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成熟ラットの異性間パラビオーゼにおける精細胞について

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(東京女医大誌第28巻第9号頁657−662’昭和33年9月)

成熟ラットの異性間パラビオー一ぜ

における精細胞について

凍:京女子医科大学解剖学教室(主任 久保田くら教授)

串田つゆ香・中田甲子雄・佐々木紀元

クシダ

カナカダカネオ ササキノリモト

(受付昭和33年7月26日)

1 緒 言 1862年越ert 2)が始めて皮膚橋による幼若ラッ ト体結合を行ったが,充分な成果をあげるにはい たらなかった。1908年頃auerbruch&Heyde 15) が家兎において手術的結合に成功し“Parabiose” なる術名が附され,ついでHill(1932)5、, Buns− ter&Meyer(1933)5)らによりさらに結合術式の 改良が加えられるにいたった。同時にパラビオ一 点動物相互間の体液交流に関する研究が盛に行わ れ,最初パラビオーゼ動物相互間はリンパ液のみ の交流からなると考えられたが,諸種の研究の結 果,毛細管吻合を有することが明らかにされた。

Huff, Trautman&van Dyke(1950)6)はパラ

ビオーゼを利用した内分泌方面の研究においてい わゆるホルモンは結合部を容易に移行しうると述 べている。これらの研究にもとづいて多くの実験 的研究が行われ,ことにパラビオ一輪が雌性性器 に及ぼす影響についての報告は数多くみられる。 異性間パラビオーーゼにおける雄性性器に関する研 究は極めて少く,ことに組織学的立揚よりの報告 は全くみられない。異性間パラビオーゼを行うこ とにより睾丸も何らかの影響を与えるであろうこ とを予測し行ったのが本研究である。 H 材料と研究方法 実験には生後5ヵ月を経過した体重:150g前後の同 腹ラットを使用した。また手術の際の麻酔は麻酔用工 t一e7レ吸入を行った。パラビオーゼ手術は概ねMeyer 氏法にしたがった。すなわち互に結合する側の皮膚を 側胸部より下側腹部にかけて切開し,ついで肋骨弓よ り腸骨稜にいたる腹膜に切開を加え,四辺の腹膜およ び皮膚に各々連続縫合を施した。切開創には感染予防 のためペニシリン注射を行った。手術後動物相互間の 離開を防ぐため,両動物間に絆創膏固定を行った。 以上の方式で異性間パラビオーゼを行い,術後7, 15,20,30日(以下P7, P 15, P20, P 30と略記す る)の期間別飼育を行い,4例において畢丸組織を

Zenker, Levi, ChampyおよびCiaccio液などにて固

定,約5μ厚のパラフィン切片となし,Heidenhain 智歯ヘマトキシリン,ヘマトキシリン・エオジン, K:uJJ氏アニリンフクシンなどの染色を施した。 P30 以後の生存例は少数のため,材料採取はP30までに止 めた。 パラビオーゼは行わず皮膚および腹膜切開,縫合等 パラビオ川町の場含とほぼ同手術を行った動物を対照 例とし,比較を試みた。 皿 自i家所見 異性間パラビオーゼを施した揚合の睾丸を肉眼 的に襯察した場合,各例とも固有の階円形を呈し ている。P20, P30にわいて睾丸被膜の緊張が失 われている状態が観察された。重量においては二 期別に大差はないが,P20頃より幾分萎縮感を呈 する。 ユ)精細管の一般的構造 精細管全体の大きさは対照例に比較するとパラ ビオーゼ例では何れの時期でも小であり,P20, P30にいたると精細管の直径は対照例の約i/21(縮 小する。p30にいたると精細管の所々にくびれを 生ずる。 またパラビオーゼの例では,何れも精細胞の配

