模索する多数の研究がなかなか奏功 しに くいの

(4)

外部経済 と後手有利性 について 185

は,数学上の困難性 にあるのではな く,経済学上の定義によって,数学的一 般的解釈が阻害 されていることによる といってさしつかえないであろう た, このことを矛盾 とみるか どうかについて異論 がない とはいえない。

それにもかかわ らず,その ような問題の本質が,近年,手番順序 を所与の ゲーム構造 とするのではな く,先手 ・後手をゲーム戦略 とみるような,よ り 一般的ゲーム構造 を考察することに より,ゲームの手番順序が形成 される構 造 を考 えようとする研究につながった とみてよいであろう。 また,そのゲー ム均衡戦略の結果 として決定 されることになる先手有利性が どの ようなゲー ム構造 ない しはゲームパ ラメー ターに依存 して決定 されるか とい うことが検 討 されはじめている経緯の背景には以上の ような論点が暗黙の うちにふ くま れているとみてさしつかえない。

ところで,こq)研究は,Galor1985の先駆的な研究 を除けば,基本的なクー ル ノーゲームの一般化 によっておこなわれているが,標準的分析形式 として は,クール ノー数量戦略複 占ゲームの一段階前のゲームを想定す る手法によ っている。Hamilton‑Slutsky(1990)(以下ではH ・S1990と略記する)は その代表例であるが,最初 か ら最適反応曲線が得 られていることを仮定 して いる。そして,二人のプレイヤーの最適反応曲線 が右上が りか右上が りか と い う分類に より, したがって結果的に発生することになる4種類 のケー スに ついて,それ以後の分析がお こなわれるとい う異色の体裁 を とっている。そ の ような特色ある分析 にもかかわ らず,決論的には,やは り,クール ノー数 量戦略複 占ゲームの均衡戦略 として先手 ・後手均衡 が存在することについて

は決定的なまでに懐疑的である。

この ようなH ・S1990の分析結果 によって,数量戦略 クール ノー複 占ゲー ムの均衡はかな らず同時手番のみになることが確定 した と評価す ることはか な らず Lも正当ではない。それは,H ・S1990においてはゲーム構造が拡大 されてお り,本来のクール ノーゲーム と構造が異なっている可能性がまった くない とはいえないか らである。 じつは,H ・S1990において,あれだけ‑

(5)

般的な検討がお こなわれなが ら,それで もなおクールノー数量戦略複 占ゲー ムの均衡戦略 としての先手 ・後手均衡 がほ とん ど起 こり得ない と結論 された ことの背景には,やは り,以上の ような矛盾が関係 している とみてよい。す なわち,数学的論理的一般化 と経済学的定義の問にある不整合が,分析結果

にたい して影響する。

H ・S1990においては考 える必要がない とされた分類ケースには,経済学 的には発生する とは考 えに くい状況が対応 してお り,H ・S1990において積 極的に定理化 されている内容の半数は通常の解析関数的ゲームモデルでは起 こり得ない状況が対応 している。か くして,数学的にも経済学的 にも起 こり 得 るとされているケースは同時手番 クール ノー ・ナ ッシ ュ均衡のみ となるの である。本稿では,この ことをある種の避 け られない論理的矛盾 と考 えたい。

この ような矛盾その ものを正面 か ら検討 してい くことが必要である とい う 見方が当然 に存在す るが,それは少なか らず用語上の論争 になる と予想 され よう。そ こで,本稿では,矛盾の存在 は意識 しなが ら,形式的には,何 らか の外部経済 が作用す る ときには後手有利 とな る可能性 が発生す るこ とを示 す。外部不経済の存在を仮定することは,事前におけるある種の非対称性の 想定 にはなるが,その直接的な効果は相手企業の費用関数 に影響 を与えるこ とに とどまる。そ して,すでに指摘 した ように,正の費用係数 を想定する場 合には,かな らず最適反応曲線 は右下が りとな り,その結果 として クール ノー 数量戦略複 占ゲームの均衡は,ほ とん ど自動的に同時手番 になる という従前 の分析結果が存在す ることを考 えれば,一方の企業 による生産が他企業の生 産費用 にたい して外部不経済 を作用 させ る とい う想定は,ゲーム構造の非対 称性 としては きわめて弱い仮定 に とどまる といって よい。ほ とん どの複 占経 済ゲームで示 されるように,基本ゲーム となるクール ノー数量戦略複 占ゲー ムについてさえ,一般には異なる費用係数を想定 しているのであ るか ら,費 用関数への外部不経済の作用を考慮することは,最小の非対称性の導入に と

