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山 下 邦 也

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(1)

オランダにおける終末期医療決定と刑法

一安楽死に関する判例法の展開とその周辺伯青 (2)--~

山 下 邦 也

5 .   政治的論議のはじまり

オランダの安楽死問題に特徴的なこととして患者とホーム・ドクターと の信頼関係の強

i

さが挙げられる。ホーム・ドクターは住民にとっての「最

も倍頼できる隣人」ともいわれている。このことは,オランダの[欠招シス テムにおいて構造的に濫用ケースが起こり得ないことの理由としても言及 されている。しかし,それは,オランダの人々が全体としての[矢療環境に 満足していることを意味しない。むしろ逆の側

[ I ‑ r i

もみてとれる。患者の自 己決定権,選択0)自由,白律性が闘ll廿されるのも,人々がア・プリオリに それらに価値があるとするからではなく,人の死の過程からその人自身を 疎外する医療権力の増大に対する抵抗概念としてとらえられ得るのである。

安楽死との関連でいえば,「病院で死ぬこと」または[病院で生かされる こと」に対する疑いもある程度作用しているように思われる。事実,安楽 死反対論者の心臓医フェニクセンは,安楽死運動の高揚の一つの要因とし

て怖い医療不{言を栄げている。次のようにいう。

「オランダ社会の民主じ義と自由主義の進展の特色として大衆の反医療感

1

青というものが挙げられる。それは他のヨーロッパ諸[E]よりはるかに早く

4

7/  

‑ 1  I :i—-  ‑572  (香法'%):l

(2)

オランダにおける終木期1欠掠決定と刑法(2)(山ド)

進んだ。選挙されることもなく絶大な力を揮い,利己的とみられ,あまり に自己過似的で,常識に欠け,人々のニーズに無関心な

l

父師に対する大き な反感がある。オランダのメディアの宣伝によって滋投を得た大衆のこの 反医療0)ムードと安楽死への突進には強い閃係がある。ある人々は医師の 慈悲に槌り,その『マシーン』に委ねられるよりは吊く夕じにたいとさえ考

(I) 

えている。」

日本でも放映されたオランダのテレビ・ドキュメタリー・フィルム「要 請 さ れ た 死j 0)‑伐^場面でもそのような情景が坦間見られたように思う。そ れによれば,筋萎縮竹:側索硬化症0)患者ケース氏 (6]歳)の麻痺はすでに

M

から両足へと進行しており,遠からず窒息死に希るであろうことが告げ られる。氏は配偶者と共に生活しながら自宅で平和裏に死にたいとして病 院へ行くことを拒否し,ホーム・ドクターであるオイエン氏に安楽死を要 請する。ケース氏は人工呼吸器につながれて_生かされることに耐えられな かったようだ。同じ場面でケース夫人が「病院へ行くと何をされるかわか

らないから」とつぶやいたことばが印象に残っている。

ここでいうのもやや唐突ではあるが,今日,オランダにおいても,臓器 移植や脳死判定などをめぐって国民の医療に対するい頼感の低ドという間 題のあることも意識しておく必要があると思われる。

ここでの本題は,以下のようである。

1970年代背初からオランダ議会は,医療の(権)}]の増大と医療倫理の 間題に注日し始めた。それは妊娠,出生及び死亡に関係する分野の医療技 術的可能性の増大と共に次第に法的不安定性の増大も間題とされ始めた時 期であった。公衆衛生次官は,保健審議会に専門的意見について諮間した。

六 審議会は, 1972年,第一の暫定報告内で安楽死間題を扱った。 1975年の第 口の報告内ではとりわけ深刻な生来

1

生の障害新生児の安楽死問題を扱った。

しかし,政府は,これらの意見書に基づいて立法化に乗り出すことはでき

(2) 

なかった。

15‑‑3 ‑‑571 (香法'95) 2 ‑‑

(3)

1976年 1月29[ 

i ,  

ョーロッパ評議会の諮間委員会は,「病人と臨死状態 にある人々の諸権利に関する勧告779号」を採択した。勧告0)第二部は次 のような趣旨のものであった。

あらゆるレベルの医療専門家,法律家,道徳神学者,心理学者及び社会 学者の代表からなる全国調査委員会を設

i t

忙し,生命の終期にある人々の治 療のための倫理的ルールを確立するべぎである。

現在の医学ではその_牛命を救い得ない末期患者の人L的延命措附の中止 や患者の一苫痛緩和のための積極的な措附が副次的結果を伴うとき,医療専 門家のメンバーが民事制裁または刑事制裁に直

l l l i

させられることがある。

それゆえ,延命のための通常でない措洲が行われる場合の医学的指祁原則 を決定すべきである。

とりわけ法的に能力ある人々の脳機能が不

r 1 J

逆 的 に 倅

1 1 ‑ .

したときには延 命措憤の差し控えを求めるケースが仔在する。これについて内面による宣

(:JI 

汀の間題を検討すべきである。

1978年枠れのオランダド院における保健

f

算0)審議の際に,このヨーロ ッパ評議会の勧告に注意が向けられた。そして,政J付は勧告779号 の 第 二 部を実施する用意があるかどうかを文鳥で[r1]答するよう求められた。これ に対して,保健・環境次官は「安楽死に関する国家委員会」の設附を予定 し, この委員会の具体的な勧告のための作党内容の

t

台づくりを保健審議

会に求めた。1980年に任命された保健審議会は1982年に報告書を提出した。

この報告内は,安楽死と自殺援助0)許容性についての判断は控えた。

報告内に韮づいて, 1982年10月18l l,  15人からなる国家委員が任命され た。オランダでは,国家委員会は最闘ランクの委員会であり,委員は女王 によって任命される。委員は様々な専門分野とポ教または非宋教グループ

(法学者,医師,精神科医,右設婦,神学者等)の代表から選ばれた。委 員会に与えられたテーマは「安楽死と自殺援助間題に関する広い政策提案

q

1 / C  

︶︶ 

15‑ :  ‑l ‑S70 (香法'95)

(4)

オ プ ン ダ に お け る 終 木 期 似 脱 決 定 と 刑 法(2)(山 1,)

.L L 

﹈︶ 

(4)  (S) 

とその結果としての必要な法改正について勧告すること」であった。

委員会は,報告内を準備する過程で,要請に韮づいた生命終結と自殺援 助に閲する―立法,判例法,及び学術文献による比較調脊の遂行を法務省の 研究・文献センターに求めた。また,様々な状況0)ドでみられる安楽死に 対する態度,行われた要請の実態,安楽死と自殺援助の実際のケースにつ いて

M

的データを収集すること,そして,その後,関連ある基本的間題に

(6) 

ついて社会の様々な人々にヒアリングを行うという叶[lhjを立てた。これら の手だてを講じることに対しては悠長にすぎるという議会の批判もあった。

積極的安梨死(})知られるようになった増大する数と個々の相互に矛盾する と思われる諸判決に面して,法的安定性が専されるであろうこと, ~j 事者 0)苦しみが不必要に延期されるであろうことが危惧された。

こ(})ように,国家委員会の報告内が短期間に現れないであろうことを見 越して, リベラル左派の少数党である「民主

6 6

党」のド院議員ベセル・ト

インストラは,独白に, ~'frttf0)課題として「刑法293条と 294条の改正案」

(7) 

を1984年 4月12

f l

に提示した。

6 .   ベセル・トインストラ法案

この法案の基本理念は,生命の保護価値(収厳性),死の過程の人道化,

一定の条件(})もとにおける自己決定権,生命終結行為の注意深い援助,そ して,それらの行為に対する統制(監視)可能性,にあるとされた。法案 は,嘱託殺人も自殺附助も依然として刑罰規定のもとにあることを前提と して,嘱託殺人(安楽死)を規定する293条 の 拘 禁 刑 の 最

I ‑ .

