症 例
症 例:66歳 男性 主 訴:腎機能障害の指摘された。 現病歴:1992年に尋常性乾癬と診断された。 1996年に痛風発作を発症し,その後も発作を 繰り返していた。2009年4月両側手・肘・肩・ 腰・膝・足にも関節痛を自覚した。血小板数7.6 万/μL,血清クレアチニン(Cr)値0.97mg/ dl,CRP0.63mg/dl,ANA640x,抗 dsDNA 抗体 288IU/ml,CH50<5Uを認めました。SLEを疑 われたが,ステロイド治療は行わず,半年間 で抗dsDNA抗体は20IU/mlまで自然に低下し た。その後も関節痛は持続し痛散湯とロキソニ ンテープ100mgで対応していた。腎機能障害 は徐々に増悪し,血清Cr2.1mg/dlとなったため 2012年9月腎生検を施行した。 既往歴:特記事項なし アレルギー歴:なし 家族歴:腎疾患・自己免疫疾患の家族歴なし 父:糖尿病(92歳で死亡),母:詳細不明(72 歳で死亡) 生活歴:喫煙:20本/日40年間(20-60才) 飲 酒:缶ビール3 ∼ 4本/日×約46年間(20 歳∼) 入院時現症:身長169cm,体重67kg,意識清明, 体温36.6℃,血圧111/76mmHg,脈拍73/分(整), 眼瞼結膜:貧血(-),眼球結膜:黄疸(-),視 力障害:なし,視野障害:なし,口腔:異常な し,扁桃:腫大なし,甲状腺:腫大なし,表在 リンパ節:触知せず,心音:純,肺野:背底部 に捻髪音あり,腹部:圧痛なし,肝胆脾腎:触 知せず,両下肢:浮腫なし,両肘・膝・手指Ⅳ Ⅴ指,右前頸部・左大腿外側に尋常性乾癬あり。糸球体病変に乏しく著しい尿細管間質性腎炎を
呈した SLE の1 例
島 田 芳 隆 青 山 東 五 竹 内 和 博
若 新 芙 美 酒 井 健 史 田 中 圭
岡 本 智 子 佐 野 隆 竹 内 康 雄
鎌 田 貢 壽
尿一般 比重 1.015 PH 5.5 蛋白 (1+) 蛋白定量 0.28g /g・Cr 潜血 (-) 糖 (-) 赤血球 <1/HPF 白血球 1.1/HPF 円柱 なし BJP 陰性 尿生化学 Osmo 568 mOsm/kg Cr 109 mg/dl Na 131 mEq/L K 42 mEq/L NAG 13.1 U/L FENa 1.9 % FEUN 39.8 % 血算 WBC 8.1×10³ /μL RBC 4.07 ×10⁶ /μL Hb 13.3 g/dL Plt 13.8×10⁴ /μL 網状赤血球 21.8 ‰ 凝固系 PT-INR <1.00 APTT 21.0 sec FIB 368 mg/dL 生化学 TP 6.9 g/dL Alb 3.6 g/dL AST 27 IU/L ALT 15 IU/L ALP 158 U/L γ-GTP 60 U/L LDH 208 I U/L CK 158 I U/L UN 23.7 mg/dL Cr 2.2 mg/dL (eGFR 24.6 mL/min) UA 7.7 mg/dL Na 138 mEq/L K 3.9 mEq/L Cl 108 mEq/L Ca 8.2 mg/dL P 3.2 mg/dL Mg 2.0 mg/dL 免疫 CRP 0.22 mg/dL IgG 1852 mg/dL (IgG4 32.1 mg/mL) IgA 146 mg/dL IgM 154 mg/dL 抗RNP抗体 (-) 抗Scl抗体 (-) 抗sm抗体 (-) 抗SS-A抗体 (-) 抗SS-B抗体 (-) 抗ds-DNA抗体 (-) 抗CL-β2GPI (-) カルジオリピンIgG抗体 18 U/ml ループスアンチコアグラント 1.16 MPO-ANCA (-) C3 40 mg/dL C4 <2 mg/dL CH50 <5 U/mL 免疫複合体 17.1 クリオグロブリン (-) 感染症 TPLA(-) RPR(-) HBsAg(-) HCVAb(-) DLST:痛散湯・ロキソニンテープ 陰性 入院時検査所見 図 1 Ga 図 2 HE x100
PAS x400 PAM x400 図 3 図 4 PAM x200 Masson x100 図 5 IgG IgA IgM
IgG IgA IgM IgG IgA
図 6 C1q C3 C4 Fib C3 C1q C3 C 図 7 図 8
IgG I G
IgG IgG4MCTD mixed connective tissue disease) IgG IgA 図 9 図 10 PSL 40mg/day PSL 30mg/day 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0 2 4 6 8 10 12 14 16 1115 1120 1125 1130 1205 1210 1215 1220 1225 1230 0104 CH50*10 C4*10 C3*10 Cr Cr CH50 C3 C4 Cr 図 11
(Clin Exp Nephrol 9:79-84.2005 Table
