下肢救済に関する内外の比較検討
特に血行再建術を中心に
東京医科歯科大学
外科・血管外科
井上芳徳
第6回 関東CVTの会 2015年12月5日 東京医科歯科大学MDタワー2階
下肢救済に関する内外比較
1,患者背景の違い:特にHD実施率
2,血行再建術の選択基準と成績
1)大動脈腸骨動脈
2)大腿動脈
3)膝窩動脈以下
3,実臨床における内外の比較
4,ヘルシンキ大学病院との比較
Department of Surgery, Tokyo Medical and Dental University
【症例】 74歳 男性
【主訴】 右足部潰瘍・安静時痛
【既往歴】
1998年 大動脈弁置換、冠動脈再建施行
2003年 血液透析導入
2006年 完全房室ブロック ペースメーカー留置
【心エコー】
EF20%
, LV diffuse severe hypokinesis
麻酔:
右坐骨神経ブロック+TLA
術式:右膝上膝窩動脈-足背動脈バイパス術(reversed 右橈側皮静脈+reversed 左小伏在静脈)
Department of Surgery, Tokyo Medical and Dental University
術後経過
術後23日目
治療前
• 術後ICUに帰室
• 血液透析時に血圧低下を認め、昇圧剤中止まで20日を要した。
⇒潰瘍の経過は良好だが、局所麻酔で行っても全身状態不良例では術
後合併症の頻度が高くなりうる。
患者背景の違い
冠動脈疾患:
罹患率
糖尿病:
罹患率
血液透析:
実施率
下肢救済に際して、
1,生存率
2,救肢率
3,開存率 再狭窄率
下記の3疾患に限定して内外のデータを検討した。
Rutherford分類、創感染の有無:個別に記載
27,746例
1,931例
17,886例
846例
5,754例
2,872
例
5,656例
北 米
ラテンアメリカ
東ヨーロッパ
中 東
オーストラリア
西ヨーロッパ
アジア
* 1施設当り最大15例
(米国は20例)
1. Bhatt DL et al, on behalf of the REACH Registry Investigators. JAMA 2006;295(2):180-189.
2. Ohman EM et al, on behalf of the REACH Registry Investigators. Am Heart J 2006;151(4):786.e1-10.
日本
5,193例
68,129 patients in 5,580 sites in 44 countries
1. Coccheri S. Eur Heart J 1998; 19(suppl): P1268. をもとに作成
冠動脈疾患
(CAD)
脳血管疾患
(CVD)
末梢動脈疾患
(PAD)
24.7%
3.8%
11.8%
29.9%
3.3%
7.4%
19.2%
*CAPRIE試験からのデータ (19,185例)
アテローム血栓症による臨床症状の重複
*,1
PADで
CAD合併 41%
CVD合併 19%
PADで
CAD合併 30%
CVD合併 21%
冠動脈疾患:罹患率
REACH Registry, CAPRIE試験 ASO全般
欧米
41%、 本邦
30%
欧米
CLI症例のみ
PREVENT Ⅲ
#1
42%
Finnvasc
#2
68%
本邦
CLI症例のみ
東先生
、飯田先生
52-58%
自験例
40%
#1, Schanzer A, et al. J Vasc Surg 2008;48:1464-71.