限を12年から 4年に縮小し,同じく罰金刑のカテゴリーを第 5類 (l()Jjギルダー以下)

から第

4

(2

5 0 0 0

ギルダー以下)に修正し,他

h,

本来,罪質を同じ くする自殺招助とのバランスに配慮して,自殺翡 !助を規定する294条の拘 禁刑については 3年の最上限を 4年に延長した。そして,

ii f J

じ条項におい て,自殺0)怖制に関する規定を新設し,従来の最

L

限 3年の拘禁刑を 12年 に延長した。また両条には,従来の裁判所の判例0)韮準に一致する形で,

;i  ‑3 ‑S69 (香法'g;j) ‑‑‑‑4~

(5)

あ る 条 件 の も と で 行 わ れ た 行 為 の

n J

罰性を排除するべく特別の刑罰阻去

I P

由 が 付 加 さ れ た 。 こ れ は 正 刈 根 拠 の 性 質 を も つ も の と さ れ , 絶 惰 的 状 態 に あ る 患 者 に 対 す る 注 意 深 い 医 療 行 為0)コンテクストで[矢師によって生命が 終 結 さ れ た 場 合 に は , 安 楽 死 と 自 殺 桁 助 の 実 施 は 口

J

罰 的 で は な い と す る も

0)であった。

現 行 の293条 は 「 明 ボ 的 で 真 剣 な 要 請 に 韮 づ い て 他 人 の 生 命 を 奪 っ た 者 は最卜胤限12年 の 拘 禁 ま た は 第 5類 (1()) jギルダー以ド) 0) 

? ; i i

金に処する」

と の み 規 定 し て い る 。 硯 行29J条0)12年と294条())3年 で は 法 定 刑 に 極 端 な 開 き が あ る 。 別 の と こ ろ で も 触 れ た が , そ れ は 立 法 茸 時 の 情 情 に よ る も 0)

とされる。すなわち, 293条())[月会審議がなされてし)た1881年

' ' 1

時 , 杜0)

要 請 に よ り 夫 が こ れ を 殺 出 す る と い う * 件 が 起 こ っ た 。 し か し , 社 は 夫0)

普段の虎待により惰状態に陥り, とうとう金を支払って自己の殺'甚を嘱託 したというものであった。こ 0)よ う な 極 瑞 に 悪 打 な ケ ー ス に は 市 い 刑 が 科

せ ら れ る べ 苔 で あ る と い う の が 議 会 の 大 努 で あ っ た と い う 。 一 方 , オ ラ ン ダ刑法における拘禁刑())最ド限は 1I l 0刊仏第10条)というものであって,

裁判官の贔刑裁惜権はり狙大であるから,実務

1 ‑ .

はさしたる不都合も感じら れ て い な か っ た と 思 わ れ る 。 例 え ば , ポ ス ト マ

I

矢師が

1 , f

罪 冗 告 を 受 け た レ ー ワ ル デ ン 地 裁 判 決 (197:)年 2月211l) で は , 詞 条 違 反 で 1週間の拘梵刑,

執 行 猶 予

1

年 と い う も の で あ っ た 。 そ れ は と も か く , 以

l

汀こその改正規定 案を掲げる。

[改正案

l

293条 1項

1 .  

明 ポ 的 で 真 剣 な 要 請 に 韮 づ い て 他 人 の 生 命 を 奪 っ た 者 は

4

年 ま で の 拘 禁 ま た は 第

4

類のド'rj金に処する。

2 .  

見 込 み の な い 緊 怠 状 態 に あ る 者 に 対 し て 注 意 深 い 援 助 活 動 の 形 態 において[矢師が生命終結を行ったときには廿り号にいう行為は

r i J

罰 的ではなし) 0

L

¥ 

l )  

ー ‑ , )  ;i・:l  :'i6?l  (香法'%)

(6)

オランダにおける終木期[矢療決定と刑法(2)(山ド)

五七

3 .  

注意深い援助活動とは次の要件を満たすものである。

a .  

援 助 を 求 め る 者 は , そ の 状 況 , と く に 苦 し み の 軽 減 を 意 図 し た治療についてできるだけ知らされなければならない。

b .  

援 助 を 求 め る 者 は , そ の 要 請 を 自 由 意 息 に 韮 づ い て , 緑 り 返 し, 自ら表明しなけオしばならなし\。

c .  

医師は,援助を求める者が第

2

号にいう状態にあり,また

b

でいう条件を満たしていることを確認したうえで,その決断を

しなければならなし%

d .  

医 師 は , 業 務 を 共 に し た 者 及 び 緑 戚 者 を 除 く 独 立 の 医 師 と の 相談を経なければならない。

4 .  

もはやその認思を表明できる状態にない患者が,あらかじめ内面に より耐え難く的しんでいる状態にあるときには生命終結を要請する 旨(})宣ばを作成している場合には,それが自由意息によるものであ ることを[矢師が確認できる限り,これを患者の息思の表明として考・

閾[することができる。

5 .  

援助を求める者が

1 8

歳未満のときには法定代理人が決定過程に関与 しなければならない。これらの者の全てまたは一人が生命終結の要 叫

i

に同認しなしヽ場合には,その決定をしてはならなし\。

(オランダの成人年齢は 18歳以じである一―—~ft 者)

6 .  

[矢師は診招叫録を

5

年間保存し,調行の中し出があるときには検察 官に引き渡さなければならない。記録には少なくとも次の市項が記 載されなければならなし%

a .  

第 3号にいう巾実と状態

b .  

要諮と援助行為についての近親者の怠見

c .  

氏師が相談した第二の医師の氏名とその者による所見 d.  第 2号にいう援助活動に対応した行品人に対する指図

7.  医 師 は1Eしい死亡診断内を遅滞なく検死医に提出しなければなら ない。その様式は政令によって定められる。

15-—-  ‑3:‑‑567 (香法'95) 6 . 

(7)

2 9 3

2

医師の巾し出と責任に基づいて犯罪とはならない行為を良心をもって引 き受けた看詭人は

2 9 3

条にいう犯罪としての刑事訴追を受けない。

次 に , 現 行

2 9 4

条は「他人を自殺させる故意をもって,その者を開助し,

またはその手段を供与して自殺に至らせた者は,最じ限 3年の拘禁または 第

4

0)罰金に処する」としているが,これは以ドのように改められる。

2 9 4

1

1 .  

他人の自殺を故意をもってり狙いた者は,既遂の場合には

1 2

年 ま で

0)拘 禁 ま た は 第

5

類の訓金に処する。

2 .  