IgG I M C3 C1q IgG C1q C3 EDD
1 52 F ARF UP 2 + + + + TBM 2 23 F RTA UP - + + + - 3 30 F ARF UP - + + + + M 4 42 F ARF UP ± + + + + + + + - 5 24 F ARF UP + + + + - 6 72 M CKDNS UP 4 + + + M 7 3 M CKD UP + + + + - 8 25 F ARF UP + + + - 9 59 M ARF UP ± + + + + TBM 10 30 F CKD UP ± + + + + - 11 64 M CKD UP ± + + + TBM
EDD:electron-dence deposits, TBM:tubular basement membrane, M:mesangium
結 語
本例は糸球体病変に乏しく,糸球体病変を もってループス腎炎と診断することは困難で あった。一方,著しい尿細管間質性病変を認 め,尿細管基底膜に一致してIgG,IgA,C1q, C3が染色され,尿細管上皮細胞に一致して補 体C4が染色された。 この所見をもって尿細管間質性腎炎をループ ス腎炎として良いかご教示を頂きたい。討 論
島田 よろしくお願いします。「糸球体病変に 乏しく,著しい尿細管間質性腎炎を呈したSLE の一例」を報告させていただきます。 症例は66歳男性で,主訴は腎機能障害を指 摘され,当院に来ています。 現病歴は,1992年に尋常性乾癬,1996年に 痛風発作を発症し,その後も発作を繰り返して おりました。2009年4月に両側の手・肘・肩・ 腰・膝・足に関節痛を自覚し,そのときに血 小板7.6万,血清クレアチニン0.97,CRP0.63, ANA640×,抗dsDNA抗体が288と,CH50<5U を認めております。SLEを疑われましたが,ス テロイド治療を行わず,半年間で抗dsDNA抗 体は20まで低下し,その後も関節痛は持続し, 痛散湯とロキソニンテープで対応しておりまし た。腎機能障害は徐々に増悪し,血清クレアチ ニンが2.1となったため,2012年9月に腎生検 を施行しました。 既往歴,アレルギー歴,家族歴は,特記すべ きことはなく,腎疾患の家族歴,自己免疫性疾 患の家族歴はありません。 生活歴では,喫煙20本/dayを40年間,缶ビー ルを3から4本,毎日飲んでおります。 入院時現症では,身長169cm,体重67kg,体温, バイタルともに特に問題なく,貧血,黄疸もあ りません。視力障害,視野障害もなく,口腔も 扁桃腫大もなく,甲状腺腫大もありません。表 在リンパも触知せず,特に特記すべき所見はあ りませんでした。両肘,膝,手指Ⅳ,Ⅴ指,右 前頸部,左大腿外側に尋常性乾癬が認められて おります。 入院時の検査所見では,NAGが13.1と高値。 蛋白尿は1(+)でありました。 次に血算,凝固,生化学です。赤字部分が異 常値です。低アルブミン血症と腎機能障害,あ とは高尿酸血症が認められております。 免疫系と感染症,DLSTを表示します。IgG は1852とやや高値でIgG4が32.1,抗カルジオ リピン抗体陽性,低補体血症と免疫複合体が 17.1と高値,クリオグロブリンは陰性でした。 DLSTで,痛散湯,ロキソニンテープでは陰性 を確認しております。 次に入院時の画像所見では,胸部レントゲン では特記すべき事項はなく,ガリウムシンチで は,腎臓に異常集積を認めました。 腎生検の所見に移らせていただきます。尿細 管間質にはびまん性に著明な単核球主体の細胞 浸潤を認めております。 糸球体の約3分の1が全節性硬化に陥ってお り,mesangium細胞の増殖を軽度認める以外は 特記すべき所見はありませんでした。 次に蛍光抗体法ですが,mesangiumの一部に IgG,IgA,IgMが陽性で,一部の尿細管基膜に 一致して,IgG,IgAが陽性でした。 またmesangiumの一部に補体,C1q,C3も認 めております。尿細管基底膜に一致してC1q, C3が陽性となっております。また尿細管上皮 細胞に一致してC4が陽性を示しました。 次に電子顕微鏡所見です。上から間質,尿細 管基底膜,内側が尿細管上皮細胞となっており ます。糸球体は電子顕微鏡の標本に見られな かったので評価はできないのですけれども,尿 細管基底膜内に高電子密度物質の沈着を認めて おります。 次にIgG・IgG4の免疫染色を施行しましたが, IgG4は染色されておらず,陰性と判断しまし た。 ここで免疫複合体性の尿細管間質性腎炎を 合併する疾患を挙げてみました。lupus腎炎, クリオグロブリン血症,シェーグレン症候群, MCTD,IgG4関連症候群,IgA腎症,膜性増殖 性腎炎,感染性糸球体腎炎,移植腎などが挙げ られます。今回の検査でクリオグロブリンは陰 性で,シェーグレン症候群については,ドライ マウスは認めず,SSA,SSBともに陰性でした。 