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超高齢者( 80 歳以上)に対する冠動脈外科治療戦略とその成績

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(1)

I.はじめに

 冠動脈バイパス手術患者の平均年齢は年毎に上昇してお り,超高齢者とされる 80 歳以上の手術患者数も年々増加 の傾向がみられている.術前に多数の合併症をもった超高 齢者のこれまでの手術成績は若年者に比較するとかなり不 良であった.しかし,off-pump CABG(OPCAB)が導入さ れ,合併症をもった患者,手術リスクの高い患者の手術成 績は著明に改善してきている.本邦でも 2000 年前後か ら,OPCAB の数が急増し,デバイスの性能や外科医の技 術の向上から,良好な手術成績が多数報告されるように なった.このような背景のなかで,超高齢者に対する当科 での治療方針とその成績を検討し,文献的考察を加えた.

II.対象,当院の治療方針および検討項目

 2000 年 1 月から 2006 年 12 月の 7 年間に当院で施行され た単独冠動脈バイパス手術は 579 例で,そのうち 80 歳以上 の 62 症例を対象とした.当科の方針として,80 歳以上の 高齢者の CABG 手術は,OPCAB を第一選択として行って いる.ただ,心拡大や心不全等で OPCAB が困難な症例の 場合,胸部 CT や頸部血管エコー,MRI 検査等を総合判断 して,体外循環の合併症発症のリスクの低い患者では,人 工心肺下の on-pump beating で手術を施行し,リスクの高 い患者では,OPCAB とカテーテルインターベンション

(PCI)を併用した,いわゆるハイブリッド治療を行ってい る.また,術後の一過性心房細動の発生頻度が高い高齢者 では,術後早期より,ヘパリンの点滴投与と,経口開始後 はワーファリンの投与を行っている.抗生剤の予防的投与 は,2005 年まで,術前,術中投与のみで術後投与は行っ ていなかったが,術後の感染を懸念して,2006 年からは 術後 3 日間行った.今回,検討した CABG 手術は conven- tional CABG 症例と OPCAB 症例を含み,これらについて 術前の患者背景(若年者との違い),術後合併症の発生頻 度,単独 CABG 全患者との手術成績を比較検討した(統計 処理は F 検定およびc2検定を用いた)

III.当院における手術成績

 当院における超高齢者の CABG 症例は,年々増加し,

2000 年が全単独 CABG のなかで 6.0%であったが,2006 年 には 23.5%まで増加した(図 1)

 手術時年齢は平均 82.8±2.2 歳,男女比は 39/23 であっ た.急性心筋梗塞(AMI)が 15 例,不安定狭心症(U-AP) 31 例と多かった.冠動脈病変も LMT が 31/62(50%)と,

半数が LMT 病変を含んだ症例であった.手術状況として は,緊急手術 13 例(21.0%),準緊急手術 34 例(54.8%)で,

定例手術は 15 例(24.2%)であった.また,術前の血行動態 不良や,U-AP のため,27/62(43.5%)に IABP が挿入され ていたが,ASO のために IABP 挿入不可能な症例も散見 された.手術は conventional  CABG 7 例(初期の症例) on-pump  beating  CABG 5 例,OPCAB 50 例(conversion  1 例を含む)で行った(表 1).バイパス本数は 1 本 11 例,2 本 21 例,3 本 22 例,4 本 6 例,5 本以上 2 例で,内胸動脈

(ITA)の使用率は 50/62(80.6%)であった.平均バイパス 本数は 2.48 本と全体の CABG 症例の平均 3.18 本に比較する と 少 な か っ た.全 患 者 の OPCAB 手 術 率(OPCAB/全 CABG)が 50〜70%であったが(図 2),超高齢者の OPCAB 率は 70〜90%と高かった(図 3).緊急手術の割合を比較す ると,若年者(80 歳未満)では 9.8%であったが,超高齢者 では 21.0% (P<0.05)で,超高齢者の緊急手術が有意に多 かった.