他人の自殺を故意をもって桐助し,またはその手段を供与した者は,

既 遂 の 場 合 に は

4

年 ま で の 拘 禁 ま た は 第

4

類の罰金に処する。

: 3 .  

前 号 に い う 行 為 が

2 9 ; 3

条 に い う 注 意 深 い 援 助 活 動 の 形 態 で 行 わ れ た とき, また前条第

1

項 第

3

号 , 第

6

号及び第

7

号 に 準 拠 し て 行 わ れ たときには可罰的ではない。

2 9 4

2

2 9 3

条 第

1

6

号 と 第

7

号にいう行為を遵守しない医師は,

1

年 ま で の 拘 禁 ま た は 第

3

類の罰金に処する。

(第

3

類 の 罰 金 額 は 刑 法 第

2 3

条により

1

万ギルダー以ドである 筆者)

2 9 4

3

1 .  

何人も生命終結の要請または自殺桐助の要請に応じ,またはそれに 協力するよう義務づけられることはない。

2 .  

要請に韮づく生命終結または自殺柑助に良心的根拠をもって反対し ている朕師は,本人からの依頼があったときには虹ちにその信条を 告げなければならない。

‑ 7 ‑‑ 15‑‑‑3 ‑‑566 (香法'95) 五

... I.•

/¥ 

(8)

オランダにおける終末期医旅決定と刑法(2)(山ド)

3.  第 1号の規定にかかわらず,援助を求める者が中し出をなし,かつ その同意がある場合には,医師はその事実を他の医師に知らせなけ

W) 

ればならない。

Li 

ー ー

改正案は以上の通りである。法案の提出者は,迅速な法改正を意図して,

安楽死の対象グループを主として能力ある成人に限定し,未成年者につい ては293条 1項 5号 に い う よ う に 法 定 代 理 人 の 関 与 を 求 め て い る 。 未 成 年 者の安楽死の要請については,後年,「医療

f l

為同意法I (未実施)におい て年齢区分に関してさらに詳細な議論が展開されるようになるが,ここに 最初のこととしてこのような形で提示されたことが汁且される。他方,昏 睡状態の患者については,安楽死が許容されるべきかどうか,またどのよ

うな条件のもとで許容されるかなどなお明確ではないとして,意識的に除 外 さ れf心 初 期 の 判 例 法 は , 安 楽 死 を 実 施 す る 者 は (Jp.に)「他の医師と 相談しなければならない」としていたが,法案では「独立した医師」と明 記し,かつて共同で仕事をした医師,縁戚関係にある医師を除くとしてい る。その意思を表明できない患者についても,事前の内面による自由意思 に基づいた安楽死宣言のある場合には,患者の意思として有効であるとし た。これも後の議論でさらに熟成される。 293条 1項 6号 に い う 「 診 察 記 録を 5年間保存し……云々 l というのも新しい提けである。安楽死を実施 できる者は,

t

として医師であることを想定していると思われるが, 293 条

2

項にいうように,医師の指示に基づいて看護婦等ナーシング・スタッ

フがこれを実施する事態も考えたものであろう。市実,ブラットによれば,

1986年に行護職員の組織が安楽死について調在したところ,構成員の70, 000人 (50%)が直接安楽死に関係しているという結果が明らかになった。

それらの職員は自身で医療行為を行うことは認められていないが,医師の

(IO) 

指示に応じて安楽死を行っているというのであった。また,前稿に掲げた ロッテルダム地裁判決 (1981年12月1日)の被告人は,オランダ任意安楽 死協会のボランティアの会員であって保健専門職ですらなかった。判決は

15・3  565 (香法'95) ―‑8 ‑‑一

(9)

彼女が「注意深く行為しなかった」として有罪の宣告をしたが,自殺を桐 助する者が医師または[矢療従市者でなければならないとは断定しなかった。

今日でもまれには近親者が慈悲殺を行う事実もあるといわれる。上述した フェニクセン医師は,オランダ国民の世論調査の結果, 44%が「慈悲心か らその同意なしに自己の父母を殺した者1 に「ある理解」をぷした例を挙

(II) 

げている。知られているように,実施じ体は後には医師に限定されるべき ことになるのであるから,これは提案;JJ時の事情・志向をぷすものとして 興床深く思われる。最後に294条 4項の規定案も今日のlーい態と関わりをも った規定である。安楽死と自殺附助の要請を信条的に拒否する医師が他の 医師に患者を照会する義務の有無については現在も争われている。安楽死 と自殺附助に反対する1笑師の組織である「オランダ医師連盟」

( N e d e r ‑ l a n d s e  Artsen Ver  b o n d )

は,安楽死と自殺柑助は[欠療行為でも一般的に受

け人れられる行為でもなく,従って患者を他の[矢師に照会する道徳的また

(12) 

は法的義務はないという吃場をとっている。

当時,法案は共感をもって迎えられたが,議会の多数は国家委員会の報 告内の提出を待って審議すべきであるとして,その扱いは暫く延期される

(l:J) (14)  (IS) 

ことになった。

7 .   1 9 8 4 年のオランダ医師会中央委員会の見解

安楽死国家委員公の要請により, 1984年 6月, lパ[オランダ医師会中央 委員会は,医学界の安楽死間題に対する見解を公表した。その安楽死に対 する韮本的立場は,ほぼ10年前にぷされた立場とは一見してほとんど正反 対のものであった。 1973年の見解は,任息の積極的安楽死に対して「ノー」

の立場だった。 1984年には廻れ右をして 1イエス」のサインを出した。す なわち, 1973年には安楽死に対する積極的干渉は医学的観,r.1,tからは例外な しに許容できないが,法律的には許容できる場合があるとし,間題を法律 家に委ねたのであったが, 84年には医学的知見に珪づいた厳格な条件のも

とでは医師による侵製の余地がなければならないとした。つまり,安楽死 五四

ー~̀ ̀   15‑:~ 564  (香法'95)

(10)

オランダにおける終木期医招決定と刑法(2)(山ド)

は単に法律家の問題ではなく,まさに医療的間題であるとしたのであった。

また屯要なこととして, 7:1年の見解は,たとえ法的に許容される安楽死ケ ースがあるとしても,それは患者が「死の過程にある」ことを前提にして いたのであるが, 84年の見解は「耐え難い苦しみ」にまで条件を緩和して いる。このようにみると,オランダ医師会の_立場は,安楽死を否定する立 場に一顧だに与えないような印象を抱かせるが,医師会の見解ではそうで はないといわれる。その声明によれば,全てのケースで安楽死を拒否する 立場は必ずしもそれを排除しない立場と同様に尊重される。民

t

的,多元

(16) 

的社会は両方の立場を両立させるものでなければならなしヽと。委員会の見 解は大旨次のようなものである。

1 .  