どまる といってさしつかえないであろう

(6)

外部経済 と後手有利性 について ilii

この ような非対象性 は,Dowick1986(以下ではDo1986と略記する)で 導入 されているような非対称性 とは根本的 に性格 が異 なるものであ る0Do

1986においては,W ait戦略の導入,それ も各 々のプ レイヤーに よる,ゲー ム終了以前の任意の時期 におけるW ait戦略実施可能性 を考慮す る とい う非 対称性 を考 えているか ら,一方のプ レイヤーはW ait戦略を採用 するが他方 のプレイヤーは採用 しない とい う状況を許容 している。 これにたい して,外 部不経済の導入は,形式的には第 1企業 と第 2企業の費用関数が相違するこ

とになるとい う状況は発生 させ るものの,ゲームの同時手番性が失われるこ とはない。

本稿の構成は次の とお りである。次節では,両方の企業が 2次の費用関数 をもつ場合,そ して,一方の企業がある種の外部不経済を他方の企業 に発生 させ るような費用構造 を仮定 した場合の数量戦略 クール ノー複 占ゲームの均 衡 を導 出す る。均衡生産量および均衡価格水準は,外部不経済がないケース と形式的には差異はないのであ り, したがって,2次の費用関数 を想定 して, かつ外部不経済は存在 していない場合におけるクール ノーゲームお よびシ ュ タ ッケルベルグゲームの均衡生産量比率の解析 をお こなった村 田(8)による 分析結果はその趣 旨において形式的には妥当する。それ らの結果は補題 1と して再確認 される。 また,第 3節では,同様の費用構造 を仮定 して,クール ノーゲームの均衡 において両プレイヤーが生産す ることになる均衡生産量の 総量お よびシ ュタッケルベルグゲームの均衡 において両プレイヤーが生産す ることになる均衡生産量の総量を比較検討する。前節 と同様 に,外部不経済 がないケースの分析 と形式的 には変 わる ところはないか ら,村 田(9)による 分析結果 は,形式的 にはそのまま妥 当す るが,その内容は補題2として とし て再確認 される。外部不経済の導入 によって発生する唯一の相違点は,外部 不経済 をうけることになる企業の利潤額のみであ る。第 4節では,各 々のゲー ムにおける最適反応 曲線 を考察 して,等利潤線の形状 にたいする各企業費用 構造の影響 を検討する。 これが本稿の中 山的な分析結果である。 さらに,敬

(7)

値例によって後手有利 となる可能性を指摘する補題の内容を確認する。第5 節では,先手有利性 にかんす る今後の分析の見通 しを確認する。

2.クールノーゲーム均衡 とシ ュタ ッケルベルグ均衡 における生 産比率および生産総量

本節では,線型の需要関数 と2次の費用関数を もつ数量戦略複 占ゲームの 均衡生産量 について検討する。

いま,線型需要関数を p‑a‑b(xl+x2)

とし,二次の費用関数 を,第 1企業 の費用関数 をC1(1),第 2企業の費用 関数をC2(x2)とする とき,

cl(xl)‑CIXi+cx (1)

C2(x2)‑ C2X昌 (2)

とする。係数Cは外部効果因子であ る。 (1), (2)よ り,第 1企業の利潤関数 nl,お よび第 2企業q)利潤関数I12は,

Ill‑(a‑b(xl+x2))xl‑ (cIXg+cx呂)

I12‑(a‑b(xl+x2))x2‑C2X∃

となる。 (3), (4)か ら,クール ノー ・ナ ッシ ュ均衡生産量は,

.lI

.rJ

a(b+2C2)

b24(b+cl) (b+ C 2) a(b

+

2cl)

b24(b+

c l

)(b+ C 2)

である。 (5), (6)か らクール ノー均衡生産量の比率を算 出する と,

xJ ̲(b+2C2) x2‑(b+2cl)

甘)

(7)

となる。外部経済ない しは外部不経済 を導入 した ことは,両企業の最適反応 関数 に影響 を与 えず,均衡生産量 にたい して無影響であることが(7)か らみ

(8)

外部経済 と後手有利性 について 189

て とれる。

一方,同様な線型需要関数および費用関数を仮定 した ときのシ ュグッケル ベルグ複 占ゲームの均衡生産量は,第 1企業を先手 とする場合には,

Xl= a(b+2C2)

