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日本人男性肥満者における血清VEGF,bFGF濃度の検討と血管新生因子

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Academic year: 2021

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「肥満研究」Vol. 10 No. 3 2004 <トピックス> 肥田 綾,ほか

トピックス

1.血管新生因子としての

VEGF,bFGF

血管新生とは既存の血管から内皮細 胞が増殖,遊走し娘血管枝を形成する 狭義の血管新生(angiogenesis)と,血 管内皮前駆細胞と造血幹細胞から全く 新たに血管と血液細胞に発生分化する 血管形成(vasculogenesis)とに分けら れ,これらの一連の過程における分化, 遊走,増殖には各血管新生因子による 刺激が関わっている.血管新生因子に はVEGF(vascular endothelial growth factor),bFGF(basic fibroblast growth factor),IL-8(interleukin-8),EGF ( epidermal growth factor), HGF (hepatocyte growth factor) ,angiopoi-etin-1,angiopoietin-2などが知られて おり,末梢性血管疾患・虚血性心疾患 の治療に遺伝子治療という形で応用法 が開発されてきている.最近では血管 新生目的で狭心症患者の心筋内に直接 注入する治療やカテーテルにより冠動 脈内から直接注入する治療が開始され ている1) .ところがVEGFは動脈壁に おける血管新生を介してプラークの形 成に関与しているとの指摘もあり2, 3) , 血管新生因子と動脈硬化との関連,す なわち血管新生因子が常に動脈硬化の 進展に対して保護的に働いているかど うかは未だ不明な点が残されている.

2.血管新生療法と動脈硬化

虚血性心疾患や末梢性血管疾患の治 療は医学の進歩により劇的に発展して いるが,それにもかかわらず,これら の疾患は生活習慣などの変化にともな い減少するどころかむしろ増加傾向に ある.また高齢者の増加にともない, 従来の治療戦略より非侵襲的な治療の 開発が望まれており血管新生療法の有 用性が期待されている. 最近の報告において,重症下肢虚血 患者における血管新生因子(VEGF, FGF)の皮膚・筋肉における発現は, FGFは両者で正常者に比べ患部で増 加傾向にあるが,VEGFは皮膚で低下 し筋肉においては変化を認めないこと などからVEGFの方が下肢虚血患者の 治療に対して効果的ではないかとあ り4) ,また心筋虚血においては直接心 筋内へのVEGF,bFGFの注入で血流 が改善し5),急性期においては微小血 管の成長を促進,左室機能を改善する ことでbFGFにより効果があると報告 されている. また,動脈硬化病変における血管新 生因子の関与も注目され,現在では VEGFにはA,B,C,D,Eのサブフ ァミリーが同定されており,Juhaら はVEGF-Dは正常大血管や早期の動脈 硬化病変においては血管新生を誘導し たり,血管の恒常性を保持したりメン テナンスの役割を担っているが,進行 した動脈硬化病変に対してはVEGF-D はマクロファージ内で発現しプラーク 形成を促進していると報告しており6) , 血管の状態に応じて血管新生因子にも 作用の違いが認められると思われた. 一方閉塞性動脈硬化症や心筋梗塞へ の遺伝子治療が期待される血管新生療 法であるが,悪性腫瘍の進展や悪化に 対する懸念も未だ完全には払拭されて いない.腫瘍の増大,進展にも血管新 生は必要不可欠であり,各血管新生因 子との関連が報告されているが,非小 細胞癌においてはVEGF,bFGF濃度 が高値である場合予後が不良で,また リンパ節転移における予後不良因子で もあり,単独ではなく,両者をターゲ ットとした治療が必要であるといわれ ている7).また,甲状腺・副甲状腺腫 瘍 患 者 に お い て 血 清 中 の V E G F , bFGFを比較検討した場合,bFGFは 健常者と比較して上昇しておりこれら の疾患のマーカーになり得るかもしれ ないとの報告もあった8) .このように 各疾患の種類・状態,ステージ,転移 の有無などによって血管新生因子の発 現にも違いが認められており不明な点 が多いが,これらの血管新生因子がこ れら悪性腫瘍の進展を逆に促進する懸 念が残されている.

3.肥満者におけるVEGF,

bFGF濃度の検討

肥満症は増大した脂肪組織から分泌 されるアディポサイトカインが,イン スリン抵抗性・動脈硬化の進展に関与 していると考えられており,脂肪組織 の増大には血管新生の過程が必須で, 脂肪組織からは種々の血管新生因子た と え ば vascular endothelial growth factor(VEGF)やbasic fibroblast growth factor(bFGF)が分泌されていること

