糖 尿病患者の 家族の ソ ー シ ャ ル サ ポ ー ト測 定 尺 度 作成の試 み
矢田和誉1), 横田 恵子2 ), 高閣静子2 )
1) 富 山 医 科 薬 科 大 学 医 学 部 看 護 学 科 学 生
2) 富 山 医 科 薬 科 大 学 医 学 部 看 護 学 科
要 旨
本 研 究で は, 成 人 糖 尿 病 患 者の家 族の ソ ー シ ャ ルサ ポ ー ト測 定 尺 度を作 成し, そ の信 頼 性 ・ 妥 当性につ いて検 討し た. 家 族の ソ ー シ ャ ルサ ポ ー トの程 度を測 定するための項 目原 案は, 家 族の
ソ ー シ ャ ルサ ポ ー ト の概 念 枠 組み に沿 っ て作 成した. 対 象は大 学 附 属 病 院の糖 尿 病 外 来 受 診 者
10 8名と し, 自 記 式 質 問 紙 調 査 法を と っ た. 因 子 分 析の結 果 「清 潔ソ ー シ ャ ル サ ポ ー ト因 子」,
「 食 事ソ ‑ シ ャ ルサ ポ ー ト因 子」, 「 感 染 防 止ソ ー シ ャ ルサ ポ ー ト因 子」, 「休 息 ・ 睡 眠ソ ー シ ャ ル
サ ポ ー ト因 子」, 「 運 動ソ ー シ ャ ルサ ポ ー ト因 子」 の 5 因 子3 0項 目か ら なる尺 度を構 成して い る. 本 尺軍の内容 妥 当 性 ・ 回 答 分 布の偏り ・ 弁 別 的 妥 当 性 ・ 基 準 関連 妥 当性 ・ 信 頼 性が確認でき, 高
い信 頼 性と妥 当性を認め る ことの できる尺 度である こと を確認 し た.
キ ー ワ ー ド
糖 尿 病, 家 族, ソ ー シ ャ ルサ ポ ー ト, 尺 度
序
糖 尿 病は, 障 臓か ら分 泌さ れる ホ ル モ ンである イ ン ス リン の絶 対 的 作 用 不 足あるい は感 受 性 低 下 か ら く る作 用 不 足に より慢 性 的な高 血 糖 状 態を き たす疾 患で あるl ). 「糖 尿 病は, そ の進 行 防 止と 合 併 症 予 防のた め, 生 活 習 慣を含め た生 涯にわた る自己管理行 動の継 続が重 要な疾 患であ る」2 '. 安 酸は, 「糖 尿 病は慢 性 疾 患の中でもその治 療が 食 事 療 法, 運動 療 法を中心 と する患 者の自己管理 に多く を依 存してい るとい う意 味で特 異 的で あ る」3 )と し, 自己管理の 重 要 性を説い てい る. 日
野らは, 「糖 尿 病の療 養は自己管理行 動, あるい はセ ル フ ケア行 動が大きい比重を占め る. よりよ い血 糖コ
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ン トロ ー ルを達 成する た め に は, 患 者 個 人の セ ル フ ケア行 動の レベ ルを高め ていく必 要が ある」4 ) と論じてい る.