安楽死の定義

委員会は,安楽死とは人の生命をその要請に基づいて認図的に終結する 全ての行為であると罪解する。この概念を泊極的安楽死,積極的安楽死及 び自殺援助としてさらに分割することは,委員会の多数には逍徳的観点、か ら余叶なことであり,沼ましくないと考えられる。 (73年の見解では, (1) 患者の治療拒否権, (2)副次的結果として生命の短縮を伴い得る苦痛緩和措 附(安楽死ではなしヽ),(3)積極的安楽死は是認されない,としてし it.:..‑‑‑̲;惰者)

2.  安楽死の奨盾に対応できる有資格者

委員会は,安楽夕じの要請の基礎にはしばしば病気があるということから,

その種の要訥について決断をドす唯一の賓格ある者として医師を想定する ことが適切であると考える。責任ある安楽死の実施に必要とされる医学的 なし\し槃物学的専門知識に照らして,安楽死はもっぱら医師・患者関係の 五 問題であるというのが委員会の見解である。また医師は身分法上の責任を もっている。それゆえ,集団としての医療職は,安楽死間題が社会的に受 け人れられるルールを制定する義務を負っている。

15‑‑: 3 563 (香法'95) ‑‑1   ‑()

(11)

3 .  

医師の患者に対する病状の調査と説明の義務

安楽死行為の実施は自由怠思に基づくものでなければならない。安楽死 の要請に直面させられる全ての医師は,どの程度の熟慮された要請がある のか,また苦しみは患者の立場からなお耐え得るものかどうかを調脊する 義務がある。このため医師は病気の現状と

f

後について患者に適切に説明 する必要がある。また安楽死の要請は病気の苦しみや孤独に対する不安・

恐れからなされることもまれではない。それゆえ,できるだけそれらの要 因に配慰し,取り除くよう努めなければならない。

4.  安楽死の実施を拒否する場合の朕師の義務

個人的理由から安楽死の要請を拒否する医師は,そのことによって患者 との関係を必然的に断つことはせず,当該の患者を他の同僚に受け入れさ せる機会を与えるべきであるというのが委員会の見解である。

5.  医師が安楽死を実施する場合の要件(ガイドライン)

安楽死というものの後戻りのきかない,通常ではない性質にかんがみて,

実施の前に,次の 5つの要件が満たされるべきである。すなわち,この間 に発展させられた判例法を若尉して,

(1)  患者の要請は自由な状態でなされたものか,

(2)  患者にとってもはや耐え難い,受忍できない,回復の見込みのない 苦しみがあるのか,

(3)  生命終結の要請は持続的なものか,

(4)  その要請は熟考されたものか,

を医師は全てのケースで注意深く調査しなければならない。

この厳格な条件を超えて患者がすでに瀕死の状態に達している必 五 要はない。というのも,死の過程にあるという判断が困難であるだ

けでなく,耐え難い苦しみを体験している患者に対してなお死に直 面するまで待てというのはもっともらしくないからである。もちろ

‑‑11  l丘―‑3~562 (香法'95)

(12)

オランダにおける終木期朕療決定と刑法(2)(山ド)

ん,さらなる前提条件として安楽死は医学的・薬物学的に責任ある 仕方で行われることが必要である。

(5)  安楽死を実施しようとする医師は,この分野における釣合のとれた 判断と適切な意思形成のために同僚と相談することが不可欠である。

6 .  

調在機関の設罹

委員会は,病院またはナーシング・ホームの代表,同僚など自分の周辺 にすでに存在するインフォーマルな相談の可能性と並んで,フォーマルな,

独立の調脊糾織の設骰を提案する。それは桔本的にはあらゆる分野から慎 屯に選出された 3人ないし 5人の同僚からなる自律的な調在委員会の形態 をとるべきであろう。このような予備調査を重視すべきであるというのが 委員会の見解である。この調脊委員会は,毎年,要約的な報告渇を医師会

に提出すべきであろう。

7 .  

真実に従った死亡診断;り

委員会は,今後,真実に従って死亡診断書か作成されることを要望する。

このため,委員会は,逍体処理法に適切なガイドラインを付加することが 必要であると考える。

8.  医師会と司法部

委員会は,安楽死を実施した医師0)訴追に関する明確な取り決めが可法

(17) 

部と[?(師会との間で締結されることが必要であると考える。

1984年のオランダ医師会の基本的立場は以上のようなものであった。挙 五 げられた条件は,従来の判例法とベセル・トインストラ提案に小された条 件と密接に関連している。しかし,委員会は,これらの判例法にもかかわ らず,医師たちはなお安楽死についで受け入れ難い法的が安定の状況に直 面しているとして,訴追基準の明確化等について法務判りに働きかけてい

IS‑‑3 ‑S61  (香法'95) 12  ‑

(13)

く必要を公言した。これは,後に

1 9 9 0

年に実視することになる。また,遺 体処理法における不自然死に関するガイドラインの提唱も遣体処理法第10 条の改正と同規則の制定として実現することになるのであるから,医師会 の社会的力が注日される。他方,医師会はこの法的不安定性^を新たな立法 によって解決するべきかどうかについては言及を控えた。

「耐え難い苦しみ」の性:質については,肉体的苦痛だけでなく,それと 関連して,またはそれとは別に精神的・心罪的苦しみの存在も屯視される という立場には初期のレーワルデン地裁判決,ロッテルダム地裁判決以来 その変更はない。むしろ,肉体的苦痛については医療技術的に相当程度コ

(18) 

ントロールでぎることが想定されていることが

t El  J

される。

オランダ医師会中央委員会の報告書は後述するように安楽死事件に対す

(19) 

る最初の最高裁判決に大きな影評をりえた。

8 .   安楽死に関する国家委員会の勧告

1 9 8 5

8

月1

9

日,国家委員会の最終報告内

( E u t h a n a s i e ,Rapport van de  S t a a t s c o m m i s s i e ,   S t a a t s u i t g e v e r i j ,   Den Haag,  1 9 8 5 )

1 3

人の多数意

見と共に

2

人の委員の少数怠見を併記して福祉・保健・文化大臣と法務大 臣に提出された。報告内は,木成年者,無能力の成人,受刑者,良心的異 議,ナーシング・スタッフの役割,薬剤師など多様な間題を論議した。提 案の中心にあるのは安楽死と自殺柑助を禁止する刑法

2 9 3

条と

2 9 4

条の改正 である。委員会は,他人の明ホ的で真剣な要請に基づいてその生命を意図 的に終結した者は現行ルールに従って処罰されるべきであるが,医師が改 善の見込みなしに絶望的で,耐え難い状態にある患者の生命を注意深い医 療実践のコンテクストで終結させた場合には新たな規定を付加して処罰0)

例外を設けるべきであるとした。この若え方は,後述する前年の最高裁判 決

( 1 9 8 4

1 1

月2

7

日)の影料を強く反映している。

最終報告書は次のような構成である。

五〇

13  ‑‑ I~-  ‑:3‑:'160  (香法'95)

(14)

オ ラ ン ダ に お け る 終 末 期

l

矢 療 決 定 と 刑 法(2)(山下)

第 一 部 勧 告

第一章 はしがき 第 二 章 作 業 方 法

第三章 刑法293条と294条に関する勧告 第四章 葬儀関係の手続き

第五章 患者の特別カテゴリー 第六章 患者以外の関係者

第七章 牛:命終結を意図した薬物の準備と調剤 要約

付属文書

付属文内に含まれた少数意見の報告内 第 二 部 比 較 法 研 究

第三部 ヒアリング

報告内のじ要な内容は次のようである。

I .  

