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JAIST Repository: IoTによる価値創造とエコシステムの構築 ―IoTを利用した事業戦略の事例研究―

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Japan Advanced Institute of Science and Technology

JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/

Title IoTによる価値創造とエコシステムの構築 ―IoTを利用 した事業戦略の事例研究―

Author(s) 首藤, 康浩 Citation

Issue Date 2017-03

Type Thesis or Dissertation Text version author

URL http://hdl.handle.net/10119/14121 Rights

(2)

修士論文

IoT による価値創造とエコシステムの構築

―IoT を利用した事業戦略の事例研究―

1550303 首藤 康浩 主指導教員 内平 直志 審査委員主査 内平 直志 審査委員 池田 満 神田 陽治 小坂 満隆 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 平成 29 年 2 月

(3)

i

目 次 ... i 表 目 次 ... iii 図 目 次 ... iv 第1 章 序論 ... 1 1.1. 研究の背景 ... 1 1.2. 研究の目的 ... 2 1.3. 研究の方法 ... 3 1.4. 本研究の意義 ... 4 1.5. 用語の定義 ... 4 1.6. 本論文の構成 ... 6 第2 章 先行研究レビュー ... 8 2.1. IoT の価値形成モデル ... 8 2.2. ビジネスモデル ... 9 2.3. ビジネス・エコシステム ... 12 2.4. IoT ビジネスにおける組織構築 ... 16 2.5. 本章のまとめ ... 17 第3 章 企業事例調査 ... 19 3.1. 対象企業抽出 ... 19 3.2. 企業傾向 ... 22 3.3. ベンチャー企業の動向 ... 24 3.3.1. QRIO 社の事例 ... 24 3.3.2. Mimo 社の事例... 26 3.3.3. SIGFOX 社の事例 ... 27 3.3.4. Jasper 社の事例 ... 28 3.4. 既存企業の動向 ... 29 3.4.1. GE Digital 社の事例 ... 29 3.4.2. クボタ社の事例 ... 30 3.4.3. ダイキン社の事例 ... 32

(4)

ii 3.4.4. KAESER 社の事例 ... 34 3.4.5. コマツ社の事例 ... 35 3.5. 第 3 章まとめ ... 36 第4 章 先行研究,企業事例からの考察 ... 39 4.1. IoT における価値創造 ... 39 4.1.1. 既存企業におけるIoT の価値創造 ... 39 4.1.2. ベンチャー企業におけるIoT の価値創造 ... 40 4.1.3. IoT における価値創造の現状 ... 41 4.2. ビジネスモデルの変化と対応 ... 41 4.3. ビジネス・エコシステムにおける考察 ... 46 4.4. IoT における組織構築における考察 ... 47 4.5. OEVE モデル ... 52 第5 章 結論 ... 54 5.1. SRQ1:既存事業に IoT を組み入れる場合,どのようなプロセスが必要か? ... 54 5.2. SRQ2:IoT によるサービスを実現するためにどのような組織が必要か? ... 55 5.3. SRQ3:IoT サービスの成長にはどのような社内外のエコシステムが必要か? ... 56 5.4. MRQ:IoT を利用した事業を促進させるためには, どのような組織と戦略が必要 か? ... 57 5.5. 理論的含意 ... 58 5.6. 実務的含意 ... 58 5.7. 本研究の限界と今後の課題 ... 58 謝辞 ... 60 参考文献 ... 61

(5)

iii

目 次

表 1 ネットワーク戦略の分類 ... 12 表 2 ニッチのタイプの特徴 ... 14 表 3 IoT 関連事業者一覧 ... 20 表 4 調査対象企業のマーケット ... 21 表 5 要素技術提供企業 ... 21 表 6 事業内容のキーワード分析 ... 23 表 7 通信プロトコル比較 ... 28 表 8 メリットの享受 ... 35 表 9 ビジネス・エコシステムの立ち位置 ... 36 表 10 従来型の企業と Hilti 社のサービス比較 ... 44 表11 リバースイノベーションの 2 つの流れ ... 45

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iv

目 次

図 1 Internet of Things Units Installed Base by Category ... 1

図 2 研究の進め方 ... 3

図 3 ビジネスモデルの構成素 ... 6

図 4 IoT の価値形成モデル ... 8

図 5 Framework for the IOT Business Model Analysis ... 10

図 6 Case Examples from the Automotive Industry ... 10

図 7 ICT ビジネスモデルのフレームワーク ... 11

図 8 キーストーン戦略のモデル ... 14

図 9 ビジネス・エコシステムの図式 ... 15

図 10 Minimum Viable Ecosystem(MVE) ... 16

図 11 QRIO におけるビジネスモデル ... 25

図 12 Mimo Baby Monitor ... 26

図 13 SIGFOX 社のサービス ... 27 図 14 ダイキン社「あんしんスカイエア」のビジネスモデル ... 33 図 15 IoT におけるレイヤーとエージェントの例 ... 38 図 16 価値創造検討チームの構築 ... 39 図 17 既存企業の IoT 化価値創造プロセスモデル ... 40 図 18 既存企業の従来製品と IoT 化 ... 43 図 19 事例にみる IoT における事業化プロセス ... 47 図 20 SECI モデル ... 48 図 21 組織能力と製品アーキテクチャー ... 50 図 22 アーキテクチャーの図 ... 51

図 23 Organization to Externality Value Ecosystem(OEVE)モデル ... 52

(再掲)図 16 価値創造検討チームの構築 ... 54

(再掲)図 17 既存企業の IoT 化価値創造オペレーションモデル ... 55

(7)

1

1章

序論

1.1. 研究の背景

近年,IoT(Internet of Things)という言葉が頻繁にメディアに登場する ようになった.IoT という言葉は, Ashton(2009)が「モノがインターネット に接続する」ことを示す言葉として発表したものである.IoT に近い言葉と してユビキタスネットワークという言葉が存在する.ユビキタスネットワ ークとは,様々な場所でネットワーク接続を可能とすることを趣旨とする 言葉であり,IoT はユビキタスネットワークの様な通信基盤が存在する上 で成立するものと考える.従って,IoT の登場は,ネットワーク基盤の確立 により成立するものと考えられる.

IoT の関連市場は,Gartner (2014)によると 2020 年には IoT がもたらす 総合的な経済価値は,世界中で 2,630 億ドルに達し,250 億台のデバイス(図 1)がインターネットに接続するとしている.

図 1 Internet of Things Units Installed Base by Category

この IoT を利用して新しいビジネスを提供する企業が登場した.ベンチャ ー企業から大企業まで新しい市場から収益を得るために様々な取り組みが

単位:万台

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2 行われている.既に IoT を利用したサービスを提供する企業が登場し,い くつかの事例を見ることが可能となった.経済産業省(2015)はセンシング 技術を利用し,機器にトラブルが発生する前に対応する予防保守を提供し, 顧客のダウンタイム削減,生産ラインの可視化により生産工程のムダの排 除・効率化につながった事例を紹介している.Annunziata(2013)によると センサーから取得したデータを予測分析に利用することによって財務パフ ォーマンスやグローバル競争力を検討する上で有効であることを示してい る. 一方,具体的にどのような方法でデータを取得し,事業に生かしていく か顧客に対する価値提供の形を考慮する必要がある.根来(2015)は,IoT に よって取得されたデータと情報システムを含んだ仕組みから差別化が必要 と指摘しており,ダベンポート(2014)は,「IoT から取得出来るデータ分析 がどのようにして自社や顧客に価値を生み出せるのかをもう一度根本から 考え直さなければならない」と指摘している(ダベンポート 2014:p88). これは,事業全体の中における IoT のあり方を明確にした上で,事業を進 める必要があるという示唆といえる.事業のあり方を見直す場合,組織体 制についても見直す必要がある.組織は,事業において最も効率的且つ収 益を得ることを念頭に検討されている.従って,ダベンポートの指摘を踏 まえると組織そのものが価値を生み出す組織へと変化させる必要があると 考える.