また, ソ ー シ ャ ルサ ポ ー ト ( 社 会 的 支 援) に関
する研 究は数 多く行わ れてお り, 金は 「慢 性 疾 患 患 者の ように長 期にわた る治 療や健 康 行 動の自己 管理 が必 要な場 合に は, ソ ー シ ャ ルサ ポ ー トの果 た す役 割は非 常に大きい」5 ) と論じて い る. 宗 像
は, 「 患 者は周りの人の 支 援が得ら れ ないと, セ
ル フケア の意 欲は低 下し や すい. ま た, 本 人がセ
ル フケア行 動を行お う とせず, 周 囲の家族の気 持 ち を考え てい ないと, 周 囲の人 達も支援しよう と する気 持ち を失いやす い」6 ) と述べ てい る. 浜田 らは, 糖 尿 病 患 者が行 動 変 容を起こすた め の動 機
づけ を高め る要 因の 一 つに家 族サ ポ ー トを あ げて お り7 ), 石 井は, 糖 尿 病 患 者の セ ル フケ ア行 動に 影響を与え るもの の 一 つと して家 族環境を挙げて い る8 ). 「患 者に最も近い ソ ー シ ャ ルサ ポ ー ト提 供 者と して家 族が存在する. 家 族は 日 々の生 活を 共に過ごし, お 互 い に強い影 響を与え あい , 様々
な機 能を有して い る. その機 能の 一 つ と して ヘ ル
ス ケア機 能が存 在する. 家 族に糖 尿 病 患 者がい る
家 族ソ ー シ ャ ルサ ポ ー ト尺 度
と き, 食 事や運 動な どの自己管理行動を良 好に行 う ため に は, 生 活環 境の共 有 者であ り,
ヘ ル ス ケ
ア の提 供 者である家 族か らの サ ポ ー トが重 要で あ る」 2・9 )
本 研 究で は糖 尿 病 患 者 教 育とその家 族 教 育に役 立て る た め, ソ ー シ ャルサ ポ ー トと して家 族の サ
ポ ー トを取り上げ, 家 族の ソ ー シ ャ ルサ ポ ー トの
程 度を評 価 する た めの尺 度の作 成を試み, 信 頼 性 と妥 当性の検 討を行 っ た.
概念枠 組み
糖 尿 病で は, 慢 性 的な高 血 糖 状 態が問 題と な る1O ). 管理 の目 標の第 一 は, 血 糖をコ ント ロ ー ル
することである4 ).
コ ント ロ ー ル不 良は, 高血 糖,
昏 睡, 低 血 糖など を き た す10 ). 高 血 糖の持 続は,
糖 尿 病 性 神 経 障 害, 糖 尿 病 性 腎症, 糖 尿 病 性 網 膜 症な どの糖 尿 病 合 併 症の 出 現また は悪 化を きた す10 ). 「糖 尿 病は, そ の進 行 防 止と合 併 症 予 防の
た め, 生 活 習 慣を含め た生 涯にわた る自己管理行 動の継 続が重 要な疾 患で ある」2 ).
糖 尿 病 自己管理の概 念 枠 組み と して, 食 事 管理 が あ げ ら れる1 1). イ ン ス リ ン分泌能に相 応しない
食 事 摂 取は高 血 糖を きたす. 高 血 糖は免 疫 機 能を 低 下させ, 感 染 ( 呼 吸 器 感 染, 口腔 感 染, 尿 路 感 染, 下 肢 感 染な ど) を引き起こす10 ). 感 染を防 止 する た め に全 身の, 特に足の清 潔 管理 が 必要であ る12 ). 尿 路 感 染を予 防するため に, 排 他 管理は自 己管理項 目と して必 要である1 3). 治 療の基 本であ る運 動 管理 も, 食 事 管理 と同様の理由で自己管理 が必要である. しかし, 小玉は フ ァ ー ス トフ ー ド に よ る栄 養の偏り と 過食, 自家用車の普 及に よ る 運 動 不 足 等で, 容 易に自己管理 が行え ない状 況に あると報 告してい る14 ). 糖 尿 病の自己管理 に は,
欲 望を抑え る強い意 志と 忍耐が必 要で ある. その
際, 家 族の理解と協 力が 重要とな る. また, 清 潔 行 動, 感 染 予 防行 動は患 者 自 身が不 快 感を感じ な
い限り, 行 動 化されることば少ない. そ の た め,
患 者が それ らの行 動を積 極 的に行うように, 家 族
は声をか けること が必要とな る.
