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職業原則にみられる会計監査人の独立性について

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(1)

職業原則にみられる会計監査人の独立性について

その他のタイトル Auditor's Independence in Germany

著者 高柳 龍芳

雑誌名 關西大學商學論集

巻 20

号 3‑5

ページ 255‑271

発行年 1975‑12‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00021068

(2)

(255)  67 

職業原則にみられる会計監壺人 の独立性について

高 柳 龍 芳

は じ め に

西ドイツにおける会計監査人の職務を支配する諸原則は, 19世紀以来,州 官庁・地方自治体官庁・商業会議所および職業諸団体等により,各州,各地 区においてそれぞれの発展をみてきた。これらの原則は,会計士職業の倫理 を形成し,職責を確立し,また,その権利を擁護する基本となり,会計士に とっては,共存共栄に役だつ用具であったし,経済界や一般の人々を含む公 共の利益擁護の役割を果してきたのである。

しかも,当時にあっては,このような会計士職業の規範を定めた職務諸原

(!) 

(Berufsgrundsatze)はそれぞれの各地ごとの商業会議所や職業団体に よって設けられ,実践されていたのである。したがって,部分的に各地区で 独自に発展を続けていたこの種の諸原則が一つの総括的な「職業規則」

(Berufsordnung)  として整備されるのは20世紀後半をまたねばならない。

第一次世界大戦後, ドイツにおける経済のめざましい復活は,職業会計人 の活躍の場をも,飛躍的に拡大させたが,このような職業会計人に対して

(1)  拙稿「ドイツにおける監査原則の構造について」 (現代監在の課題•森山書店

•昭47) 149‑165

(3)

68  (256)  職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳)

も,また職業統制を必要とするに到った。この職業に対して,全ドイツ連邦 からの統一的な規制がもち込まれたのは, 1931年の諸州契約 (Liindervere inbarung)においてである。この契約はドイツ連邦政府と,諸州政府との

間に交されたものであって,この中において,会計監査人の公の任命に対す る一般原則が樹立されたのである。

この原則は,第二次世界大戦の敗北によって消滅することなく, 1945年以 後は各州・各地区ごとに,それぞれの法令・規則・準則等において補足修正 を受けながら生きつづけており,その原則にもられた内容は全国の統一的な 臓業規則 (Wirtschaftsprliferordnungwpo)ができ上るまで種々の職業団 体によって支持されてきたのである。

そこで,西ドイツにおける会計監査人の職業原則を重要な個別的な原則に

(2) 

区分けすると,①本職業務の原則,R無偏見性の原則,③自己責任性の原則,

④無依存性の原則,⑥職務信頼性の原則等から構成されることとなろう。本 稿においては,これらのうち,自己責任性の原則,無依存性の原則および無 偏見性の原則に関し,これらの発展過程についてとりあげてみたい。

(1)  自 己 責 任 性 の 原 則 に つ い て

すでに述べたように,職務原則の中の一つの重要な原則に,自己責任性の 原則 (Eigenverantwortlichkeit)が挙げられる。 これは「監査人は何も言 わなければならないか,何を述べてはならないか,しかも,その際には,他

(3) 

人の指示に従ってはならない」という原則である。会計士識業が自由職業と して誕生した最初から,この原則が強調されていたのである。

この原則は,職業宣誓の中において会計監査人が「公認会計士の義務を責 任をもって注意深く行ない,秘密を守り,とくに監査報告および意見表明に (2)  拙稿「ドイツにおける会計監査人の独立性の基盤」企業会計昭50629‑34

(3) Koch,  W.; Der Beruf des Wirtschafts prilfers, 1957, S.166 

(4)

職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳) (257)  69 

(4) 

当っては,誠実かつ公平に行なう」旨を誓ったことに対する,その監査人の 責任のあり方についての規定として具体化したものである。自らの責任にお いて監査契約をなし,監査を実施し,監査報告書を作成しなければならない 聴業上の特質から,会計監査人の自己責任性は天与のものとして与えられて いると理解されている。見方をかえれば,会計監査人の精神的独立性を支え る諸条件をば,自己責任性ー監査人の自立性という立場からとらえてゆこう とする原則なのである。