 超高齢者では緊急手術で 2 例,準緊急手術で 1 例の手術 死 亡 が 認 め ら れ た.若 年 者 と 超 高 齢 者 の 死 亡 率 を,全 CABG,緊急 CABG,定例および準緊急 CABG それぞれで 比較すると,2.3%:4.8%,6.8%:15.4%,1.8%:2.0%と 超高齢者にやや,高い傾向が認められたが,統計的には有 意差はなかった(図 4).超高齢者の OPCAB 群と on-pump 群 で の 手 術 死 亡 率 に 関 し て は 4%:8%,(P=0.416)で,

OPCAB 群が低い傾向は認められたが,統計的には有意差 はなかった.OPCAB による完全血行再建困難で,人工心 肺使用のリスクが高い症例に対する OPCAB と術後に PCI を併用するいわゆるハイブリッド治療は 4 例で施行した.

 3 名の手術死亡患者について検討した.2 例が緊急で 済生会熊本病院心臓血管外科(〒 861-4193 熊本市近見 5-3-1)

冠疾患誌  2008; 14:  172-176

総説

超高齢者( 80 歳以上)に対する冠動脈外科治療戦略とその成績

三隅 寛恭,佐々 利明,平山 統一

Misumi H, Sasa T, Hirayama T: Strategy and results of coronary artery bypass grafting in octogenarians. J Jpn Coron Assoc 2008; 14: 172-176

(2)

OPCAB 手術を行った症例であった.最初の 1 例は AMI  ショック状態で手術と PCI のハイブリッド治療で完全血行

再 建 を 行 っ た が,術 後 の VT,  VF  storm が 改 善 せ ず,

PCPS 下に術後管理を行ったが,LOS のため術後 6 日目に 失った.次の 1 例は,術後胃潰瘍からの出血を併発し,

MOF で術後 21 日目に失った.準緊急の 1 例は,塵肺によ る低肺機能症例で,術後の肺炎に起因する MOF で術後 13 日目に失った.合併症としては,術後の縦隔洞炎が 1 例

(1.6%)に認められたが,術後の脳梗塞は認めなかった.

IV.エビデンスと考察

 超高齢者と呼ばれる 80 歳以上の冠動脈バイパス手術症 例は,年々増加してきている.本邦でも,冠動脈外科学会 の統計調査で(2006 年日本冠動脈外科学会統計報告より引 用),初回待機手術の 80 歳以上の占める割合が,2000 年以 降徐々に増加してきており,2005 年が 7.8%,2006 年には 8.7%,70 歳以上の症例に関しては全体の 50.1%にまで達 している(図 5).これは,全体的にバイパス手術の患者の 高齢化だけでなく,デバイスの発達や OPCAB の技術の向 上による高齢者への積極的なバイパス手術の適応が寄与し ていることが想像される.しかし,また,これらの群の周 術期の mortality の高さは,依然として問題点として残っ ており,同統計でも,2000 年には 1.0%にまで減少した初 回定例手術死亡率は,2006 年には 3.0%近くまで再度上昇 した(図 6).これは,超高齢者の手術が増加するほど,よ り多くの合併症を伴った患者や緊急手術率の増加等のリス クの高い手術が増加していることに起因している可能性は 想像に難くない.われわれの施設でも,同様の緊急症例や 消化器合併症,呼吸器合併症の症例を手術死亡で失ってい る.

 1990 年代付近までの超高齢者に対する単独 CABG の成 績は決して良好ではなく,Ko ら1)は,100 例の 80 歳以上 の 患 者 で,定 例 手 術 の 死 亡 率 が 2.8%,準 緊 急 手 術 が 13.5%,緊急手術では 33.3%であり,しかも術後合併症に 関しては,定例手術後でさえも 14%に認められたと報告 した.この時期には,当然心停止下のバイパス術しか行わ れておらず,使用するグラフトに関しても,高齢者に関し J Jpn Coron Assoc 2008; 14: 172-176

1 患者背景と術式80 歳,n=62)

39 / 23 Male / Female

82.8±2.2(80-90)

Age

e-AP 11 / u-AP 31 / SMI 6 / AMI 15 / OMI 11 Pre-op diagnosis 

single 3 / double 7 / triple 21 / LMT 31 Diseased vessels

elective 15 / sub-emergent 34 / emergent 13 Operative condition

CABG 7 / on beating 5 / OPCAB 50(convert : 1)

