• 検索結果がありません。

棒形スキャナによるコンクリート構造物の検査精度に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "棒形スキャナによるコンクリート構造物の検査精度に関する研究"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

写真-3 孔軸方向のひび割れ(左)と孔軸 直角方向のひび割れ(右)

棒形スキャナによるコンクリート構造物の検査精度に関する研究

佐賀大学 学生員 ○志岐 和久 佐賀大学 正会員 伊藤 幸広 佐賀大学 正会員 石橋 孝治 佐賀大学 正会員 山内 直利 ㈱計測リサーチコンサルタント 正会員 宮本 則幸

1.はじめに

コンクリート構造物の検査では、コアを採取して強度、中性化深さ、ひび割れや空洞などの劣化状況を調査 する方法が一般に行われている。しかしコア法では、コアの採取に際し比較的大きな装置を必要とすること、

また、コストや作業性の問題から一つの部材もしくは構造物から多くの検査点数を取ることは行われていない。

このような問題を解決するため、簡易で検査時間が短いという特徴を持つ、小径孔を利用した構造物内部検査 装置(以下、棒形スキャナと称す)の開発を行ってきた。本研究では、棒形スキャナによるコンクリート構造物 の各種検査における検査精度について実験的に検証を行ったものである。

2.棒形スキャナの概要

棒形スキャナで画像を読み取る原理は、紙面等を読取る一 般のハンディスキャナと同じ原理を用いており、イメージセ ンサの移動距離をエンコーダで計測し、イメージセンサで読 取った画像のラインデータを合成することにより、2次元画像 を作成する装置である。棒形スキャナの外観を写真‐1に棒形 スキャナの仕様を表‐1に示す。棒形スキャナに用いたラインセンサ は、CISタイプのイメージセンサであり、センサ長は210mmであり、

解像度は600dpiである。撮影した画像は TIFF形式であり、USBコ ード接続されたPCもしくは本体に挿入したSDカードに保存できる。

3.実験概要

棒形スキャナによるコンクリート構造物の検査精度を調べるために行った 実験は、ひび割れ幅の測定と中性化深さの測定である。

ひび割れ幅測定精度の検証実験では、2つの供試体の間にスペーサーを挟み 模擬ひび割れを作製して精度を調べる実験と供試体に削孔後、割裂し実際に発 生させたひび割れによって測定精度を調べる実験の2種類を行った。模擬ひび 割れ供試体の作製方法としては、端面を研磨した2つの角柱供試体を重ね合わ せ、湿式ダイヤモンドコアドリルで検査孔(φ25mm)を削孔した。

2つの供試体の間にスペーサー(0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、

2.5mmおよび3.0mm)を挟み任意の幅の模擬ひび割れを作製しひ び割れ幅の測定実験を行った。写真‐2は、棒形スキャナで撮影 した模擬ひび割れ(スリット部)の画像である。画像を用いたひ び割れ幅の算出方法は、ひび割れ部のピクセル数をカウントし1 ピクセルの長さ(0.042mm)を掛けることにより求めた。

割裂によってひび割れを発生させた供試体の測定では、検査孔

(φ25mm)を削孔後、孔内の孔軸方向にひび割れを発生させた供

センサ部 回路部

ガイド

回転ノブ

写真-1 棒形スキャナの外観

項目 特性

全長 662mm

挿入長 350mm

センサタイプ CISタイプ 8bitカラー

センサ長 210mm

解像度 600dpi

保存方法 PC, SDカード

表-1 棒形スキャナの仕様

写真-2 模擬ひび割れ

(スリット部)の画像

V‑009 土木学会西部支部研究発表会 (2012.3)

‑741‑

(2)

試体と孔軸直角方向にひび割れを発生させた供試体の2種類を準備し 実験を行った。なお、ひび割れ幅を実測する必要があることから、孔 の円周の4分の1をダイヤモンドカッターで切断した供試体を用いた。

それぞれの供試体の外観を写真‐3に示す。画像を用いたひび割れ幅の 算出方法は模擬ひび割れ供試体の方法と同様であり、ひび割れ幅の実 測には、0.01mm読みのデジタルノギスを用いた。

