15 シンポジウム 〔東女医大誌 第56巻 第2号頁、129∼186 昭和61年2月〕
Agingと疾病
東京女子医科大学学会 第51回総会 日時 昭和60年9月28日(土) 会場 東京女子医科大学第一臨床講堂 司会 教授 広沢弘七郎 (循環器内科) (1)生化学の立場から……教授 降矢 榮 (生化学) (2)小児科からみたAging…… ……教授 横田 和子 (小児科) (3)加齢に伴う免疫反応の変化…… ……助教授 内山 竹彦 (微生物) (4)Radiation Oncolosistの立場から…… ……教授 池田 道雄 (放射線科) (5)心臓のAgingと心疾患の経年変化…… ……教授 関口 守衛 (循環器内科) (6)神経系の老化…………教授 :丸山 勝一 (神経内科) 〈追加発言〉 老化と胃病変………教授 森 治樹 (第二病院内科) 序 言 広沢弘七郎(循環器内科) 今から40年ぽかり前,私が医局に入りたての頃 Myodegeneratio cordisという病名があった.そ の前後にかけてchronische Myokarditisという のもあった.例えば弁膜症のように分り切った原 因疾患がないのに,心臓が大きくて,脈も乱れて いる事が多く,さりとて心不全は必ずしも伴って いない病気だった様に思う.多くはお年寄であっ たように思う.当時の本を見ればその定義など出 ているのであろうが,見直した事もなく,次第に 内容を忘れてしまった.r比較的最近の用語の中にischemic heart dis− ease without painというのがある.冠動脈硬化に
原因した冠不全により心筋に異常を来たし,狭心 症状はないが,心不全,不整脈,心電図異常等を 起こして来るものと定義されている.文献をよく 調べたわけではないが,冠不全の効果すなわち虚 血が心筋のどの部分に働いてこのような異常を起 こすかについて,正面切っての証拠はないのでは なかろうか. 私が専門とする心臓病学の領域でも,疾患の成 立ちに中心的役割を演ずる心筋異常が,血行力学 的負荷,明らかな冠不全などはっきりした原因が ないのに起こって来るものがあり,その中には老 化の機序が要因となっているものもかなりあるの ではないかと疑われる.他の臨床医学の領域でも 似た様なことはそれぞれの特徴を持ちながらも, 共通した問題としてあるに違いない.更に,基礎 医学的に,あるいは生物学的にagingの問題を論 ずるならば,それぞれの分野でかなり広く,深く 論じられる.そして,基礎的なアプローチが個々 の臨床の領域の問題の解明の基盤となっていくは ずである. 今回のシンポジウムも小規模ながらもこのよう な眼で考え,組み上げてみたいと思っている. 〔Symposium〕 Aging and Diseases