日本人男性肥満者における血清VEGF,bFGF濃度

の検討と血管新生因子

岡山大学大学院医歯学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学

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肥満と血管新生因子 VEGF ( ng/m l) VEGF ( ng/m l) VEGF ( ng/m l) bFGF ( ng/m l) bFGF ( ng/m l) bFGF ( ng/m l) BMI(kg/m2 内臓脂肪面積(cm2 皮下脂肪面積(cm2 BMI(kg/m2 内臓脂肪面積(cm2 皮下脂肪面積(cm2 r=−0.457 p=0.0001 r=−0.466 p<0.0001 r=−0.619 p<0.0001 r=0.311 p=0.017 r=0.183 p=0.166 r=0.350 p=0.007 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 60 50 40 30 20 10 0 60 50 40 30 20 10 0 60 50 40 30 20 10 0 275 275 250 250 175 200 225 175 200 225 0 25 50 75 100 125 150 0 25 50 75 100 125 150 225 225 0 25 50 75 100 125 150 175 200 0 25 50 75 100 125 150 175 200 40 40 37.5 37.5 35 35 17.5 20 22.5 25 27.5 30 32.5 17.5 20 22.5 25 27.5 30 32.5 図2 日本人男性非肥満者31名と肥満者30名のVEGF,bFGFと身体組成との関連

(Seida A, et al.:Int J Obes Relat Metab Disord 2003, 27:1325―1331) 35 30 25 20 15 10 5 0 BMI p<0.001 非肥満者 肥満者 (kg/m2 200 150 100 50 0 内臓脂肪 p<0.001 非肥満者 肥満者 (cm2 250 200 150 100 50 0 皮下脂肪 p<0.001 非肥満者 肥満者 (cm2 非肥満者 肥満者 5 4 3 2 1 0 HOMA-IR p<0.001 非肥満者 肥満者 40 35 30 25 20 15 10 5 0 bFGF p<0.001 非肥満者 肥満者 (ng/ml) 2.5 2 1.5 1 0.5 0 VEGF p<0.002 非肥満者 肥満者 (ng/ml) 図1 日本人男性非肥満者31名と肥満者30名の比較

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が報告されている9∼11) . 肥満者はリスクファクターの集積に より動脈硬化が進展するが,これらの 血管新生因子の血中濃度と身体組成と の関連や,肥満症の病態への関与はい まだ明らかではない.そこで,われわ れは日本人男性肥満者と非肥満者の血 清VEGF濃度,血清bFGF濃度と身体 組成との関連をまず検討し,さらに肥 満者に対しては6カ月間の運動プログ ラムを施行して,プログラム前後での 血清VEGFおよびbFGF濃度の変化と, 身体組成・運動能力との関連性を検討 することとした.肥満者30名と非肥満 者31名を対象者とし,肥満者に対して 各運動プログラムを行い6カ月間のプ ログラム前後で調査を行った12∼14) . 追跡開始時の日本人男性肥満者で は,VEGF濃度が有意に上昇していた が逆にbFGFは有意に低値を示してお り(図1),また,BMI・体脂肪分布 との相関においては,血清VEGFレベ ルはBMIと皮下脂肪面積に対して緩や かな正の相関があり,一方,bFGFは BMI,内臓脂肪面積,皮下脂肪面積い ずれに対しても有意な負の相関を認め た14) (図2). 肥満者において6カ月間の運動プロ グラム前後での比較をした場合,血清 bFGF値は著明に上昇しており(図3), 非肥満者と肥満者の運動前後における 血清bFGFレベルとBMIとの関連にお いては,運動後に肥満者のbFGFレベ ルは非肥満者とほぼ同様の範囲まで上 昇していた14) (図4). 今回の検討では運動療法後にbFGF

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「肥満研究」Vol. 10 No. 3 2004 <トピックス> 肥田 綾,ほか 32 31 30 29 28 27 26 BMI p<0.001 運動前 6カ月後 (kg/m2 ) (ng/ml) 200 100 0 内臓脂肪 p=0.019 運動前 6カ月後 (cm2 ) 250 200 150 100 50 0 皮下脂肪 p=0.003 運動前 6カ月後 (cm2 ) 5 4 3 2 1 0 HOMA-IR p<0.001 運動前 6カ月後 30 25 20 15 10 5 0 bFGF p<0.001 運動前 6カ月後 (ng/ml) 3 2 1 0 VEGF p=0.016 運動前 6カ月後 運動前 6カ月後 図3 日本人男性肥満者30名の運動前後での比較 bFGF ( ng/ml ) 60 50 40 30 20 10 0 17.5 20 22.5 25 27.5 30 32.5 35 37.5 40 BMI(kg/m2 非肥満者 肥満者(運動前) 肥満者(運動後) 図4 日本人男性非肥満者31名と肥満者30名(運動前後)の血清bFGFレベル

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が著明に上昇しその変化が運動能力の 改善(換気性域値の最大酸素摂取量) と相関していることより,血清bFGF は脂肪組織から主として反映している のではなく,筋肉内での血管新生を反 映している可能性があると思われ,さ らに運動療法によるbFGFの上昇は, 動脈硬化の進展に対して保護的に働い ている可能性も示唆された14) . 文 献

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肥満と血管新生因子

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