1933年に公認会計士本部 (Hauptstelle  fiir  die  oftentlichbestellten  Wirtschaftspriifer)により発布された規則 (Bestimmungen)によれば,

次のような規定が盛られている。

(1)公認会計士(会計士個人と監査会社)はその業務を自己責任のもとに 実施した時にかぎり自立性 (selbstandig)をもつ

(2)自己責任は会計士個人が雇用関係に基づいて業務を行なった時には認め られない,公駆会計士個人とその署名権を有する代理人との間に,または,

監査会社とその法定代理人もしくは業務代理人との間に存する雇用関係につ いてはこの限りではない,ただし,公認会計士個人の署名権を有する代理人 および監査会社の法定代理人もしくは業務代理人は,公認会計士としての監 査報告もしくは監査意見表明に当り,その内容において自らの信念と一致し ない場合でも署名すべきことを義務づけられた業務指令に拘束されない場合 にのみ自立性をもっ,

(3)公認会計士個人もしくは監査会社が,他の会計士個人もしくは監査会社 との間に,法的には組合契約であっても,経済的には雇用契約とみなされる 契約関係を結んでいる場合には,被用者である会計士個人は前項に述べた業 務指令に拘束されない時に限り自立性をもつ,

(4)上記原則に拘はらず,関係者間の人的関係もしくはその他の事情のため に,自己責任ある監査としての保証が求められない時には許可委員会 (Zu‑

lassungsausschu/3)は自立性欠除の理由にもとづき許可を取消す。」

(4)  WP0§43,  (1) 

(5)

70  (258)  職業原則にみられる会計監査人の独立性について (高柳)

規則の内容は以上の通りであるが,この原則が示す骨子は,公恩会計士が 活動する場合に欠けてはならないものとして「自主性」を強調していること である。ここに示された「自主性」は,一般に精神的独立性と称される監査 人の資質に関係していると考えてよいであろう。さらに, ドイツにおいて,

自主性が問題にされる場合,特長づけられるのは,個人と全休との関係につい てである。すなわち, ドイツにおいては,監査人グループの中における監査 人個人の身分上の独立性の問題が,早くから表面化していたことである。

イツでは,監査主休の発生がアメリカや日本のように個人から発達したのに くらべると,かなり古い時代から,集団として監査に従事する傾向が強いと みられる。ちなみに,会社形態をもつ監査組織が1890年には, ドイツ・アメ リカ受託会社 (DeutschAmericanischeTreuhand Gesellschaft)として 設立をみているのである。

上記規定の(1)に述べられているように,自主性については,個人監査人と 同じく監査法人にも求められているのであるが,この要件は,監査主体とな りうるものは,当然に外部に対して自己責任を果すことによって,自立的で あるとみられることを示している。しかし,ただ,単に,監査人が外部に向 かって自立的であればよいとする考え方だけでは,監査法人という組織的な 監査の発生するにしたがって十分なものとみなされなくなる。そこに,更に,

もう一つの,個人と集団との関係が生じてくるからである。すなわち,集団 が生ずると,その中に置かれた個人の立場は通常,複雑となり,困難さを伴 ない,時には,自らの意に反して集団の意志に従属しなければならないこと となる。

個人が集団の意志に従うことは,監査のあり方からみれば,危険なことで ある。個人の独立性が集団の意志の中に埋没する時には,本質的には個人プ レイである監査に重要な欠陥をもたらすことになる。そこで,上記の規定に は,(2)が設けられて,監査法人の中にある監査人個人の自主性がもりこまれ たのである。すなわち,監査を実施した監査人個人は,監査法人が反対の意思 をもつ場合であってもそれに拘束されてはならないこと,そして,そうする

(6)

職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳) 259)  71  ことによって始めて,監査人は自主性をもつものとみなされると定めている のである。したがって,ここにみられる自主性とは,監査人が自己責任を果