MCTDに関しても,特異抗体は陰性で,IgG4 関連腎炎は,IgG4,32と診断基準の必須要件 を満たさず,IgG4の染色所見から除外しました。IgA腎症,膜性増殖性腎炎,感染性腎炎, 感染糸球体腎炎に関しては,糸球体病変がそれ ぞれの疾患と一致しませんでしたので否定しま した。 以上の除外診断から,ループス腎炎に合併し た尿細管間質性腎炎と診断し,治療を開始しま した。 治療経過ですけども,今回SLEによる尿細管 間質性腎炎と診断し,ステロイド40mg/dayで 内服を開始し,ステロイド30mg/dayと減量し ています。治療開始後,補体C3,C4,CH50で 正常化が見られるようになり,現在,ステロイ ド20mgで,腎機能の障害の増悪もなく経過し ています。 このスライドでは,尿細管障害が優位な lupus腎炎の症例報告をまとめております。尿 細管障害が優位なループス腎炎の症例報告は 11 例ありまして,60歳以下の女性の報告が多 いです。急性腎不全を呈する症例のほか,慢性 経過で発症する症例も見られます。尿所見は軽 度の症例が多く認められました。光顕所見では, 尿細管間質の線維化と炎症細胞浸潤が全例に見 られ,尿細管萎縮も見られております。糸球体 所見は,mesangium増殖所見が見られる症例を わずかに認めました。 蛍光抗体法では,尿細管基底膜にIgG,IgM, C3が主に結合し,C1qは11例中5例に結合し ております。mesangium領域への結合は,一部 の症例でした。 電子顕微鏡所見では尿細管基底膜への高電子 密度物質の沈着物の症例が3例,mesangium領 域は2例認めております。 全ての症例が中等度のステロイド治療に反応 が良好で,再発が少ないと報告されております。 結語です。本症例は糸球体病変に乏しく,糸 球体病変をもってlupus腎炎と診断することは 困難であった。一方,著しい尿細管間質性病 変を認め,尿細管基底膜に一致してIgG,IgA, C1q,C3が染色され,尿細管上皮細胞に一致し て補体C4が染色されております。 この所見をもって,尿細管間質性腎炎を lupus腎炎として判断してよいものかどうか, ご教示お願いいたします。以上です。 座長 どうもありがとうございました。 本症例につきまして,臨床的に何かご質問は ありますでしょうか。 菊池 横須賀共済病院腎臓内科の菊池と申しま す。 SLEの病性を反映するときに,malar rashと かdiscoid rash,あるいは脱毛といったような病 変は,この患者さんはどうでしょうか。 島田 皮膚所見については,顔が少し赤い程度 で,butterfly rush等はありませんでした。 菊池 脱毛はどうでしょうか。 島田 脱毛も特に認めてはおりません。 菊池 ありがとうございます。 座長 そのほかに何かございますか。 金綱 慈恵医大柏病院,病理の金綱と申します。 高尿酸血症のある年配の男性ということで, 1項目だけ除外として確認させていただきたい のですが,この方は,特に腎臓のほうには尿酸 沈着は否定してよいとお考えでしょうか。 島田 はい。そうです。所見としては認められ ておりません。 金綱 はい。どうもありがとうございます。 座長 そのほかに何かございますか。よろしい ですか。では,病理の先生のご意見を伺いたい と思います。山口先生,よろしくお願いいたし ます。 山口 この症例を最初に見たときには,最近話 題になっていますG4関連腎症と,どういうふ うに鑑別をすべきなのかなというのは,私も最 初はちょっと悩みました。もちろん間質型の ループス腎炎というのは,まれにわれわれも経 験がある。ただ,症例によっていろいろなフェー ズと言いますか,びまん型だったり,同じよ うなフェーズで比較的cellularな細胞浸潤が主 体で,それがdominantな場合,あるいはpatchy で線維化が優位な場合もあるんですけれども, G4との絡みで,どういうふうに鑑別していく
かという話が中心になると思います。 【スライド01】2本採られているのですが,G4 も同じなんですけれども,全体に採られた needle biopsy全体に尿細管間質病変がこういう ように広がっているというのも,G4でも同じ ように見られます。ですから,これだけ見る と区別がつかないんです。例えば,G4ですと, もう1本あって,全く知らん顔しているような ところがとられてくると,G4 っぽいなという ことになります。 それから,もう一つは炎症が,尿細管間質病 変というのは腎内に大体限局しているんです が,後腹膜線維症とかなんとかで,いわゆる皮 膜外に炎症が及んでいる場合が多々あります, G4の場合は。髄質はあまりとられていないの で,優位なことは言えないんですが,普通の尿 細管間質病変というのは,outer medullaぐらい までで,inner medullarのほうには行きません ので,そちらに炎症があれば,やはりG4かな という感じになります。 なんとなくリンパ濾胞様の集積が,この症例 は散在性に見られています。 