Tsuyuka KUSHIDA, Kaneo NAKADA & Norimoto SASAKI (Department of Anatomy, Tokyo

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列が不規則となり,漸次細胞間隙が広くなる。さ らにP15にいたると10∼20μにも達する不染性の :大空胞が出現する。 精血細胞及び精母細胞の細胞分裂は精細管に群 集的におこる傾向を示しているため7,分裂の認 められる精細管と全く認められぬ精細管とは判然 区別することができる。したがって両者の精細管 の比を求めることは精子形成の状態を推測する上 に意義あることと思われる。パラビオーゼの各例 について精細管5GO個を選び百分率を求めると, 対照例では細胞分裂を行っている細胞の存在する 精細管は全体の平均16∼17%において認められ るが,パラビオーゼ例ではP7において10%, P 15∼10%,P20∼7%, P30∼6%で各滑面漸次 減少の傾向を示している。 細胞分裂の心血別の変化には有意の差は認めら れない。 2) 異常細胞 すでに7日例において精上皮中に対照例では認 められないところの巨大なる異常細胞を認める。 この細胞の形質内には多数の小空胞を有するため 明調であり,核は偏心に位し,円形で小さく,精 母細胞核に類似している。核小体は認め難い。し ばしば核は2∼5個在り,所謂巨大多核細胞とし て認められ,核は細胞の基底部に存在する。しば しば多核のうち1核が分裂を行いつつある状態も 獄察される。この所謂異常細胞はパラビオーゼの P7及びP15の時期に漸次増伽のf頃向を示す。し かしPfOでは,本細胞はむしろ少く精上皮中に不 染性の空胞が出現し,P30における空胞化はきわ めて著明となる。 3)遊離細胞 P7においてすでに精細管腔内には,精母細胞 の如き細胞が遊離している。パラビオ一心施行日 数経過とともに,この脱落:細胞も数を増しP20, P301(おいては,いつれの精細管腔内にもこれら の脱落細胞によりみたされ,管腔内にばもはや精 子を認めることはできない。しばしば遊離細胞中 に2∼4核の細胞が認められる。この遊離多核細 胞の原形質内は均等に硝子様に染色され,無構造 である。遊離細胞が増加するとともに精上皮中は 殆ど精祖細胞と思われる細胞がほぼ2列に配列し, 管腔側に1層の精母細胞層を認めるようになる。 4) 脂質穎粒について Levi氏固定により褐色に染まる血塊は,パラ ビオーゼの各期共に著明なる変動をしめす。すな わち対照例では,いつれも精細管の基底部に微小 心血をみとめ,時に2∼3μ程度の少量の願粒を 認めるに過ぎないが,P7においては精細管基底 部に2∼3μ程度の頼粒が多数出現する。これら の顯粒はパラビオーゼの日数経過とともに面明に 増加し,P20にいたるとさらに6∼7μ程度の粗 大櫓投が認められ,2∼5μ程度の大小砂粒が精 細管全体にわたり数を増してくる。 Ciaccio氏法をほどこした賊塞もLevi氏固定を 行える際に出現する適役とほぼ同一部位lc Ciacc− io陽性頼粒を認める。いつれも対照例では認め得 ない愈愈が著明なる変化をしめして出現する。こ れらの所謂脂質顯粒は主としてSertoli氏細胞質 内に認められるものであり精子形成過程との間に 密接なる関係がある。すなわち変性程度の高い精 細管程多くの脂質頼粒を含んでいる。 5)糸粒体について ラットの精細胞の糸粒体は一般に微細で,大部 分が顯粒状である。桿状のものは殆ど認められな い。対照例においてもミトコンドリアの量,形態 及び配列状態などは精細胞の機能との間に密接な る関係を有し,変動をしめす。 パラビオーゼ例と対照例との間に形態及び配列 状態において一定の関係を認めることはできなか った。し、かし量的にはパラビオーゼ例の:P7にお いてすでに各精細胞共,著明に減少し,P20, P 30にいたると精細胞でミトコンドリア顯粒は認め 難くなる。

6)Golgi装置について

精細胞のGolgi装置は対照例においては精子細 胞の核上部に,核に接して存在し,やや発達した 加工として認められる場合が多い。時にはGolgi 装置は2,3条の索条として認められる。パラビ 畠山ゼ例のP7, P 15においてはGolgi装置は, すこぶる認め難く,精子細胞にわっか認められる ものは網工を形成せず,2,3条の簡単なる索条 をなす。P20, P 30ではGolgi装置は殆ど認め られない。 皿 考 察 異性間パラビオーゼ施行後,7日目においてす でに精細管内には細胞分裂の減少,’脂質願粒の出 現,異常細胞及び遊離細胞の出現などの変化が認 一 6S8 一一