中性化深さの計測には、40 年間以上供用した橋脚の廃コンクリート 塊や中性化促進試験を行った供試体等を使用し計測を行った。実験で は、まず削孔した孔内にフェノールフタレイン1%アルコール溶液を噴 霧し、乾燥後、棒形スキャナを孔内に挿入しスキャニングした。その 後、コンクリートカッターで切れ目を入れ割裂し、孔内を露出させ、

デジタルノギスを用いて中性化深さを計測した。

4.実験結果および考察

図-1 は、模擬ひび割れ供試体について棒形スキャナによる計測値 とデジタルノギスによる実測値の関係を示したものである。なおグラ フには、棒形スキャナおよびデジタルノギスとも 5 回の平均値をプロ ットした。両者の間には高い相関性があり、回帰式もほぼ原点を通る 傾き1の直線である。棒形スキャナによる計測誤差は、最大でも4.5%

であった。図-2および 3は、それぞれ孔軸方向にひび割れを発生さ せた供試体と孔軸直角方向にひび割れを発生させた供試体おける棒 形スキャナによる計測値とデジタルノギスによる実測値の関係を示し たものである。グラフのプロットは 5 回の計測値の平均値であり、い ずれの供試体の場合も、両者の間には高い相関性が見られる。孔軸方 向ひび割れの供試体では、棒形スキャナによる計測値について誤差の 絶対値の平均値を求めると0.13mmであり、孔軸直角方向ひび割れ供試 体のそれは0.10mmであった。これらより、比較的高い精度で棒形スキ ャナによるひび割れ計測が可能であると言える。

写真―4 は、中性化深さ試験における棒形スキャナによるスキャニ ング画像である。中性化境界が明確に確認でき、孔口から中性化境界 までの距離の計測により中性化深さを求める

ことができる。図―4 は、中性化深さの棒形 スキャナによる計測値とデジタルノギスによ る実測値の関係を示したものである。棒形ス キャナによる誤差の絶対値の平均は、7.0%で あり、実用的に十分な精度であると言える。

5.まとめ

棒形スキャナによるひび割れ幅や中性化深さの検査精度を調べた結 果、実用上十分な精度があることが明らかとなった。

図-1 模擬ひび割れ供試体における ひび割れ幅計測結果

図-2 孔軸方向ひび割れ供試体にお けるひび割れ幅計測結果

図-4 中性化深さの計測結果 写真-4 中性化深さ試験における

スキャニング画像

図-3 孔軸直角方向ひび割れ供試体に おけるひび割れ幅計測結果

中性化境界

図-2 孔軸方向ひび割れ供試体にお けるひび割れ幅計測結果

V‑009 土木学会西部支部研究発表会 (2012.3)

‑742‑

参照

関連したドキュメント

土木研究所寒地土木研究所 正会員○西 弘明 土木研究所つくば中央研究所 正会員 加藤 俊二 土木研究所寒地土木研究所 正会員 今野 久志 室蘭工業大学大学院 正会員 栗橋

東北大学大学院  学生会員  ○古屋  哲志 東北大学大学院    正会員    梅田  信  東北大学大学院  フェロー    田中 

東京大学大学院 学生会員 ○山地 毅彦 東京大学大学院 正会員 布施 孝志 東京大学大学院 正会員 清水

室蘭工業大学大学院 ○ 学生会員 岡田 伸之 (Nobuyuki Okada) 室蘭工業大学大学院 フェロー 岸  徳光 (Norimitsu Kishi) 寒地土木研究所 正会員 今野 久志 (Hisashi Konno)

九州工業大学大学院 学生会員 ○竹林宏樹 九州工業大学 学生会員 川﨑恭平 九州工業大学 正会員 木村吉郎 フェロー 久保喜延 正会員

室蘭工業大学大学院 ○ 学生員 佐伯 侑亮 (Yusuke Saeki) ( 独 ) 寒地土木研究所 正 員 今野 久志 (Hisashi Konno) 室蘭工業大学 正 員 栗橋 祐介 (Yusuke Kurihashi)

日本コンクリート技術㈱ 正会員 ○篠田 佳男 北沢建設㈱ 正会員 北沢 資謹 京都大学 正会員 河野

広島大学 正会員 ○半井 健一郎,学生会員 森 優太,前橋工科大学 正会員 舌間孝一郎 鉄道総合技術研究所 正会員 西尾 壮平,正会員 上田 洋 東京大学生産技術研究所 正会員