1.2. 研究の目的

既に IoT を事業の基盤として取り入れている企業,新規に新しいサービ スを提供する企業が存在する.先行研究として国内外で様々な視点による 研究が行われている.しかし,根来やダベンポートの指摘について具体的 な事例を踏まえた検証はおこなわれていない.加えて IoT を利用した新し い価値提供を行う上での組織の考察に関しては,十分検討されていないと いえる. 本研究は,既に指摘されている部分と現時点で未解明な部分について, メジャー・リサーチ・クエスチョン(major research question,以下 MRQ)

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3 question,以下 SRQ)を設定した. MRQ: IoT を利用した事業を促進させるためには, どのような組織と戦略 が必要か? SRQ1:既存事業に IoT を組み入れる場合,どのようなプロセスが必要か? SRQ2:IoT によるサービスを実現するためにどのような組織が必要か? SRQ3:IoT サービスの成長にはどのような社内外のエコシステムが必要 か? これらの問いは,今後 IoT を利用した事業参入において成功を収めるた めの一考察として明らかにするものである.

1.3. 研究の方法

本研究では,図 2 の示すプロセスに沿って実施する. 図 2 研究の進め方 はじめに先行研究調査を行い,現時点で明らかになっている事象の確認, 次に既に IoT を利用した事業を行っている企業を抽出し,分類化を実施す る.このプロセスで対象となる企業が,対象の均一化を図る上で国内外か らの情報取得を行う.本研究においては,日本国内だけではなく,北米の 筆者作成

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4 ベンチャーキャピタルが提供しているデータベース,在イスラエル大使館 経済部,台湾貿易センターから対象となる企業情報の提供を受けた. 収集した企業情報を「ビジネスマーケット」,「創業年数」,「既存企業・ 新規企業(ベンチャー企業)」という軸で分類した.この軸の分類について 第三章で解説する. この先行研究調査と先行企業調査の結果から考察を交えながら分析を行 う.SRQ1 は,既存企業でどのようなプロセスで IoT 化を行ったか, SRQ2 は SRQ1 の実現のためにどのような組織が必要だったか,SRQ3 は事業とし て継続性を維持する上で社内外のビジネス・エコシステムの構築を検討し たかを考察する.これらの結果から MRQ に対しての解を求めるものである.

1.4. 本研究の意義

事業において重要となる要素としてビジネスモデルおよびビジネス・エ コシステムが存在する.これは事業を行う上で検討が必要とされるもので あり,IoT に特化した話ではない.しかし,IoT は冒頭で示した定義通り 「モノがインターネットへ接続する」ことでしかない.従ってビジネスモ デル,ビジネス・エコシステムの検討は考慮すべきことが多い.この点に つ い て は 先 行 研 究 か ら も 指 摘 さ れ て い る . 加 え て Wurster(2014) , Westerlund(2014)らも組織の重要性について言及している.しかし,その 言及はトップダウンによるものに終始しており,詳細な検証及び考察が行 われていない.本研究は,組織におけるエコシステムについて検討するも のであり,組織の観点から,ボトムアップ的なエコシステムの形成プロセ スを具体的に明らかにする点に新規性及び有効性が有ると考える.

1.5. 用語の定義

本研究における用語の定義を示す. IoT Ashton(2009)は,IoT という言葉を定義した.定義に際した状況は, 配 送 さ れ る 商 品 が 梱 包 さ れ た 段 ボ ー ル に RFID(radio frequency

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5 identifier)がリーダーによって読み取られ,読み取った結果をインタ ーネット上へ転送すると状態を示した.これは,RFID そのものがインタ ーネットに接続するわけではなく,リーダーという媒介を経由し,TCPIP へ変換されサーバやクラウドにデータ送信によって完結する.従って, 「モノがインターネットに接続する」ではモノが直接的にインターネッ トへ接続すると解釈されるが,実際は異なる.本研究では,「モノが何 からの媒介を経てインターネットに接続する」という前提とする. ビジネスモデル ビジネスモデルには,複数の定義がある.根来(1999)は,「ビジネスモ デルは,どのような事業活動をしているか、あるいは事業構想を行うか を示すモデルである」としている(根来 1999:p145).Shafer(2005)は, 「テクノロジーと経済価値の仲介構造」とし(Shafer 2005:p206-207), Magretta (2002)は「企業の仕組みを説明するストーリー」としている (Magretta 2002: p1).本研究では根来が示す定義を主軸において検討す る.根来の定義は利用するにあたり,3 つのモデルが必要としている.3 つモデルとは,「戦略モデル」「オペレーションモデル」「収益モデル」と し,それぞれが相互的な結合を有している.「戦略モデルは,オペレーシ ョンモデルに支えられて初めて実現可能となる.戦略モデルとオペレー ションモデルは,収益モデルに裏付けられなければビジネスには,なり 得ない」としており,企業活動そのものに視点を合わせており,先行企 業調査を行う上で異なる業種・業態の企業を俯瞰的に見て,企業活動を 比較しやすい.

(12)

6 図 3 ビジネスモデルの構成素 定義を踏まえ,IoT のビジネスモデルを検討する上で 3 つのモデルに ケイパビリティを加える(図 3). Slama(2015)は,IoT におけるビジネス モデルにAsset(資産)を組み込むことを示している.Asset は,その組織 が持つケイパビリティの 1 つであり俯瞰的に見た場合,Asset だけでは 不十分である.ケイパビリティは,新規企業・既存企業間において大き な差を生む要素であり,ビジネスモデルを構築する上で既存事業が持つ 意味や価値を含むものと考える.

1.6. 本論文の構成

本論文は本章を含めて全5 章で構成される.それぞれの章の内容を以下 に記す. 第1 章:序論 本研究の目的を述べリサーチ・クエスチョンを設定する. 第2 章:先行研究レビュー 本研究にかかわる先行研究レビューを実施する. 筆者作成

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7 第3 章:企業事例調査 既にIoT を基盤としたサービス提供企業の事例を収集する. 第4 章:先行研究,企業事例からの考察 先行研究及び企業事例調査からの考察,検証を行う. 第5 章:結論 MRQ,SRQ への解答を示し,本研究の理論的・実務的含意や今後の課 題についてまとめる.

(14)

8

2章

先行研究レビュー

本章では,現在のIoT に関する研究において「価値創造」,「ビジネスモデ ル」,「ビジネス・エコシステム」について考察を行う.IoT 単体では,何ら かの媒介を解して,インターネットに接続するものであり,その点では価値 を生む

2.1. IoT の価値形成モデル

Porter(2014)は,競争戦略の観点から IoT 単体では価値を生まないこと を示し,IoT の価値形成モデル(図 4)を示している. 図 4 IoT の価値形成モデル IoT の価値形成モデルでは,IoT は単体では,モニタリングであり,モニ タリングだけで価値を形成することは不十分であることを示している. IoT はあくまでも情報をデジタルで取得する一つの手段であり,「状態把握」 といえる.加えてモニタリングに関しては,以前から様々な機器装置で行 われていることであり,目新しい物では無い.昨今の発売されている家電 製品であってもエラーが発生すれば,エラーコードが表示され,記憶領域 に保存される.IoT は,このエラーコードがインターネットという通信網 Porter(2014)より筆者作成

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9 を介してメーカーや保守を受け持つ企業へ連携される.商業用コピー機の 多くはこの様な保守契約の形態1を有している. 制御は,モニタリングから取得した情報を利用し,行われる.制御はモ ニタリングされている対象をユーザーではなく,保守を担当する側から実 施する.制御は操作という側面とシステムのアップデートやメンテナンス という意味を内包する. また,この制御を最適化させることによって従来型の保守から新たな価 値を生み出す事が可能となる.これは従来の機器が人を介して行われてい たものをモニタリングから蓄積された情報を分析し,反映させるプロセス を繰り返し,制御の最適化を目指す. そして,最終形として自律化となる.自律はモニタリングを行い,制御 の結果を繰り返し,反映させることによって学習を行い,最適化へ到達す る.これはPDCA と類似するような繰り返しの連続があり,学習をした結 果として最適化が可能になる.最適化には多くの要素技術が必要とされる. 価値創造という観点では,自律への到達は,ハードルが高いがユーザーに 対しては最大の価値提供となる.