糖尿病:罹患率
REACH Registry: ASO+CAD+CVD
全世界
55,499例
38%
日本
45% (ASO: 41%)
欧米
CLI症例のみ
PREVENT Ⅲ
64%
Finnvasc
44%
本邦
CLI症例のみ
東先生、飯田先生
73-81%
自験例
63%
血液透析:実施率
欧米
CLI症例のみ
PREVENT Ⅲ
12%
Finland
7
%
血管外科学会集計(
2011-2012年)
ASO全般
bypass: 30%, EVT: 34%
本邦
CLI症例のみ
東先生、飯田先生
49-63%
CLI症例:背景の違い まとめ
本邦では血液透析率が
50-60%であり、
欧米:10%前後と比較し極
めて高率である。
血行再建術からみた内外比較
バイパス術 vs 血管内治療
大動脈・腸骨動脈領域
大腿・膝窩動脈領域
膝下膝窩動脈ー下腿3分枝領域
評価項目
一次開存率、再狭窄率
救肢率、
国際的ガイドラインとの比較
ESC 2011, AHA 2013との比較 大動脈・腸骨動脈領域
ESC 2011 AHA 2013 本邦の趨勢
バイパス術
広範な閉塞
広範な閉塞
血管内治療
腸骨動脈閉塞
腸骨動脈閉塞
腸骨動脈閉塞
Selective stenting
Stenting: 言及無し Primary stenting
国際的ガイドラインとの比較
ESC 2011年との比較 大腿・膝窩動脈領域
ESC 2011年
本邦の趨勢
血栓内膜摘除術
総大腿動脈病変
総大腿動脈病変
ハイブリッド治療
腸骨動脈病変:EVT
+総大腿動脈病変:TEA
腸骨動脈病変:
EVT
+総大腿動脈病変:TEA
国際的ガイドラインとの比較
ESC 2011年との比較 大腿・膝窩動脈領域
ESC 2011年
本邦の趨勢
バイパス術
自家静脈あり、15cm以上
2年以上生存
TASC C/D
実際は、TASC Dが多い。
血管内治療
< 5cm -> PTA alone
5-15cm -> Primary stenting
15cm以上: バイパスできない
14cmまで Primary stenting
実際は、TASC DでもEVT
5cm未満
多発病変
15cm未満
5cm未満
高度石灰化
TASC分類 type B lesions
5cm未満
TASC分類
Type C lesions
Type D lesions
15cm以上
多発病変
20cm以上
膝窩動脈病変
膝窩動脈病変
下腿3分枝
大腿膝窩動脈領域
メタ解析の結果
バイパス術
5年一次開存率
自家静脈 膝上:
77%
人工血管
ePTFE: 57%
血管内治療 2年一次開存率
70%
BASIL trial
Bradbury AW, Adam DJ, Bell J, et al. Bypass versus angioplasty in severe
ischaemia of the leg (BASIL) trial: analysis of amputation free and overall
survival by treatment received. J Vasc Surg. 2010; 51: 18s-31s
BASIL trial: ガイドラインでは
1,生命予後:2年以内で自家静脈がない場合、
血管内治療を実施するのがよい。
2,生命予後:2年以上で自家静脈がある場合、
バイパス術を実施するのがよい。
BASIL trial: 臨床における注意点
重症虚血肢以外が含まれている。
対象症例の70%が2年以上生存していた。
EVT後のバイパス術は成績が不良であった。
血管内治療は患者にとって
一定のリスクを伴う治療法である。
REAL SL Registry 日本
大腿膝窩動脈領域
DM 62%,
HD 21%
CLI 26%,
TASC C/D 47%
Ref. Iida O, et al: Circ J. 2011; 75: 421-427
一次開存率
2年 70%,
5年 64%
メタ解析
EVT 2年 70%
バイパス術 5年
自家静脈 77%
ePTFE
57%
大腿膝窩動脈領域
膝上部膝窩動脈へのバイパス術 米国
DM,HD: 記載無し
CLI
74%
2年一次開存率
ヘパリン結合ePTFE: 83%
自家静脈:
80%
REAL SL registry
2年一次開存率 72%
開存率・救肢率に関しては、内外で差はない。
1次開存率
自家静脈
>= EVT > 人工血管
ヘパリン結合
ePTFE:2年一次開存率は良好−
>5年一次開存率が良好であればバイパス術
の適応拡大
大腿膝窩動脈領域
国際的ガイドラインとの比較
ESC 2011年との比較 膝下動脈・下腿3分枝領域
ESC 2011年
本邦の趨勢
バイパス術
大伏在静脈あり
他の静脈あり
広範囲閉塞、
EVT無効例
自家静脈あり
全身状態 特に重篤な心疾患なし
広範囲閉塞、
EVT無効例
血管内治療
バイパス術を阻害しない範囲で
低侵襲性から広く適応
全身状態が不良、自家静脈がない
自家静脈の有無や全身状態に関
係なく実施することもある
Romiti M, Albers M, Brochado-Neto FC, et al. Meta-analysis of infrapopliteal
angioplasty for chronic critical limb ischemia. J Vasc Surg. 2008; 47: 975-981
膝下3分枝病変
3年一次開存率
海外
本邦
バイパス術
80%
82%
膝下3分枝病変
3年救肢率
海外
本邦
バイパス術
82%
85%
Department of Surgery, Tokyo Medical and Dental University
実臨床における内外の比較
Limb
salvage
Life salvage
通常は、両立する。
救肢により身体機能が改善する。
透析症例:死亡率が高い。
Conte MS; Clinical appraisal of surgical revascularization for CLI.