刑法293条と294条に関する勧告

国家委員会は,安楽死をある人の要請によってその生命を他の人が意図 的に終結する行為と定義する。

委員会の大多数は,ある事情のもとで,ある条件を満たした場合には,

安楽死は犯罪であるべきではないという見方を支持する。これらのメンバ ーは,全員一致で安楽死は医師によってのみ実施されるべきであるという 要件を支持し,注意深い医療手続きと監視とコントロールの観点における 歯止めの措骰を必要と考える。

四 多数意見の中で一致しなかった一点がある。大多数は「患者が医学的に 九 絶望的な緊急状況にある」ことを条件に,他の

4

人のメンバーは,この文

章の後に「及びその死が不可避であり,切迫している時、r,tl」という文言を 付加することを条件に,安楽死は起訴を免れるべきだと提案した。

15‑‑3 ‑559 (香法'95) ~14 ・•一

(15)

2

人のメンバーは,安楽死の処罰の是非について委員会の多数と見解を 異にした。これら

2

人の委員は,安楽死の正当化に導く法改正を否定して,

少数意見を掲げた。その主要な論拠は,人間的尊厳の理念,「人権と基本 的自由に関するヨーロッパ条約」の厳格な解釈にあり,一度,積極化の方 向に一歩を踏み出すならば人間の生命の保護に対する沢山の侵害が不可避 的に起こるであろうという確信に基づいている。

委員会は,安楽死に対する法的制裁の除去が「人権と基本的自由を保護 するヨーロッパ条約」第

2

条と一致するかどうか,またどの程度一致する かを考える必要があると記しておく。第

2

条第

1

項の第

1

文は「何人の生 命に対する権利も法によって保護される」と規定している。委員会は,国 際法におけるこの宣言を参照しつつも,この条約の参加国はその国の法体 系のもとで生命の保護の形式をどのように決定するかに関して大幅な自由 をもつという仮定に従って作業した。しかし,議会が安楽死に対する現行 の法的制裁を除去しようとするときには大いに注意深くなければならない

と感じている。

委員会は,患者がその意思を表明できない場合にのみ,書面による生命 終結の宣言を意思の表明として扱うことができると考えている。患者が意 思表示をできるときには,口頭の表示または書面によっていつでも撤回で

きる。

委員会は,安楽死についての議会の立場を明瞭にすることが重要である と考えている。委員会は,この問題の政治化を避けるため,議会のメンバ ーがその良心に従って自由に投票できることを望む。

委員会は,関連する判例法の発展は長期にわたるところから,何が犯罪 かを明確に定義するには長年かかるだろうと考えた。訴追政策が

1 9 8 2

年以 来,高検検事長(法務部長)会議によって議論されてきているという事実

も必要な明確性と法的安定性を与えていない。

委員会の多数は,医師による自殺哲助は,要請に基づく生命の終結の場 合と同じく,同様の事情と同様の条件のもとで犯罪であってはならないと

四八

~15 ‑‑ 15~3~558 (香法'95)

(16)

オランダにおける終末期医療決定と刑法(2)(山下)

四七

考えている。委員会は,これらの分野における世論と専門的意見がまだ十 分に結晶していないことにかんがみ,特定の「理性的」自殺を含め,自殺 割助のその他のケースに対する法的制裁の除去が保障されるべきであると

は考えていない。理性的自殺とは,精神的に障害がない状態において,自 己の心理的,社会的状況と当該の自殺の社会的結果を十分判断できる人が,

受忍できない,または無意味であると考える生命の終結を意味する。

委員会は,改善の見込みなしに耐え難い状態にある患者の明示的で真剣 な要請に基づいて,医師が注意深い医療手続きのコンテクストでその生命 を終結した場合には,それは犯罪ではないという仕方で刑法293条が改正 されるべきことを提案する。

委員会は,生命を終結する決定は医師によってなされるべきであり,例 えば,親族または看護人に委ねることはできないと考える。同じことは,

必要な変更を加えて,自殺暫助にも当てはまる。

委員会は,立法改正提案において,適切な医療手続きを保障するために 沢山の歯止めの措置を考えた。その一つは福祉・保健・文化大臣が指名し

た他の医師との相談を行うべきであるという要件である。

委員会は,安楽死は当人の要請を前提にするという基本前提に一つの例 外を設けた。その意思を表明できない人の生命の意図的な終結は,現在の 医療知識によれば不可逆的に意識を喪失していると認められる患者に対し て注意深い医療手続きのコンテクストで,また治療が無意味であるとして すでに中止されていることを条件にして,犯罪であるべきではないと考え る。委員会は,客観的医学的基準に従って不可逆的昏睡と認められるケー スでは,医師による生命の終結は正当化できるが,それは治療が無意味で あるとして中止された後に初めてできると考えている。この場合も,もう 一人の医師と相談することが重要である。その不履行に対して特別の刑罰 制裁の導入を提案する (293条2項)。

また葬儀関係の手続きの遵守を保障するために,必要な記載事項の無記 入,または不正な記入に対して別の犯罪を想定している (293条3項)。

15‑3‑‑557 (香法'95) ‑ 16  ‑‑

(17)

委員会は,ヒアリングの際に, どのような行為が安楽死かについて広い 範囲で曖昧さがあることに注目した。このような不確実性を回避するため 293条 4項に生命の剥奪または終結とは考えられない多様な行為を列挙し た。それらは,支配的医学的見解に従って無意味と認められる治療を患者 の要請に基づいて中止することを含む。

2 .  

葬儀関係の手続き

委員会の報告書は,現在,上院に提出されている遺体処理法(埋葬・火 葬法)の改正による葬{義関係の提案を含んでいる。委員会は,改正提案を 補完するため,担当医は検察官に患者の生命を終結した事実,または自殺 を暫助した事実を自ら申告すべきことを提案する。この申告は刑法に規定 された基準がどのように考慮されたかについても報告するものでなければ ならない。検察官は,担当医から相談された医師の調査結果に基づいた書 式による宣言を送付されるものでなければならない。委員会は,自殺,そ の摺助,生命終結及び不自然な原因による死亡ケースをそれぞれ区別する ために,あらゆる不自然な原因による死亡ケースで,出生,死亡及び婚姻 に関与する登記官は,死亡証明書を作成すべきではないことを提案する。

葬儀の準備は,検察官が埋葬または火葬に異議がないという証明書を発行 した場合にのみ行うことができる。

3 .  

患者の特別カテゴリー

委員会は,例えば,両親またはその他の関係者または医師が未成年者の 生命に関して決定することは許されないと考える。生命終結の決定は当人 だけがなし得る。未成年者がその意思を表明でき,その置かれた立場を理 解できる場合には,このような未成年者による生命終結の要請は無視でき

ないと考える。委員会は,未成年者について両親や他の関係者ができるだ け決定過程に関与すべきではあるが,最後に発言するのが彼らであっては ならないと考える。

四六

~17~ 15‑‑3‑556 (香法'95)

(18)

オランダにおける終末期医療決定と刑法(2)(山下)

未成年者による生命終結の要請の特別な性質を考慮して,委員会は,未 成年者の利益を保護するアドバイザーを指定すべきであると考える。

その意思を表明できない精神障害者や老衰者のようなケースでは,

2 9 3

条のもとで,例えば,その看護者がその生命終結を当人に代わって決定す

ることは認められない。この場合には提案された

2 9 2

2

1

号が適用さ れる。

もはやその願望を適切に表明できない患者が特定の状況が到来した場合 には生命の終結を要請するという書面を事前に提示しており,それが

2 9 3

1

2

号に該当する場合には,状況は異なって理解される。

委員会は,受刑者の生命終結の要請には,その特別処遇を受ける地位に 照らして,応じるべきではないと考えている。受刑者から生命終結の要請

を受けた医師は,拘禁がその要請に影響を及ぼしていないかどうかを判断 すべきである。

4 .  