【スライド02】皮膜外に行っているのかどうか という問題です。ここが皮膜のコラーゲンが見 えていますので,これだけ見ると,皮膜外に炎 症が波及しているようには見えません。それか ら濾胞様の構造はあります。だいぶ尿細管が壊 れて,糸球体もつぶれて線維化が出てきてし まっています。糸球体は周りの圧迫でcollapse しています。 【スライド03】それから,ちょっと髄質に近い ところの炎症の波及です。これが糸球体の可能 性はありますけれども,vasa rectaがこの辺に ありますので,outer medullaぐらいまでは炎症 と線維化が及んでいる感じはいたします。 【スライド04】一つ違和感があったのは,濾胞 様の構造があるんですが,ちょっと分かりづら いんですけど,ヘモジデリンじゃないんですが, ちょっと断面だと見えないです。出血の痕みた いに,ヘモジデリンみたいなものが,ところど ころ,macrophagesに貪食されたように見えて いるところがありました。 【スライド05】それから,比較的フレッシュな cellularな線維化の少ないところです。G4も同 じように,あまりtubulitisというのは顕著じゃ ないんです。1個か2個ぐらいは,こういうよ うに入っていますので,これだけではどっちな んだということは言えません。それから,エオ ジノが一緒に混ざってくることはあるのです が,これだと,あまりリンパ球プラズマ系が主 体のように思います。 【スライド06】糸球体は全く先ほどと同じで, 年寄りのmesangiumのmatrixがfibrousなものに 変わってしまうので,60歳以上かなと。少し capillaryの中に炎症がありますけれども,ほと んど所見がないように思います。plasma cellが 多くて,リンパ球も一緒に混ざっております。 【スライド07】それから,この辺もplasma cell が多いんです。後でも出てくるんですが,気 になったのは組織球と言いますか,ちょっと giant cell様の組織球が,ここだとちょっとはっ きりしないです。尿細管炎は軽いということは, ここにも尿細管上皮内にリンパ球が2,3個入っ ていますから,マイルドなtubulitisということ が言えると思います。 【スライド08】あと,fibrosisの形態を,われわ れはbirds eyeパターンとか,教科書的に最近は, storiform patternといって,病理は,花むしろ様 というのはよく腫瘍で使うのですが,確かに線 維化がだいぶ広がっていることは間違いないで す。 それから,この萎縮した尿細管にdepositive なものが出てくるということが多いんですが, この症例はちょっとはっきりしませんでした。 電顕的にはdense depositはあります。 【スライド09】ここなんです。遠くから見ると, 分からないかもしれない。giant cellみたいなの があるんです。それから,ここも組織球で大き なやつが,こういうように。ですから,lupus の腎炎だろうとは思うんですが,それプラス何
か,ちょっとgranulomatousな病変があります ので,薬剤とかといったものも一緒に混ざって いるのかなという印象です。 【スライド10】fibrosisが強くなりますと,細動 脈の硝子化とか,だいぶ強くはなります。その 辺は似てはいるんです,締め付けも強いんで。 【スライド11】銀のパターンなので,確かに plasma cellを囲むような,いわゆるbirds eyeに 近いような。ただ,そんなにきれいではありま せん。こういうパターンはG4でも出てきます。 【スライド12】ちょっとそういうパターンが崩 れてしまっているかなという感じです。ですか ら,ぱらぱらとあって,線維化があまり十分で はないような場所も多いです。ただ,銀の染め 方にもよりますので,一概になんだということ は言えないように思います。 【スライド13】こういうように,ほとんど銀繊 維があまり出てきていないような間質炎の場所 もある。なんとなくびまん性にわっと炎症細胞 が広がっているというところです。 【スライド14】これもそうです。あまり銀の 関与がないということで,ぱらぱらプラズ マ,リンパ球がびまん性に広がって,一部 granulomatousになっている。 【スライド15】ちょっとしつこいようで,あま り銀の発達がない様子。 【スライド16】先ほどのgiant cellは,これです。 これをどうとるかは,なかなか難しいんですが, この辺に組織球様のものが,ちょっと関与して いるので,lupusだと肉芽腫性にはあまりなら ないわけで,これがなんなのかよく分かりませ んけども。 【 ス ラ イ ド17】 わ れ わ れ は,extra glomerular depositsというのは,lupus腎炎で染めますと3 割ぐらいはあるんです。一番多いのがTBMで す。それから,peritubular capillariesとか,そん なところについてくるわけで,IgGとか,IgA です。