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Hes1遺伝子は、Kras誘導の膵発癌において重要な役割を果たす

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Academic year: 2021

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Title Hes1 plays an essential role in Kras-driven pancreatictumorigenesis( Abstract_要旨 )

Author(s) Nishikawa, Yoshihiro

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2019-07-23

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21991

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion ETD

(2)

京都大学 博士(医学) 氏 名 西 川 義 浩 論文題目

Hes1 plays an essential role in

Kras

-driven pancreatic

tumorigenesis

.

(Hes1 遺伝子は、Kras 誘導の膵発癌において重要な役割を果たす) (論文内容の要旨)

膵 癌 は 腺 房 細 胞 か ら 、acinar-to-ductal metaplasia (ADM) 、 pancreatic intraepithelial neoplasia (PanIN)を経て膵癌に至る。Hes1 は Notch signaling pathway の最も重要な下流因子の一つであり、膵発生において重要な役割を果た す。Hes1 は成体膵において腺房細胞には発現を認めないものの、膵前癌病変 (ADM、PanIN)から膵癌に至るまで広く発現することが知られているが、その役 割は不明である。そこで、本研究では Hes1 が膵癌の形成過程において果たす役 割を解明することを目的とした。 まず、ヒト膵癌検体にて HES1 の発現を免疫組織化学染色(IHC)にて評価した ところ、既報の通り ADM、PanIN および膵癌に発現を認めた。一方、膵癌は高 率に KRAS 遺伝子変異を有することが知られており、その活性を IHC にて評価 した。ADM、PanIN から膵癌に至るまで ERK1/2 のリン酸化を認め、その発現 分布は HES1 と広く重なった。そこで、 変異 KRAS と Hes1 発現の関連性を、 マウス腺房細胞株を用いて検討したところ、EGF もしくは変異KRAS の導入によ るMAPK の活性化により、Notch signaling pathway 非依存的に Hes1 の発現が 誘導された。以上より、Hes1 が、膵発癌において重要な Kras の下流因子として、 重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 次に、マウスモデルを用いた検討を行った。Hes1 の成体における役割の報告は 乏しく、まず成体マウスの恒常性維持における役割を検討した。タモキシフェン 誘 導 下 に 成 体 マ ウ ス の 膵 腺 房 細 胞 特 異 的 に Hes1 遺 伝 子 欠 損 が 可 能 な Elastase1-CreERT2;Hes1f/fマウスを作成し解析した。6 ヶ月の観察において、全 身の発育・膵機能に差を認めなかった。炎症刺激による膵障害モデルの解析でも、 炎症・再生に差を認めず、成体マウスの膵腺房細胞の恒常性維持において Hes1 は重要な役割を果たしていないことが判明した。 続いて、膵発癌におけるHes1 の役割を検討するため、上記マウスに変異Kras 遺伝子の導入したElastase1-CreERT2;LSL-KrasG12D;Hes1f/fマウスを作成し解析 した。Hes1wt/wtマウスでは PanIN 形成を認めるものの、Hes1 欠損によりその形

成が著明に抑制された。膵炎刺激により ADM、PanIN 形成が促進されることが 知られており、Hes1 欠損マウスに膵炎刺激を加え検討を行ったところ、ADM は 形成されるが、ADM から PanIN への進展が抑制された。レポーターマウスによ るlineage tracing を用いた解析により、Hes1 欠損マウスにおいては膵炎刺激に より腺房細胞が ADM に進展するものの、アポトーシスによる消失は認めず、再

度腺房細胞に戻ることが判明した。以上より、膵発癌において Hes1 は必須の役 割を果たすことが明らかとなった。

次に分子メカニズムの検討を行った。膵腺房細胞から ADM、PanIN が形成され るacinar-to-ductal reprogramming (ADR)と呼ばれる変化には各種因子の関わり が報告されている。そこで、ADR に関連する遺伝子群の発現に着目し解析を行っ たところ、Hes1 欠損マウスにて ADM 形成時に Sox9 の発現の低下を認めた。膵 癌モデルマウスを用いた実験により、 Sox9 は膵癌の発癌過程において必須の役 割を果たすことが知られている。Hes1 と Sox9 の関連についてマウス腺房細胞株 を用いて解析を行ったところ、Hes1 は Sox9 を含む ADR 関連遺伝子の発現を制 御し、膵発癌において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 最後に、膵癌への進展における Hes1 の役割を検討するため、上記マウスに更 に 変 異 Trp53 遺 伝 子 を 導 入 し た Elastase1-CreERT2;LSL-KrasG12D;LSL-Trp53R172H;Hes1f/fマウスを作成し解析 した。Hes1wt/wtマウスでは2 か月で約半数に膵癌を認めたが、Hes1 欠損マウスで は、膵癌形成が完全に抑制された。Hes1 欠損マウスでは PanIN 形成も抑制され ていたが、形成された PanIN の多くは低悪性度とどまり、PanIN の悪性化の進 行過程においてもHes1 が重要な役割を果たすことが示唆された。 以上の結果より、Hes1 が変異Kras 誘導の膵癌の発癌および進行において重要な 役割を果たすことが明らかとなり、Hes1 の抑制が新たな膵癌治療のターゲットに なり得る可能性が示唆された。

(3)

(論文審査の結果の要旨)

膵 癌 は 腺 房 細 胞 か ら 、acinar-to-ductal metaplasia (ADM) 、 pancreatic intraepithelial neoplasia (PanIN)を経て膵癌に至る。Hes1 は Notch signaling pathway の最も重要な下流因子の一つであり、膵病変に広く発現するものの、そ の役割は不明である。そこで、本研究ではHes1 が膵癌の形成過程において果たす 役割を解明することを目的とした。

まず、in vitro の検討にて、MAPK の活性化により、Notch 非依存的に Hes1 の発現が誘導されることが明らかとなった。そのため、Hes1 が Kras の下流因子 として、膵発癌において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 次に、膵発癌における Hes1 の役割を検討するため、マウス前癌病変モデル を解析したところ、Hes1 欠損により PanIN 形成が著明に抑制され、膵発癌にお いてHes1 は重要な役割を果たすことが明らかとなった。詳細な解析により、Hes1 はSox9 を含む ADR 関連遺伝子の発現を制御し、膵発癌において重要な役割を果 たしている可能性が示唆された。 さらに、マウス膵癌モデルを用いた検討を行ったところ、Hes1 欠損マウス では、膵癌形成が完全に抑制され、PanIN の悪性化の進行過程においても Hes1 が重要な役割を果たすことが示唆された。 以上の結果より、Hes1 が変異 Kras 誘導の膵癌の発癌および進行において重要 な役割を果たすことが明らかとなり、Hes1 の抑制が新たな膵癌治療のターゲット になり得る可能性が示唆された。 以上の研究は膵発癌の病態解明に貢献し、膵癌の新規治療の開発に寄与すると ころが多い。 したがって、本論文は博士(医学)の学位論文として価値あるものと認める。 なお、本学位授与申請者は、平成31 年 5 月 23 日実施の論文内容とそれに関 連した試問を受け、合格と認められたものである。 要 旨 公 開 可 能 日 : 年 月 日 以 降

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