2.2. ビジネスモデル

IoT におけるビジネスモデルについて明確なモデルや検討方法が確立さ れていない.しかし, Jin(2013)はオーストラリアにおける IoT の先行事 例から情報提供サービスによる収益モデルを例にしてビジネスモデルにつ いての考察を行っている.Turber(2014)は,情報のデジタル化,デジタル 化された情報の利用方法について適切なアーキテクチャーの利用が必要で あることを指摘している.Jin,Turber の共通とした見解として,既存の ビジネスモデルだけではなく,IoT デバイスや利用するアーキテクチャー の特性を加えた検討が必要であると示している.これは,Porter が指摘す る点に通じるところがある. これらの課題を踏まえ,Leminen ら(2012)は,IoT におけるビジネスモ デルの分析フレームワークを示している(図 5). 1 Canon 社の場合,「NETEYE モニタリングサービス」,富士ゼロックス社では「富士ゼ ロックスダイレクト 複合機サービス」が既に提供されている.

(16)

10

図 5 Framework for the IOT Business Model Analysis

このモデルは,広義のビジネスモデルを検討する上では,有用である.

たとえば,Leminen らは事例として輸送産業2を示している(図 6).

図 6 Case Examples from the Automotive Industry

2 原著では,”automotive industry”と表記されている.

Leminen (2014)より筆者作成

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11 Ⅰは,オープンでエコシステムが成立している状態としての共同配送,Ⅱ は,クローズドな RFID を利用した物流システム,Ⅲはダイムラーがドイツ で行っている乗り合いサービスの「Car2gether」を示しており,Ⅳは同じ くダイムラーがドイツで行っているカーシェアリングサービスの「Car2go」 を具体例としている.このフレームワークは,エコシステムにおけるオー プン・クローズドの評価を可能とする. 藤川(2015)は,インターネットに接続することで IoT は可能になるもの の「目的」や「価値」が必要と指摘している.つまり,インターネットに 接続することによって,新たに提供されるサービスの目的価値を明確にし, その目的に沿った機能価値を定義する必要があるとしている. Faber ら(2003)は,ビジネスモデルにおける ICT とサービスにおける関 係の重要性を述べており,そのフレームワークとして図7 を示している. 図 7 ICT ビジネスモデルのフレームワーク サービスの中心となるものは価値であり,その価値を構築する上でテク ノロジー,組織,財務の構成要素が関連すると指摘している.Faber が組 織デザインとしているものは,特定のサービスを実現する上でいかに相互 利益のためにサービスを提供するかという考えに基づいている. Westerlund(2014)は,ビジネスモデルの検討の段階でビジネス・エコシ ステムを意識したデザインの重要性を指摘している.これは,リリース当 初のプラットフォームは未成熟の段階で有り,どのように成熟化して行く Faber ら(2003) より筆者作成

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12 か,その過程でどのようなエコシステムを構築していくかという観点にお いて考慮に対する指摘である. 現状,いくつかの提言が出ているもののIoT におけるビジネスモデルは, サービスとしての価値提供という考え方が主流となっている.

2.3. ビジネス・エコシステム

ビジネス・エコシステムは, Moore(1993)が生態系の生存競争をメタファ ーとしてビジネスに当てはめた概念である.これは,企業間のネットワーク 関係を生物学上のエコシステム(生態系)にたとえて,多数の緩やかに結び ついた参加者達が共同の発展と生き残りを目的として,相互依存している 状態を表す概念から生まれている.

この考えを元に Iansiti & Levien(2004)はキーストーン戦略の概念を示 している.キーストーン戦略は,生物学的アプローチからエコシステムの参 加者を「キーストーン」「支配者」「ハブの領主」「ニッチ・プレイヤー」の 4 つに分類している(表 1). 表 1 ネットワーク戦略の分類 キーストーンと支配者の違いは,両者ともエコシステムにおいて大きな 力を有しているが,キーストーンは,ネットワーク全体で価値創出と共有に バランスをとるのに対し,支配者はすべての利益を独占する.ハブの領主は, ネットワークそのもののコントロールは行わない,新しい価値を提供する 定義 存在 価値創出 価値獲得 主な焦点と課題 キーストーン エコシステム前提の健全 性を積極的に改善し, その結果⾃社の持続的 なパフォーマンスに便益を 享受する. 影響⼒は⼤きいが,物 理的な存在感は⼀般に ⼩さい.⽐較的少数の ノードのみを占有する. 価値創出の結果の⼤半 をネットワークに残してお く.⾃社内で創出した価 値も広く共有する. ネットワーク全体で価値 を共有する.特定の領 域では,価値の獲得と 共有のバランスを取る. プラットフォームを創出し,ネットワークに おける問題の解決⽅法を共有する. 重要な課題は価値の獲得を共有のバ ランスをとりながら,価値創出を持続さ せること.その領域を選択して占有する かという決定も,重要な課題である. ⽀配者 垂直的あるいは⽔平的 に統合し,ネットワークの ⼤部分をコントロールす る. 物理的な存在感が⼤き い.⼤半のノードを占有 する. 価値創出の活動の⼤半 を単独で⾏う. 価値の⼤半を⾃社のみ で独占する. コントロールと⽀配権を追求する.ネッ トワークが何を⾏うかを決定し,直接 指⽰する. ハブの領主 ネットワークをコントロール はしないが,できるだけ 多くの価値を横奪する. 物理的な存在感は⼩さ い.ごく少数のノードのみ を占有する. 価値創出はネットワーク の他のメンバーに依存す る. 価値の⼤半を⾃社のみ で独占する. 根本的に整合性のない戦略.領主は 価値の源泉としてネットワークに依存し ながらも,ネットワークをコントロールする ことを拒否する.領主は同時に,価値 の⼤半を横奪しており,⾃らの存在をリ スクにさらしている. ニッチ・ プレイヤー ⾃社をネットワークの他の 会社と差別化するための 特殊な能⼒を開発す る. 個々には極めて⼩規模 な物理的存在感.しか しニッチの固まりとしてはエ コシステムの多くの拠点を 占める 価値創出︓健全なエコ システムの価値の⼤半を 集合的に創出する. ⾃ら創出した価値を獲 得する. キーストーンによって提供されるサービス を利⽤しながら,⾃らが能⼒を有する あるいは開発できる領域に特化する.

(19)

13

ことも行わない.従ってハブの領主は,一時的に大きな利益を得ることは可 能であっても持続性の観点からは,リスクを持つことになる.PC でたとえ るならば,MacOS と Windows があげられる.MacOS が動作する PC は,Apple

社の発売する PC のみである3.Windows の場合,IBM-AT 互換機の流れをくむ

PC であればほぼ動作可能である.従って,Windows における IBM-AT 互換機 は,キーストーンの重要な要素といえる.逆に Apple の MacOS に対してハ ードウェアは支配者といえる.