しうるための前提要件であると言うことができるであろう。

さらに言うならば,自己責任性とは,ー監査人が,他の監査人もしくは監 査会社に雇用されている関係においても存在する。監査株式における被用者 としての監査人は,監査報告ないし監査意見の表明に当って,自らの確信に反 した署名を強いられるような業務命令に拘束されてはならないのである。

硯今においては,雇用開係において,このような拘束的強制があった場合 には,その関係を破棄しても独立性を保持しようとする態度こそが,監査人 のとるぺき態度であると当然考えられてはいるが,すでに,当時においてド イツにあっては,通常の職業観念として法律上,このような自主性を要求し ていたのである。当時から,いかに自由職業としての会計士業務を,いかに 厳しく律し,監査人に対し強い責任を強いていたかがうかがえるのである。

(2)  自 己 責 任 業 務 に つ い て

その後,第二次世界大戦を迎えて,一時中断した職業法改正の動きは,戦 後各占領地区毎にそれぞれの発展経過をたどることとなるが,やがて統一あ るものにする努力がなされ, 19548月24日付で,「連邦公認会計士法草案」

が公布される。すなわち,これまで,ベルリン地区,東ドイツ地区,アメリ カ占領地区,フランス占領地区およぴイギリス占領地区に区分されて,それ ぞれ実施されていた職業法がここに統一を経て,西独全般に共通の公隠会計 士法発足の一歩がきづかれるわけである。

この草案が公表される前後から公駆会計士協会においては「職業法発展の ための特別委員会 (SonderausschuB ftir  die Fortentwicklung des Ber ufsrechts)」が結成されて,草案の各条項に関する指針 (Richtlien)のため の素材作りに専念している。この特別委員会は, 1955115日付で公表し たもののうち, 「自己責任」についてみれば次の通りである。

「自己責任

(7)

72  (260)  職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳)

1.  専門的確定又は確認を最終的に示さねばならない決算監査ならびにその 他の監査,意見表明業務においては,任務遂行に当り,ー名以上の責任あ

る行為と決定的な協力とを必要とする。

監査報告書作成および意見表明には,どの会計士が責任を負い決定を下 したかを記載しなければならない;それらには当該会計士の署名を必要と する。公示監査報告書には責任をもつ当該会計士のみが署名すべきであ

2.(a)  重要なすべての事項が責任あるその会計士又はそれらの会計士によっ て決定されるならば補助者の雇用は慣行であり,自己責任の原則に反する ものではない,すべての重要な評定と判断は責任あるその会計士又はそれ らの会計士によってなされた時のみ有効である。

(b)  助言を行なう協力者および報告書作成上の批判者を含めて業務に従事 する会計士の数はそれぞれの会計士又は監査会社において業務を担当する 会計士毎に四名を越えてはならない,多くの営業所を有する会計士および 監査会社については全営業所の協力者が総計される。全営業所に属する協 同者と会計士全員との割合が基準となる。監査会社で業務を行なう会計士 が,同時に独自の実務を行う場合には,この実務への協同者も亦加算され

権威ある職業団体により特に理由ありと認められた場合には例外措置が ある。」

この特別委員会の指針においては,個別的な問題についてかなり明確な方 向づけが与えられている。第1項においては,監査上における責任の所在を 明らかにするとともに,第2項においては,補助者ないし協力者との関係を 明確にしている。しかし,ここにおいても,監査上の補助者ないしは協力者 とは何か,また監査活動に従事しうる協同者の資格はどうなるのか等につい てはなお明確にされたとはいえない。

ついで,いくらかの紆余曲折を経ながら, 19617月24日付をもって,最 終的な公認会計士法(GesetzUber eine Berufsordnung der Wirtschafts

(8)

職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳) 261)  73 

priifer= Wirtschaftspriiferordnung= WPO)が公布され,会計士に開する 職業法として西独全国の統一されたものとして現在に至っている。前出の公 認会計士法草案の「第56条自己責任業務」は大すぢを現行法に受けつがして いる。公認会計士法第44条は次の通りである。

「自己責任業務

(1)  自己責任ある業務は次の者に限りこれを行なうことができる。

1.  自立性ある会計士;

