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理論化学・情報化学・計算化学

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Academic year: 2021

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理論化学・情報化学・計算化学

大項目 2. 情報化学

中項目 2-2. ケモインフォマティックス 小項目 2-2-2. 薬物分子設計

概要(200字以内)

ヒトゲノム解析が完了し、創薬の 標的となるタンパク質が同定され、

さらにそれらの立体構造が解明され ている。コンピュータの演算速度の 飛躍的向上と理論・情報化学の着実 な進展により、薬物分子等とタンパ ク質の相互作用エネルギーの精密予 測が照準に入りつつある。これらは 電子レベルでの生体系の解析にきわ めて有用ではあるが、同時に今後解

決すべき多くの課題が逆に浮かび上がってくる。本分野の創薬への応用として、現在より視野 の広い新しい理論化学・情報化学・計算化学の構築へ向けた取り組みが必要と考えられる。

現状と最前線

薬物分子の活性と化学構造の定量的相関の研究は19世紀末まで遡ることができるが、現在 用いられている定量的構造活性相関の原点は1964年と考えられ、骨格が同一の比較的少数 の置換体について

Hammett σ

などの置換基定数や分子の親疎水定数

log P

を用いた重回帰分 析を行い、活性要因の説明および予測を行う方法であり、現在までに医薬・農薬の開発におい て多くの成功例がある。この方法は薬物分子のタンパク質など標的受容体の情報がなくても使 えることが特徴であり、またその限界も同時に示している。近年のヒトゲノム解析の完了し、

創薬の標的となるタンパク質が同定され、また「タンパク質3000」などのプロジェクトに よりそれらの3次元立体構造が次々に解明されている。さらにコンピュータの演算能力の飛躍 的向上とともに、薬物分子およびタンパク質の立体構造を基に、それらの間の相互作用自由エ ネルギー変化の算出から活性の精密予測を行う試みが行われている

(Structure Based Drug

Design)

。しかしながら、これらの方法では経験的ポテンシャル関数や実測値を取り込んだパ

ラメータを用いているのがほとんどである。一方において、一般に膨大な数の薬物分子を対象 として、種々の分子の構造パラメータ(

log P,

分子量

, , ,

)を設定し、ニューラルネットワー クやサポートベクターマシン等の情報科学的手法を用いて活性化合物を予測する試みも製薬 関連企業を中心に行われている(

virtual screening / in silico screening

) 。以上の創薬の方法論に関

薬物分子-受容体の相互作用を分子科学計算により評価 活性発現メカニズムを原子・電子レベルで解明

生体巨大高分子の 非経験的分子軌道等適用 ヒトゲノム解析の完了

薬物標的タンパク質の同定

3次元立体構造の決定 (X線結晶解析,NMR)

飛躍的な性能向上

創薬

薬物分子-受容体の相互作用を分子科学計算により評価 活性発現メカニズムを原子・電子レベルで解明

生体巨大高分子の 非経験的分子軌道等適用 ヒトゲノム解析の完了

薬物標的タンパク質の同定

3次元立体構造の決定 (X線結晶解析,NMR)

飛躍的な性能向上

創薬

(2)

連した理論・計算化学の分野において、 「タンパク質まるごと」の電子状態計算が可能なフラ グメント型非経験的分子軌道法が北浦、中野ら

*

により開発され、普及しつつある。また広域 に分散するクラスターを統合して、一つの巨大な仮想的コンピュータ

(Grid

コンピューティン グ

)

の技術もすでに試験的にではあるが、 「創薬プラットフォーム」

*

として稼動している。

情報化学はケモインフォマティクスとも言い換えることもできようが、ケモインフォマティ クスに対してバイオインフォマティクスも近年注目を浴びている分野である。

以上、定量的構造活性相関の原点から始めて現状の創薬への理論化学・情報化学・計算化学 に関連したアプローチの概略と現状を述べたが、本領域の今後の課題(方向性)に関する私見を 以下に箇条書きする。

・理論化学分野の成果(分子科学計算・シミュレーション法)のより積極的な実用化

・ケモインフォマティクスとバイオインフォマティクスの融合(統合

)

・実験、理論・計算、情報化学の両面から薬物分子の吸収・分布・代謝・排泄・毒性への新し いアプローチ

・薬物の催奇形性や副作用等の知識体系の構築(データベースシステム)

・創薬のための高速計算技術・環境の構築(計算機科学分野との連携)

わが国は定量的構造活性相関や理論化学等の分野で世界をリードしてきた立場にあったが、

以上の課題の解決にも今後わが国の「理論化学・情報化学・計算化学」分野の果たす役割は大 きいと期待され、関連分野を含め今後より緊密な産官学の協力体制の構築が必要と考えてい る。

*

引用文献:

Modern Methods for Theoretical Physical Chemistry of Biopolymers, Edited by E. B.

Straikov, J. P. Lewis and S. Tanaka, Elsevier, 2006.

将来予測と方向性

・5年後までに解決・実現が望まれる課題

1.非経験的分子軌道法計算等によるタンパク質-基質・阻害剤間の相互作用自由エネルギ ーの精密計算法の構築と実用化

2.薬物の吸収・代謝・排泄・毒性、副作用等の新たな方法論の構築

・10年後までに解決・実現が望まれる課題

1.現在の理論化学・情報化学・計算化学およびケモ・バイオインフォマティクスを統合し た新しい創薬の方法論の構築と実用化

2.上記および関連するや薬物の知識体系の構築(統合データベースシステム)

キーワード

創薬;理論計算;定量的構造活性相関;ケモインフォマティクス;バイオインフォマティクス

(執筆者:中馬 寛)

参照

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