2b2+4(b+cl)(b+C2)

x2 (1

b(b+2C2)

4(b+cl)(b+C2)12b2

となる。シ ュタケルベルグ均衡生産量の比率は, (8), (9)か ら,

xT 豆 .譜 云 x2̲

(8)

(

(10)

となる。シ ュグッケルベルグゲームの均衡 において も,外部経済ない しは外 部不経済を導入 したことによって最適反応曲線は変化 しないことが(10)より

明 らかになる。 この とき,村田(7)では,以下の補題の成立が確認 されてい る。

(補題 1)需要係数 をbとす るような線型需要関数 を仮定する。 また,第 1企業および第2企業の費用関数が,2次項のみからなる,生産量 にかんする2次関数であるとする。 この とき,2次項の係数である ところの第 1企業の費用係数clお よび,第 2企業の費用係数C2 水準 を適当に とれば,また,需要係数bの水準 を適当に とれば, クール ノー均衡 における第 1企業,第2企業の均衡生産量および, シ ュタッケルベルグ均衡における第 1企業,第 2企業の均衡生産量 の大小関係を任意に選択で きる。

(証明)略

以下の図 1では,おおよその領域分・類を図示 している。

(9)

領域 Ⅰ:xIC>x2C , xIS>x2S

領域Ⅱ :xIC<xZC , xIS<xZS

領域Ⅲ :xIC<x2C , xIS>x:S

G#N:xIC>xZC , xIS<xZS

領域 V :xIC<x2C , xIS>x2S

1 均衡における第1企業生産量と第2企業生産量 (比率)

また,クール ノー均衡 においては,第 1企業の均衡生産量 と第2企業の均 衡生産量の合計は,

xl+x

2

b24(2a(bb+c+cl)(l+bC 2)

+ C 2)

( ll)

とな り,シ ュタッケルベルグ均衡 においては,第 1企業の均衡生産量 と第2 企業の均衡生産量の合計は,

2\J・り︼タレ2+▼ハunⅦト川︼α \I・.‑︼′レ+九U/し\.′′し

+▼hU/̲\8 ki>,ハU4

〃l

JT]

+

(12)

となる。 この とき,クール ノー均衡生産量の合計量 がシ ュタッケルベルグ均

(10)

外部経済 と後手有利性 について il貰il

衡生産量の合計量を超 える条件は,クールノー均衡生産量合計が正値である とすれば, (ll)および(12)から,

2'hUEid2タレ一hU/t\)′し+,hU・14 用■iiiZ!1︼′し+l(し+l〃れⅦ一一旧\JTT′し+ムUnrl旧u2 2‑・7]rL2+■ハUのⅦlL

となる。左辺の前半項が正値であ り,b‑1である場合には, (1+cl+cZ)̲ (1+C2)2

4(1+C2)

4(1+cl)(1+C2)‑1 4(1+cl)(1+C2)‑2> 1

となることか ら,以下の図2が得 られている。 この とき,

sl‑ C1+1

S2‑C2+1

により,(13)を, 4sIS2‑1 2S2(sl+S2

52‑C2+1

+llJiZq ヽJ日日+2rIJlリ1ir一川U 42八〇ヾ)8

S1‑0.5 sl‑1

sl‑C1+I 領域Ⅰ:XIC+x2C>XIS+x2S

領域Ⅱ :XIC+x2C<XIS+x2S

2 クールノー均衡生産量 とシュタッケルベルグ合計生産量

(13)

(14)

(11)

と変換 している。図2における等生産量合計曲線Eの下方領域 (Ⅰ)では, クール ノー均衡生産量総計がシ ュタッケルベルグ均衡生産量総計を超 える。

ただ し, slお よびS2が負値の領域は利潤極大条件 が無意味化す るためふ く まれない ことに注意 しなければな らない。費用逓減の程度が大 きすぎては利 潤最大条件が存在 しな くなるか らである。なお,XIC,x2Cはクール ノー均衡生 産量,XIS,x2Sはシ ュタッケルベルグ均衡生産量である.