2.  監査会社の取締役員,業務執行社員又は無限責任社員である会計士;

3.  会計士,監査会社,監査組合連合,貯蓄一振替銀行連合の監査部,又 は公法人全国監査局の署名権を有する代理人又は従業員であって第 2項 の規定に該当しない者,

(2)  監査報告およぴ意見表明を行なうに当り,その内容において自らの信念 と一致しない場合であっても,署名権を有する代理人又は従業員として署 名すべきことを義務づけられた指令に従わなければならない者は,自己責 任業務を行なうことはできない。このような義務を含む指令は無効であ

(3)  1項第2号及び第3号の場合においても,他の会計士と共同署名した こと,又は,監査組合連合,貯蓄一振替銀行連合の監査部もしくは公法人 全国監査局の場合には,その監査組合,その監査部もしくはその監査局の 署名権を有する代理人と共同署名したこと,で自己責任は消滅しない。

(4)  本法施行地外において,外国の会計業務従事者又は監査会社と共同して 職務を行なう場合であっても,その職務執行の要件が本法の要求に本質的 に合致する場合には自己責任は消減しない。但し,当該会計士がドイツ法 の定める監査の引受をなし,かつこれを執行する資格を有する場合に限

(5)  税理士を兼務する会計士が税理士会社の業務執行者となる場合であって も,法律に定める監査を執行する資格を維持するものとする。」

以上の通りであるが, 「草案」との遮いは,一つは,草案においては監

(9)

74  (262)  職業原則にみられる会計藍査人の独立性について(高柳)

査業務を行ないうる者の中に, 「監査会社」そのものが含まれていたが,硯 行法では,監査の実施者を自然人に限ったことから, 「監査会社」そのもの を規定からはづしている。さらに,第二としては,(4(5)が付加されたこと である。

また, 1933年の「規則」と較べても,本質的にその内容の差異は認められ ないが,監査人とそれが属する監査会社との契約関係について, 「規則」で は,かなり神経を使った規定をもりこんではいる。

(3)  無依存性の原則について

監査人の監査行為を規制する職務諸原則の中には,本瞭業務の原則および 自己責任性の原則と並んで,さらに,実際に監査を実施する場合の,監査人 の適格性の条件ともいうべき原則として,無依存性 (Unabhangigkeit) 原則および無偏見性 (Unbefangenheit)の原則がある。

ここではまず無依存性の原則を取り上げてゆく。

監査人が被監査企業に対して依存性を有する場合は,いかなる場合であっ ても,監査における証明行為は否定されることになる。この場合,依存性と いうのは,ただ単に,監査人の立場からの,いわば主観的にみて依存性を有 してはいないとの主張だけでは十分条件とはいえない。そこには客観的な裏 付がなければならないのである。この点に関して,公認会計士本部は,その 規定の中で,会計士が被監査企業に対して無依存性の原則に立脚していなけ ればならない旨を定めている。

始めて,この無依存性の原則が,法的規定として出現したのは, 1931

• 19付の「株式法,銀行監督及び租税減免に関する大統領の緊急命令(Ver ordnung des Reichsprasidenten Uber Aktienrecht,  Bankaufsicht  und  eine Steueramnestie)」によって会社法の一部が改正された時に遡る。 の規定は,その後の株式法の中においてもその内容は引き継がれることにな る。この緊急命令の第 6条において,株式会社に対し,始めて決算監査人に よる義務的監査の強制が行なわれることとなるが,この改正法の諸規定は商

(10)

職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳) 263)  75  法典の中に挿入されることとなる。

さて,この無依存性の原則は商法典の中の第262条 Cにおいて規定される が,それによれば,被監査企業の取締役およぴ監査役は決算監査人として選 任されえないこと,ならぴに被監査企業に対して業務執行上重要な影響をも つ者も決算監査人となりえないこととなる。この条項を通じて,法は,初め て監査人の無依存性が保持されることを規定したのである。ただ,この無依 存性が,いわゆる外形的独立性と一般に云われている監査人の適格性条件を 意味するものだと考えてよいと思うが,初期的な朋芽であるために極めて単 純な規定であるにすぎないし,内容的にみても,被監査企業の業務執行者と の関係のみを取り上げているにすぎない。