Procedures

27 / 62 IABP

1 当院における超高齢者 CABG の増加

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 0

20 40 60 80 100

0 5 10 15 20 25 30 (cases)

(%)

4

67 3

74 7

87 11

93

11 84

5 83

18 85

6.0 4.1

8.0

11.8 13.1 7.2

23.5

҈

҈6QVCN

VQVCN ҈ 0

2 4 6 8 10 12 14 16 18 (%)

2.6 2.3 4.8

VQVCN ҈ 0

2 4 6 8 10 12 14 16 18 (%)

8.3 6.8 15.4

VQVCN ҈ 0

2 4 6 8 10 12 14 16 18 (%)

1.8 1.8 2.0

n= 573 511 62 n= 72 59 13 n= 501 452 49

'NGEVKXG 㧗UWDGOGTIGPV 'OGTIGPV

6QVCN

NS

NS NS

4 緊急,準緊急,定例手術の年齢別死亡率

2 全単独 CABG 患者の術式(OPCAB 率)

1PRWOR

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12%#$ψ 1PDGCV

12%#$6QVCN

P 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

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20%

40%

60%

80%

100%

95.5%

4.5%

75.7%

24.3%

23.0%

4.6%

69.0%

3.4%

32.3%

65.6%

2.2%

9.5%

23.8%

65.5%

1.2%

16.9%

25.3%

55.4%

2.4%

11.8%

29.4%

57.6%

1.2%

4.5 24.3

69.0 65.6 65.5

55.4 57.6

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

0%

20%

40%

60%

80%

100%

75.0%

25.0%

66.7%

33.3%

14.3%

71.4%

14.3%

9.1%

90.9%

18.2%

81.8%

16.7%

83.3%

10.0%

90.0%

25.0 33.3

71.4 90.9

81.8 83.3

90.0

1PRWOR

%#$) 1PDGCV 12%#$

12%#$ψ 1PDGCV

12%#$

6QVCN

P

3 超高齢者80 歳)CABG の術式(OPCAB 率)

(3)

ては,ITA を積極的に使用する施設は少なく,静脈グラ フトのみのバイパス術が一般的であった.

 しかし,2000 年前後の OPCAB の技術の向上やスタビラ イザーの改良,apical suction device の導入等により,本 邦では急激に OPCAB 手術数が増加した.2004 年の学会統 計では,全国の初回定例 CABG 手術の OPCAB 手術率が 60%を超え,世界的にも例を見ない OPCAB 先進国となっ た.これに伴い,CABG の適応は拡大され,リスクが高い といわれた,高齢者や合併症を多くもった患者の CABG が 増 加 し て き た.80 歳 以 上 の CABG は 2006 年 に は 全 CABG の 8.7%を占めている.

 超高齢者に対する OPCAB 手術の有効性に関して,Hoff 2)は 1999 年から 2001 年の比較的 OPCAB 導入初期の on- pump 群(116 例)と OPCAB 群(60 例)との手術成績を比較 検討している.このなかで,平均バイパス本数が 3.6 本: 

2.6 本と OPCAB 群が少なかったにもかかわらず,手術死 亡 率 は 4.7%:0%,stroke は 7.1%:0% で OPCAB 群 が 優っており,高齢者に対する CABG の第一選択は OPCAB であると結論している.

 Stamou ら3)は,高齢者の CABG には OPCAB が有用と しながらも,OPCAB を施行してもなお,高齢者に特有の 問題として,術前の AMI の合併率や緊急手術の割合が多 く,術後の肺炎の合併,発作性心房細動の発生率が高齢者 には有意に多いため,同じ OPCAB のなかでは,80 歳以上

の超高齢者群では手術死亡率が有意に高いことを報告して いる.