IgMはあまりはっきりしない。 【スライド18】それから,C3もよく。ただ,こ の 症 例 はC1qがTBMに 意 外 と き れ い に。 ま あ,上皮側にも出てしまっているのかもしれな いです。C4はあまりはっきりしません。extra glomerular deposits。 た だ,G4で も,IgGが1, 4とか,C3,C1qが一緒に出ますので,これだ けではなかなか鑑別は難しいように思います。 【スライド19】電顕はこれしかなくて,TBMに dense depositが一部塊をなして見られている。 ただ,間質のほうにはないです。G4ですと, 固 有 間 質 の ほ う に もdepositが あ る し,TBM もmassiveにくる場合もあります。この辺も depositなので,ここだけの写真しかないので, どの程度かというのは分かりません。これは近 位尿細管上皮だろうと思います。 【 ス ラ イ ド20】 基 本 的 に はtubules interstitial nephritisでdiffuseなので,G4とは言えなくて, 先ほどG4を染めてnegativeですから,当然G4 は考えられない。lupus腎炎だろうというんで すが,granulomatousな反応が一部ありますの で,それ以外の関与の可能性もあると思います。 【スライド21】ちょっと巨細胞は取り過ぎだと 言われるかもしれませんけど。以上です。 座長 ありがとうございました。重松先生お願 いします。 重松 この症例は間質の病変が立派なもので, やはり山口先生と同じようにIgG4関連という ものを,鑑別の一つにおかなければいけないと 思いまして,それを中心に調べました。 【スライド01】とにかく糸球体があることは分 かるんですが,あとはびっしりとこういう単核 の細胞の浸潤であります。間質病変がメーンだ というのは分かります。 【スライド02】それで,この細胞の浸潤と,残っ た尿細管群と,つぶれてしまった尿細管群。そ の中に一見それほど障害を受けていない糸球体 が見られるという配置と言いますか,そういう 構成でできています。 【スライド03】山口先生もおっしゃっていたよ うに,結構形質細胞が目立つんです。特にHE の色が悪くなってしまって申し訳ないんですけ ど,HEで見ると,一番血球細胞の区別がよく
分かります。あまり異型のない形質細胞が増殖 をしています。 【スライド04】そして,peritubular capillaritisも ちょっと軽いけどある。軽い尿細管炎もある。 このびっしりと細胞があるところは,ちょっと 線維が増えているかなということが気になりま す。 【スライド05】糸球体のほうはご覧のように, ちょっと管内に細胞が流れていますけれど も,取り立てて激しい腎炎というものはない。 mesangiumの軽度の増殖があるということが言 えます。 【スライド06】中に一つ係蹄血管内に血栓と言 えるかどうか分かりませんけど,debrisを入れ た,詰まったものが認められました。これはほ かの標本でもあるんですかね。 【スライド07】PAMでもある。 【スライド08】それから,もう一つ,普通,腎 生検を見ていますと,動脈があると静脈はすぐ そばにあるんです。この場合には,静脈の位置 がずれている。周りに細胞と線維性のものがあ るような変化が見られます。IgG4の関連腎症 で,よく静脈が周りの線維症でつぶされてしま うことが結構あるようで,そういう変化がある んじゃないかというので,ちょっとチェックを しました。 【スライド09】PAS染色で見ると,静脈の周り が放射状というのかな,細線維が増えているよ うに見えます。 【スライド10】PAM染色をやると,それがよく 分からない。 【スライド11】けど,やはり細かいとfiberはど うも増えているようです。 【スライド12】Massonで見ても,あまりはっき りした線維症がないということで,やはり間質 の線維化というのは,IgG4で山口先生が報告 されている,ああいう特異なパターンをとった ものではどうもない。では,これはlupus関連 の間質性腎炎でいけるじゃないかということに なりました。 【スライド13】この程度です。大したことはな いと。 【スライド14】それで,お示しになりました ように,IgGがtubulesと糸球体にも一部ある。 IgMもありますかね。 【スライド15】それから,C3,C1qがかなり立 派に出ています。 【スライド16】それで,電顕で見ますと,間質 に少しずつdepositが見られる。それから,こ こに筋線維芽細胞が増殖しています。間質には depositはないようです。 【スライド17】これはproximal tubuleの下にか なり,有意なelectron dense depositがある。 【スライド18】パターンははっきりしませんけ ども,恐らく外から入ってきたんでしょうかね。 こういうlaminationを起こしているところにも あります。 【スライド19】ほかのところよりも,ぽつりぽ つりと,量はあまり多くないけど見られるとい うわけです。 【スライド20】これは遊走細胞が少しはdeposit と反応しているのが見られるかなと思ったんで すけれども,かなり基底膜になじみを持って接 してはいますけれども,特にdepositと直接の 関係はどうもなさそうです。 (ISN/RPS ということで,臨床的にSLEの診断基準を満た しておって,糸球体病変は軽いわけですけれど も,そうするとISN/RPSの分類によると,微 小mesangium lupus腎 炎, あ る い はmesangium