この場合,sl>1,S2>1の範囲では条件式(14)は満足 されない ことに注意 したい。 これは通常の複 占経済ゲーム対応領域で,シュタッケルベルグ均衡 生産量合計はクールノー均衡生産量合計を超 える。一方,本稿で注 目してい

る領域は,

0.5>sl>0 , 0.5>S2>0

である。限定 された領域であるが,費用逓減ケースに相当する。結論を先取 りしていえば,この ような費用逓減を発生 させる具体的なメカニズム として, 外部経済があるということである。外部不経済の場合は,クール ノー均衡生 産量合計がシ ュタッケルベルグ均衡生産量合計を上回 らない。

一方 ,シ ュタッケルベルグ均衡 における後手第 2企業の生産量がクール ノー均衡 における第 2企業の生産量を超える条件は,

4(b+cl)(b+C2)‑ b2

2 (

b

+ C

2)(b+2cl)

が成 では,

>0

b(b+2C2) A̲(+ ̲(b+C2)(b+2cl) 4(b+cl)(b+C2)12b2.4(b+cl)(b+C2)‑b2 となる。 さらに,(16)は,b‑1の場合,

2(1+C2)(1+2cl) (1+2C2) 4(1+cl)(1+C2)‑1 4(1+cl)(1+C2)‑2 となる。条件(17)は,変数変換,

< 1

< 1

(15)

(16)

(17 )

(12)

外部経済 と後手有利性 について

sl‑ C1+1

S2‑ C2+1 により,

2S2(2sl‑ 1)‑ 2S1‑1 4sIS2‑1 4sIS2‑2<1 となるから,

(4sIS2‑ 1)(4sIS2‑2)>0 であるときには,

S2< &

193

(17)

(18)

とな り, slお よびS2が反比例関係にあることが理解 され る。 2次の費用係 数が正値 である ときには, slおよび521以上 になるが, これ ら数値 にた いして不等式(18)は成立 しない。

以上の ことか ら,村 田(9)では,以下の補題が得 られている。

(補題 2)需要係数を あとするような線型需要関数 を仮定する。また,第 1 企業および第 2企業の費用関数が,2次項のみか らなる,生産量に

かんする2次関数であるとする。 この とき,2次項の係数であると ころの第 1企業の費用係数clおよび,第 2企業の費用係数C2の水 準を適当に とれば,また,需要係数bの水準を適当に とれば,クー ル ノー均衡生産量の総計をシュグッケルベルグ均衡生産量の総計 よ り大 とすることができる。また,クールノー均衡 における第 2企業 の生産量 よりシ ュタッケルベルグ均衡 における第 2企業の生産量の ほうが大 きくすることがで きる。ただ し,その ときの費用係数は負 値 になる。

(証明)略

(13)

3.最適反応曲線 と外部経済

外部経済を想定 しない通常の寡 占市場の複 占経済モデルでは,最適反応曲 線は右下が りである。 このことは,少な くとも線形需要関数を仮定 して,収 穫逓減ないしは費用逓増型の費用関数を想定するようなクールノー数量戦略 複 占経済ゲームにおいては常に成立 している。一万,等利潤線については, 上記の ような性質を保有する複 占経済モデルでは,最適反応曲線を変曲点 と

して,た とえば第 1企業 については,その生産量であるxl軸にたい して凹 であ り,第 2企業については,その生産量であるx2軸にたいして凹である。

外部経済を想定 しない場合には,費用逓増型の一般の費用関数 (Cl(xl), C2(x2))を仮定 して等利潤線の形状を分析 した ところで結論はかわ らない。

その場合,第 1企業の利潤関数 Ill,および第 2企業の利潤関数I12は,

Ill‑(a‑(xl+x2))xlCl(xl) I12‑(a(xl+x2))x2lCZ(x2)

となるだけであるか ら,等利潤線の傾 きは,それぞれの利潤関数 について, (7r.=

axl

(.lri=

a‑2bx1‑bx2Cl bxl

a‑2bx2‑bxlC2 ax2 bx2

(Hlの等利潤線の傾 き)

(H2の等利潤線の傾 き) となるが,これは最適反応関数の性質 と密接な関係がある。bxl,bx2が とも に正値であれば,

C l

a‑2bxl‑bxZl &

a" bxZlbx1‑ %

(14)

外部経済 と後手有利性について 195

の符号で等利潤線の傾 きが決定 され るか ら,最適反応 曲線上が変 曲点になる ことがわかる。 しか し, これだけでは等利潤線が戦略変数軸 にたい して凸か 凹かは確定 しない。等利潤線が戦略変数軸 にたい して凹になるのは,戦略変 数軸以外での変曲点,