ちなみに,ここには,兼業できない職務として監査役がでていることを指 摘しておきたい。 ドイツにおける監査役は,当然の事ながら,取締役の業務 執行を監督する立場にある開係上,取締役とは無依存性を保持するものでな ければならない。その点から云えば,監査役と決算監査人の職責的立場とは 何ら相矛盾するところがないように思える。したがって,とくに,監査役が 決算監査人となりえない根拠は薄弱のように思えるが,伝統的にいって,硯 在においても,この考え方は受け継がれていると云ってよい。その点,英国 の監査役が同時に会計監査人としての資格を有しなければならないのと比較 して大きな遮いのあることを指摘しておきたい。 ドイツにおいては,監査役 が取締役の業務執行を監督することで,必ずしも外部からの批判者としての 役割を強調するのではなく,その業務を通じて,むしろ,企業経営の協力者 としての側面をもつことの方に重点をおいていると理解した方がよいように 思える。決算監査人という会社機関を設定することによって,監査役は取締 役への協力機関となり,決算監査人は取締役への外部からの監視役となった

と割り切った方が理解しやすいように見える。

さて,このように,法によって,監査人の無依存性保持の原則が確立され たことに伴い,つづいて,公圏会計士本部より1933年に公表された「公恩会 計士のための規定」によれば,無依存性に関してより明細な指示が与えられ

(11)

76  (264)  職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳)

ている。それは次の通りである。

(1)会計士は自らの職務を実践するに当り, 強固な客観性 (Objektivitat) を保持しなければならない。

(2)  その他,次の場合における決算書の証明は禁じられる:

1.  1931 • 19株式法•…••に関する大統領の緊急命令第 1 章 n 第 262 条

c項に従わずに貸借対照表監査人に選出又は選任された場合,

2.  法の主旨に基づき前項第1号に規定されない被監査企業(個人商人,

合名会社,有限責任会社,協同組合等)が会計士業務の執行に重要な影 響を有している場合,

(3)  個人監査人が監査を受託する場合,現行規定に基づけば,第 3号第 1 及び第2により,被監査企業の所有者,無限責任社員もしくは法定代理人 が,会計士もしくはその配偶者と,第一もしくは第二親等の親族である時 には常に重要な影響をもつものとみなされる,また,会計士が監査を受託 する直前の四年内において被監査企業又は従属もしくはコンツェルン会社 の監査役員,従業員として又は雇用もしくは契約関係にあって仕事に従事 していた時は,商法第262C項第2号条件に該当するものとみなし現行 規定にいう重要な影響を生じている,

(4)  監壷会社が監査を受託する場合,第2号第1および第2によれば,特 に次の場合には硯行規定にいう重要な影響があるとみなされる。

(a)  被監査企業の所有者,無限責任社員又は法定代理人が監査会社の業務 執行社員又は取締役員(又はその配偶者)と第一又は第二親族である場

(b)  被監査企業の所有者,無限責任社員又は法定代理人が監査会社の業務 執行者,取締役又は監査役の一員である場合,

(c)  監査会社の業務執行社員又は取締役員が監査を受託する直前の四年内 において被監査企業又は従属もしくはコンツェルン会社の監査役員,従 業員として仕事に従していた時は,商法第262C項第2号の条件に該 当するものとみなす。」

(12)

職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳) 265)  77  ついで, 1931• 19株式法は全面改正をされた後, 1937• 30付をも って,公布されることとなるが,この1937年株式法の中に,監査人の無依存 性の規定が引きつがれるのである。 1937年株式法第137条第2項は次の通り である。

「当該会社(被監査企業)の取締役員,監査役員並ぴに被用者は,之を監査 人として選挙又は選任することができない;被監査会社に従属し又は之を 支配する他の会社の取締役員,監査役員並に被用者,及自己の業務執行に つきこれらの会社より重要な影響を受ける者についてもまた同じ。」