キーストーンとして具体的な事例として Iansiti & Levien は,Microsoft をあげている.Microsoft は Windows シリーズのオペレーションシステムお よび周辺アプリケーション「Office」加えて「Visual Studio」と呼ばれる 開発環境を提供している.アプリケーション開発者は,この Visual Studio を利用して Windows 用のアプリケーションの開発が可能となる.この状態 は,Windows という OS とそのアプリケーションを開発するアプリケーショ ン開発者の共存関係が成立する.このアプリケーション開発者がニッチ・プ レイヤーに該当する.つまり,Windows OS 上で稼働するアプリケーション 開発が進み,多種多様なアプリケーションが市場に展開されることによっ て Windows OS のエコシステムはエンドユーザーに価値を提供する.この価 値の対価としてニッチ・プレイヤーは,収益の獲得が可能となる.ニッチ・ プレイヤーが開発したアプリケーションを利用するという目的で OS が選択 されるという関係性も発生する.このような状態を図 8 のキーストーン戦 略のモデルとして示す. 3 Intel 製 CPU の場合,一定条件がそろえば稼働させられないことはないが,一般的には ほぼ不可能である

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14 図 8 キーストーン戦略のモデル この様な例から踏まえ,ニッチ・プレイヤーの存在はエコシステムを構築す る上で重要な要素となる.自社が構築するエコシステムにおいて如何にニ ッチ・プレイヤーを取り込むことが戦略的に重要となる.そのため,キース トーンとなる企業は,プラットフォームを提供するだけではなく,その健全 性を考慮する必要がある.不健全なエコシステムには,ニッチ・プレイヤー が参加することはない. また,ニッチ・プレイヤーにもそれぞれ特徴が有り,井上ら(2011)は,家 庭用ゲームからこのハブとニッチの関係性について表 2 にまとめている. 表 2 ニッチのタイプの特徴 ニッチ・プレイヤーは,キーストーンとの関係性をどのように構築するかに ニッチタイプ 新規挑戦型 安定関係構築型 開発資産活⽤型 戦略機会追求型 プラットフォーム シングルプラツトフオーム マルチプラットフォーム マルチプラットフォーム マルチプラットフォーム プラットフォーム企業との関 係性 ⼀つのプラットフォーム企 業としか関係を持たな い. どれかと相対的に強い関 係を常に保つ. 複数のプラットフォーム企 業と関係を持つ. 強いプラットフォーム企業 と強い関係を持つ. 戦略と経済性 辺境の位置することで活 動の⾃⽴性を⾼め,⾰ 新性の⾼い製品・サービ スを創出する. 強い緋帯を形成すること で関係則種⼦さんを蓄 積し,取引コストを削減 する. 蓄積した資源を多重利 ⽤することで範囲の経済 を発揮する. 最も強いプラットフォーム と結びつくことでネットワー ク外部性を追求する.

Iansiti & Levien(2004)より筆者作成

(21)

15 よって異なる.近年の家庭用ゲーム機,スマートフォンにおける開発環境の クロスプラットフォーム化,つまり,一つのソースから複数のプラットフォ ームに対応するゲームをビルド(コンパイル)する環境4が存在し,現時点で は表 2 だけでは説明することはやや難しい状況ではあるが,ニッチ・プレイ ヤーの特性を示す上では特徴を捉えたものといえる. また,Adner(2011)は,中核企業とその補完財提供者という概念を示して いる(図 9). 図 9 ビジネス・エコシステムの図式 エコシステムは,中核企業とその補完財提供者から成立する.近年,補完 財提供者の役割がエコシステムにおいて重要な要素となっている.具体的 には,Apple 社の iPod で iTunes Music Store を展開し,楽曲のダウンロー ド販売を開始した.この楽曲の提供者が補完財提供者に該当する.次に iPhone ではアプリケーションのダウンロード販売をおこなう.Apple 社が SDK と呼ばれる開発ソフトウェアを補完財提供者に提供する.その結果,補 完財提供者が開発を行い Apple 社が提供する App Store で販売を可能にす る.Apple 社はアプリケーション販売時に価格に対して 30%の手数料を徴 収するものの,補完財提供者は全世界に販路を持つこととなる.

Adner(2011) は こ の Apple 社 の 一 連 の 流 れ を Minimum Viable

4 井上らの研究時,家庭用ゲーム機のクロスコンパイラの存在はしていたものの,公には

なっていなかった.また,現在のゲーム開発はクロスコンパイラ上で行うことが一般的に なりつつ有る.

(22)

16

Ecosystem(MVE)(図 10)という概念で示している.

図 10 Minimum Viable Ecosystem(MVE)

これはプラットフォーム企業が戦略的に事業を拡大し,利益の最大化を 目指すアプローチである.Apple 社は,iPod で音楽のダウンロード販売で成 功した.この成功をベースに iPhone をリリースし,App Store というプラ ットフォームを構築した.徐々にプラットフォームを拡大し,同時に補完財 提供者を獲得していくプロセスを実践したことを示している.しかし,この 流れを実現するにはビジネス・エコシステムにおける健全性を常に意識し, 最適化を繰り返してきた背景がある.ビジネス・エコシステムは,従来の生 態系同様,種としての進化と生き残るための方法を常に模索しているモデ ルといえる.

2.4. IoT ビジネスにおける組織構築

IoT ビジネスに関する組織的研究は,ビジネスモデル及びビジネス・エコ システムを含めた研究に内包されている事例が多い.Wurster(2014)はビジ ネスモデル及びビジネス・エコシステムを検討する上で横断的なニーズと機 会の特定,社内チームの調整に関連する経営上の課題および新規 IoT 技術の 市場成熟度の問題に対応する組織が必要であり,IoT によって新たに取得さ れたデータによってビジネスチャンスに対応するために必要なプロセスを 実現するためには,強力なリーダーシップが必要と示している.また, Slama(2015)は,繰り返し検証を行うことが出来るチームが必要と示してい Adner(2014)より筆者作成

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17 る. この 2 つに共通している点として,組織は,ビジネスモデルに対して変化 に対応する能力の必要性を示唆している.ビジネスモデルの変更は既存のビ ジネスとは異なる事業を行うことであり,新規事業と通じるものがある.大 江(2008)は,新規事業の定義を「既存事業の水準を超えて,企業が新たに学習 しなければならない未知の事柄が含まれる事業」としている(大江 2008:p14). 新規事業は成功より失敗の事例の方が多い.大江は,新規事業が失敗する 理由として 2 つの事を指摘している.1 つ目は,「新規事業には新しい分野や 未知の部分があり,既存事業と比べて学習しなければならないことが格段に 多いことに原因がある」としている(大江 2008: p14).つまり,組織として新 規事業に向けて学習する必要があり,その学習方法が既存事業と同じような やり方ではなく,異なった方法でおこなう必要があることを示している.た とえば,既存事業と近接する場合は,既存事業の調査方法などの応用が可能 だが,全く異なる事業への参入においては,これまでの知識を利用すること が困難となり,新たに学習や調査方法の習得をおこなうことが最初の課題と なる. 2 つ目の問題点として「新規事業を展開する企業内の管理上の問題」をあ げている(大江 2008:p14).この指摘に関して Aoshima(1996)は,自動車の開発 プロジェクトを例にプロジェクトのコアメンバーが過去に同様のプロジェ クトを経験している程度が,高いほど総じて開発成果にプラスの影響を与え るが,新しい市場セグメントをねらった新規コンセプトの自動車を開発する ような場合には,共通経験の高さはむしろ足かせになることを示している. これは,既存事業での経験に根ざした知識だけでは解決できない,未知の 問題や新たな発想に対応出来ない可能性を示唆している.

2.5. 本章のまとめ

本章では,IoT による価値創造とエコシステムの構築のおける研究を進め るにあたり,先行研究調査によって,Porter の示すとおり IoT 単体では価 値創造は不十分であり,様々な要素技術を組み合わせることによって価値創 造が初めて可能となることを確認できた. ビジネスモデルは,IoT によって何をなすかを明確にする必要がある.加

(24)

18 えてビジネス・エコシステムとの関連性を重要視する方向にあるといえる. 先行研究からは,ビジネスモデルとビジネス・エコシステムは相互の存在が 要求される. 組織構築については,トップダウンの必要性を示すにとどまっているとい う視点とトップダウンでなければ出来ない組織的影響が有ることが指摘さ れている.先行企業において先行研究が示す様な状況かを含めて考察を行う 必要があると考える.