α‑2∂∬1

x2=

x2=

∂C1

b

a‑2bx

Z 一

における微分係数が負値 となる場合であ り,それは, 勉 ‑‑2一1 ≦ o

迦 ニax2 ー21 ≦ o

が成立する場合である。上式は,費用関数の2次の係数が正値であるような 通常の複 占経済ゲームにおいては成立する。右下 が りの最適反応 曲線の場合 には等利潤線 が戦略変数軸 にたいして凹になる とい う事実はかな り一般 に成 立 している性質である。 この ことが図3に示 されている。 この不等号が逆 に なるのは,2次費用関数の場合には,2次の係数 が ‑1を下回るケースに限 られる。その場合にかぎって,第 1企業および第 2企業の最適反応曲線は右 上が りになる。

また,線形需要関数の仮定を緩和 して, よ り一般な右下が りの需要関数 を ゲームモデルに導入 した ところで結論は不変であ る。 クール ノー数量戦略複 占ゲームにおけ る先手 ・後手均衡の実現が容易でない こ とは知 られてい る が,最適反応 曲線の傾 きの正負 と等利潤線の凹凸形状の対応性 にかんする例 外を見 つけることのほ うが困難である といってさしつかえない。この事実が,

これまで後手有利性をめ ぐる多数の研究を誘発 して きた主要な原因である と

(15)

3 等利潤線の形状 (外部経済がない場合)

考 えてさしつかえないであろう。

ところで,本稿で検討 しているところの,外部効果を ともなう複 占市場の 経済モデルにおいては,たしかに第 1企業および第 2企業の最適反応曲線お よび均衡生産量は外部効果のないケース と同一であるから,数理的には何 ら ゲーム均衡 に影響をあたえないかの ようである。

しかし,外部効果の存在は,等利潤線の形状を変化 させる効果を保有する。

実際,本稿(3), (4)で示 されるような数量戦略複 占ゲームにおいては,第1 企業の等利潤線の傾 きおよび第2企業の等利潤線の傾 きは,2次の費用関数

(1),(2)を仮定する場合には,

,7r:= a‑2(b+cl)xl‑bx2 axl bxl+2cxZ

axL a‑ 2(b+C2)x2‑ bxl ax2 bx2

39g

侵OE

となる。(19)nlの等利潤線の傾 きを示 してお り,(20)Ⅲ2の等利潤線を 示 している。 したがって,通例のゲームモデル と異な り,

∂∬1+2C∬2‑0 (21)

(16)

外部経済 と後手有利性 について 197

を境界 として,等利潤線の傾 きの符号が変化するのである。

以下の図 4は外部経済が発生 している場合である。すなわち, C<0

のケースの図示である。

本稿では,クールノー数量戦略複 占ゲームの均衡において,後手生産量が 先手生産量 を上回る可能性 を検討 しているのであ るか ら,外部経済の発生 ケースに関心が集中するが,図4では,負の外部効果係数の水準が適当に と

られてお り,直線(21)がクールノー均衡点を通過するときの状況を図示 して いる。 この とき,第 1企業の最適反応曲線の傾 きの絶対値は第 2企業の最適 反応曲線の傾 きの絶対値 より大 きい と仮定する。 この仮定は,クールノー複

占経済ゲームにおける通常の想定であるところの正の費用係数, cl>O

c2>0

を仮定すればただちに満足 されるが,その とき,第 1企業の最適反応曲線の 右側では第 1企業の等利潤線の傾 きを示す式の分子は負債 とな り,第 1企業 の最適反応曲線の左側では第 1企業の等利潤線の傾 きを示す式の分子は負値 となる。一方,直線(21)の右側では第 1企業の等利潤線の傾 きを示す(19) 分母は正値 とな り,直線(21)の左側 では第 1企業の等利潤線の傾 きを示す (19)の分子は負債 となる。外部効果を考えない場合 には,この ような変曲点 は生産両軸である縦軸 ないし横軸において発生するか ら,第 1象限に分析視 点を限定するときには気づかれない事実である。 ところが,本稿の想定によ れば, このような変曲点が第 1象限内部 に存在することになる。その結果, 5の ように直線(21)がたまたまクールノー均衡点を通過する場合でさえ, 1企業の等利潤線の懐 きの正負について,4つの領域が区分 されるのであ

る。

以上か ら,定理3が得 られる。

(17)

4 等利潤線の形状 (外部経済がある場合)