 Beauford ら4)は,同様に 1999 年から 2001 年にかけての 80 歳以上 113 例の OPCAB の手術成績を報告しているが,

1 患者あたりの平均バイパス本数 3.3 本で,IMA の使用率 83%であった.緊急手術 6%を含む手術成績で手術死亡率 0.9%,合併症として術後の発作性心房細動が最も多く,

43% の 患 者 で 発 症.術 後 の stroke を 4% に,腎 不 全 を 5%,30 日以内の再入院を 8%に認めているが,on-pump 時代の同世代のバイパス手術成績と比較し,良好な満足で きる成績であるとし,超高齢者に対する OPCAB による  多枝バイパス手術は選択すべき術式としている.高齢者  に対する CABG で術後の stroke の原因のひとつとして  問題になるのが,この発作性心房細動の出現であるが,

Athanasiou ら5)は 70 歳 以 上 の on-pump 群 2253 例 と OPCAB 群 764 例での術後の発作性心房細動の発生率を比 較し,on-pump 群 28%:OPCAB 群 22%,odds 比 0.70 で 有意に OPCAB 群で心房細動の発生率が低かったと報告し ている.当院でも高齢者 CABG の術後の心房細動発生率 は高く,術後早期のヘパリン点滴投与の開始と経口摂取が 可能になってから早期のワーファリンのコントロールを行 うようにしている.

 Ricci ら6)は,172 例の on-pump 群,97 例の OPCAB 群 で,術後の stroke の発生率を比較して報告している.

1995 年から 1999 年の OPCAB 導入期の症例で,1 患者あた りの平均バイパス本数は 1.8 本と少なく,OPCAB 群に re- do 等のより重症患者が多く,術後 30 日以内の死亡率が OPCAB 群 10.3%:on-pump 群 5.2%と OPCAB 群に高い傾 向がみられたにもかかわらず,術後の stroke は,OPCAB 群 0%:on-pump 群 9.3%と有意に OPCAB 群で低かったと している.

 また,高齢者でも動脈グラフトを積極的に使用すること  の有用性を指摘する文献も見受けられる.Kurlansky ら7)

は,80 歳以上の単独 CABG 987 症例のうちで,SVG のみ 使用した 574 例と SVG+ITA を使用した 413 例とで比較 し,術後合併症の回避率が 70.2%:64.8%で SVG のみのほ う が 良 好 で あ っ た が,手 術 死 亡 率 が 11.1%:6.3%,で SVG+ITA 群が低く,術後の QOL の指標とされる SF-36 の 評価では,SVG+ITA 群のほうがよりよいスコアを示して おり,ITA を使用した場合の合併症である縦隔洞炎の発 症率に関しては,両群間に有意差は認めなかった.このた め,高齢者でも積極的に動脈グラフトを使用すべきである と 結 論 し て い る.Matsuura ら8)は,ITA,RA,GEA を 含んだ all arterial graft の OPCAB 患者 581 例のなかで,75 歳未満の 470 例と 75 歳以上の 111 例との比較検討を行っ た.両側の ITA 使用例が高齢者群で 9.0%と有意に低いも のの,完全血行再建率は高齢者群 74%,若年者群 80%と 有意差なく,手術死亡率は高齢者群 2.7%:若年者群 0.2%

と有意差なく,心血管イベントも高齢者群 5.1%:若年者 J Jpn Coron Assoc 2008; 14: 172-176

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5 わが国における超高齢者 CABG 手術の増加(冠動脈外科

学会統計より)

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6 全国年齢別手術死亡率の推移(冠動脈外科学会統計より)

(4)

群 5.6%と有意差はなかった.縦隔洞炎の発生率も高齢者 0%:若 年 者 0.9% と 良 好 な 成 績 で あ っ た.高 齢 者 の all  arterial graft 再建術は,若年者のそれと同様に安全で有用 な手術手技であるとしている.

 完全血行再建は,若年者では重要視されるが,高齢者に おいては,はたして手術成績に影響があるのかということ に関しては,Kozower ら9)が,400 例の 80 歳以上の CABG 患者での遠隔成績を完全血行再建か不完全血行再建で比較 検討している.ここで手術死亡率は,13±7%:7±3%で完 全血行再建のほうが有意に低く,5 年生存率も 45±6%:

62±3%で有意に完全血行再建のほうが遠隔成績も良好で あることを報告した.

