レール継目落ち形状により生じる輪重変動について
鉄道総合技術研究所 正会員 ○鈴木 貴洋 鉄道総合技術研究所 正会員 石田 誠
1.はじめに
レール継目部付近では、普通継目の欠線部により輪重変動が励起され、その輪重変動が継目部の道床沈下お よびレールの塑性変形を促進することでレール継目落ちが生じると考えられる。さらに、その車輪走行面の不 整による輪重変動で、レール継目落ちが進展していくものと考えられる。そこで、在来線有道床軌道における レール継目落ち形状の測定結果を用いて、レール端部形状とその落込み量を調査した。また、軌道動的解析モ デルによる輪重変動解析を行い、レール継目落ち形状により生じる輪重変動について検討した。
2.レール継目落ち形状の実態調査
調査区間は、在来線有道床軌道における直線区間である。
測定箇所数は
28
箇所であり、レール端部形状を算出するため に用いたサンプル数は1
継目にレール端部が2
つあるため合 計56
データである。継目部におけるレール長手方向の継目落 ち形状データは、1m 弦ストレッチゲージにより継目を挟ん で測定されたものである。測定波形例を図1
に示す。ストレ ッチゲージによる測定のため、レール継目落ち形状はスケー ルを長手方向では1m
を1/10
倍に、上下方向では1mm
を10
倍にしたアナログ連続波形で記録紙に描かれており、レール 端部の位置および継目遊間の大きさが曖昧となっている。そ のため、ここでは記録紙のアナログ波形を0.0127mm
間隔で デジタル化し、1m 弦の両端点における値が0
となるよう補 正を行った後に、得られた継目落ち形状からレール端部位置 を推測することとした。測定されたレール継目落ち形状には、レールの曲がりくせ等による形状と端部形状とが混在しているものと考え、レールの受け側と去り側の各々で、
レールの曲がりくせ等の形状を測定データに基づいた指数関数によるカーブフィッティングで推定し、得られ た回帰曲線
y
Eと測定データy
iとの差をレール端部形状として算出することとした1)。カーブフィッティング に用いる区間は、端部が盛上っている形状の場合は盛上りの手前までの区間を、端部が落込む形状の場合は落 込みの手前までの区間を対象とした。なお、レールの曲がりくせ等による形状を表現する回帰曲線は、E
(x) a be
cxy = +
で表し、係数a、b、c
を測定データより推定することとした。レール端部における落込み量 δBおよび落込みまたは盛上りを区別するための符号は、図2
に示すように定義した。抽出されたレール端部 形状の波形例と端部形状より読み取った落込み量ヒストグラムを図3
および4
に示す。図3
より、レール端 部形状には落込みと盛上りの2種類があり、特に盛上がりの場合は、盛上り範囲の長さから、端部熱処理の熱 影響による軟化部と熱処理による硬化部との硬さの違いにより生じたものであることが確認できた。図4
より、落込み量は盛上り、落込みのどちらも
1mm
以内の範囲に多く分布している。3.レール継目落ち形状による輪重変動解析
レール継目落ち形状により生ずる輪重変動について検討するため、図
5
に示す軌道動的解析モデル2)を用い て輪重変動解析を行った。解析モデルにおける輪重として評価される車輪/レール間接触力は、車輪がレール キーワード レール継目落ち形状、軌道動的解析モデル、輪重変動連絡先 〒185-8540 東京都国分寺市光町2-8-38 TEL042-573-7291 FAX 042-573-7360
図
1
ストレッチゲージにより測定されたレ ール継ぎ目落ち形状の波形例図
2
落込み量および符号の定義 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)‑247‑
IV‑124
から離れる現象を考慮した線形ばねで評 価し、レールは
Timoshenko
はりでモデ ル化した。なお、本解析モデルでは遊間 のような不連続部の影響を考慮すること ができない。レール継目落ち形状は、実 態調査より得られた形状を基に、図6
に 示す落込み量0.3mm
のレール端部落込 みまたは盛上り形状とレール曲がりくせ 等による形状を重ね合わせた継目落ち形状をレールの受け側および去り側にそれぞれ設定した。なお、継目落ち形状は遊間を中心とする左右
500mm
の範囲に設定した。また、遊間中心は支え継ぎを念頭にレール支持位置上に設定した。解析諸元を表1に、輪 重変動解析結果の例(レール去り側形状:端部熱処理形状)を図7
に示す。なお、図ではレール受け側の継目 落ち形状別に示しており、凡例において「熱処理」は端部熱処理による盛上り形状を、「落込み」は落込み形 状を、「無し」は曲がりくせ等の形状のみを表している。図より、端部熱処理による盛上り、落ち込み部分の 上り等、継目形状が上り段となっている箇所で衝撃荷重が生じ、一方で継目形状が下り段となる箇所では輪重 抜けが現れている。以上より、輪重ピークと輪重抜けについて定性的には妥当な結果が得られたと考えられる。4.おわりに
レール継目落ち形状の実態調査より、レール端部形状と落込み量の大きさを把握した。軌道動的解析モデル を用いた継目落ち形状による輪重変動波形については、継目落ち形状と衝撃荷重発生位置との関係および遊間 の車輪乗り移りを考慮した動的解析モデルについて実態把握等のさらなる検討が必要であると考えられる。最 後に、ご協力頂いた東日本旅客鉄道株式会社の関係者の方々に感謝申し上げます。
参考文献
1)
赤間誠、松山晋作:端頭部熱処理レールの耐衝撃効果、鉄道総研報告、Vol.1、No.3、p.39~46、1987.112)
石田誠、三浦重、河野昭子:軌道動的応答モデルとその解析結果、鉄道総研報告、Vol.11、No.2、p.19~26、1997.2
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 位置(mm)
落込み量(mm)
レール端部形状 測定曲線
図
3
測定曲線と推定したレール端部形状の波形例図
4
落込み量のヒストグラム上載荷重(一定)
速度 V
レール 軌道パッド 締結間隔 接触ばね
車輪(質点)
-1.0 -0.5 0.0 0.5
0 250 500 750 1000
位置(mm)
落込み量(mm)
端部熱処理形状 落込み形状
曲がりくせ+
落込み形状 曲がりくせ+
端部熱処理形状
上載荷重(kN) 46.073
車輪質量(kg) 827
接触ばね係数(GN/m) 1.2
列車速度(km/h) 110
60kgレール 60 98 0.75 車
両
レール種別 軌道パッドばね係数(MN/m) 軌道パッド減衰係数(kN・s/m)
締結間隔(m)
図
5
軌道動的解析モデル 図6
解析で設定した各種継目落ち形状0 50 100 150
-500 -250 0 250 500
継目遊間中心からの距離(mm)
動的輪重(kN)
無し 熱処理 落込み
図
7
輪重変動解析結果(レール去り側形状:端部熱処理形状)落込み 盛上り
表
1
解析諸元 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)‑248‑
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