増殖性lupus腎炎というふうな,非常に軽い糸 球体病変があると見ていいと思います。 それから,間質には単核性のびまん性の尿細 管間質炎があって,immune depositと思われる ものがあるということで,これはやはりlupus 間質炎と診断できるでしょう。 それから,普通は糸球体に豊富な免疫沈着物 があって,それが間質に漏れたようなかたちで 間質に細胞反応があることが多いんですけれど も,この例は反対に間質の浸潤がメーンなわけ です。山口先生のように肉芽腫様に近いところ もあるんじゃないかという見方もあるかと思い ますが,恐らくlupusでも細胞反応から見ると, 単核細胞優位の間質炎というようなものがあっ てもおかしくはないだろうと,私は考えました。 以上です。 座長 はい。どうもありがとうございました。 それではお二人の病理の先生の意見を踏まえ たうえで,何かご質問ありますか。 乳原 虎の門病院の乳原です。 SLEの場合には診断基準病ですから,幾つか そろえばSLEとして診断してもいいのかもし れませんが,一方で免疫沈着物を唯一膠原病の 中で確認できる疾患で,免疫複合体病というこ とで確認できる疾患でもあります。 その中で,岡山大の槇野先生がよく記載さ れているんですけれども,SLEというのは,ま ずdsDNA抗体の上昇を中心とした抗核抗体で, これが抗原抗体反応で免疫複合体をつくる。そ の主体はIgGであるということなのです。それ が,まず血管内をぐるぐる回る。その中で,糸 球体の中に最初に捕まる。そうすると,必ず内 皮下沈着,またはmesangium沈着が起こるとい うことで,糸球体病変がlupus腎炎として一般 的に理解されていると思います。 その延長上に,激しい場合にさらに免疫複合 体がperitubular capillariesまで到達して,そこ で炎症を起こせば,そこに間質性腎炎が起こっ てもいいだろうということで,私たちはちょう ど虎の門病院で153例,lupus腎炎があるんです けど,それで評価してみると,間質性腎炎を呈 する場合の多くは,やはり激しい糸球体病変を 呈しているというのが一般的だろうということ が考えられます。 そう考えると,この症例の場合はdsDNAが 陰性だということなのです。そういうものまで SLEにしてしまっていいかどうか。もちろん免 疫複合体が沈着していることを考えますと,い いのかもしれませんが,最後の腎生検のときの は,なんかちょっとdsDNAが上がっているよ うなかたちでしたけど。 島田 実際は,最初のときには出て,抄録には 288。 乳原 その後です。腎生検時の検査所見は, dsDNA(-)ということで書かれていたので。 抄録には最初,ちょっと高いと書かれているん ですけれども,大体そういうときは,dsDNA による免疫複合体ができて沈着すると,それに また補体が反応すると。低補体が起こるとい うことで,そこから好中球,macrophagesとか, いろいろな炎症細胞が出てくるのです。dsDNA 抗体が(-)と書いてあるのは,一番左下です。 そんなSLEがあるのかどうかと。dsDNAが高 いということから始まると理解すると,抗核抗 体が陽性であってもいいわけですから。 座長 抗核抗体は。 乳原 間違いですかね。ということで,理解し ていて,先日別な研究会で,山口先生が,「間 質だけの,尿細管間質性腎炎があってもいい」 と言われて,「そんなことありますかね」と僕 は言ったので,それで挑戦的な症例かなと思っ て,どうだということで出てきた症例提示かな と思ったのですけれども,一般的には,今言っ たようなことが,SLEを考えるとき,lupus腎 炎を考えるときの基本的な考え方と思うんで す。 島田 最初,dsDNAが1回高値になった後,ス テロイド治療を行わず,dsDNA抗体が下がっ てきました。腎生検のときのデータは,2009 年の9月です。1回高値だった2009年の4月の