(25)

19

3章

企業事例調査

既に IoT を利用した事業により収益を得る企業が存在する.または,ベン チャー企業としてベンチャーキャピタル等から資金を調達し,サービスを構 築する企業が散見される.これらの企業の調査を行い.先行研究との比較を 行う.

3.1. 対象企業抽出

IoT に関する事業を行っている企業を 2 つの条件に適応する企業を対象と して調査を行った. (1)Porter のフレームワークの①モニタリング,②制御のいずれかを実現し ていること,または,これらを実現するために必要な要素技術を有して いること. (2)(1)を実現し,利益または外部からの投資資金を得ていること. 上記条件に合致する企業を日本国内だけではなく,北米のベンチャーキャ ピタルが提供しているデータベース,在イスラエル大使館経済部,台湾貿易 センターから対象となる企業情報の提供を受けた. 得られた情報からその企業の事業内容や IoT に関してどのようなことを 行っているかを調査可能な企業を抽出した結果,表 3 の企業を本研究のサン プルとした.

(26)

20 表 3 IoT 関連事業者一覧 調査対象とした企業は,創業年度,マーケットに関しては一切考慮して居 ないため,同様なプロダクト,サービスを提供している例がある.対象企業 のビジネスについては各社の HP およびサービスの利用規約から判断した. 30 ケースに対しての B2B,B2C 割合は,表 4 の通りとなる. 企業 創業 事業の位置づけ ビジネスモデル エコシステムの役割 1 クボタ 1890年 既存企業 農業の可視化 ハブの領主 2 General Electric 1892年 既存企業 製品稼働の可視化 キーストーン 3 KAESER 1919年 既存企業 事業のサービス化 ハブの領主 4 ⼩松製作所 1921年 既存企業 オペレーションのサービス化 ハブの領主 5 ダイキン⼯業 1924年 既存企業 事業のサービス化 ハブの領主 6 富⼠通 1935年 新規事業 農業の可視化 ハブの領主 7 Progressive 1937年 既存企業 利⽤者の可視化 ハブの領主 8 タイムズ(パーク24株式会社) 1973年 新規事業 利⽤者の可視化 ハブの領主 9 オー・ド・ヴィ 1995年 既存企業 兆候保守の実施 ハブの領主 10 Amazon 1996年 既存企業 プラットフォームの提供 ハブの領主 11 Jawbone 1999年 既存企業 スマートフォンの補完財提供(ウェラブル) ニッチ・プレイヤー 12 Alarm.com 2000年 新規事業 スマートフォンの補完財提供(ホームセキュリティ) ニッチ・プレイヤー 13 SAKURAインターネット 2001年 新規事業 プラットフォームの提供,データゲートウェイ キーストーン 14 Jasper Technologies 2004年 新規事業 IoT機器機器とのモバイル接続,クラウド提供 ニッチ・プレイヤー

15 Inrix 2004年 新規事業 交通情報の提供サービス ニッチ・プレイヤー

16 NxControl 2006年 新規事業 セキュリティプラットフォームの販売 ニッチ・プレイヤー

17 View Inc. 2006年 新規事業 網膜ガラスの制御 ニッチ・プレイヤー

18 Withings 2008年 既存企業 ウェラブル,ヘルスIoT製品販売 ハブの領主

19 Proteus Digital Health 2008年 新規事業 薬剤効果モニタリング製品とサービス ニッチ・プレイヤー

20 SigFox 2009年 新規事業 IoT機器の無線通信,クラウド提供 キーストーン 21 i-remocon 2011年 新規事業 NESTと連携可能なIRコントローラー ニッチ・プレイヤー 22 Nest 2011年 新規事業 AIを搭載したサーモスタット キーストーン 23 Sproutling 2011年 新規事業 ⾚ちゃんの体調モニタリング ハブの領主 24 Kit Check 2011年 新規事業 薬剤の調剤管理 キーストーン 25 Mimobaby 2012年 新規事業 ⾚ちゃんの体調モニタリング ハブの領主 26 QRIO 2013年 新規事業 スマートロックの物販 ハブの領主 27 HeraMed 2014年 新規事業 胎児と⺟体の超⾳波モニター ニッチ・プレイヤー 28 SENSIBO 2014年 新規事業 NESTと連携可能なIRコントローラー ニッチ・プレイヤー 29 Smanos 2014年 新規事業 NEST互換のあるSmarthome Kitの販売 ニッチ・プレイヤー

30 SensOleak 2015年 新規事業 漏⽔検知アルゴリズム ニッチ・プレイヤー

(27)

21 表 4 調査対象企業のマーケット B2B を行っている事業会社 12 社のうちで要素技術5として製品,サービス を提供している企業が 6 社(表 5)存在する. 表 5 要素技術提供企業 6 社のうち最も古い企業は Amazon 社である.Amazon 社は同社のクラウド サービス上に IoT に特化したサービスを提供してる.同社のクラウドサービ スを利用して IoT サービスを提供している企業も存在する.調薬管理の Kit Check 社は同社のケーススタディ6として取り上げられている.その後, SAKURA インターネット社と続くが同社も IoT 用通信基盤と閉域網,クラウ ドを提供している企業である. SIGFOX 社は通信基盤,クラウドを組み合わ せたプラットフォームの提供企業であり,Jasper Technologies 社も同様の 企業である. SIGFOX 社,Jasper Technologies 社についての詳細は,3.3.3 及び 3.3.4 において取り上げる.Proteus Digital Health 社は,薬の薬事 的効果を測定する技術の提供企業である.同社は,薬剤が存在する上で製品 5 本研究における要素技術として定義しているものは,サービスに組み込むことによって 価値が発生するものを示している.具体的には,IoT におけるクラウドサービスや通信基 盤の提供,セキュリティ技術など直接的ではないが,サービスを行う上で必要なものを示 している. 6 https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/kit-check/ 対象マーケット 事業者数 B2B 12 B2C 13 両⽅ 5 企業名 設⽴年度 主要サービス Amazon 1996年 AWSにIoT専⽤プラットフォーム提供サービスを開始(クラウド側環境のみを提供) SAKURAインターネット 2001年 3Gの通信デバイスで閉域網のネットワークに接続し、クラウドへデータ蓄積。センサーは、利⽤者がインターフェイスに接続させることが前提。 SigFox 2009年 IoTインフラベンダー.900MHzを利⽤し,低電⼒通信デバイスの提供を⾏ってい Jasper Technologies 2004年 IoTアプリケーションプラットフォームベンダー.CISCOが買収.

Proteus Digital Health 2008年 既存の薬に効果に影響を与えない薬剤に加える.薬剤が溶けたときに発する微弱電波を⽪膚表⾯に設置したセンサーでとらえる SensOleak 2015年 プラントの設備監視システム,兆候監視による予防保守が可能

筆者作成

(28)