この規定は,続いて今回の株式法改正によっても,第164条「決算監査士 の資格」の中において引きつがれている。 1937年株式法の資格規定は簡明に すぎて立法意図が明確でないことから,現行法では,さらにより具休的な取 扱い方をしている。その規定は次の通りである。

1) 会計士または監査会社に限って,決算監査士となることができる。

(2) 会計士は,つぎに掲げる場合には,決算監査士となることができな

1.  監査を受ける当該会社の取締役員,監査役員もしくは被用者である か,またはその選任の直前3年の間にこれらの地位にあったとき;

2.  法人の法律上の代表者または監査役員,人的会社の社員または企業の 所有者である場合において,その法人,人的会社または個人企業が監査 を受ける当該会社と結合しているとき;

3.  監査を受ける会社と結合している企業の被用者であるとき。

(3)  監査会社は,つぎに掲げる場合には,決算監査士となることができな

1.  監査会社またはこれと結合している企業が,監査を受ける会社と結合 しているとき;

2.  法人である監査会社においては社員が,第2項によれば決算監査士と なることができないとき;

3.  監査会社の監査役員が,第2項第1号によれば決算監査士となること

(13)

78  (266)  職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳)

ができないとき。」

以上の通り,監査人の無依存性の原則は株式法の中に取り入れられている が,これは概ね概略規定であるため,なお,個別的,具休的且,詳細にわた る実践的な規定運用に関しては不充分である。 なお,公認会計士法=WPO については,第3章の「会計士の権利義務」のところでも,特にこの無依存 性については具体的に触れられていない。たとえば,第43条「一般的な職業 上の義務」および第44条「自己責任義務」においては,かなり個別的な問題 を取上げてはいるが,特に無依存性については多くを触れていない。この無 依存性の原則は,公認会計士自治本部の公布による「監査規範 (Richtlinien fiir  Berufs aus ‑Obung der Wirtschaftspriifer und vereidigten Buch‑

priifer)」にゆだねられることになる。

(4)  無 偏 見 性 の 原 則 に つ い て

職務諸原則において,会計士職務として行なってはならない業務および兼 業可能な範囲を示した本職業務の原則,監査人の責任の所在を示した自己責 任性の原則およぴ監査人と被監査企業との利害関係を示した無依存性の原則 は,いわば監査人の外形的独立性をめぐっての原則であるとするならば,さ

(5) 

らに,一般的には精神的独立性と呼びならされた分野につい問題が提起され よう。

ドイツにおいては,精神的独立性を無偏見性の原則という形で取り上げて いる。監査人にとっては,監査を実施するに当り,被監査会社との関係にお いて,偏見を有するような精神状態であってはならないこと,さらに,この ような偏見を監査人が保持しているという危惧を第三者に対して与えるべき ではない,このような考え方にたって職務諸原則の中に無偏見性の原則が取 入れられている。

まず,この無偏見性に関しても力を入れて指示を与えたのは, 1955年の (5)  ドイツにおいては,特に独立性の問題を,外面的ならびに内面的の二面に分類

して取り扱う慣行はみられない。

(14)

職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳) (267)  79 

「職業発展のための特別委員会(公認会計士協会)の提案であった。これに 先だち, 1954年の「公認会計士法草案」においては,この無偏見性の原則が 取り入れられている。それは次の通りである。

「第61条 業 務 の 禁 止

会計士はその業務について義務に反する行為を要請されたり,受任業務 の執行において偏見のおそれがある場合にはその業務を拒否しなければな らない。」

このように,監査人の精神的独立性の必要性を謳った条項は,すでに英国

(6) 

占領地域における1946• 12 • 20公布の職務規則に盛られていたという。この 草案第61条の条項は,全く同じ文言をもって, 1961年公布の公認会計士法第 49条に取り入れられ現在に致っている。なお,株式法の監査規定の中には,