 超高齢者の CABG 手術の遠隔成績が良好なことを報告 したのは Likosky ら10)で,on-pump CABG と OPCAB の 両者をまとめて出したデータではあるが,80〜84 歳(2661 例)と 85 歳以上(587 例)の患者で,手術生存率は 98.3%と 87.6%で,術後平均生存年数は,80〜84 歳で 7.4 年,85 歳 以上で 5.8 年と驚くほど,術後は長命であった.

 一方,高齢者に対するカテーテルインターベンション

(PCI)の 成 績 は,ど の よ う な も の で あ ろ う か.Feldman 11)は,80 歳以上の 671 例の緊急 PCI と 5782 例の定例 PCI の成績を報告し,入院死亡率は緊急 PCI で 11.5%,定 例 PCI で 1.1%と,緊急の場合には死亡率は多少高いもの の,定例手術に関しては良好な成績であった.これらの成 績はすべて,bare metal stent(BMS)での治療成績で,遠 隔 期 の 情 報 が な い.Dacey ら12)は,多 枝 病 変 に 対 す る CABG と PCI の手術成績と遠隔成績を比較したデータを報 告した.これによると,入院死亡は,PCI が 3.0%,CABG が 5.9%と,CABG のほうがリスクは高いが,術後 5 年生 存率は PCI 60.6%,CABG 68.0%と CABG のほうが優って いると報告している.この研究の問題点は,CABG 患者の ほうがより重症者が多いこと,CABG はほとんどが on- pump であること,ステントはほとんど BMS であること で,単純に現在の PCI,CABG と比較できないところがあ るが,少なくとも手術を乗り越えた患者の予後は,PCI 群 より,CABG 群のほうがよいことを示したデータである.

 Vlaar ら13)は,超高齢者の drug  eluting  stent(DES) 関しての治療成績と 1 年後の中期遠隔成績を報告した.80 歳以上の 366 症例を 80 歳未満症例とともに調査しており,

80 歳以上の手技成功率は 97%,入院死亡が 1.9%と比較的 良好であったが,12 カ月以内の死亡が 8.9%にみられ,12 カ 月 以 内 の MACE(死 亡,再 狭 窄 に 対 す る 再 PCI  や CABG,心 筋 梗 塞 等 の 合 併 症 の 発 生)は,16.1% で 超  高齢者で非常に高い値であることがわかった.これは,

Beauford ら4)の超高齢者の OPCAB における手術死亡が 0.9%(これは非常によい成績であるが)で,13.2 カ月の術後 フォローで,遠隔期死亡 2.6%であることと比較すると,

少なくとも遠隔期成績では,OPCAB が DES による PCI よ りも優れていることを推測させるデータである.

 超高齢者の場合,術前の閉塞性肺障害や,末梢血管病 変,心不全,透析等の合併症が多く,緊急手術の率が高い こともあり,術後の脳梗塞の発症,人工呼吸器管理の長期 化,術後の感染症などが問題になる.このため,入院期間 が長引くばかりでなく,自宅退院できないケースが多いこ と も 事 実 で あ る.Bardakci ら14)は,80 歳 以 上 の CABG

(OPCAB 30%, on-pump 70%)の 8170 例の患者で,平均入 院期間は 14.1 日で,後方支援病院や,ナーシングホームへ の転院が必要な患者が多く,自宅退院できたのは 52.4%で あったと報告している.当院でも超高齢者は直接退院は少 なく,転院してリハビリを継続した後に退院するケースが 多い.今後は,このような,後方支援病院の存在が重要に なってくると思われる.

V.結  論

 超高齢者の手術成績は,術前の合併症が多いことや緊急 手術が多い等のリスクの高い手術になるため,若年者に比 較するとやや劣る点はあるが,OPCAB の導入で手術成績 は 著 明 に 改 善 し て き て い る.術 前 に CT,頸 部 血 管 エ コー,MRI 等で十分な評価を行い,手術リスクを考え,

