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腸の発生や恒常性維持、腫瘍形成におけるHes遺伝子群の役割

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Academic year: 2021

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(1)Title. Author(s). Citation. Issue Date. URL. The role of Hes genes in intestinal development, homeostasis and tumor formation( Abstract_要旨 ). Ueo, Taro. Kyoto University (京都大学). 2012-05-23. http://hdl.handle.net/2433/158055. Right. Type. Textversion. Thesis or Dissertation. none. Kyoto University.

(2) 京都大学 博士( 医学 ). 氏 名. 上 尾 太 郎. The role of Hes genes in intestinal development, homeostasis and tumor formation 論文題目 (腸の発生や恒常性維持、腫瘍形成における Hes 遺伝子群の役割) (論文内容の要旨) 消化管粘膜では、終生、幹細胞の分裂、増殖、運命決定が行われ、その制 御に Notch シグナルが関与している。Hes1 は、Notch の主要エフェクター であり、腸の増殖細胞に発現している。Hes1 ノックアウトマウス(Hes1KO) の腸では、分泌細胞系への分化が亢進した。しかしこのマウスは生下直後に 死ぬため、生後の腸管発生や成体での恒常性維持における Hes1 の役割は不 明で あった。また Hes1KO において、Hes3 や Hes5 の発現が上昇してお り、表現型に影響を与えている可能性があった。そこで、消化管特異的 Hes1 ノックアウトマウス(Hes1 cKO)ならび Hes1/Hes3/Hes5ノックアウトマ ウス(Hes1/3/5 cKO)を作成し解析した。 胎児の Hes1 cKO 小腸では、杯細胞や内分泌細胞が増えたが、成体では異 常を認めなかった。一方、Hes1/3/5 cKO の胎児においても、杯細胞や内分 泌細胞が増え、通常生後 10 日目頃に発生するパネート細胞が、生後 3 日目 で観察された。増殖細胞が減少し、幹細胞の位置異常も認めた。これらの異 常が成体でも観察された。以上の結果から、新生児では Hes1 が優勢的に、成 体では Hes1/Hes3/Hes5が協調的に、消化管の分化を制御していることが示 された。 Hes1 cKO の成体大腸に異常を認めなかった。しかし、生後 2 ヶ月目の Hes1/3/5 cKO の大腸では、内分泌細胞が増加し、通常大腸にないパネート 細胞が出現していた。正常では、陰窩底部に幹細胞があり、底部から中央に 多数の増殖細胞を認め、管腔側へと成熟細胞が供給されている。一方、 Hes1/3/5 cKO では、陰窩中央に幹細胞や少数の増殖細胞が位置し、管腔側 と底部側の両方に成熟細胞が供給されていた。つまり Hes が、大腸上皮の分 化や増殖のみならず、幹細胞の位置も規定していた。さらに生後1年後まで 観察すると、Hes1/3/5 cKO の大腸は、小腸類似の絨毛様構造を呈し、成熟 細胞の分布も変化していた。陰窩中央に増殖細胞が位置し、その内腔側に吸 収細胞と内分泌細胞が、陰窩底部寄りにパネート細胞と杯細胞が分布してい た。幹細胞の分化に関与する Wnt シグナルや下流の Sox9、また Wnt シグナ ルに拮抗する BMP シグナルに変化はなかった。以上より、成熟細胞の分布 の変化の理由として、①陰窩中央の幹細胞より底部へ供給される前駆細胞は Wnt シグナルにより Sox9 を発現しパネート細胞や杯細胞へと分化した ② 幹細胞より管腔側へ移動する前駆細胞は BMP シグナルの影響をうけ、また Sox9 が発現されないため吸収上皮や内分泌細胞へと分化した、と推察され た。 大腸癌やそのモデルApcMinマウスの腫瘍には、Hes1が発現している。そ こで、ApcMin Hes1 cKOを作成し、腫瘍発生でのHes1の役割を検討した。. 通常腫瘍は未分化な増殖細胞の集塊であるが、Hes1 が欠失すると、大半 の腫瘍細胞が増殖を止め、吸収細胞や、杯細胞、パネート細胞、内分泌細 胞へと分化した。また薬剤誘導性 ApcMin Hes1 cKOを作成し、腫瘍形成後 に Hes1 を欠失させても、腫瘍細胞が上皮細胞へと分化した。一方、これ らのマウスの非腫瘍部に異常を認めなかった。 以上の結果より、 Hes 遺伝子群が腸管の発生や恒常性維持を制御し、 腫瘍細胞の増殖や未分化性維持には、Hes1 が単独で関与していることが 明らかになった。 Hes1 の欠失が正常上皮に影響を与えないことから、 Hes1 の阻害が腫瘍を分化させる 治療法の開発に役立つ可能性が示唆 された。. (論文審査の結果の要旨). これまでNotch シグナルが腸上皮幹細胞制御に重要であるとの報告がなされてき たが、その下流の遺伝子のなかで何が重要であるか不明であった。また、Notch が 腸腫瘍の増殖や未分化性維持に関与することも知られているが、正常腸上皮に対す る影響から、Notch を直接的に癌治療のターゲットにすることは難しいとされてき た。本研究は Notch の下流にある Hes1 に着目し、多種の遺伝子改変マウスを作出 検討することで、腸管上皮の発生や恒常性維持、さらに腫瘍形成における Hes 遺伝 子群の役割を詳細に解析した。まず、成体の腸において、Hes1 の欠失に対し、Hes3 ならび Hes5 による機能補充が生じることを見出した。成体では、Hes1/Hes3/Hes5 により協調的に増殖細胞の数や分泌細胞系への分化が制御され、さらに興味深いこ とに、幹細胞の位置をも規定し、間質からの細胞シグナルを適切に受容できるよう にしていた。このように、正常の腸上皮の恒常性が Hes1/Hes3/Hes5 により制御さ れているのに対し、腫瘍組織においては Hes1 が単独で腫瘍細胞の増殖ならび未分 化性維持を制御していた。以上の結果は、Notch の下流のなかで Hes1 をターゲッ トにすれば、正常腸上皮に影響を与えずに、腫瘍細胞を正常上皮へと分化させる治 療の可能性を示唆しており、臨床にも非常に貢献する成果と思われる。 以上の研究は消化管幹細胞制御ならびに腫瘍形成における Hes 遺伝子群の役割 の解明に貢献し、消化器癌の新規治療法の開発に寄与するところが多い。 したがって、本論文は博士( 医学 )の学位論文として価値あるものと認める。 なお、本学位授与申請者は、平成24年4月2日実施の論文内容とそれに関連 した試問を受け、合格と認められたものである。. 要旨公開可能日:. 年. 月. 日 以降.

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