1937年株式法では,この無偏見性の原則は取り入れられていない。公認会計 士協会等の意見,世間の論調などの活発化の結果, 1965年株式法において,

この偏見性の原則が顔をみせ始めるのである。株式法第163条「決算監査士 の選任」の第2項には次のような規定がある。

「それが選挙された決算監査士の一身に存する理由により要請されたとみら れるとき,特に偏見の恐れがあるときは,取締役会,監査役会またはその 持分を合せて資本の10分の1もしくはその券面額が200万ドイツマルクに 達する株主の申立により,裁判所は関係人および選挙された監査士を審訊

した後,他の決算監査士を選任しなければならない。……」

このように,現在において,法の中に組み入れられた無偏見性の問題に関 して, 「職業法の発展のための特別委員会」が1955年に提案をした内容につ いて紹介をしてみたい。

まず委員会は「会計士はその戦務に無偏見性をもって対する。特に第三者 に対して偏見の危惧が生じないように行動すべきである」ことを第一番に挙 げている。すなわち,会計士は,自らが公正不偏でなければならないこと,

更に,公正不偏でないかもしれぬという危惧をば第三者に与えた場合であっ (6)  Koch,. ; Der Beruf des Wirtchaftspri.ifers,  a. a. 0.,  S. 171 

(15)

80  (268)  職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳)

てもならないことを述べている。続いて「判断にとらわれない第三者からみ て,会計士が監査ないし意見表明を客観的かつ公正に行ないえないであろう という懸念を抱くかもしれないような,合理性に反した理由がある場合に は,その会計士には偏見のおそれがあるものと認められねばならない。この 場合には, 会計士は自ら責任をもって処置しなければならない。」と述べ,

会計士がただ単に主観的な立場から主張するのではなく,自由な判断をなし うる第三者の立場からみて,合理性をもたないと思われる理由があれば,十 分に公正不偏でないと認められる根拠となることを主張している。

そして,さらに,この偏見のおそれという概念は, 「文献の中や,刑事及 民事訴訟における裁判官に関する判決の中」で明確にされてきたという。し たがって, 「この概念は,会計士が一種の裁判官的機能,例えば,仲裁裁判 官又は法律上の専門家として判定を下す場合にのみ会計士の職業に関して適 用される」としている。勿論,会計士が株式法上の決算監壺士として決算書 の意見表明を行なう職務がこの中に含まれるとこは当然である。ただし,こ のような場合であっても, 「全関係者の明確な合意があれば偏見のおそれは 除去される」ことになるのである。

続いて,特別委員会は,会計士にどのような場合に偏見のおそれが生じる か,又は生じないかを具体的に示しているので次にあげてみたい。

(a)偏見のおそれは次の場合に生じない,すなわち,会計士が,

1.  監査すべき決算書の作成に協力したこと。

2.  同一企業の以前の決算書を監査したこと。

3.  被監査企業に対し,経済上,税務上又は組織上の助言をなすかなしてき たこと。

4.  経済上又は税務上の事務において,官庁又は第三者に対し被監査企業を 代理するか又は代理してきたこと。

5.  被監査企業の委任に基いて鑑定人として活動しているか又は活動をして きたこと。

6.  その企業が関連した訴訟において,証人又は専門家として行動するはず

(16)

職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳) 269)  81  であること。

7.  被監査企業を独占的に所有している企業を監査するか又は監査してきた こと。

(b)偏見のおそれは通常の場合,次のような場合に先ずる,たとえば,会計士

1.  被監査企業に対し,監査又は鑑定対象に重要な影蓉を与えるような業務 執行権をもつか,或いは,部分的にこれを引きうけたり,実行してきた場 合;会計士は自分自身の行為を監査したりあるいは判定しているという印 象を与えるべきではない。

2.  選任に当り,無偏見性について具体的且合理的な疑念が発生しているこ とを知り又はある事情から推定されるはずである場合。

3.  被監査企業の内部において,又は,に対して実施すべき監査又は陳述す べき鑑定に重要な影響を与える如き利害の対立がみられるとき,その一方 に対してすでに決定的な立場を保持している場合。

