第 3 章 企業事例調査
3.5. 第 3 章まとめ
第 3 章では,ベンチャーの事例と既存企業の事例をまとめた.ベンチャー 企業は,独自の技術を中心に事業展開を行っているのに対し,既存企業は,
自社のサービス化に注力している物と考えられる.
既存企業のビジネスモデルは現状の事業を基盤にしたものが多く,ベン チャー企業は,要素技術の提供が多い.また,製品を販売する企業は,多 くはスマートフォンをインターフェイスとして利用し,スマートフォンの 補完財提供者として,IoT ビジネスを推進しているといえる.これらの企 業例を元にビジネス・エコシステムにおける立ち位置を集計すると表 9 と なる.
表
9
ビジネス・エコシステムの立ち位置キーストーンとしての役割を果たしている企業は,プラットフォームの所
18 http://sanki.komatsu/common/pdf/product/komtrax/KOMTRAX.pdf
ポジション 合計 既存企業 ベンチャー
キーストーン 5 1 4
ハブの領主 13 8 5
ニッチ・プレイヤー 12 8 5
筆者作成
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有者であり,多くのニッチ・プレイヤーを取り込むという点では,5 社しか ない.現時点では,ハブの領主の方が多く散見される.これは,先行研究で は重要と指摘しているビジネス・エコシステムの構築が十分になされていな いことがいえる.
既存事業に関しては顧客との関係性構築に IoT を利用しており,加えてエ コシステムを構築するための事業戦略の検討までが行われていないものと 推測する.その背景には,既存のバリューチェーンが完成しており,新たに ビジネス・エコシステムの構築を行う必然性が現時点では見いだせられない,
あるいは新たな収益としての事業戦略が検討されていないと推測する.GE 社 は,ソフトウェアを中核としたビジネスを GE Digital 社によって推進して いる. 既に GE 社は自社のデータだけでは,顧客への価値提供に限界がある ことを理解しており,外部との関係性を構築する上でのビジネス・エコシス テムを構築した.
ベンチャー企業は,ハブの領主,ニッチ・プレイヤーとして立ち位置が多 い.特に製品を販売している企業は,ハブの領主にとどまっている事例が多 い.QRIO 社は製品としての新規性があるが他のシステムとは連携する機能 はない.Mimo 社は NEST のビジネス・エコシステムのニッチ・プレイヤーと もいえる.製品は,市場に対して受け入れられることと同時に持続性を検討 する必要がある.Mimo 社の製品は,最長でも 3 年程度とプロダクトライフ サイクルが短い.このような問題に対してどのようにするかがブルーオーシ ャン市場を狙った IoT ベンチャー企業の戦略的課題といえる.
要素技術に特化したベンチャー企業は,IoT というエコシステムにおける システム間をつなぐ役割を担っているといえる.杉山ら(2011)は,エコシス テムは新しい価値創造の構想実現をしようとする集合体と述べており,価値 を創造する上で人工物(Artefact)が必要であり,それらを創造するエージェ ントが存在するとしている. 杉山らのエージェントモデルを元に IoT にお けるエージェントモデルを図 15 に示す.
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図
15 IoT
におけるレイヤーとエージェントの例センサー開発企業は,無数にあるためエージェントとしての事例は割愛す る.センサーが出力した情報を SIGFOX 社や Jasper 社のネットワーク層で収 集,クラウド層で蓄積する.蓄積されたデータは,分析層において用途に応 じて分析される.KAESER 社のクラウド層,分析層には SAP 社のパッケージ が利用されている.UI 層,分析層としては渋滞情報を提供するベンチャー企 業 Inrix 社がある.同社は,自動運転を目指す企業に渋滞情報を提供するビ ジネスを行っている.
要素技術に特化するベンチャー企業がパフォーマンスを出すことによっ て,複数のエコシステムが健全化されるという考えが可能となる.また,イ アンシティ(2004)もキーストーン戦略においてニッチ・プレイヤーは共有さ れることを示している.
企業事例の調査から現状は,IoT という規模でのビジネス・エコシステム が構築されつつある段階と推測する.
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