22

が成立であり,その効能効果測定は薬剤の存在があって初めて有効となる. 従って薬剤におけるエコシステムに参加する形の製品といえる.SensOleak 社は,独自のアルゴリズムを利用し,パイプラインで発生する漏水を予測検 知するシステムの提供を行っており,既にアメリカ海軍などの納入実績が有 る.CEO の Shoshi Kaganovsky 氏にヒアリングを行った際に「漏水に特化し た製品であり,一定の要件をクリアしているデータがあれば導入は可能」と のことだった. 対象企業の傾向として,B2B,B2C に対して製品とサービスの提供を行う企 業と B2B 及び B2C 向けの IoT 製品・サービスにおける補完財提供者に分かれ る.これは,IoT という大きな枠組みにおけるエコシステムが存在すること を示している.補完財提供者の存在はその市場の有効性,エコシステム全体 の拡大が予測出来る状況下にあることを示す物と考える. 3.2. 企業傾向 3.1 で詳細から抽出した企業だけではなく,広く IoT 事業を行う企業につ いても考察を得るため,企業検索サイト「crunchbase.com7」を利用して調査 を実施した.検索画面より「Internet of Things」というキーワードで検索 すると 1,210 社8が抽出される. Crunchbase は,独自のアルゴリズムを利用 し,企業に対して Ranking を付与している.この Ranking は,最近の活動, 資金調達,事業に携わるステークホルダーによって企業を順位付けするもの である.北米で事業展開,資金調達を行っていない企業は,この Crunchbase には掲載されていない.従ってこの Ranking だけでは表 3 の企業と比較が出 来ない9が,Crunchbase に登録されている企業単位の Description の内容を 分析する事によって企業がどのような活動を行っているかを俯瞰すること が可能となる10.Description で抽出した文章を TermExtract11(専門用語自 動抽出用 Perl モジュール)利用して頻出度から上位 50word を表 6 にまとめ 7 CrunchBase は、2007 年より提供されているサービスであり,スタートアップ企業版 Wikipedia といえるデータベース提供サイトである. 8 2016 年 12 月 20 日現在 9 表 3 に収録されている企業も一部含まれている. 10 Description の閲覧は,サービスの仕様上,検索上位 50 社分を対象としている. 11 TermExtract は,データ件数が 1000 件以上あることが望ましいが複数語に対応してい ることを踏まえ,語句抽出と頻出度測定として採用した.

(29)

23

た.この表に基づいて傾向を考察する.

表 6 事業内容のキーワード分析

このリストを見る限り,1 位から 10 位までのキーワードは IoT という言 葉を除くと「Platform」「Technology」「Cloud」「Data」「Solution」

「Product」「Industrial」となる.単語で見た場合,「Platform」というキ

ーワードが多く散見される.IoT+「プラットフォーム」+「サービス」とい

う構成での提供が主となると考えられる.また,「Technology」「Data」

は,IoT のモニタリングの特性を表すものといえる.IoT という視点でビジ ネス・エコシステムを俯瞰した場合,ニッチ・プレイヤーは,要素技術を

キーワード 重要度 キーワード 重要度

1 IoT 81.58 26 real world Helium 2.82 2 IoT platform 14.69 27 real world problem 2.82 3 technology 7.35 28 real world Savi 2.82 4 cloud 6.93 29 processing platform 2.74 5 IoT data 6.84 30 Detection platform 2.74 6 world 5 31 operational intelligenceplatform 2.64 7 IoT solution 5 32 software solution 2.63 8 IoT product 4.52 33 data integration 2.55 9 internet of thing 4.43 34 entire data 2.55 10 Industrial IoT platform 4.24 35 big data 2.55 11 secure IoT platform 4.24 36 real-time data 2.55 12 IoT device 4.2 37 driven CRM platform 2.46 13 Internet of thing 4.12 38 thing 2.45 14 software platform 3.87 39 cloud-based connectivitysolution 2.45 15 Plexures IoT 3.8 40 connectivity 2.45 16full-stack IoT Developmentplatform 3.51 41 distributed cloud application 2.4 17platform of datacommunication 3.48 42 technology company 2.34 18 cloud service 3.46 43 first open source platform 2.34 19managing IoT time-seriesdata 3.39 44 digital experience testing 2.33 20EVRYTHNG IoT SmartProducts platform 3.27 45 iguazio enterprise Data cloud 2.33 21

path-breaking multi-tier IoT application deployment platform

3.09 46 company 2.24

22 developer 2.83 47 data-driven user experience 2.22 23 leader 2.83 48 electronic system 2.21 24 scale 2.83 49 cloud environment 2.21 25 application 2.83 50 research service 2.21

(30)

24 中核とした企業が多く,データを取得し,クラウドを利用するモデルが多 く存在すると考えられる.

3.3. ベンチャー企業の動向

本研究におけるベンチャー企業の定義を明確にする必要がある.多くの定 義があるが,IoT という事業特性上,松田(2000)の定義した「成長意欲の強 い起業家に率いられたリスクを恐れ無い若い企業で,製品や商品の独創性, 事業の独立性,社会性,さらに国際性をもった何らかの新規性のある企業」 とする(松田 2000:p5). 対象企業の抽出は,松田のベンチャーの定義の観点から表 3 より抽出し, 対象とした.

3.3.1. QRIO 社の事例

QRIO 株式会社(以後,QRIO 社)は日本における IoT の先駆的な商品であ

るスマートロック「QRIO」が発売している. QRIO は,スマートフォンに よって既存住宅のドアロックを開閉する製品である.この製品は,従来のド アに取り付けられているサムターン12の内側にある持ち手にユニットをは める形で装着する.通信はBluetooth を利用し,専用アプリで解錠,施錠を 行う.現在のところ,ビジネスモデルは物販のみである. QRIO の仕組みは,本体に鍵 ID が個別に付与されており,QRIO のスマ ートフォンアプリケーションを起動し,バーコードの鍵コードを登録す る.鍵本体とアプリケーションの鍵ID が関連づけられ,解錠が可能とな る. 12 ドアの内側にある鍵の開閉金具の総称.

(31)

25 図 11 QRIO におけるビジネスモデル・利用モデル アプリケーションの鍵ID を持つユーザーは,第三者のユーザーに鍵を送 付することが可能である.これは,アプリケーションから対象ユーザーに対 してアプリケーション用の鍵情報をメールで送信する.QRIO 社が持つ鍵管 理サーバと思われるサーバから鍵が生成され,対象ユーザーに鍵の情報は暗 号化されてスマートフォンのアプリケーションに送付される.QRIO の鍵は, 利用可能時間や利用日などを細かく設定出来るため,テンポラリーに鍵を解 錠することが可能となる.物理的な鍵の受け渡しを不要とするため,QRIO 社のホームページの事例として AirBnB のオーナーや不動産業者などが採 用する事例が紹介されている. しかし, QRIO のビジネスモデルは,本体の販売のみで鍵の配信や管理 などについては無料である.2016 年 12 月に遠隔地から解錠を可能にする 「QRIO Hub」の販売を開始した.現時点では,物販以外の収益は存在しな い.解錠という情報を第三者に販売するとしても防犯の観点から望ましいと もいえないため,これ以上,想像しうるビジネスモデルの構築は難しい. 同社のCEO の西條氏は事業構想(2015)のインタビューにおいて今後の展 開としてアプリ上に広告を表示するやロックの回数で課金をするというよ うなアイデアを展開,QRIO と連動するカメラを設置し,録画するというプ QRIO 社 HP より筆者作成

(32)

26

ランを述べているが,具体的なサービスは提供されていないのが現状である.

3.3.2. Mimo 社の事例

IoT のビジネス分野に Baby IoT というセグメントが存在する.生後,間 もない赤ちゃんのモニタリングを行う分野である.この分野は,過去に類似 がなく,ブルーオーシャンといえる分野である.この分野で先行している企 業でアメリカ・Mimo 社の「Mimo Baby Monitor(図 12)」がある.

図 12 Mimo Baby Monitor

同社は,Intel 社の Edison というマイクロコンピューターを亀の形をし たようなケースに入れ,赤ちゃんの衣類にセンサーを装着した物と接続する. センサーからは呼吸パターンのチェック,赤ちゃんの体勢,睡眠するのに快 適な温度,寝ているか起きているかをスマートフォンでモニタリングを行う. また,起きたときにはアラートがスマートフォンを介して発報する.現在は, NEST(サーモスタット)と連携して温度・湿度の連携を可能とし,NEST の オプションのカメラとも連携可能である.NEST は,SDK を提供しており, NEST のビジネス・エコシステムに参加している状態といえる.センサーの Mimo Baby 社 HP より転載

(33)

27 データはスマートフォン経由で閲覧することが可能である.ビジネスモデル は,センサーのベースと衣類がセットになったものと成長に応じて着替え用 の衣類の販売がメインである.これ以外のビジネスモデルについて,現在公 開されていないため今後,どのようなビジネスを展開していくかは不明であ る. 3.3.3.

