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Academic year: 2021

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多数例から見た脳脊髄根末梢神経炎(EMRN)の病像と抗糖脂質抗体    

研究協力者 

武藤多津郎1 

共同研究者 

○島さゆり、1)新美芳樹、1)水谷泰彰、1)村手健一郎、1)植田晃広1)伊藤信二、1)

研究要旨 

EMRN患者20例について臨床学的に検討した。平均年齢は50.7+16.1歳(25-84歳)、男性10 例、女性 10例であった.全例に、神経伝導速度検査、脳波などの電気生理学的検査と頭部・脊 髄MRI及び脳血流SPECTを行った.最終的な重症度は、modified  Rankin  Scale  (mRS)で評価し た. 

  抗中性糖脂質抗体測定は、既報告のFar-Eastern  blot 法で急性期及び症状の回復した時期の最 低2時点で評価した。抗-lactosylceramide  (LacCer)抗体の培養アストロサイトへの細胞生物学的 作用を解明するためKT-5細胞を用いた.その結果、同抗体はアストロサイトからの炎症性サイ トカインの発現を増加させた.さらに、同抗体は細胞内LC3-IIの発現を増加させた. 

 

研究目的

脳脊髄根末梢神経炎  (EMRN)は、中枢神経  (CNS)・末梢神経系  (PNS)両系統を広範に障害 する疾患として知られてきており、近年これ らの患者に抗中性糖脂質抗体が存在する事か ら、本邦での類似例の存在が注目を集めてき た.我々の抗中性糖脂質抗体発見以来 

(Neurology 2014)、国内外の医療機関からの抗 体測定依頼も多数となり、潜在的な本症患者 数は必ずしも少なくないと考えている。一方 やはりCNSとPNS両系が障害さえる中枢末梢

脱髄症  (CCPD)も本邦には多数存在する事が

知られているが、EMRNとの異同については 未だ不明な点が多い.本研究では、自験EMRN について、その臨床像、検査所見、治療法及 びその反応性をサマリーすると共に抗中性糖 質抗体の免疫学的特徴を解明する事を試みた. 

_______________________________________

1) 藤田保健衛生大学脳神経内科学講座

研究方法

EMRN患者20例について臨床学的に検討した。

平均年齢は 50.7+16.1 歳(25-84 歳)、男性 10 例、女性10例であった.全例に、神経伝導速 度検査、脳波などの電気生理学的検査と頭 部・脊髄MRI及び脳血流SPECTを行った。最 終的な重症度は、modified Rankin Scale (mRS) で評価した. 

  抗 中 性 糖 脂 質 抗 体 測 定 は 、 既 報 告 の Far-Eastern  blot法で急性期及び症状の回復し た時期の最低2時点で評価した. 

抗-lactosylceramide  (LacCer)抗体の培養ア ストロサイトへの細胞生物学的作用を解明す るためKT-5細胞の培養系を用いた.同抗体を KT-5細胞に一定時間作用させ、同細胞からの 各種サイトカイン、神経栄養因子類の発現を 調べた.さらに、同抗体をKT-5細胞に作用さ せ、LC3-IIの発現をWestern blot法で調べた. 

 

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(倫理面への配慮)本研究にリクルートされ た全ての患者及びその家族にはICを得ており、

本研究は本学倫理委員会より承諾を受けてい る. 

研究結果

臨床像を纏めると、何らかの先行感染を伴う

症例が14/20 例あり、意識障害以外の中枢神

経症状として痙攣を伴う症例が 3 例あった.

全例で、末梢神経伝導検査に異常が見られ、F 波の消失や軸索型神経障害を示す例が多かっ た(脱髄型障害のみを顕著に示す例は見られ なかった).更に、興味深い事に直腸膀胱障害 や発汗異常、除脈などの自律神経症状を呈す

る症例が19/20例と高頻度に見られた。頭部・

脊髄MRI で異常所見が見られなかった症例が 4例見られた.大多数の例で、IVIgやステロイ ド、血漿交換などの免疫療法に良好な反応

(80%が退院時mRS  3点以内)を示したが、

当科診察までに時間のかかった症例では一部 不良例も見られた. 