患者以外の関係者

委員会は,生命終結の決定に関係するナーシング・スタッフなどの地位 についても議論した。また良心的に異議を唱える人は,誰も生命終結また は自殺援助の要請に応じる義務はない。しかし,良心的異議をもつ医師は,

患者の治療を持続すべきことについて,または患者の死を援助する用意の ある他の機関または同僚に関する情報にアクセスできなければならない。

委員会は,要請に基づいた生命の終結または自殺射助に対する法的制裁 の除去は医師に限定されるべきであると考えている。しかし,行為の事情 次第では,第三者が孵助または共犯に問われることがあり得る。関連規定 は,このような第三者にも適用されるべきである。もちろん,主犯または 四 援助者は担当医の立場にある者である。

5 .  

生命終結を意図した薬物の準備と調剤

報告書は,生命の終結を意図した薬物の準備と調剤,薬剤師及びその補

15‑3‑555 (香法'95) ‑ 1 8 ‑

(19)

助者について言及している。これに関して特別規定が設定されなければな らなし

' o

これらの薬物の準備と調剤は,似薬法第

2

条のもとで調剤を実施する権 限をもつ人々,つまり,薬剤師,調剤師及び薬剤師の補助者に委任される べきである。濫

J

廿を防止するために,かかる薬物は甘該0)医師に直接手渡

されなければならない。各ケースにおいて生命終結または自殺援助の条件 が満たされたかどうかを判断することは薬剤師の責任ではない。このこと

は,薬剤師は,原則として,そのような判断に対して,刑法

I : . ,

責任がな

いことを意味する。同じことは薬剤師の補助者にも ~li てはまる。また,薬

剤師は,牛命終結のための薬物を供りする義務をもたない。薬剤師もその 補助者も,良心的異義, またはその他の異議をもつときには,そのような 薬物の準備と調剤を拒否できる。

[追加規定案]

(現行

2 9 2

条に第

2

項を追加する提案である。

2 9 2

条は「第

2 9 0

条 及 び 第

2 9 1

条に規定する犯罪は,閃りする他の者に関して故殺または謀殺とみなされ

る」と規定している。

2 9 0

条 は 母 祝 に よ る 突 発 的 な 新 生 児 殺 ( 故 殺 ) を 規 定し,

2 9 1

条 は 母 親 に よ る 化 謀 を も っ た 祈 生 児 殺 ( 謀 殺 ) を 規 定 し た も の である。ー一筆者)

2 9 2

2

1 .  

ある者が意思を表明できない場合に,その者の苦しい深刻な内体的 または精神的障害を理由に,その生命を故意に終結した者は,

6

年 までの拘繁または第

4

類の悶

l

金に処する。

2.  前号にいう行為が,支配的な医学的見解によればイ~-i1J 逆的に意識を

喪失している患者に対して,その治療が無意味であるとしてすでに 中止されている場合に注意深い医掠手続きの一部として医師によっ て行われたときには犯罪ではない。

四四

19  1 S  :~- SS4 (杏法'%)

(20)

オ ラ ン ダ に お け る 終 末 期

l

父 旅 決 定 と 刑 法(2)(山

1 ‑ ・ )

3 .  

前 号 で い う 注 意 深 い 手 続 き と は , 医 師 が 福 祉 ・ 保 健 ・ 文 化 大 臣 に よ って指名された専門家と相談することを意味する。

[改正規定案

J

2 9 3

l

1 .  

ある者の明示的で真剣な要請に基づいて,その一生命を故意に終結し た者は, 4年6ヶ月まで())拘禁または第 4類の罰金に処する。

2  •

前 号 に い う 行 為 が , 改 善 の 見 込 み な く , 耐 え 難 い 状 態 に あ る 患 者 に 対して,注意深い医療手続きの一部として[矢師によって行われたと

きには犯罪ではない。

3 .  

前 号 を 適 用 す る 場 合 , 自 殺 と そ の 柑 助 を 可 能 に す る 薬 物 の 用 意 も 生 命終結の

t l :

意深い[矢旅手続きの一部に含まれる。

4 .   2

号と

3

号 に い う 適 切 な 医 療

f

続きとは次のことを意味する。

a .  

患者がその特別な事情を知らされていること。

b .  

医 師 は 患 者 が 注 意 深 い 考 虚 と 自 由 な 決 意 を も っ て 生 命 終 結 の 要請をしたことを確認したものであること。

c .  

医 師 は そ の 調 脊 結 果 に 基 づ い て 患 者 の 耐 え 難 い 状 態 に 対 す る 他 の 解 決 策 が な い と い う 結 論 を 患 者 と 共 に 祁 き , 生 命 の 終 結 が 正

i 1

化されると判断したものであること。

cl.  医 師 は 福 祉 ・ 保 健 ・ 文 化 大 臣 の 指 名 す る 専 門 家 と 相 談 し た も のであること。

5 .  

内 面 に よ る 生 命 終 結 の 要 請 を 提 出 し て お り , も は や そ の 意 思 を 表 明 できない!且者に関して,

2

号でいう適切な医療手続きとは次のこと を怠味する。

a .  

医 師 は 患 者 が 自 由 意 思 に 韮 づ い て , か つ 注 意 深 い 考 慮 の う え 生 命終結の要請をしたものであることを確認していること。

b .  

医 師 は そ の 調 脊 結 果 に 基 づ い て 患 者 の 耐 え 難 い 状 態 に 対 す る 他 の解決策はないという結論に達し,、生命の終結が正当化されると

15 ‑3 55:l  (香法 '95) ‑ 20・ 

(21)

判断したものであること。

c .  

医 師 は 福 祉 ・ 保 健 ・ 文 化 大 臣 の 指 名 す る 専 門 家 と 相 談 し た も の で あること。

293条 2項

生 命 終 結 に 先 立 っ て 福 祉 ・ 保 健 ・ 文 化 大 臣 の 指 名 す る 専 門 家 と 相 談 し な かった292条2項と293条にいう医師は 3年 ま で の 拘 禁 ま た は 第 4類 の 罰 金

に処する。

293条 3項

228条に違反することなしに個々の法的要件を故意に満たさなかった292 条 2項 2号と293条 に い う 医 師 は 3年 ま で の 拘 禁 ま た は 第

4

類 の 罰 金 に 処 する。 (228条 は 医 師 に よ る 虚 偽 死 亡 証 明 内 , 虚 偽 の 病 気 診 断 書 の 発 行 を 禁

止している 筆者)

293条

4

本章の規定を適用するに当た って生命の剥奪ま た は終結 と は次の も のを 除外したものである。

a .  

患 者 の 明 示 的 で 真 剣 な 要 請 に 基 づ い た 治 療 の 差 し 控 え ま た は 中 止 。

b .  