慎重に治療方法を選択すべきである.心不全による心拡大 や末梢病変が多い高齢者の場合,必ずしも OPCAB による 完全血行再建が困難な症例も散見される.これらの症例に 対しては,DES による PCI を追加するハイブリッド治療 も選択肢に入れる必要があると考える.これらの併用によ り,できるだけ完全血行再建を施行することが予後を良好 にするといえるであろう.また,超高齢者の CABG で は,たとえ,OPCAB で行っても 22%で術後一過性心房細 動が発生している.これが超高齢者の術後の脳梗塞の一因 となっている可能性もあり,術後早期のヘパリンの点滴を 含め,ワーファリン等の抗凝固剤の投与が重要と考えられ る.こ れ ら の 方 針 で 治 療 を 行 い,当 院 で は 超 高 齢 者 の CABG 手術では,脳梗塞の発症は認めなかった.また,超 高齢者の場合は,自宅退院できないケースが多く,遠隔成 績の改善のためには,しっかりとした後方支援病院の存在 が大切で,密接に連携をとり治療していく体制の確立が必 要である.

文  献

  1)  Ko W, Krieger KH, Lazenby WD, Shin YT, Goldstein M,  Lazzaro  R,  Isom  OW:  Isolated  coronary  artery  bypass  grafting  in  one  hundred  consecutive  octogenarian  patients.  A  multivariate  analysis.  J  Thorac  Cardiovasc  Surg 1993; 106: 940-942

  2)  Hoff SJ, Ball SK, Coltharp WH, Glassford DM Jr, Lea JW  4th, Petracek MR: Coronary artery bypass in patients 80  years and over: is off-pump the operation of choice? Ann  Thorac Surg 2002; 74: S1340-S1343

  3)  Stamou SC, Dangas G, Dullum MK, Pfister AJ, Boyce SW,  Bafi  AS,  Garcia  JM,  Corso  PJ:  Beating  heart  surgery  in  J Jpn Coron Assoc 2008; 14: 172-176

(5)

octogenarians:  perioperative  outcome  and  comparison  with  younger  age  groups.  Ann  Thorac  Surg  2001; 71: 

1750-1751

  4)  Beauford RB, Goldstein DJ, Sardari FF, Karanam R, Luk  B, Prendergast TW, Burns PG, Garland P, Chen C, Patafio  O, Saunders CR: Multivessel off-pump revascularization in  octogenarians: early and midterm outcomes. Ann Thorac  Surg 2003; 76: 12-17

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JS, Pasque MK, Damiano RJ Jr: Impact of complete revas- cularization  on  long-term  survival  after  coronary  artery  bypass grafting in octogenarians. Ann Thorac Surg 2005; 

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10)  Likosky DS, Dacey LJ, Baribeau YR, Leavitt BJ, Clough R,  Cochran  RP,  Quinn  R,  Sisto  DA,  Charlesworth  DC,  Malenka  DJ,  MacKenzie  TA,  Olmstead  EM,  Ross  CS,  O’Connor GT; Northern New England Cardiovascular Dis- ease Study Group: Long-term survival of the very elderly  undergoing coronary artery bypass grafting. Ann Thorac  Surg 2008; 85: 1237-1238

11)  Feldman DN, Gade CL, Slotwiner AJ, Parikh M, Bergman  G, Wong SC, Minutello RM; New York State Angioplasty  Registry:  Comparison  of  outcomes  of  percutaneous  coro- nary  interventions  in  patients  of  three  age  groups (<60,  60 to 80, and >80 years)(from the New York State Angio-  plasty Registry). Am J Cardiol 2006; 98: 1334-1339 12)  Dacey  LJ,  Likosky  DS,  Ryan  TJ  Jr,  Robb  JF,  Quinn  RD, 

DeVries  JT,  Hearne  MJ,  Leavitt  BJ,  Dunton  RF,  Clough  RA,  Sisto  D,  Ross  CS,  Olmstead  EM,  O’Connor  GT,  Malenka DJ; Northern New England Cardiovascular Dis- ease Study Group: Long-term survival after surgery ver- sus percutaneous intervention in octogenarians with mul- tivessel  coronary  disease.  Ann  Thorac  Surg  2007; 84: 

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13)  Vlaar  PJ,  Lennon  RJ,  Rihal  CS,  Singh  M,  Ting  HH,  Bresnahan JF, Holmes DR Jr: Drug-eluting stents in octo-  genarians:  early  and  intermediate  outcome.  Am  Heart  J  2008; 155: 680-686

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483-489

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