とき,1回高値で,その後はnegativeというこ とです。 乳原 普通はdsDNAが上がることで,免疫複 合体ができるわけですから,そうすると高くな いフレッシュなSLEがあり得るかどうかとい うことなんです。むしろ,こういうのもあると 言ってしまえば終わりかもしれませんけど。 やっぱりSLEは活動性が出てくると,必ず dsDNAが上がってくる。それが治療の指標に なります。補体だけではない。補体の場合は別 のことでも低下するので,両方が合わさるとい うことが,SLEの活動性のポイントかなと思っ て見ているんです。 尿細管間質性腎炎が主体のときに,それを SLEに結び付けてしまうかどうか。それだけと いうのは,普通のlupus腎炎を合併した間質性 腎炎とはまた別の問題もあるかなと思ったりは しますが。以上です。 座長 ありがとうございます。 会場でどなたかdsDNAについて何かご意見 のある方はいらっしゃいますか。ほとんど陽性 のときに,腎炎が起きてくるんですけれども, 糸球体腎炎しかほとんど見ていなくて,病理分 類も間質尿細管病変は糸球体病変の程度にほと んど全部食べられてしまう。要するに独立した 図子として残ってこなかったから,除外された 区分になったと聞いていますけれども。こうい うこともあるのかもしれないと,ちょっと片隅 に留めておく必要があるかもしれないですね。 そのほかに何かございますか。はい,長濱先 生。 長濱 横浜市大,病理の長濱と申します。 一般的な病理医から見れば,ガリウムの集積 があって,あれだけリンパ球が浸潤していれば, lymphomaを否定しなければいけないと思うん です。浸潤しているリンパ球というか,単核細 胞のcharacterizeとかはされていますか。ある いは,κ・λで,κだけに,形質細胞が多かっ たなど,κ・λの偏移はどうだったかとか。 島田 κ・λのほうは見ていないのと,リンパ 球のほうはcharacterizeは見ていません。 長濱 ありがとうございます。 あとぶどう膜炎の合併とかは。 島田 ぶどう膜炎はありませんでした。 長濱 あとSLEよりも感染症のほうがだらだ ら持続しているような気がするんですけど,感 染症で間質性腎炎という報告はあるかどうか, 知っていたら教えてください。以上です。 島田 すみません。その感染の間質性腎炎に関 しては,僕のほうは勉強不足で,すみません, 調べていないです。 座長 鎌田先生,何かご存じですか。 鎌田 乾癬炎がずっと持続したので,SLEでは なく,乾癬性かもしれないなとも思っていまし た。 島田 乾癬のほうの関節炎は,実は1回膠原病 のほうで疑われて,精査されているのですけれ ども,そこでは乾癬性の関節炎ではないと診断 されています。 鎌田 そうですか。 座長 そのほかに何かご質問。はい,どうぞ。 青山 共同演者の北里大学の青山です。関 節 炎 に 関 し て は 乾 癬 性 の と い う と こ ろ で, rheumatoid factorの結果が診断基準に合致しな いところもあったので,関節所見含めて,関与 は少ないと考えさせていただきました。 先ほどの乳原先生のお話の件になりますが, 膠原病内科の先生もやはりdsDNA抗体が陰性 になったということが非常に問題になってい て,この腎臓の病気は,本当にlupusでいいん だろうかと。自然に何もステロイドも使用しな いで下がることがあるんだろうかというのが, 非常に悩まれて,われわれに依頼があって,腎 生検をした症例になります。 診断基準も,抄録では満たすというふうに書 かせていただいたんですが,実際のところ血清 学的なところで合致する部分が多くて,先ほど の皮膚所見もそうですし,関節炎というのも lupusと考えていいのかというところも非常に 判断に悩んだところもあって,今回提示させて
いただいたのが経緯となります。 座長 はい。どうもありがとうございます。 何かそのほかに,ご質問等はありますか。先 生のほうから何か伺っておきたいことはありま すか。 島田 大丈夫です。 座長 間質性腎炎は鑑別疾患が非常に多くて, ただ免疫グロブリンが染まってくると,やはり そちらにどうしても引きずられた診断にいって しまうというふうに思います。島田先生,どう もありがとうございました。 島田 ありがとうございました。失礼します。
山口先生 _04 山口先生 _01 II-2: SLE 1 ( ) 66 1992 96 09
dsDNA 288IU CH50<5U ANA640
SLE 12 9 IgG4 32mg/ml Ga IgG4 山口先生 _05 山口先生 _02 山口先生 _06 山口先生 _03
山口先生 _10 山口先生 _07 山口先生 _11 山口先生 _08 山口先生 _12 山口先生 _09
山口先生 _16
山口先生 _13
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山口先生 _18
IgG IgM IgA
山口先生 _22
Clin Nephrol. 2008 Jun;69(6):436-44.
Predominant tubulointerstitial nephritis in a patient with systemic lupus erythematosus: phenotype of infiltrating cells.
