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博 士 ( 農 学 ) 音 喜 多 啓 秀

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 音 喜 多 啓 秀

学 位 論 文 題 名

多 様 な ギ ョ ウ ジ ャ ニ ン ニ ク 系 統 の 諸 形 質 の 評 価 な らび に      栽 培 の 効 率 化 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  ギョウジャニンニクは、寒冷地に自生するユリ科ネギ属の多年生植物である。

生活環が長く増殖効率が悪いため栽培化は思うように進展せずに、未だに出荷物 の多くを自生地より採取していることから、遺伝資源の枯渇が問題視されている。

栽培化が遅れる一方で、ギョウジャニンニクが持っさまざまな生理的機能により、

野菜としての利用およびサプリメントの原材料としての需要が著しく伸びている ため、需要と供給の不均衡が続いている。そこで、本研究ではギョウジャニンニ ク栽培の拡大による供給量の増加を図るべく、北海道を中心に収集した多様な系 統のギョウジャニンニクの諸形質を評価した。最初に栽培の効率化および新品種 作出に有用と思われる遺伝形質および系統を調査し、次に組織培養による増殖法 および凍結保存による遺伝資源の保存法を検討した。論文の内容は以下に要約さ れる。

1.ギョウジャニンニクの諸形質の系統間差

ギョウジャニンニクの栽培では、近隣の自生地から採取した生理・生態的特性が 明らかでないものを繁殖母本としているため、必ずしも既存のネギ科の栽培法が 適しているとはいえず、栽培効率が悪い。従って、栽培環境や消費者のニーズに 対応した系統を栽培することによって栽培効率および収益性の向上が可能である と考えられる。そこで、収集した31系統のギョウジャニンニクの諸形質を調査し たところ、萌芽期早晩性、生育終期の草丈、分げつ性、りん茎径、種子数、葉形 韜よび葉数に明らかな系統問差が認められた。これらは年次間差および系統内の 個体間差が小さいことから遺伝的に固定された形質であることがわかった。萌芽 期早晩性は、萌芽時期に合わせた加温処理および収穫・出荷期間を設定すること ができるため、集約的かつ効率的な栽培が可能とぬる上、萌芽時期が異なる系統 を組み合わせて栽培することで、収穫期間が拡大されるため収益性の向上が期待 される。また、強分げつ性の系統を栽培に利用することで増殖効率の向上が可能 である。種子繁殖の場合、生育に7〜8年を要するのに対し、成株に韜ける分げつ は毎年起こるため、栽培・収穫サイクルが早められることで栽培効率が向上する。

そこで種子数の多い系統と併せて栽培することで繁殖効率およぴ収益性はさらに     ー1316ー

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高められると考えられる。さらに生育終期の草丈、葉形および葉数の調査にっい ても行った。これらの形質は可食部位(葉)の形質であることから、今後の需要 拡 大 に 向 け た 新 た な 利 用 法 や 新 品 種 の 育 成 に 有 用 と 思 わ れ る 。

2.ギョウジャニンニクが持つ機能性の評価

機能性成分が注目されているギョウジャニンニクにおいて、高い機能性を有する 系統 を 選抜する 意義は大 きい。含硫 アミノ酸(ACSOs)は、機能 性成分で ある揮 発性含硫 化合物の 前駆物質 であり、その組成は機能性を評価する1つの指標にな っている 。そこで 、可食部 位(葉)におけるACSOs組成を調査した結果、系統お よび年次 に関わら ず主要ACSOsとしてメチインおよぴアリインが検出された。そ の組成は常時メチインがアリインを上回っていたが、メチインとアリインの組成 比には系 統間差が 認められ 、年次間差も大きかった。また、ACSOs含量を調査し た結果、萌芽時期が最も多く生長に伴って減少したが、含量には系統間差が認め られ、年 次間差が 大きかっ た。従って、ギョウジャニンニクにおけるACSOs組成 および含量は、栽培環境など外的要因に影響される形質であることが示唆された。

さらに、 おなじく 葉を用い て抗酸化能(DPPHラジカル捕捉活性)を調べた結果、

抗酸化活 性の系統 間差は小 さく、ACSOs含量との関連性は認められなかった。こ の結果から、ギョウジャニンニクの抗酸化能には、ポリフェノール類などその他 の機能性成分が寄与している可能性が示唆された。

3.組織培養を用いた栄養繁殖の効率化と生育促進

組織培養法は、少ぬい材料から短期間に大量の種苗生産を可能にする技術である。

そ こで、萌 芽期早晩 性および分げつ性が異なる4系統について培養体の生育を系 統問で比較した結果、不定器官形成に系統間差が認められたが、圃場で観察され る萌芽期早晩性と分げつ性の性状との関連性は認められなかった。しかし、実生 が 生 育か ら3年間は 分げっしな いことを 考慮する と、培養6カ月後の1外植片あ たりの平均シュート数が8.9本であったことは、組織培養がギョウジャニンニクの 種苗増殖法として効果が高いことを示唆している。また、培養体に生育促進効果 が認められ、実生よりも培養体の生育速度が速かったことも組織培養の有用性を 示している。さらに、得られた培養体を用いて凍結保存法を検討した結果、ガラ ス化法による生存率は66.7%であったことから、ガラス化法を用いた凍結保存によ るギョウジャニンニク遺伝資源の長期安定的保存が可能であることがわかった。

