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論 文 内 容 の 要 旨

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Academic year: 2021

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(1)

     

ぬま さとし

沼 哲之 学 位 の 種 類 博士(医学)

学 位 記 番 号 富医薬博甲第 129 号 学位授与年月日 平成 26 年 3 月 21 日

学位授与の要件 富山大学学位規則第 3 条第 3 項該当

教 育 部 名 富山大学大学院医学薬学教育部 医学領域 博士課程 生命・臨床医学専攻

学 位 論 文 題 目 塞栓症低リスクの非弁膜症性心房細動症例におけるリスク層別化

論 文 審 査 委 員

(主査) 教 授 田中 耕太郎

(副査) 教 授 関根 道和

(副査) 教 授 西田 尚樹

(副査) 教 授 奥寺 敬

(指導教員) 教 授 井上 博

(2)

目的:

心房細動は最も有病率の多い不整脈の一つで、致死的な脳塞栓症の原因疾患であ る。その発症リスクは臨床背景因子を利用した CHADS

2

score などのリスク層別化法を 用いて評価されている。しかし、CHADS

2

score により低リスクと判断された症例でも脳 塞 栓 症 を 発 症 す る 症 例 も 存 在 す る た め 、 こ れ に 対 し CHA

2

DS

2

-VASc score や R

2

CHADS

2

score が考案され、さらに詳細な層別化が試みられている。今回、CHADS

2

score や CHA

2

DS

2

-VASc score によってリスクが低いと判断された症例をさらに層別化 する方法について検討した。

方法:

1.非弁膜症性心房細動患者における心血管イベントの新しい層別化法

1994 年 11 月から 2007 年 5 月の間に富山大学附属病院(当院)で非弁膜症性心房 細動患者の予後調査に参加した 526 例(男性 381 例、平均年齢 66±12 歳)について、

臨床背景因子と予後を検討した。心不全、高血圧症、糖尿病、年齢、脳卒中または一 過性脳虚血発作の既往から CHADS

2

score(心不全 1 点、高血圧 1 点、糖尿病 1 点、

75 歳以上 1 点、脳卒中または一過性脳虚血発作 2 点、最大 6 点)、CHA(65)DS

2

score(CHADS

2

score の年齢を 65 歳以上に変更)、CHA

2

(65,75)DS

2

score(CHADS

2

score の年齢を 65 歳以上 1 点、75 歳以上 2 点に変更)を算出し、それぞれ 0 点を低リ スク群、1 点を中等度リスク群、2 点以上を高リスク群に分類し、それぞれ心血管イベン ト(脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、心不全)発症について検討した。

2.心原性塞栓症低リスク例の層別化と血清尿酸値

1996 年 1 月から 2013 年 7 月の間に当院で経食道心エコー検査(TEE)を行った患者 のうち、高尿酸血症治療薬を使用していない 470 例(男性 335 例、平均年齢 67±11 歳)について、後ろ向きに臨床背景因子、血液検査データと TEE 結果を調べた。臨床 背景因子から CHA

2

DS

2

-VASc score を算出し、0 点を低リスク、1 点を中等度リスク、2 点以上を高リスク群とした。TEE において高度左房内もやもやエコー(gradeⅢ or Ⅳ)、

左心耳血流速度低値(<20cm/s)、左房内血栓、および高度動脈硬化(gradeⅤ)の 1 つ 以上を満たすものを TEE リスクとし、低〜中等度リスクと判断される症例において TEE リスクと臨床背景因子と血液検査データの関連を調べた。

論   文  内 容  の   要   旨

(3)

結果:

1.非弁膜症性心房細動患者における心血管イベントの予測

平均観察期間は 51.0 ヶ月で、抗血栓療法の実施率についてどのスコアにおいても 群間で有意差はみられなかった。CHADS

2

score で心血管イベント発症を比較すると、

低 リ ス ク 群 と 中 リ ス ク 群 間 に 有 意 差 が な か っ た (Log-rank P=0.076) 。 CHA(65)DS

2

score(Log-rank P=0.020)と CHA

2

(65,75)DS

2

score(Log-rank P=0.039)では、中リスク群 で有意に心血管イベント発症が多かった。CHA(65)DS

2

score と CHA

2

(65,75)DS

2

score では CHADS

2

score と比較して、低リスク症例の層別化に有用であった。

2.心原性塞栓症低リスク例の層別化

CHA

2

DS

2

-VASc score で低〜中リスクに分類されたのは 115 例で、高リスク群は 355 例であった。低〜中リスク群において TEE リスクのある例は TEE リスクのない例と比較 し、高齢(59.8±6.5 vs 53.6±12.6 歳)で男性(97 vs 83%)が多く、D-dimer(0.77±1.03 vs 0.51±0.38 μ g/ml) と ク レ ア チ ニ ン (0.92±0.30 vs 0.81±0.18mg/dl) と 尿 酸 値

(6.9±2.4 vs 5.8±1.5mg/dl)が高値であった。さらに、多変量解析を行うと、年齢(オッ ズ比(OR);1.06, 95%信頼区間(CI);1.01-1.13, P=0.025)、持続性または慢性心房細動 (OR;6.11, CI;2.29-17.8, P<0.001)と尿酸値(OR;1.51, CI;1.10-2.18, P=0.010)が TEE リ スクの独立予測因子として抽出された。

総括:

非 弁 膜 症 性 心 房 細 動 症 例 の 心 原 性 塞 栓 症 リ ス ク の 層 別 化 に 頻 用 さ れ て い る CHADS

2

score は、より若年で分類することによってさらに高い精度で予後を層別化で きた。

比較的低リスクと診断される症例において、臨床的背景因子の中で血清尿酸値が

TEE リスクの独立危険因子であることが示され、心血管イベント発症リスクの層別化に

有用であった。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

【目的】

心房細動は最も有病率の多い不整脈の一つで、致死的な脳塞栓症の原因疾患である。そ の発症リスクは臨床背景因子を利用した CHADS2 score などのリスク層別化法を用いて評価 されている。しかし、CHADS2 score により低リスクと判断された症例でも脳塞栓症を発症 する症例も存在するため、これに対し CHA2DS2-VASc score や R2CHADS2 score が考案され、

さらに詳細な層別化が試みられている。今回、CHADS2 score や CHA2DS2-VASc score によっ てリスクが低いと判断された症例をさらに層別化する方法について検討した。

【方法】

1.非弁膜症性心房細動患者における心血管イベントの新しい層別化法

1994 年 11 月から 2007 年 5 月の間に富山大学附属病院(当院)で非弁膜症性心房細動患 者の予後調査に参加した 526 例(男性 381 例、平均年齢 66±12 歳)について、臨床背景因 子と予後を検討した。心不全、高血圧症、糖尿病、年齢、脳卒中または一過性脳虚血発作 の既往から CHADS2 score(心不全 1 点、高血圧 1 点、糖尿病 1 点、75 歳以上 1 点、脳卒中ま たは一過性脳虚血発作 2 点、最大 6 点)、CHA(65)DS2 score(CHADS2 score の年齢を 65 歳以 上に変更)、CHA2(65,75)DS2 score(CHADS2 score の年齢を 65 歳以上 1 点、75 歳以上 2 点に 変更)を算出し、それぞれ 0 点を低リスク群、1 点を中等度リスク群、2 点以上を高リスク 群に分類し、それぞれ心血管イベント(脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、心不全)発症に ついて検討した。

2.心原性塞栓症低リスク例の層別化と血清尿酸値

1996 年 1 月から 2013 年 7 月の間に当院で経食道心エコー検査(TEE)を行った患者のうち、

(5)

【結果】

1.非弁膜症性心房細動患者における心血管イベントの予測

平均観察期間は 51.0 ヶ月で、抗血栓療法の実施率についてどのスコアにおいても群間で 有意差はみられなかった。CHADS2 score で心血管イベント発症を比較すると、低リスク群 と 中 リ ス ク 群 間 に 有 意 差 が な か っ た (Log-rank P=0.076) 。 CHA(65)DS2 score(Log-rank P=0.020)と CHA2(65,75)DS2 score(Log-rank P=0.039)では、中リスク群で低リスク群に比し、

有意に心血管イベント発症が多かった。CHA(65)DS2 score と CHA2(65,75)DS2 score では CHADS2 score と比較して、低リスク症例の層別化と検出に有用であった。

2.心原性塞栓症低リスク例の層別化

CHA2DS2-VASc score で低〜中リスクに分類されたのは 115 例で、高リスク群は 355 例であ った。低〜中リスク群において TEE リスクのある例は TEE リスクのない例と比較し、高齢 (59.8±6.5 vs 53.6±12.6 歳 ) で 男 性 (97 vs 83%) が 多 く 、 D-dimer(0.77±1.03 vs 0.51±0.38μg/ml)とクレアチニン(0.92±0.30 vs 0.81±0.18mg/dl)と尿酸値(6.9±2.4 vs 5.8±1.5mg/dl)が高値であった。さらに、多変量解析を行うと、年齢(オッズ比(OR);1.06, 95% 信 頼 区 間 (CI);1.01-1.13, P=0.025) 、 持 続 性 ま た は 慢 性 心 房 細 動 (OR;6.11, 高尿酸血症治療薬を使用していない 470 例(男性 335 例、平均年齢 67±11 歳)について、

後ろ向きに臨床背景因子、血液検査データと TEE 結果を調べた。臨床背景因子から CHA2DS2-VASc score を算出し、0 点を低リスク、1 点を中等度リスク、2 点以上を高リスク 群とした。TEE において高度左房内もやもやエコー(gradeⅢ or Ⅳ)、左心耳血流速度低値 (<20cm/s)、左房内血栓、および高度動脈硬化(gradeⅤ)の 1 つ以上を満たすものを TEE リ スクとし、低〜中等度リスクと判断される症例において TEE リスクと臨床背景因子と血液 検査データの関連を調べた。

(6)

CI;2.29-17.8, P<0.001)と尿酸値(OR;1.51, CI;1.10-2.18, P=0.010)が TEE リスクの独立 予測因子として抽出された。

【総括】

非弁膜症性心房細動症例の心原性塞栓症リスクの層別化に頻用されている CHADS2 score は、75歳以下のより若年をスコア化して分類することによって、さらに高い精度で予後 を層別化できた。比較的低リスクと診断される症例において、臨床的背景因子の中で血清 尿酸値が TEE リスクの独立危険因子であることが示され、心血管イベント発症リスクの層 別化に有用であった。

人口の高齢化と共に、現在、世界的に非弁膜症性心房細動による脳梗塞や全身塞栓症患 者が急増しており、医学的のみならず社会経済的にも大きな課題となっている。本研究は この非弁膜症性心房細動患者における心血管イベント発症リスクの新しい層別化法の有用 性を明らかにしたものであり、学術的に重要であると同時に、今後の臨床現場や公衆衛生 施策に益する点から本研究の臨床的発展性は高く、本審査会は本論文を博士(医学)の学 位に十分値すると判断した。

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