「 心 理的ス ト レス に つ い て は, 日常 的な出 来 事 (daily ha s sle s) お よび人生に おける強い 出 来 事
(ラ イ フイベ ン ト:1ife e v e nt) と血 糖コ ン ト ロ ー
ル の関 係につ い て検 討さ れて い る. その結 果, 大 きい ス ト レ スが長く続く様な場 合, ア ド レナ リ ン な どの ホ ル モ ンを介して直 接 的に, ま たセ ル フケ
ア行 動を妨げる ことに よ っ て間 接 的に, H bA I C が悪 化す る こと が知ら れて い る」4 ). ス トレ ス 管 理に は, 休 息 。 睡 眠 管理 が重 要となり, 休 息 ・ 睡 眠 管理は, 血 糖コ ン トロ ー ル, 悪 化 防 止に関 係す る. ラ ザ ル ス は, ス トレ ス評 価に影 響を与え る個 人の要 因と して価 値 観や信 念を あ げ, 環 境の要 因 と して社 会 的 支 援を あ げて い る15 ). 榊は, 「支 援 してく れる友 人が多い人は そうでない人に比べ,
同じ状 況でもス トレ ス と感じる こと が少ない」16 ) と述べ てい る. 患 者にス トレ スがかか ら ない よう に, 家 族は患 者を観 察し, 十 分な休 息 ・ 睡 眠が と れる よう配 慮すること が必 要である.
糖 尿 病の コ ン トロ ー ルは, 本 人の自覚に基づい
た生 活 規 制が十 分 行わ れる こと が基 本で はあるが,
医学 的に み て適 切な規制が な さ れる こと が特に大 切で ある. 患 者は定 期 的に通 院し, い っも医 師か ら十 分にア ドバ イス を受け ら れる ようにすること が必 要である17). 薪は, 男 性 糖 尿 病 患 者で は通院 不 良が血 糖コ ン トロ ー ル不 良に影 響してい ると述
べてお り, また働き盛りの年 代に通 院 中 断の頻 度 が高く, 中 断の理由と して仕 事の多 忙を あ げた症 例が多い こと を報 告して い る18 ). 福 西1 9) は自己管 理 を難し く して い る職 業と して サ ラ リ ー マ ンを あ
げてお り, 細 川2 0 ) に よ ると、 営 業 時 間の不 規 則は
食 事 療 法や 運動 療 法に支 障を きたし, 血 糖コ ン ト
ロ ー ルを困難にして い ると報 告してい る. 従 っ て,
受 診 管理, 労 働 管理は自己管理項 目と して必要で ある. 「糖 尿 病は自 覚 症 状の ない こと が多く, 自 分で は良 好に コ ン トロ ー ルさ れてい ると思 っ てい
ても, 検 査で は異 常の ある場 合も多い」21). 家 族 が, 患 者に常に定 期 的な受 診する よう を促す必 要
がある.
以上の こと か ら, 食 事, 運動, 皮 膚の清 潔, 衣 脂, 休 息 ・ 睡 眠, 排 滑, 労 働, 受 診の自己管理に はソ ー シ ャルサ ポ ー ト が必要であ り, 家 族ソ ー シ ャ ル サ ポ ー トを構 成する要 素と考え る.
研究 方 法
1 . 尺度の質 問 項 目 原 案の作 成
本 研 究で は, 家 族の ソ ー シ ャ ルサ ポ ー トの概 念 枠 組み を作 成し た. 食 事, 運 動, 皮 膚の清 潔, 衣 服, 休 息 ・ 睡 眠, 排 他, 労 働, 受 診 等に対 する糖 尿 病 患 者の自 己管理項 目に対 する サ ポ ー トを家 族
の ソ ー シ ャ ルサ ポ ー トの構 成 項 目と考えて, これ らの ソ ー シ ャ ルサ ポ ー トを受けることが できてい るか否か をみ る た め の質 問項 目 原 案を作 成し た.
2 . 内 容 妥 当 性の検 討
概 念 枠 組み に そ っ て測 定 内 容が測 定したい と考 え た対 象を正し く測 定して い るか を, 研 究 者で意 味 内容が重 複して い ないか, 測 定し たい と考え た 内容 項 目が欠 損して い ないか を検 討し た.
3 . 表 面 妥 当 性の検 討
被検 者は大 学 附 属 病 院に通院してい る糖 尿 病 患 者3 名で ある. 類 似 質 問 内 容, 質 問 内容の不 明 瞭
な箇 所を指 摘して も らい, 表 現の修正, 削 除, 項 目の統 合な ど を行い再 度 検 討し た.