支 配 的 な 医 学 的 見 解 に よ れ ば 治 療 が 無 意 味 と 認 め ら れ る 場 合 の 治 療0)差し控えまたは中止。

c .  

支 配 的 医 学 的 見 解 に よ れ ば 不

r 1 J

逆 的 に 意 識 を 喪 失 し て い る 患 者 の 付 随的病気または障害を治掠しないこと。

d .  

と り わ け 患 者 の 深 刻 な 苦 し み の 緩 和 を 怠 図 し た , ま た そ の 目 的 に とって本質的な治療の副次的な結果としての死の促進。

294条

人 の 自 殺 ま た は 自 殺 暫 助 を 故 意 を も っ て そ そ の か し , ま た そ の た め に 薬

(20) 

物 を 供 与 し た 者 は 3年 ま で の 拘 禁 ま た は 第 4類の罰金に処する。

‑ 21  ‑‑‑‑‑ lS—--'.) ‑SS2 (香訊,9;>) 

(22)

オ ラ ン ダ に お け る 終 木 期1欠 療 決 定 と 刑 法(2) (山ド)

国家委員会の報告内についてはいくつかの間題、Lばが指摘された。

第一—•は,多数派の中でも意見の分かれた,点に関してである。委員会は,

「絶望的な緊氣状況」

( u i t z i c h t l o z e n o o d s i t u a t i e )

というものは余りにも多 様であるとして詳細な展開をしなかったが,生命の終結がイ

' 1 1 J

避であると いう状態が想定されているという意味では共通理解がもたれたという。し かし, 4 人の少数意見が主張する「及びその死がイ~11J避であり,切迫して

いる時、

r , ¥

」 と い う 字 句0)付加には多数意見は反対した。「不可避的」

(onontkoombaar)

とし)うことばは

8 4

年の最蒻裁判決が学げた状況―‑‑「患 者がもはや尊厳をもって死ねる状態にはない」という見)jーーと調和させ

るには複雑すぎると受け取られた。後述するように

8 4

年の最贔裁判決は,

「患者が臨死の状態であるには及ばない」という同じく

8 4

年に公表された オランダ医師会の見解に依拠していると考えられる。国家委員会の多数意 見もそO)J点で同様の事態を想定していたようである。安楽死に関する国家 委員会の元副委員長であり,アムステルダム大学の社会朕学と保健法のレ ーネン教授によれば,

4

人のメンバーがどうしても認めようとしなかった のは「精神的・心理的に見込みのない緊急、状況」であったとしている。多 数慈見は,「肉体的に死が不可避で,切氾している」だけでなく,「精神的 に絶望的な緊急状況または精神科0)患者の間題」も射程に人れていたので

喜 。

委員会は「絶望的な緊忽状況」を誰が判断すべきかについては明言しな かった。こ 0),点,判例法はより明瞭に生命の終結を唯一受け人れられる手 段といえるほどに苦しみが耐え難いことを判断するのは,まさに本人白身 であるとしている。

第二は,委員会提案が解決策を考える際に大臣の指名した専門家を関与 四 させるとした,点について,相談手続きとして厳格すぎる規制と受け取られ

た。

第三は昏睡患者に関するものである。委員会提案では,支配的な医学的

見解によればイ:,:~hJ 逆的に意識を喪失しているものと認められ,その意思を 15‑3 ‑‑551  (香法'95) 22 -一ー••

(23)

表明することができず,無意味と考えられた治療を差し控えられた患者の 生命を注総深い医療実践の形態で

1

矢師0)「によって怠図的に終結すること は刑巾犯罪ではないとされた。これは,安楽死は患者の要請に韮づくべき

であるという出発見iヽに例外を設けたことになる。そこでいうイ~rTJ 逆的な昏

睡患者とは,自発呼吸はあるが,梢極的に行動できず,また液体や栄養補 給によって平うじてもわこたえている者である。本報告

i

りが昏睡患者につ いて特別な例外を設けようとしたのは,

l i i J

年春,ハーグのナーシング・ホ ームで起きた昏睡患者に対する殺古

t l } 1

牛が大きな社会間題となり,後述す るように,ハーグ地裁判決 (8S年 8月 6

1 1 )

も昏睡患者をめぐる間題に直 面させられたところに触発されたものと思われる。しかし,この不

1 1 J

逆的 な昏睡患者についての委員会提案に対して,ベセル・トインストラ法案は,

それはまだ「時期尚旱」であり, 1よく考え抜かれたものではない」と批

判した。

この昏睡患者についての提案は,「人権及び韮本的自由の保調に関する ヨーロッパ人権条約」第 2条に抵触し,全く例外的な $'1/fO)ある場合にの み明示的な要請のない生命の終結の

I I :

1 1

化が可能であるという出発点と両 立しないとして,その後のどの提案にも採用されていないことに注意しな

ければならない。この立場は痴染老人や

l f i

大な障轡をもった新生児など,

その意思を表明できない人々に関して現在もなお維持されている。

ところで,ヨーロッパ人権条約第

2

条は 1何人の生命に対する権利も法 によって保護される。何人も故意にその生命を奪われることはない。ただ し死刑をもって法が罰する犯罪の場合に裁判所が宣告する判決の執行を除 く」と規定しており,要諮に韮づいた梢極的な生命終結0)ケースでもこの 規定に抵触するのではないかということがオランダで議論されてきた。し かし,現在のオランダにおける支配的な見解では,要請に韮づく牛命の終 結または援助の提供それ自体は,同条約第

3

条(})人格権に照らして,第

2

条の牛命権と抵触することはないと衿えられている。第

3

条は「何人も,

拷間または非人道的なもしくは品位を

1

りつける取扱いもしくは刑罰を受け

0

︶︶ 

/] I :i ‑3・‑:i:i O (香法'9:i)

(24)

オ ラ ン ダ に お け る 終 末 期 医 療 決 定 と 刑 法(2)(山ド)

ることはない」 と規定しており,生命の権利は, この第

3

条の意味におい て,生きることが非人間的になり,または品位を損なうようになるまで「生

(23) 

と理解されるべきではないとされるのである。

きる義務がある」

国家委員会提案の第四の間題として指摘された点は, もはや[J頭で意思 表示できる状態にはないが, 前もって内面による生命終結の意思を表明し ている患者に関するものである。委員会は, これらのケースに対しても特 別の刑罰阻却事由の適用を考えた。 このカテゴリーに属する者としては,

昏睡患者だけではなく,例えば,痴呆老人のように, ある種の事情でその 意思を表明できない全ての患者に関わりがある。委員会は, 「もはやその 意思を伝達できない」 ことが決定的な段階であることを要するのか, それ ともその状況が単に一時的な場合にも同じことがいえるのかということに ついて明ホしなかった。後者に属するものとしては,例えば,意識を喪失 しているが,内面による安楽死宣言を携えている自殺行為者のようなケー

(24)  (25)  (26)  (27)  (28) 

スが想定される。

国家委員会の報告書の公表後, ベセル・トインストラ法案はこの勧告に 翻案されたといわれるが,両法案は,昏睡患者に関する間題を除けば本質 的にはそれほど大きな相違点はないように思われる。 また遺体処理法の改 正提案も含めてオランダ医師会の見解とも対応するものがある。