SIGFOX 社の事例

フランスの SIGFOX 社は, IoT 機器間の通信に特化したベンチャーである. SIGFOX 社は,各 IoT ユニットからの信号を 920MHz 帯域という免許不要帯域 を利用して自社のクラウドへ蓄積するサービス(図 13)を提供している.先 日,日本でも京セラと業務提携をすることを発表した. 京セラ社HP より転載13 図 13 SIGFOX 社のサービス

その技術は,LPWA(Low Power Wide Area )と呼ばれるものである.LPWA は,通信速度が 100Bps と非常に遅い.しかし,920Mhz を利用し,通信距離 は最長 10km と非常に長い到達範囲を持つ上に消費電力が他の通信方式と比 べ,格段に低い.しかし,欠点もある.双方向の通信が不可能なため,一方 通行となってしまう点がある.これは,モニタリングのみを行う前提であれ ば,問題は無いが双方向,具体的にはホスト側から操作することは不可能を 意味する.また,1 回の送信が 12 バイトと非常に小さく,送信回数も 1 日 あたり 140 回という上限が決まっている.そのためインターバルタイムが 10 13 株式会社京セラ 2016 年 11 月 9 日ニュースリリース

(34)

28 分となる.一方,コストは非常に安く 1 年あたり数百円という価格で通信サ ービスとして利用可能とホームページで公表されている.表 7 では IoT で利 用されている通信方式例を表記する. 表 7 通信プロトコル比較 総務省「情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会 920MHz 帯電子タグシステム等作業班(第 1 回)」に SIGFOX 社が提出した資 料によると既に 26 カ国で線路温度,ケーブル張力の保守監視,スマートメ ーター,ADE(除細動器)のモニター等に利用されていることを報告している. 通信コストと電力使用量は,稼働環境によって重要な要素となる.しかし, 安価であってもデータ量や伝送間隔などが適切かを考慮する必要がある.加 えてこれらのデータは,SIGFOX 社のクラウドを経由するため,セキュリティ に対する外部依存度が高くなるものの用途が適切であれば価格としては安 価で導入しやすいインフラになる可能性が高いといえる.

3.3.4. Jasper 社の事例

Jasper 社は,現在,CISCO System 社に買収された Jasper @ Cisco とい う社名となった.同社は,2004 年に設立,世界 120 社のモバイル通信企業と 提携し,M2M サービスの提供を実施.対象分野は,工場,自動車,ホームセ キュリティ,農業,食品産業,ウェラブル,医療と幅広く対応している.同 社を利用することで IoT 化が素早く実現出来ることを提案している.同社の サービスは,機器に搭載されているセンサーからの情報取得を容易にさせる クラウドベースのアプリケーションと取得した情報から表示させるビジネ 筆者作成

(35)

29 スインテリジェンスツールを提供しており,「Trunkey(すぐに使える)」とい うキーワードを全面に出し,導入の容易性を顧客に対して訴求している. 同社のケーススタディには,日本企業のトプコン社の製品と Jasper 社の プラットフォームを利用し,精密農業分野でのサービス提供を行っている. 同社の資料によると農機の稼働状況や収穫状況のモニタリングを可能にし たとしている14

3.4. 既存企業の動向

本研究における既存企業の定義は,既存事業において既に収益獲得が出来 て居る既存事業が存在するものとした.これらの選択企業は,既存企業にお ける先端事例に該当するものを対象とした.

3.4.1. GE Digital 社の事例

GE 社は「Industrial Internet」という言葉を標榜し,IoT における先端 企業といえる.イアンシティ(2015)らは,「Industrial Internet」の中核と なるプラットフォーム開発を行っている GE Digital 社について詳細に調査 を行っている.2011 年時点,GE 社におけるソフトウェアによる収益があっ たものは,136 製品のうち 17 製品で,加えてソフトウェア技術者は全世界 に点在し,共通の言語を持たず,旧世代のテクノロジーだった. 同社 CEO のイメルトは,ソフトウェアによる技術的,商業的なパフォーマ ンス向上の必要性を考え,現 GE Digital 社(当時は,GE Software)を 2012 年に設立し,責任者に CISCO のウィリアム・ルーを指名した.ルーは,GE 社 のアプリケーション開発の中核部門としてシリコンバレーに GE Software 社を設立した.GE 社内のソフトウェアエンジニアの移籍を呼びかけたもの の移籍者は対象の 2%しかおらず, 200 名体制でスタートした. 2014 年には,1000 人体制の規模となり開発した Predix を GE 社内への提 供を行っていた.ルーは,GE 社が販売する多数のプロダクトをつなぐこと 14 http://www.jasper.com/sites/default/files/downloads/Topcon%20Tierra%20IoT%20Succes s%20Story.pdf

(36)

30

によって得られるデータを社内で活用するというサイクルを構築し,事業 の先進化,最適化に Predix が寄与することを証明した.

この活動によって,GE 社の各事業部はプラットフォームとしての Predix を採用する.また, Microsoft のクラウドサービス「Azure」に Predix の

提供を開始15した.Microsoft の発表によると GE 社 CEO のイメルトは「顧客 が保有するマシンから出てくる膨大な量のデータから価値を引き出す支援 しているインダストリアル・インターネットは世界規模で製造業の繁栄を 支援することが可能にする」と発言している.同時に GE 社は,2020 年に世 界のソフトウェア企業ランキングにおいて 10 位以内に入ることを目標とし ている.この Microsoft 社への Predix の提供は,エコシステムを構築する 上で戦略的にも優位になる.同時にこれまでジェットエンジンや MRI とい ったプロダクト販売と併せて Predix から取得したデータを元にさらに価値 を高めていくものと考えられる.

3.4.2. クボタ社の事例

株式会社クボタ(以下,クボタ社)は,農業機械を中心とした事業に加え, パワープラントで利用されるエンジンやパイプラインの開発・製造・販売を 行っている.国内における農機のシェアは,国内 1 位であり,世界 4 位のメ ーカーでもある.しかし,日本市場は,農業機械市場は 2500 億円程度と市 場としての規模は減少傾向にあり,農業全体で見た場合,農林水産省 (2015a)が発表した生産農業所得統計によると農業従事者は 2009 年に 260.6 万人に対し,2015 年には 209.7 万人と 20%と減っており,加えて農業従事 者の平均年齢は,67.1 歳と高齢化が進んでいる.加えて新規就農者が農林 水産省の平成 27 年新規就農者調査によると 3,570 人となっており,急速に 人材枯渇が進んで居る状況といえる.加えて 1978 年に 5 兆 4,206 億円あっ た生産農業所得は,2013 年には 2 兆 9,412 億円と 54%も下落している.所得 の減少と従事者の減少によって日本の農業は,平成 27 年のカロリーベース の食料自給率は 39%しかまかなえていない.

