Title レチノイドによる肝発癌監視・制御の遺伝子機構に関する研究( はしがき ) Author(s) 森脇, 久隆 Report No. 平成8年度-平成10年度年度科学研究費補助金 (基盤研究(C)(2) 課題番号08670576) 研究成果報告書 Issue Date 1998 Type 研究報告書 Version URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/337 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
平成8年度から平成10年度までの研究成果を要約すると、(1)非環式レチノイ ドによる二次肝癌発癌抑制効果の臨床的確認;(NEnglJMed,1996)、(2)その作 用機序としてのclonaldeletion(残存肝組織からの前癌細胞あるいは非顕性癌細 胞クローンのレチノイドによ声除去)の発見(ClinCancerRes,・1997)、(3)細胞、 分子、遺伝子レベルでのレチノイドによるアポトーシス誘導機構解析の展開(業 績目録参照)、の3項となろう。とくに云1bnaldeleti。nの発見は、既に遺伝子異 常を積み重ねつつある前癌細胞、あるい遺伝子異常は完成したが、現在の画像診 断技術では腫瘍として捉えられないような非顕性癌細胞をターゲットとしてレチ ノイドが作用し、これらのクローンのアポトーシスを誘導することによって死滅 させ、最終的に発癌が抑制されることを明らかにしたものである。この発見によ り、発癌抑制という戦略が標的とすべき細胞が初めて明らかとなった。従来、癌 の化学予防と呼ばれていた概念が大きく整理され、より臨床的具体性の強い、す なわち治療により近いものとして幅広く理解しやすい概念となった。本研究の最 大の成果は、この点に求めることができよう。 次の課題は、上記(3)アポトーシス誘導、Clonaideletionによる発癌抑制機序 の遺伝子レベルでの解明を完成させることである。この成果を待って、発癌抑制 という戦略を初めて人類の幸福に責献するものと出来よう。