4 . 調査 対 象
被 調 査 者は, 大 学 附属 病 院の外 来に通院 中の糖 尿 病 患 者で, 本 調 査の主 旨に同 意の得ら れた 1 59 名で あ っ た. 年 齢 範 囲を, 本 研 究が成 人を対 象と
したため に2 0歳 未 満を除 外し, また高 齢で調 査の 記 入に支 障が あ る と判 断して6 6歳以上の患 者も除 外した.
5 . 構 成 概 念 妥 当 性の検 討
因子 分 析に は主成 分 分 析を 選 び, バリマ ッ クス
回転を行 っ て因 子 構 造を確認 した. 概 念 枠 組み に 添っ た因 子構 造になるまで この方 法を繰り返し た. 6 . 回答分布の偏り
回 答 分 布に極 端な偏りの ある項 目を排 除する目 的で, 糖 尿 病 患 者の ソ ー シ ャ ルサ ポ ー ト得点の尖 度と歪 度を確 認した.
7 . 弁 別 的 妥 当 性の検 討
各 項 目の弁 別 力を検 討する た め に, 質 問 項 目の 中で排 除す べ き項 目を確 認する目 的で, G o od‑ P o o r(G P) 分 析を行っ た.
8 . 信 頼 性の確認
ソ ー シ ャ ル サ ポ ー ト因 子 別の 内 部 整 合 性は,
Cr o nba ch's α 係数を算 出し確認 した.
9 . 基 準 関 連 妥 当 性の検 討
ソ ー シ ャ ルサ ポ ー ト度の総 得 点と自己管理総 得 点との関 係を, ピア ソ ンの積 率相 関係 数を求め確 認した. 自己管理尺度は, 家族の ソ ー シ ャ ルサ ポ ー
トの概 念と関連し た類 似 概 念で構 成さ れてい ると 判 断し, 吉田の糖 尿 病 患 者の 自己管理測 定 尺 度22 )
を 一 部 改 訂して使 用し た. 1 0. デ ー タの統 計 処理
因 子 分 析, 尖 度 ・ 歪 度, 標 準 偏 差, GP 分 析,
表1 調 査 対 象の属 性 n ‑1 08
属 性 群 人 数 (%)
年 齢 2 1 ‑ 30 歳 4 (3 .8) 3 1 ‑ 4 0 歳 5 (4 .7) 4 1 ‑ 5 0 歳 1 2 (ll .1) 5 1 ‑ 6 0 歳 37 (34 .3) 61 ‑ 6 5 歳 50 (46 .3)
性 別 75 (69 .4)
33 (30 .3)
入 院 歴 67 (62 .0)
41 (3 8.0)
入 院 回 数 回
回 回 回 上 回 以 O ー 2 3 4
40 (3 7.0) 35 (3 2.4) 21 (1 9.4) 6 (5.6) 6 (5.6)
糖 尿 病 歴 内
年 年 年 上 以
‑ 5 10
以 年
〜
〜
〜
年
‑
‑
‑
‑ 1 0
4 (3.7) 8 (7.4) 9 (8.3) 2 8 (2 5.9) 5 9 (5 4.6)
食 事 療 法 に
い し り く 常
止
ま
.
1
非 だ 少 あ 全
3 (2.8) 4 9 (45.4) 2 6 (2 4.1) 2 8 (25.9) 2 (1.9)
外 食 毎
昼 食 毎
食 み 日 の
1 (0.9) 7 (6.5) 2 (1.9) 1 ‑ 2 回/ 週 38 (35.2) して いない 60 (55.6) 5.8 未 満
5.8 ‑ 6.5 6.6 ‑ 7.9 8.0 以 上
12 (ll.1) 18 (16.7) 53 (49.1) 23 (2 1.3)
※食 事 療 法の回答 肢の説 明
非 常に : 非 常に守ら れて いる と思う だいたい : だいたい守ら れて いる と 思 う 少し: 少し守ら れて いる と思う
あ ま り: あ ま り守ら れて いないと 思 う 全く: 全く守ること ができて いないと 思 う