  1例を除く全例で、抗-LacCer抗体を中心に 他 の 中 性 糖 脂 質 で あ る glucosylceramide  (GlcCer)や galactosylceramide に対しても抗体 活性を急性期血清に認めた.血清で陰性だっ た1例は、髄液で抗-LacCer抗体が陽性であり、

髄液での抗体測定も重要と考えられた。症状 の回復した時期の患者試料からは如何なる抗 中性糖脂質抗体活性も検出されなかった. 

抗-LacCer抗体は、KT-5細胞の形態学的変化 を誘導し、同細胞からの炎症性サイトカイン の発現を増大させた.更に、同細胞に LC3-II の発現増大を来し autophagy 反応が引き起こ される可能性が示唆された. 

考察

本症患者では、全例で急性期の血清あるいは

髄液で抗-LacCer抗体が検出され、回復期には

同抗体活性は消失した.臨床的には、全例で 中枢神経系の障害と根・末梢神経の障害を呈 し、高率に自律神経障害も呈していた点は特 記すべきと考えられた.多くの例で、迅速な 診断により良好な転帰が得られた.最近の報 告では、多発性硬化症患者のプラーク部位の アストロサイトからLacCerが分泌され、局所

での LacCer 濃度が有意に上昇していること、

又GlcCerが蓄積するGaucher病では免疫系に GlcCer が抗原提示され抗-GlcCer 抗体が産生 されそれが神経炎症を惹起している事が報告 されており、本疾患で何故抗LacCer抗体が産 生されるのかを考える上で大変興味深い.現

在、LacCer を中心に中性糖脂質と免疫系との

クロストークについて更なる詳細な研究を続 けている.

結論

本症患者 20 例での検討によると、髄液、血清 などの患者試料中には全例で抗中性糖脂質抗 体が検出され、かつその抗体価は個々の症例の 臨床状態とよく相関していること、又、一部抗体 価の低下に時間のかかった症例では、その予後 は必ずしも良くなかった.さらに、抗-LacCer 抗体 は、アストロサイトからの炎症性サイトカインの発 現を増大させたことから、病態発現に積極的な役 割を果たしている可能性が示唆された.いずれ にしろ、今後の症例の蓄積と同抗体の免疫学的、

細胞生物学的な作用の詳細とそのシグナル伝達 系の解明が必須と考えられた.   

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文献 

Niimi Y, Ito S, Murate K, Hirota S, Hikichi C, Ishikawa T, Maeda T, Nagao R , Shima S, Mizutani Y, Ueda A, and Mutoh T. J Neurol Sci 377:174-178, 2017

Ishikawa T, Asakura K, Mizutani Y, Ueda A, Murate KI, Hikichi C, Shima S, Kizawa M, Komori M, Murayama K, Toyama H, Ito S,    

Mutoh T. Muscle Nerve 55(4):483-489, 2017 2017

Hoshino M, Suzuki Y, Akiyama H, Yamada K, Shima S, Mutoh T, Hasegawa Y. Clin Neurol 57(12):747-752, 2017

Yamagishi Y, Suzuki H, Sonoo M, Kuwabara S, Yokota T, Nomura K, Chiba A, Kaji R, Kanda T, Kaida K, Ikeda SI, Mutoh T, Yamasaki R, Takashima H, Matsui M, Nishiyama K, Sobue G, Kusunoki S. J Peripher Nerv Syst 22(4):433-439, 2017 Ueda A, Nagao R, Maeda T, Kikuchi K,

Murate K, Niimi Y, Shima S, Mutoh T. Clin Neurol Neurosurg 161:14-16, 2017 Kuwabara S, Mori M, Misawa S, Suzuki M,

Nishiyama K, Mutoh T, Doi S, Kokubun N, Kamijo M, Yoshikawa H, Abe K, Nishida Y, Okada K, Sekiguchi K, Sakamoto K, Kusunoki S, Sobue G, Kaji R; Glovenin-I CIDP Study Group. J Neurol Neurosurg Psychiatry 88(10):832-838, 2017

健康危険情報 なし

知的財産権の出願・登録状況   特許取得:なし

  実用新案:なし

参照

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