以上の結果から、多様なギョウジャニンニク系統に描ける諸形質には遺伝的に固 定された形質があり、組織培養による増殖および凍結保存による長期安定的保存 が可能であることが明らかにされた。本研究の結果をギョウジャニンニク栽培お よび新品種作出に利用することで栽培の効率化が図られ、それに伴う栽培の拡大 と収益性の向上が可能であると考えられる。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

主 査   教 授   鈴 木 正 彦

副査   教授   増田   清 副査   准教授   鈴木   卓

副査   教授   荒木   肇(本学大学院環境科学

学 位 論 文 題 名

研 究 院 )

多 様 な ギ ョ ウ ジ ャ ニ ン ニ ク 系 統 の 諸 形 質 の 評 価な ら び に      栽 培 の 効 率 化 に 関 す る 研 究

(審査の要旨)ギョウジャニンニクは、寒冷地に自生するユリ科ネギ属の多年生植物で ある。生活環が長く増殖効率が悪いため栽培化は思うように進展せずに、未だに出荷物 の多くを自生地より採取していることから、遺伝資源の枯渇が問題視されている。栽培 化が遅れる一方で、ギョ.ウジャニンニクが持っさまざまな生理的機能により、野菜とし ての利用およびサプリメントの原材料としての需要が著しく伸ぴているため、需要と供 給の不均衡が続いている。そこで、本研究ではギョウジャニンニク栽培の拡大による供 給量の増加を図るべく、北海道を中心に収集した多様な系統のギョウジャニンニクの諸 形質を評価し、組織培養による増殖法およぴ凍結保存による遺伝資源の保存法を検討し ている。学位論文の内容は以下に要約される。

  ギョウジャニンニクの栽培では、近隣の自生地から採取した生理・生態的特性が明ら かでないものを繁殖母本としているため栽培効率が悪い。従って、栽培環境や消費者の ニーズに対応した系統を栽培することによって栽培効率および収益性の向上が可能で あると考えられる。そこで、収集した31系統のギョウジャニンニクの諸形質を調査し たところ、萌芽期早晩性、生育終期の草丈、分げつ性、りん茎径、種子数、葉形および 葉数に明らかな系統問差が認められた。これらは年次間差および系統内の個体間差が小 さいことから遺伝的に固定された形質であることがわかった。萌芽期早晩性は、萌芽時 期に合わせた加温処理および収穫・出荷期間を設定することができるため、集約的かつ 効率的な栽培が可能となる上、萌芽時期が異なる系統を組み合わせて栽培することで、

収穫期間が拡大されるため収益性の向上が期待される。また、強分げつ性の系統を栽培 に利用することで増殖効率の向上が可能である。種子繁殖の場合、生育に7〜8年を要 するのに対し、成株に描ける分げっは毎年起こるため、栽培・収穫サイクルが早められ

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るユとで栽培効率が向上する。そこで種子数の多い系統と併せて栽培することで繁殖効 率船よび収益性はさらに高められると考えられる。これらの結果は今後の需要拡大に向 けた新たな利用法や新品種の育成に有用と思われる。

  次にギョウジャニンニクが持つ機能性の評価を行っている。機能性成分が注目されて いるギョウジャニンニクにおいて、高い機能性を有する系統を選抜する意義は大きい。

含硫アミノ酸(ACSOs)は、機能性成分である揮発性含硫化合物の前駆物質であり、そ の組成は機能性を評価する1つの指標になっている。そこで、可食部位(葉)における ACSOs組成を調査した結果、系統およぴ年次に関わらず主要ACSOsとしてメチインお よびアリインが検出された。その組成は常時メチインがアリインを上回っていたが、メ チインとアリインの組成比には系統間差が認められ、年次間差も大きかった。また、

ACSOs含量を調査した結果、萌芽時期が最も多く生長に伴って減少したが、含量には 系統間差が認められ、年次間差が大きかった。従って、ギョウジャニンニクにおける ACSOs組成およぴ含量は、栽培環境など外的要因に影響される形質であることが示唆 された。また、ギョウジャニンニクの抗酸化能には、ポリフェノール類などその他の機 能 性 成 分 が 寄 与 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ 新 規 の 知 見 を 与 え て い る 。   最後に組織培養を用いた栄養繁殖の効率化と生育促進を行っている。組織培養法は、

少ない材料から短期間に大量の種苗生産を可能にする技術である。実生が生育から3年 間は分げっしないことを考慮すると、培養6カ月後の1外植片あたりの平均シュート数 が8.9本得られたことは、組織培養がギョウジャニンニクの種苗増殖法として効果が高 いことが示唆される。また、培養体に生育促進効果が認められ、実生よりも培養体の生 育速度が速かったことも組織培養の有用性を示している。さらに、得られた培養体を用 い て凍結 保存 法を 検討 した 結果 、ガ ラス 化法 によ る生 存率 は66.7%であった。

  以上の結果から、多様なギョウジャニンニク系統における諸形質には遺伝的に安定な 形質があり、組織培養による増殖および凍結保存による長期安定的保存が可能であるこ とが明らかにされた。本研究の結果をギョウジャニンニク栽培およぴ新品種作出に利用 することで栽培の効率化が図られ、それに伴う栽培の拡大と収益性の向上に寄与できる と評価できる。

  よって、審査員一同は、音喜多啓秀が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を 有するものと認めた。

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参照

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