J Vasc Surg 2013; 57: 8S-13S
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
Conservative
treatment
Spinal cord
stimulation
Venous arterialization
PTA
Bypass
380
177
238
3180 4895
%
53%
70% 71%
85%
88%
1年救肢率
バイパス術、血管内治療、
venous arterialisation、
脊髄刺激療法、保存的治療法
Lepäntalo M & Mätzke S, EJVES 1996; Marston WA et al, JVS 2006;
Ubbink DT & Vermeulen H, JPSM 2006;
Lu XW et al, EJVES 2006;
Romiti M et al, JVS 2008; DeRubertis BG et al, Ann Surg 2007;
PREVENT III CLI risk score
Patients characteristics
当施設
n=89(%)
Age ≥ 75
29(32.6)
Tissue loss
74(83.1)
CAD
24(27.0)
Dialysis
30(33.7)
Hct ≤ 30
27(30.3)
PIII CLI リスク分類: 非切断生存率 当施設
p=0.0006
0.85
0.69
0.39
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
0
6
12
18
24
30
36
42
48
Amputa
tion
-fr
ee
su
rviv
al
Months
low risk
medium risk
high risk
≤3 points
4-7 points
≥8 points
PIII CLI risk score
Dialysis 4
Tissue loss 3
Age ≥ 75 2
Hct ≤ 30 2
CAD
4
3
2
2
1
Schanzer et al
Low risk:
0.86
Medium risk: 0.73
High risk:
0.45
OLIVE Registry 非切断生存率:1年
危険因子
BMI<18.5
心不全
創感染
全体
74%
Low 0
85%
Mod 1
65%
High 2-3
48%
メタ解析
PTA AFS: 1年 75%
PREVENT Ⅲ
バイパス術 AFS: 1年 78%(HD 11%)
本邦 東先生
バイパス術 AFS: 1年 83%(HD 49%)
ヘルシンキ大学病院と当施設の比較
治療体制 チーム医療
Vascular Laboratory
The Number of Femorodistal Procedures
in Helsinki University Central Hospital
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
1100
19
80
19
82
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
96
19
98
20
00
20
02
20
04
20
06
20
08
Femoropopliteal PTA
Infrapopliteal PTA
Femoropopliteal bypass
Infrapopliteal bypass
Year
Am
当科におけるEVT症例数の推移
0
20
40
60
80
100
120
140
160
2007
2008
2009
2010
2011
2012
手術室
AG室
Div. of Vasc. Endovasc. Surg., Tokyo Med. Dent. Univ.