4.  被監査企業の利益と相反する独自の利益を,その企業において追求する 第三者と,密接な職務上又は経済上の関係にある場合又は直近 3年間にお いてそうであった場合;このような関係のため,会計士が監査及び鑑定を 公正に実施することを妨げているという印象を与えるべきではない。

ー一第3項および第4項においては,関係者のすべてが,委任授与の事情 に関し明らかに同意している場合には偏見のおそれは除去される。一 5.  監査委任者に対する職務上の問題でない場合であっても,会計士の無偏

見性を阻害するかもしれない重要な関係にある場合;すなわち,会計士は 監査委任者叉は委任機関構成員に対し,ある種の依存関係にあるという印 象を与えるべきではない。」

以上のような提案を特別委員会は行なうのであるが,さらに委員会は,こ れらの条項が,単に監査人個人だけではなく,監査会社に対してもあてはま ること,すなわち,監査会社において業務執行にたづさわる協同経営者,取 締役員,叉はその会社より任命を受ける会計士等にも適用されるものとして

(17)

82  (270)  職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳)

いる。

以上,特別委員会の無偏見性に対する提案をここに紹介したのであるが,

一般的見解としては,この無偏見性の原則に遮反した場合の法的効果として は,先に述べた無依存性の原則遮反が直ちに監査された決算書の無効原因と なるのに比べると,必ずしも決算書の無効にはつながらないとされている。

ただし,会計士が,紀律上の処置をうけるという効果が生ずるのは当然のこ

(7) 

とである。

お わ り に

さて,公認会計士法の中で,主要な規則の一つとされているものに,職務 宣誓がある。この宣哲制度は,十九世紀末に宣誓帳簿監査士 (Beeidigter Bi.icherrevisor ; Vereidigte Bi.icherrevisor)制度が艇生した時に始まる。

同法第17条は職務宣誓の伝統を引き継いで次のように規定する。

「申込者は免許状の交付に先立ち,州最高財務官庁または同官庁に権限を 委託された官署において, 職務宣誓 (Berufseid)を行なわなければなら

ない。宣誓の文は次のとおりである。

私は全智全能の神にかけて,公認会計士としての義務を責任をもって注 意深く行い,とくに,秘密を守り,監査報告および証明に当っては,誠実 かつ公平に行なうことを誓います。神よ私を助けて下さい。」

この宣誓は,会計監査人が,職務諸原則に基づいて,その業務を誠実かつ 公平に行なわねばならないことを意味している。会計監査人はその業務にお いて良心に従った行為をなし,公正不偏の立場にたって業務の執行を行な う。良心的であり,公正不偏であるということは,また,独立性と自己責任 性を会計監査人が保持しなければならないことを意味している。

この職務宣誓は,会計監査人が職業専門家となる時に行なう,全般的かつ 一回限りのものである。

(7)  Koch,  W.; Der Beruf des Wirtschaftsprtifers,  a. a. 0., S.174. 

(18)

職業原則にみられる会計監査人の独立性について(高柳) 271)  83  したがって,この宣誓は,会計士の行なうすべての職業活動を拘束する。

法定監査を行なう場合はもちろん,鑑定,助言活動および信託相談者として の活動に当っても,さらに,司法上の専門活動においても妥当するのであっ て,業務を行なうそのたぴごとに改めて宣誓しなおす必要はないのである。

この職務宣誓の中に盛りこまれた内容=精神は,職務諸原則の源泉となる ものである。職務諸原則は,いわばこの宣誓の中に述べられた精神をいっそ う詳細に明確化し,具象化したものであるといえよう。会計監査人にとっ て,最も重要な原則といわれている精神的独立性が, ドイツにおいては,こ の宣誓の中に,集約され,古い伝統として職業実践の中で育成されてきたと いえよう。

宣誓帳簿監査人制度が誕生したことにより,会計監査人は真の意味での自 由職業家となったと考えられるが,会計監査人が,公共一般に対して責任と 義務を果しうるところの自由職業家となるためには,宣誓という形式が必要 であったし,この宣誓こそが,会社監査人の,良心に則り,公正不偏な監査 を可能にした,精神的独立性の実質的な内容を規定しているものといえるで あろう。

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