第 4 章 先行研究,企業事例からの考察
4.4. IoT における組織構築における考察
先行研究ではトップダウンによる組織構築が望ましいとしている.組織に は,多種多様の部門と実行するオペレーションが存在する.そのすべてを変 更するには,大変な動力と時間が必要となる.ただ,イノベーションに限れ ば Dyer ら(2014)は組織でなくリーダーシップが重要であるとしている.イ ノベーションを起こすリーダーに求める資質として,「Associating(関連づ け)」「Questioning(質問力)」「Observing(観察力)」「Experimenting(実験)」
著者作成
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「Networking(ネットワーク力)」が重要であるとしている.リーダーだけの 能力で組織は動くわけではない.IoT の先行事例の多くは,B2B であっても B2C であっても観察力が必要である.実際にサービスを提供し,事例を観察 によって得られた結果を実験し,他のデータと関連づけるという一連のプロ セスが動いている状況が望ましいと考えられる.また,Amabile ら(2014)は,
世界的な有名なデザイン企業 IDEO 社の社員の働き方を調査した結果,IDEO 社では社員同士のコミュニケーションを密におこない,仕事だけではない関 係性からアドバイスをうけ,プロジェクトを進めていることを示している.
IDEO 社に限らず多くの企業は 1 人の天才だけに頼っていられない状況であ り,社員の協業がプロジェクトの成果に直結することを示している.
メンバーが持つ知識を組織全体に共有する上では,野中ら(2004)の図 20 の SECI モデルを利用し,暗黙知を形式知化するプロセスの実行が有効とな る.
図
20 SECI
モデルこの SECI モデルを実行し,「あるべき形」の明確化を実践することが望ま しい.Porter のモデルを踏まえるとサービスまでを構築して初めて IoT の 事業として成立する.IoT は末端のセンサー類を除いてその要素技術はほと んどがアプリケーションによるものである.結果が正しいかは短いサイクル でシステムを開発するアジャイルの手法を利用して繰り返すことが望まし
野中& 竹内 (1996).より筆者作成
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いと推測する.Watts(2011)は,過去の経験より繰り返しテストを行う方が 望ましいと指摘しており,IoT におけるサービス化のような事例では,有効 な手法といえる.特にユーザーが何を知りたいか,何を利用したかが不明な 場合は,重要なアプローチになる.クボタ社が KSAS を開発時,自社で開発 した UI をモニターユーザーに利用してもらい,同社の社員が現地を訪問し 利用状況を観察した.圃場によって品種,作付け数量の情報を一覧で表示し た方が使いやすいという思い込みで開発したところ,モニターユーザーに取 ってはあまり利便性の高いユーザーインターフェイスではなかったことが 判明した.作業進捗に関しても天候や機器不調などで予定通りならないこと が多く,すぐに変更できるように修正したとしている.このアプローチは,
デザイン思考のアプローチといえる.
紺野(2010)は,世界最大手の設計事務所,日建設計株式会社の Team-x の アプローチを取り上げている.同社の Team-x は,ユーザー視点に立った建 築空間設計における経験デザインを提供しており,設計を検討する設計チー ムと協業し,コンセプトを提言するタスクフォースである.Team-x の役割 は,将来的な社会変化や消費者やユーザーの視点からデザインの方向を導き だすことである.このチームの特徴は,顧客が言葉に出来ない要件や気が付 いていないが重要な見地を引き出すこととしている.そのため,Team-x で は,シナリオ・プランニング,フィールドワーク等の質的研究方法論,世の 中から見たクライアントの状況などのブランド的観点(ソーシャル・マッピ ング)を加えてクライアントとの緊密な関係を築きつつ,方向性やコンセプ トを策定する.クボタ社がおこなったモニターユーザーによるテストは,自 らの認識が及ばない部分について,フィールドワークを通じてユーザーイン ターフェイスの改修を繰り返し,アプリケーションデザインを構築した.
もの作りという観点では,延岡(2006)は日本企業と米国企業の製品・工程 のアーキテクチャーを図 21 の様に示している.
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図
21
組織能力と製品アーキテクチャー日本企業の場合,擦り合わせ能力が高く,米国企業では,組み合わせ能力 が高いことを示している.また,アーキテクチャーに関しては,日本企業は インテグラル型,北米企業ではモジュラー型が強いとされている.既存製品 に対しての IoT 化は,インテグラル型,モジュラー型の両方の作業が発生す る.GE 社,クボタ社の事例は,センサーのインターフェイス擦り合わせ作業 はインテグラル型の特徴といえる.また,ダイキン社の事例は通信モジュー ルを導入することで実装を可能とした.従って,導入するものの状況に応じ て,インテグラル型,モジュラー型の両面のもの作りが発生する.
擦り合わせ結果として如何に製品を開発するかが次の課題となる.藤本 (2004)は,アーキテクチャーを全体機能と構造設計に分け,機能要素と構成 部品の関連を示している.
延岡(2006)より筆者作成
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図
22
アーキテクチャーの図既存製品に新たな機能として導入する場合は,サブ機能に該当する.一方,
単一で機能そのものが IoT 製品の場合,部品そのものは,データを取得する 装置となる.前者の場合,既存製品の方が難しいことはこれまでの指摘した とおりである.Mimo 社の製品の様に目的と製品が一致している場合,部品と 表記されている部分がソフトウェアに変わる.従って全体としての商品は,
センサーとソフトウェアによって成立する.センサーとソフトウェアは,直 結の関係性でもあるが,各センサーから出力された情報を統合的に処理し,
別の価値を提供することが可能である.様々なデータを統合し,情報提供す るという要素がこれまでのもの作りとはやや異なる部分ではないかと推測 する.SIGFOX 社,Jasper 社が提供する通信とクラウドをセットで提供する 企業から調達し,価値創造の目的に応じてモジュラー型とインテグラル型を バランスよく採用しながら製品を開発することが望ましい.
以上から組織には,広範囲の知識と知識の共有が要求される.また,従来 型の組織ではなく,イノベイティブな能力も要求される.オルドリッチ (1997)は「進化する環境の中で組織個体群が生存できるのは,変化する状況 により,良く適合する新しい組織が創設されるときだけである」と指摘して いる.よって,顧客ニーズの取得,製品開発,システム設計,開発,上市ま でをとらえた組織が必要になるものと考察する.
藤本 (2004)より筆者作成
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