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められた。P15においては以上の変化が著しく, P20における精細胞核は濃縮を呈するもめもみら れる。P30に至ると精細管内は精祖細胞及び精母 細胞のみの配列となり,精子形成過程は認められ ない。 精細管内の脂質顯粒の意義については西田(1 952)11)により詳細に報告されているが,パラピオ ーぜ施行後,その期間経過と共に起る脂質顯粒の 増加傾向は,精子形成状態との問に密接なる関連 を思はしむるものがある。すなわち精子形成が滅 弱している精細管ではSertoli氏細胞質内におけ る脂質顯粒が増加する。これは精子形成に関して 精細胞は多くの脂質を必要とするために,Sertoli 氏細胞内の脂質願粒から消費されるが,精子形成 過程に異常をきたし,脂質穎粒はSertoli氏細胞 質内に異常蓄積を起すものと考えられる。 牧野(工951)9)は腫蕩細胞において出現する多 核細胞について,異常核分裂による細胞質の不分 離であると述べているが,精細管内には正常の場 合でも,多核細胞はかなりの頻度に出現する。異 常核分裂に伴い多核細胞は増加するが,この場合 は異常核分裂による細胞質の不分離の他に,細胞 の融着も考えられる。 精細胞におけるミトコンドリアは精子中片形 成に1、,ま7: Golg五装置が精子頭部形成に関与す るということは古くより考えられ,また:最近は組 織化学的に14),あるいは電子顕微心的4・12)にも実 証せられている。 パラビオーゼ例におけるミトコンドリア及び Golgi装置は期間経過と共に減少し,あるいは消 失するなどの所見は対照例とはかなりの相違を示 しており,此の点からも精子形成上の異常を示し ていることがうかがわれる。 睾丸組織の萎縮現象に関しては,最近不可欠 アミノ酸欠乏による実験の結果が報告されてい る8)。また中田(1958)10)は女性ホルモン投与に より睾:丸組織に萎縮現象の起ることを報告した。 パラビオーゼを行うことにより睾丸組織に起る 変化は不可欠アミノ酸の欠乏時,あるいは女性ホ ルモンの投与の際におこる萎縮現象とほぼ同一で ある。…方パラビオーゼ動物問のホルモンが容易 に交流することはすでに多くの学者により報告さ れている。したがってパラビオーゼ施行後に起る 睾:丸組織の萎縮的変化は,所謂ホルモンの異調現 象であることが考えられる。 Iv 結 論 異性闇パラビオ…一一ゼの暗闇別飼育後,睾丸組織 の組織学的観察を行い,主な所見は次のごとくで ある。 1) 精細管上皮はパラビオーゼの期間経過と共 に精細胞配列が不規則となり,異常細胞を認め, 漸次空胞化する。 2) 精細管腔内にはP20以後は殆ど精子を認め ず,遊離細胞で充たされる。遊離細胞は主として 精母細胞であり,P7においてすでに認め漸次増 加の傾向を示す。 3) 精髄細胞及び精母細胞の細胞分裂i数もパラ ビオーゼの嬉戯経過と共に漸次減少の傾向を示 す。 4)脂質穎粒の分布は対照例では極めて少ない がP7からすでに出現し, P15, P20と,漸次増 加,P20, P30においては最:も多く認められる。 5)精細胞中のミトコンドリアはすべて顯粒状 で,その形態及び配列状態には特別の変化を認め ることはできなかった。しかし量的には漸次減少 の傾向を示す。 6)精細胞中のGolgi x一置もパラビオ ・一 tf例で は少く,P20, P30では殆ど認められない。 以上の所見から異性閥パラビオーゼにおける睾 丸組織は,早期に萎縮的変化を示すことが考えら れる。 稿を終るにのぞみ多大の御教示と御助力を賜りまし た本学薬理学教室,小山教授に濃雑なる謝意を表しま す。 文 献

1) Austin, C.R. & Sapsfort. C.S. : Roy. Micr.

Soc., 71, 39 (1952)

2) Bert, P.:J. Anat. et physiol. 1, 16 (1864)

3) Bzanster, E. & MeJ’er, R.K.: Anat. Rec.,

57, 339 (1933)

4) Burgos, M H. & Faweett, D. W.:J.

Biophys. Biochem. Cytol., 2, 223 (1956) 5) Hiil, KT.:J. Exp. Zool. 63, 203 (1932)

6) Huff, R.L., R. Trautman and D.C. van Dyke:. Am. 」. Physiol. 161, 56 (lq.50)

7)石澤政男:福岡医心,15,6(1922)

(4)

255 (1953)

9)牧野佐島部:癌,42,90(1951)

10)申田甲子雄:解剖誌(抄),33,229(1958)

11)西田隆雄:科学,22,475k1952)

12) Palade, G.E.:Anat. Rec., 114, 427 (1952)

13) Sauerbruch, E. &M. H yde.:Mifnchen. med. Wochnschr., 1, 153 (1908)

14) Schlader, F. and Leuchtenberger, C.: Chromosoma. 4, 404 (1951) 附図説明 第1図:対照例における精細管。Zenker氏固定, ^マbキシリン・エオジン染色。 第2図:P20における精細管。 Zenker氏固定, ^マトキシリγ・エオジン染色。 第3図:P30における精細管。 Zenker氏固定, ヘマトキシリン・’=オジン染色。 第4図:P20における精細管上皮中に空砲化をみと める。Levi氏固定,鉄ヘマトキシリソ染 色。 第5図:P30において精細管腔内に主として精母細 胞に由来せる遊離細胞をみとめる。上皮中 は殆ど精祖細胞のみ配列し精子形成過程は 認められない。Levi氏固定,鉄ヘマトキ シリン染色。 精細管上皮中にP7おいてす.でに図のごと 第6図 き巨大多核細胞を認む。Levi氏固定,鉄 第7図 ヘマトキシIJン染色 第8図:P7における精細管上皮中に各精細胞が融 合せるがごとき状態を認む。Levi氏固 定,鉄ヘマbキシリン染色。 一 660 一

(5)

串田・中田・佐々木論:交附図〔1)

第ゴ図

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(6)

串田・中田・佐々木論:文附図(2) .磯

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第7図

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第8図

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参照

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