(定理3)数量戦略複 占ゲームにおいて,正の需要係数をもつ線型需要関数 を仮定する。また,第 2企業の費用関数が,自己の生産量の 2次項 か らなるとする。さらに,第 1企業の費用関数が自己の生産量に関 する2次項 と第2企業の生産量に関する2次項の加重合計であると する。 この とき,第 1企業の費用係数,第2企業の費用係数を正値 の範囲で適当に とれば,また第 2企業の生産にかんする第 1企業の 費用係数水準 (外部経済係数)を負値の範囲で適当に とれば,また, 需要係数水準を正値の範囲で適当に とれば,シュタッケルベルグ均 衡 における先手企業の生産量 より後手企業の生産量のほうが大 きく なる。 この とき,クールノー均衡 における生産量合計 よりシュタッ ケルベルグ均衡における生産量合計のほうが小さ くなるようにする ことがで きる。 したがって,シ ュタッケルベルグ後手の利潤はシュ グッケルベルグ先手の利潤 およびクールノー第2企業の利潤を上回 るようにすることができる。

(証明)略

(18)

外部経済 と後手有利性 について 199

すでに,外部不経済 がないケースにおける数量戦略複 占ゲームについては, 2次の費用係数が特定範囲の負値水準である場合 には後手有利 となる可能性 があることを村 田(9)で論証 しているが,そ こでは同時 に,正値費用係数の ケースにおいてはまった く後手有利性は存在 しない ことを同時に論証 してい た。 ところが,本稿の定理 により,線型需要関数 と2次項のみか らなる費用 関数を想定する数量戦略複 占ゲームにおいては,第2企業が第 1企業 にたい して外部経済 を与 える とすれば,た とえ2次の係数 が正値 である場合 におい てさえ後手有利 となる可能性があることが確認 された。

4.

H ・S1990において,一般的な検討がお こなわれたにもかかわ らず,一般 的分析であったがために,クール ノー数量戦略複 占ゲームの均衡戦略 として の先手 ・後手均衡 がほ とん ど起 こり得ない と結論 された ことの背景には,数 学的論理的一般化 と経済学的定義の間にある不整合が存在 してい る。H ・S 1990では,経済学的には発生 しに くい状況の取 り扱いについて一貫性がない

ことはその ことと関係 している。経済学的に起 こ りに くい状況を完全に排除 して しまえば,興味あ る結果が得 られないことか ら,部分的には経済学的常 識 を超 える状況の考察は試行 してみた ものの,結局,完備な分析 には至 るこ

とがで きなかった とい うことである。その結果 として,数学的に も経済学的 にも常識的なケースのみに焦点をあわせ ることとな り,クール ノー複 占数量 戦略ゲームにおいては同時手番均衡 のみが現実的である とい う結論 を得たの である。

それにたいして,本稿では,具体的かつ現実的な複 占経済ゲームにおいて さえ,何 らかの外部経済が作用する ときには後手有利 となる可能性があるこ とを示 した。外部不経済の作用を複 占ゲーム分析 に導入す ることは,厳密 に いえば非対称性の想定 をすることになるのではないか とい う疑いがある とは いえ,その作用はDo1986で導入されている非対称性 に比較すれば,取 るに

(19)

足 らない程度である。外部不経済の導入は,形式的には第1企業 と第2企業 の費用関数が相違することになるとい う状況は発生 させ るものの,ゲームの 基本的な同時手番性が失われることはない。負の費用係数を仮定せずに,同 時 に,非対称的なゲーム構造 になることを極力避けなが ら,後手有利 となる ゲーム均衡 を得 ることは可能なのであ る。

この とき,H ・S1990で想定 された基本 クール ノーゲームの一段階前の ゲーム,すなわち,先手 ・後手を選択する手番の存在は,本稿 におけるゲー ムではほ とん ど考慮する必要はない。本稿で分析 されたのは具体的かつ個別 的なゲームモデルであることがその主 な理 由であ り,実際,一方の企業に と

っては先手が有利であ り他方の企業 に とっては後手が有利である ときには, 先手が生産完了 した とい う事実を確認 で きるとい うことのみが必要である。

この ことを,抽象的モデル設定をおこなった場合 における ̀̀確認で きる遅れ'' (obserbabledelay)と同等な内容 とみるべ きか どうかは重要な問題ではな い と考 えたい。本稿で検討 した ような具体的数値モデルのクラスにおいては, 発生 しない課題である ととらえて差 し支 えないであろう。