Tibial
救肢とともに
CLIからの回復
老年内科
糖尿病内科
併存疾患の
管理
形成外科
遊離筋皮弁
創管理
血管外科
放射線科
血行再建
皮膚科
フットケア
循環器内科
心疾患の治療
重症虚血肢に対する診療体制
当施設
血管
外科
放射線科
形成外科
老年病内科
皮膚科
糖尿病内科
密
接
な
協
力
関
係
関連部門
Vascular Laboratory
血液浄化療法部
高気圧治療部
病病、病診連携の確立
患者相談、生活指導
LDL吸着療法
トータルケア
理学療法部
医療福祉支援センター
活動性向上、QOL向上
看護部
治癒促進、微小循環改善
エコー
脈波
酸素分圧
トレッドミル
血圧脈波
バスキュラーラボの機器
予防と早期発見・早期診断
予防:DM症例 皮膚科 フットケア外来 週3回
医師 4名、看護師 3名
早期発見・早期診断:
内科、皮膚科、形成外科から血管検査オーダー
ABI,SPP,経皮酸素分圧など
CLI疑い症例は、早期に血管外科へ
血管外科:CLIの治療戦略
全身評価
下肢虚血重症度
足部病変の評価 範囲、感染の有無
血行再建術 血管内治療、バイパス術
マゴット治療
遊離筋皮弁術
集学的治療
血行再建術
マゴット治療(血外)
VAC療法(形成)
皮膚移植:形成・皮膚科
前足部切断 血外・形成
大切断 形成・整外
リハビリ・装具作成:リハビリ科・皮膚科
ハイブリッド治療
血行再建術 血管内治療+バイパス術
鼠径靱帯上下
鼠径靱帯上 EVT
鼠径靱帯下 バイパス術
鼠径靱帯以下の病変
膝窩動脈
開存 EVT+バイパス術
閉塞 バイパス術
ハイブリッド治療症例
63 歳、男性
主 訴:足趾壊疽
既往歴:4年前 大腿ー大腿動脈バイパス術
左大腿ー膝窩動脈バイパス術->閉塞
現病歴
3週間前より安静時痛が出現し、壊疽が出現したため
当科を紹介受診した。
ABI: 左: 0.20
Department of Vascular Surgery, Tokyo Medical and Dental University
マゴット療法
・
Lucilla sericata
の2齢幼虫(マゴット)を使用
・3〜4日/回, 2回/週, debridement効果を認めるまで施行
●効果あり(潰瘍の縮小、二期的閉鎖術施行)
●効果なし(変化なし、増悪、切断術施行)
●治療効果
・治療効果あり 10例
潰瘍面の縮小 ;6例 2期的創閉鎖(植皮、皮弁);3例
壊死組織除去効果;1例
いずれの症例も血行再建術を施行
→ほとんどの症例がABI≧0.6もしくはtcPO
2
≧30mmHg
・治療効果なし 6例
変化なし;2例 潰瘍の増悪;1例 肢切断;3例
→
治療効果を得るには局所の血流改善が必要
症 例:68歳、男性
主 訴:左下肢痛
既往歴:40歳〜;糖尿病(インスリン使用中)
現病歴:
2009年11月 靴擦れを契機に左足趾に潰瘍が出現した。
近医で外来にて保存的治療を行ったが軽快せず、
2010年 1月 近医に入院し保存的に治療した。
しかし潰瘍は徐々に増悪し、壊疽に陥り下腿切断
も検討され、
2月 加療目的に当院当科に転院となった。
遊離筋皮弁移植術
術中所見
術後経過:
局所に対しては洗浄治療を継続。
バイパス術後、第8病日にdebridementを追加。
経皮酸素分圧は足根骨レベルで60mmHg
ヘルシンキ大学病院
Mauri Lepäntalo, Chief, Professor
Ilkka Kantonen, Maarit Venermo, Pekka Aho, Petteri Kauhanen, Sani Laukontaus, Pirkka Vikatmaa, consultant, aorta consultant, CLI consultant, aorta consultant, thrombophilia consultant, veins consultant, carotid
Mikael Railo, deputy chief Anders Albäck, deputy chief
Jorvi, veins Meilahti, CLI
Eeva-Maija Weselius, Sailaritta Vuorisalo, Mikko Jormalainen, Milla Kallio, Eva Arvela Maria Söderström,
consultant, access consultant consultant staff surgeon staff surgeon staff surgeon
Karoliina Halmesmäki, Tiia Kukkonen, Hanni Alho, Antti Nykänen, trainee trainee trainee trainee