Omokawa A, Wakui H, Okuyama S, Togashi M, Ohtani H, Komatsuda A, Ichinohasama R, Sawada K.
Source
Third Department of Internal Medicine, Akita University School of Medicine, Akita, Japan.
Abstract
A 63-year-old man with systemic lupus erythematosus developed tubular proteinuria. All subclasses of serum IgG increased, and the largest IgG subclass increase was IgG4. A renal biopsy showed lupus nephritis (Class II) with severe tubulointerstitial nephritis (so-called predominant tubulointerstitial lupus nephritis, an unusual form of lupus nephritis). Immunofluorescence microscopy revealed positive granular staining for IgG, C3 and C1q in the mesangium and peritubular interstitium, and along the tubular basement membranes (TBM). Electron microscopy also showed electron-dense deposits in the mesangium and TBM.
Immunophenotyping of interstitial infiltrating cells disclosed a predominance of T cells. CD8-positive cytotoxic T cells infiltrated the peritubular interstitium, and some of these cells infiltrated the tubules. B cell-rich lymphoid follicles were also observed. IgG subclass analyses showed glomerular IgG1, IgG2 and IgG4 deposition, positive staining of IgG4 in the peritubular interstitium and along the TBM, and abundant IgG1-, IgG3- and IgG4-positive plasma cells in the interstitium. The patient responded well to moderate-dose steroid therapy. This is the first report of immunophenotyping of interstitial infiltrates in predominant tubulointerstitial lupus nephritis. The results suggest CD8-positive cytotoxic T cell-mediated tubular injury. Furthermore, immune complexes containing IgG4 might be one of etiologic factors.
山口先生 _19
C3 C1 C4
山口先生 _23
Lupus. 2011 Nov;20(13):1396-403. doi: 10.1177/0961203311416533.
Discrepancies in glomerular and tubulointerstitial/vascular immune complex IgG subclasses in lupus nephritis.
Satoskar AA, Brodsky SV, Nadasdy G, Bott C, Rovin B, Hebert L, Nadasdy T.
Source
Department of Pathology, The Ohio State University Medical Center, M018 Starling Loving Hall, 320 W 10th Ave, Columbus, OH 43210, USA. [email protected]
Abstract
BACKGROUND AND OBJECTIVES:
Lupus nephritis is characterized by glomerular and extraglomerular immune complex deposition in the kidney. It is unclear whether the same circulating immune complexes deposit in the glomeruli and in extraglomerular structures, or whether they are pathogenetically different. Differences in the IgG subclass composition may point towards different pathways in the formation of glomerular and extraglomerular immune complexes. Therefore we investigated IgG subclass distribution in the immune complex deposits at these anatomic sites.
DESIGN:
A total of 84 biopsies diagnosed as lupus nephritis and classified according to the International Society of Nephrology/Renal Pathology Society (ISN/RPS) 2003 classification, were examined by direct immunofluorescence staining for IgG subclasses. The IgG subclass composition in the glomerular, tubular basement membrane (TBM) and vascular wall deposits was compared. We also correlated the presence/absence of interstitial inflammation and IgG subclasses in the TBM and vascular deposits. Lastly, we looked for correlation between staining for IgG subclasses and complement C1q and C3 staining.
RESULTS:
IgG staining was present in the TBM in 52/84 biopsies, and in the vascular walls in 40/84 biopsies. IgG subclass distribution was discrepant between glomerular and TBM deposits in 36/52 biopsies, and between glomerular and vascular deposits in 27/40 biopsies. Interstitial inflammation did not correlate with the presence of IgG staining or distribution of IgG subclasses in the TBM. Interstitial inflammation was more common in biopsies of African-American patients than Caucasian patients. The IgG subclass staining correlated with C1q staining in all the three compartments.
CONCLUSIONS:
The antibody composition of the glomerular and extraglomerular immune complex deposits appear to differ from each other. They may not represent the same preformed immune complexes from the circulation. It is likely that their pathogenesis and site of formation are different.
山口先生 _20 重松先生 _01 山口先生 _21
Tubulointerstitial nephritis, diffuse
cortex/medulla= 9/1, global scelrosis/glomeruli=4/19
bird‘s eye pattern
IgG(+), IgM(±), IgA(±), C3(±), C1q(+): mesangial & TBM pattern C1q(+)
TBM dense deposits
重松先生 _05 重松先生 _02 重松先生 _06 重松先生 _03 重松先生 _07 重松先生 _04
重松先生 _11 重松先生 _08 重松先生 _12 重松先生 _09 重松先生 _13 重松先生 _10
重松先生 _17 重松先生 _14 IgG IgA IgM 重松先生 _18 重松先生 _15 C1q C3 C4 Fib 重松先生 _16 重松先生 _19