同等な内容 とみるか どうかは,先手有利な一方企業 と後手有利 な後手企業 が存在 して,完全情報 を仮定するとき,実際に先手 ・後手を実行することが 追加的な別の戦略 とみるべ きか どうかに関係する問題である。あるいは,クー ル ノーゲームが同時手番ゲームであ る とい うとき,それは同時以外の手番は 事前 に完全排除 されているのか どうか とい うことであ り,シ ュグ ッケルベル グゲームにおいては先手 ・後手 とい う手番以外は,た とえそれが有利であっ たにしろ選択することが構造的に不可能であるのか という問題である。仮に そ うである とする と,本稿で検討 して きた ところのゲームは,厳密 にいえば, 3のゲームである ということになる。ただ し,本稿でのゲーム構造が事前 に手番の決定 されることのないゲームであるとす る と,困難な課題が発生す る。戦略空間にない戦略は選択で きないか らである。 したがって,先手 ・後 手の選択 は事前に選択肢 として存在す る と考 えなければな らない。ところで,

(20)

外部経済 と後手有利 性 について 201

先手 という戦略を選択する とした場合,それは実現可能な戦略 か とい うと, これまた問題があることを認めないわけにはいかない。相手の戦略に依存す るか らである。相手の戦略に依存 して事後的に決定 されなければな らない戦 略 とは どの ような戦略であるか。それは完全な戦略 といえるか とい うことで ある。本稿の分析は,たんなる反例 を示 した ことに とどま らない。この点が, Amir(1995)との違 いである。

参 考 文 献

1.Amir,.A.(1995)."EndogenousTimingTwoPlayerGames'A CounterExample,

"GamesandEconomicBehavior.

2.Anderson,S.,andM,Engers.(1992)"StackelbergversusCournotOligopolyequilium,'' IntemationalJoumalofOrganization.10.127‑135.

3.Dowrick,S.(1986)."VonstackelbergandCournotDuopoly:ChoosingRoles,"Rand JoumalofEconomics.17.251260.

4.GalOr,E.(1985)."FirstMoverandSecondMoverAdvantages,"znternationalEco

nomicRevieu).26.649‑652.

5.Hamilton,JリandS,Slutsky.(1990).̀̀EndgeniousTiminginDuopolyGames:Stack‑

elbergorCournotEquilibria,"GamesandEconomicBehavior.2,29146.

6・Singh,N.,andX.Vives,(1984)."priceandQuantityCompetitioninADifferentiated Duopoly.RandJoumalofEconomics.15.546‑554

7.Vives,X.(1984)."I)uopolyInformationEquilibrium:CoumotandBertrand"Joumal ofEconomicTheoり,.34.7194.

8.村 田省三(2005).「クール ノーゲームの均衡 とシ ュタ ッケルベルグゲームの均衡 におけ る生産量比率」長崎大学経済学会 『経営 と経済』第85巻第 1号 .

9.村 田省三(2005).「クール ノーゲームの均衡 とシ ュタ ッケルベルグゲームの均衡 におけ る生産規模」長崎大学経済学会 『経営 と経済』第85巻第2号 .

図 3 等利潤線の形状 ( 外部経済がない場合) 考 えてさしつかえないであろう。 ところで,本稿で検討 しているところの,外部効果を ともなう複 占市場の 経済モデルにおいては,たしかに第 1企業および第 2 企業の最適反応曲線お よび均衡生産量は外部効果のないケース と同一であるから,数理的には何 ら ゲーム均衡 に影響をあたえないかの ようである。 しかし,外部効果の存在は,等利潤線の形状を変化 させる効果を保有する。 実際,本稿 ( 3 ), ( 4) で示 されるような数量戦略複 占ゲームにおいて
図 4 等利潤線の形状 ( 外部経済がある場合) ( 定理 3)数量戦略複 占ゲームにおいて,正の需要係数をもつ線型需要関数 を仮定する。また,第 2企業の費用関数が,自己の生産量の 2次項 か らなるとする。さらに,第 1 企業の費用関数が自己の生産量に関 する 2 次項 と第 2 企業の生産量に関する 2 次項の加重合計であると する。 この とき,第 1 企業の費用係数,第 2 企業の費用係数を正値 の範囲で適当に とれば,また第 2 企業の生産にかんする第 1企業の 費用係数水準 ( 外部経済係数)

参照

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