15 2016/07/11 Microsoft New Center

https://news.microsoft.com/2016/07/11/ge-and- microsoft-partner-to-bring-predix-to-azure-accelerating-digital-transformation-for-industrial-customers/

(37)

31 このような背景から農林水産省(2015b)は,アグリ・インフォマティクス (農業情報科学)の重要性を訴えている. アグリ・インフォマティクスとは 「今後急速に失われていく可能性のある篤農家の「匠の技」(暗黙知)を, ICT 技術を用いて「形式知」化し,他の農業者や新規参入者等に継承してい く新しい農業」としている.この活動によってこれまで経験に即した暗黙知 が定性的な形と実態化し,農業経営において有効に作用するとしている. クボタ社の農業 IoT サービスの「クボタ・スマート・アグリ・システム (以下,KSAS とする)」は,アグリ・インフォマティクスに向けたアプロー チの一つといえる.農業従事者が日々の行動をスマートフォンから入力,ま たは,KSAS 対応の車載無線ユニットが搭載されている農業機械を利用する ことで対象となる圃場に関する情報をスマートフォンから KSAS のクラウド にアップロードする仕組みを提供している.具体的には,農業機械が肥料を 散布したデータを取得し,実際の収穫した生産物を踏まえて,肥料の量が適 正だったかを検証し,次回の作付けで最適化を行うことを可能とする.また, 生産物,主に米の圃場単位の収穫量および「おいしさ」の情報を取得する. しかし,このサービスを実現するために組織を横断した取り組みが散見 される.日経コンピュータ(2015)によると KSAS は 1 年の期間に最大で 50 人が参加したプロジェクトであり,そのメンバーは,農機の技術部などの代 表者 4 人,システムを開発するクボタシステム開発のメンバーが集まり,開 発をおこなった.社内に関係部署が多く、調整が必要だったとしている.ま た,センシングに統一的な規定がなく,インターフェイスの調整が必要だっ たことが示されている.収穫物の「おいしさ」を測定することを可能とした のは食味収量コンバインの研究開発が進んでおり,コメの成分を計測し,食 味に関する情報を収集することが可能となった. 生産に関する情報と当時に農機の稼働情報を収集し,保守に生かす取り 組みが行われており,「機械サービスシステム」というサービスで提供され ている.農業の場合,植え付け・収穫時期がある程度決まっている.そのた め,そのタイミングで農機の故障は植え付け・収穫のスケジュールに影響が 与える.そのため,同サービスは,同社の製品価値を最大化することが可能 となる.

(38)

32 KSAS の責任者である長網氏16にインタビュー17を行い,KSAS についてヒア リングを行った.長網氏によると元々,IoT は意識しておらず,従来の農業 を取り巻く環境,海外とのコスト競争力,生産主体(担い手)がプロに移行さ れている現状が KSAS 開発のきっかけとなったとしている.生産者の所得を あげるには高品質高収量(大量均一生産)化が必要と考え,KSAS の開発を着 手した.「おいしさ」の均一化は,生産者にとって重要な問題ではあるが, その原因がわからないという背景が存在した.稲作では,圃場の窒素量によ って生産物の収穫量とおいしさが変わる.窒素量の調整は,肥料を減らすこ とになるが,過去の経験から農業経営者では決断できない背景が存在したと いう.KSAS は,センサーによって「おいしさ」の状態が把握出来ることによ り,減肥が可能かどうかの判断材料の提供を可能とした. この KSAS の実現にあたり,研究部門トップ,経営トップから「これまで 自社を育てていただいた農業経営者,日本の農業に寄与する」という判断で 実施が決定した.当初は「ワイガヤ」レベルで着手し,2011 年から一気に開 発が進み,新潟の農業経営者の協力を得て実証実験,検証作業を行った.2014 年にサービスを開始し,2016 年ぐらいから加入者の利用率が高くなったと している.また,長網氏による「サービス料として月額 6,500 円(本格コー ス),これだけで利益をあげるのではない.顧客に踏み込んで,コンサルと までは行かないが新しい顧客との関わり方,関係性を強化していきたい」と いう考えを示している.

3.4.3. ダイキン社の事例

ダイキン工業株式会社(以下,ダイキン社とする)の「あんしんスカイエア」 というサービスを提供している.オフィス等に設置しているエアコンやユー ザーの利用データを収集し,制御の最適化を行うことを目的としている.マ イナビニュース(2015)によるとダイキン社は,以前から「DAIKIN D-irect」 というサービスを展開しており,エアコンのセンサーからネットワークを経 由して Web サービスで室内温度と設定温度,消費電力などを簡単に確認で きるサービスを提供していた.しかし,ネットワークに接続する必要があり, 16 株式会社クボタ アグリソリューション推進部 KSAS 業務グループ グループ長 17 2017 年 1 月 20 日 13 時~クボタ本社にて実施

(39)

33 導入先企業のネットワークを利用しての通信は,セキュリティの観点から利 用例は限られていた.しかし,2 つの要因によってこのサービスの提供環境 が成立した.一つは,2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災である.こ の地震により首都圏に電力を供給していた原子力発電所が停止し,電力の供 給がエリアごと輪番制になり,電力料の価格が上昇した.このため,電力料 金の抑制が顧客からの要求事項となった.もう一つは,通信モジュールの低

価格化である.同社のサービスではKDDI 社製の LTE モジュール「KYM11」

を利用,顧客のネットワークではない別の閉域網ネットワークから情報取得 が可能となった.この結果として機器の異常時の状態把握が,現地に訪問す ることなくダイキン社側で確認が可能となる.加えて,故障の前兆と思われ る動きをあらかじめモニタリング可能となり,事前保守も可能となったとし ている.このビジネスは,従来の「エアコン」としての売り切りという形と は別にリースと保守を組み合わせた「あんしんスカイエア」というサービス の提供が可能となった(図 14). 図 14 ダイキン社「あんしんスカイエア」のビジネスモデル ダイキン社HVC 社 HP より筆者作成

(40)

34 このサービスは,一定の初期費用が発生するものの7 年間の機器の利用料 と保守料がセットになったサービスである.前者は,従来の空調機器の販売 および保守契約であり,後者は設置空間における空調のサービス化を実現し たといえる.

3.4.4. KAESER 社の事例

ドイツのコンプレッサーメーカーの KAESER は,コンプレッサーの販売を やめ,コンプレッサーから作られる圧縮空気に対して課金する事業モデルへ 変更した.これは,コンプレッサーという製品の特性が大きく影響している ものと推測される.岩本(2016)によるとコンプレッサーは,圧縮空気の費用 の 80%以上は電気代であり,コスト削減を行うには省電力が重要になる.加 えてコンプレッサーは冷却が必要になる.方法は,水冷式と空冷式があり, コンプレッサーを安定的に稼働させるためにはメンテナンスを適切に行う 必要がある.そのため,コンプレッサーは,必要性から求められる物である が,ユーザーからは,可能な限りコストとして押さえたいものと考えられて いた.このユーザーのニーズに対して,コンプレッサーの本体の販売からか ら圧縮空気の販売というビジネスモデルを変更した.2015 年時点の世界の コンプレッサー市場は,年 15~20%の伸び率を示しており,シェア通りに規 模を拡大することによって当面の成長が見込める市場である.その市場にお いて競争力を持つ方法として,イニシャルコストがかからない「圧縮空気の 販売」となる.これは,エンドユーザーにおけるニーズであり,これを可能 としたのは,コンプレッサーのモニタリング技術である.同社は,導入した 製品・システムの予備診断(PdM; Predictive Maintenance),顧客のシステ

ムを構築して運転状態を把握するシステム(EB; Engineering Base)を導入 しており,これらのシステムを利用し,「シグマ・エア・ユーティリティ」 という圧縮空気を販売するサービスを実現した.このサービスを導入するこ とによってユーザー・KAESER は,表 8 にまとめたメリットを共有すること が可能となる.

図   1 Internet of Things Units Installed Base by Category
図   5 Framework for the IOT Business Model Analysis
図  10 Minimum Viable Ecosystem(MVE)
表  6  事業内容のキーワード分析
+4

参照

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a事業所 新規指定⇒ 指定 ※(2年度) 指定 ※(3年度) 特定. b事業所 新規指定⇒ 指定 指定

対策等の実施に際し、物資供給事業者等の協力を得ること を必要とする事態に備え、

新々・総特策定以降の東電の取組状況を振り返ると、2017 年度から 2020 年度ま での 4 年間において賠償・廃炉に年約 4,000 億円から

 電気通信事業  :  スピードネット㈱,東京通信ネットワーク㈱,㈱パワードコム   有線テレビジョン放送事業  : 

自主事業 通年 岡山県 5名 岡山県内住民 99,282 円 定款の事業名 岡山県内の地域・集落における課題解決のための政策提言事業.