法案の議会での扱いは後述することにして,次に,

これらの こうした政治的論議が 行われていた当時における重要な判例の動向を窺う。筆者は,別のところ

で, これらの判例の一部をとくに最高裁判例との関連で紹介したことがあ るが, ここでは,例えば,地裁から最高裁へ全る判例形成のプロセスを含 めて,様々な議論の展開の過程を辿ること(どのような考え方,筋道が肯定 一三

九 され, どのようなそれが否定されるようになったかということ) によって,

判例法のいわば立体的な,経時的な形成過程の解明に努めたいと考える。

15‑‑3 -~549 (香法'95) ‑‑24 

(25)

9 .  1 .   アルクマー地裁判決 ( 1 9 8 3

5 月1 0 日 )

これは安楽死に対して実質的違法性の欠如を認めた最初の地裁判決であ る。

事件は1982年7月16日アルクマー市で起こった。バレントドレフト夫人 は腰骨骨折による不随で寝たきりの94歳の老女だった。彼女には聴覚,視 覚,発語能力の減退もみられ,悪化する健康状態はその生を耐え難いもの に感じさせていた。彼女はその状態をホーム・ドクターであるスコーンハ イム医師に繰り返し訴え,死亡の

2

年前には生命の終結を求める書面も認 めていた。彼は生命終結についての患者の要請にいつかは応じなければな らない時が来るだろうと息っていた。 82年

7

月12日,患者の容態が急激に 悪化し,飲食もとれず,昏睡状態に陥り,数日間,意識を喪失した。意識

を回復後,患者は二度と同じような体験をしたくないとして繰り返し安楽 死を要請した。被告人はその助手及び患者の息[‑と数度にわたり,この間 題を議論した。彼女の息子も母親の望みを叶えてやって欲しいと訴え,助 手も同意した。とうとう被告人は患者にとって牛の毎日は屯い負担以外の 何ものでもなく,その苦しみは耐え難かろうと考えて,彼女の願望に応じ て行為する決心をした。

7

月16日の午前11時,病室に息

f

夫婦と医師及び 助手が人り,夫人と別れのことばを交わした。医師は患者の意思を最終的 に確認した。患者は決意に変わりはないと告げ,できれば一刻もはやく実 行して欲しいと応じた。ダイアゼバム(トランキライザーの一種),ペチ ジン(モルヒネの作用に類似する鎖静剤),クラーレ(運動神経を麻痺さ せる)を含有する注射が使用された。一回目の注射で眠り,二回目の注射 で昏睡状態に陥り,三回目で死に至った。医師はその旨を自ら検死医と警 察に通報した。

このケースが起訴されるまでにいくつかの間題点が挙げられた。第一の 間題は,誰かが要請したからといって,その生命を積極的に終結させてよ

—-')• w;)  15 ‑:l・・‑548  (香法'95)

(26)

オ ラ ン ダ に お け る 終 木 期l久[船決定と}刊法(2)(山ド)

いのかということであり,これに行定的に答えられるとしても,それは従 米掲げられてきた条件を満たしているのかということだった。つまり,こ のケースでは医師の相談が十分に注意深く↑化じなものであったかどうかに 疑し功ゞもたれた。[欠師は彼の業務を補助する助「と患者の息(に相談した が, とりわけ助

F

に独立の判断ができたかどうかが問題とされた。第二の 間娼は,時間の経過と共に患者の健康状態が悪化するものであったのか,

また,このような状態で安楽死を実施できるかどうかが法的に不確かであ るということだった。患者自身の汀明では精神的には耐え難く的しんでい たが,客観的

l

矢学的見地からみれば肉体的には刑死の状態ではなかった。

第二の間題は,

: f f

効な解決策(腰部手術と鎖痛治療)が患者によって明ら かに拒否されたとし)う事伯に関連したものだった。

医師は法廷において二つの抗弁をした。第一の抗弁は新しいものであっ た。被告人は,彼自身の行った安楽死は刑法293条が意図するような「生 命糸I]fi]ミ」

( l e v e n s b e r o v i n g )

ではないと述べた。つまり,

I f : ̲

命の終結まで行 おうとする彼の動機は積極的に正しい(非利己的で,患者と分けもたれた 最 翡0)) ものである。他方,「生命剥奪」という法的術語は何か否定的な 意味あいのもの(私利私欲,憎悪,殺'古欲など)であり,これには当ては

まらないとじ張した。地裁は,生命剥奪はその動機がどうであれ,意図的 な生命紺

l

奪の全ての形態がこ0)概念に属する,それゆえ,安楽死もまた生 命剥奪であるとして,この抗弁を退けた。しかし,地裁は,実『

f

的違法性 を欠くとする被店人の第二の抗弁を認めた。地裁は,本人以外の他の者が 生命を絶つ場合にも自己決定権を尊重すべきであるという世論が段々大き

くなってきているとした。そして,その権利の衝撃的でない行使のために

は,むしろ第:A 者による援助はイ~iU 欠である。従って,自殺の援助が形式

的観点では29:‑¥条または294条の侵曹とみられようとも,本人の自発的な生 命終結の意思がある場合の援助の提供は,その行為が法的に引ましくない ものではないと考えられる一連の条件が満たされる場合には,実質的違法

'

I

、生を欠如し,このような援助の形態は不処罰が相打であるとした。

15 ‑‑3 ‑54 7 (香法'95) 26 

(27)

アルクマー地裁は,これらの条件をレーワルデン地裁及びロッテルダム 地裁と対照的にごく一般的に定義した。すなわち,実質的違法性の欠如が 認められるためには,

1 .  

援助を求める者自身がその解決策を若え,また,その者が持続的な

t

りしみに貼づいて決断したも 0)でなければならない。

2.  援助を与える者は,この第一の条件が充足されているかどうかを注 意深く判断しなければならなし%

3.  援助を与える者は,実施に際して全ての注意深さの要件を満たし,

ケースに関する全ての'}i情を考瑚し,注意深く

1

真重に行動しなけれ ばならなし%

地裁は,本件においてはこれらの条件が満たされていると判断して被告 人に無罪を言い渡した。

じ述のように,アルクマー地裁は,安楽死を処罰しない理由として実質 的違法性の欠如という法的根拠を採用した。また, 81年のロッテルダム地 裁は自己決定権を自殺桐助に適用できるとしたが,アルクマー地裁はこれ を安楽死のケースにも適用できると判断した。自己決定権は,本人自身が その生命を終結したいと考えているという理由で認められるものであるか ら,患者の肉体的状態がどうであろうと粕神的苫しみが優位する場合には,

これも自己決定権に属すると判断されたことになる。卜述した第三の間題 も自己決定権の承認でもって答えられる。つまり,本人が医療援助を拒否 しているとすれば,その場合,生命の終結こそが与えられるべき唯一の援

(29)  (30) 

助になるとしたのである。

9 .  2 .   アムステルダム高裁判決 ( 1 9 8 3

11 月1 7 日 )

本件は,三つの理由で,検察庁によってアムステルダム裔裁に上訴され

27  ‑‑‑‑‑ 15   3:‑‑546 (香法'95)

‑L.

参照

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