博士論文審査報告書
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(2) 環境・エネルギー問題への対応,ならびに公共交通車両の乗車環境改善と走 行 時 周 囲 環 境 負 荷 低 減 を 目 指 し ,申 請 者 は 各 種 電 気 駆 動 バ ス ( 以 後 ,電 動 バ ス と 称 す ) を 対 象 と す る 研 究・開 発 に 取 り 組 ん で き た .こ の 優 れ た 電 動 バ ス で あ る が , 現在のところ普及進度が極めて遅い.これは,車両側と充電設備側の両者につ いて,性能面やコスト面で充分満足が出来るレベルまで技術が進展していない 事が主な理由である.このような背景のもと,ここでは電動バスのさらなる普 及促進を目指し,中でも特に有望視されている“電気バス”と“プラグインハ イ ブ リ ッ ド バ ス ”を 対 象 と す る 研 究 を 進 め た .具 体 的 に は ,両 者 の 設 計 ・ 試 作 ・ 性能評価等を通して,環境性能面での優位性と車両性能面での現状技術の限界 を明確化しつつ,最終的には得られた情報を分析する事で,各種電動バス間の 適合領域や,今後の技術進展に伴う適合領域拡大の程度予測を行った. 5 名 の 論 文 審 査 委 員 は , 本 論 文 に 対 し て , 2017 年 12 月 5 日 , 2018 年 1 月 1 8 日 の 計 2 回 の 審 査 を 実 施 す る と と も に ,個 別 の 指 導 を 行 っ て 内 容 の 改 善 や 検 討の追加を求めた.その結果まとめられた論文の概要とその評価について以下 に述べる.本論文は以下の6章から成り立っている.. 第1章では,電動バスの現状と課題をまとめ,本研究の目的を明確化した. 第2章では,電気バスを対象とする研究成果をまとめた.本方式は低炭素効 果 が 絶 大 か つ ゼ ロ エ ミ ッ シ ョ ン で あ る 事 か ら ,究 極 の 電 動 車 両 と 言 わ れ て い る . し か し , 普 及 促 進 の た め に は ,“ 大 き く ・ 重 た く ・ 高 価 ・ 短 寿 命 ” の バ ッ テ リ に 係 る 各 種 問 題 を 補 う よ う な 車 づ く り と ,“ 短 時 間 ・ 安 全 ・ 手 間 い ら ず ” の う ち に 行う事が難しい充電側に係る各種問題に配慮した運用が必要である. こ れ ら の 問 題 へ の 対 応 と し て , 2.2 節 に お い て , 申 請 者 ら の 研 究 グ ル ー プ に おいて長年コンセプト提案を続けてきた“短距離走行・高頻度充電”型電気バ スを対象とした研究を行った.本方式は,便毎回復充電運用によりバッテリ車 載量を大幅に削減してバッテリ問題を減じるとともに,利便性の高い充電方式 を採用する事で充電問題や航続距離問題にも対処するものである.ここでは, はじめに本コンセプトを採用した小型バスを例にとり詳細設計を進め,ベース デ ィ ー ゼ ル 車 両 と 同 一 定 員 を 実 現 し た 電 気 バ ス“ W E B 3 A d v a n c e d ”の 試 作 に 成 功 し た .つ づ い て ,中 型 ・ 大 型 電 気 バ ス を 対 象 と し た 設 計 ・ 性 能 評 価 も 進 め た . 次 に ,2 . 3 節 に お い て ,一 日 の 運 行 距 離 を 走 破 可 能 な バ ッ テ リ を 車 載 す る“ 日 中走行・夜間充電”型電気バスの研究を進めた.はじめに本コンセプト採用車 両 の 基 礎 設 計 を 混 合 整 数 線 形 計 画 法 に 基 づ き 行 っ た 後 に ,そ の 性 能 を 評 価 し た . 最終的には,本コンセプト採用車両は重量制限が厳しい事から,事実上「一日 運行距離」と「乗客定員」のトレードオフ設計となる事を指摘し,現状のバッ テリ性能,さらにはディーゼルバスコンバート設計の制約下においては,一日 運行距離が比較的短い路線に対して導入する事のみ可能との結論を得た..
(3) 第3章では,前章の検討を通して試作した短距離走行・高頻度充電型電気バ スを,実営業路線等へ導入してリアルワールド評価を行った結果をまとめた. は じ め に , 3.2 節 に お い て , 環 境 性 能 等 の 評 価 を 行 い , デ ィ ー ゼ ル バ ス と 同 等の動力性能(氷点下時含む)を確保しつつ,良好な低炭素効果(ディーゼル バ ス 比 較 で CO2 排 出 量 が 約 4 割 削 減 ) が 得 ら れ て い る 事 を 実 証 し た . 次 に , 3.3 節 に お い て , 車 載 バ ッ テ リ の 劣 化 問 題 に 係 る 研 究 を 進 め , 実 運 用 時に生じる容量劣化現象の長期間実測評価や,特殊な計測機器を使用せずとも 容 易 に 得 ら れ る 情 報 の み か ら 容 量・内 部 抵 抗 値 を 推 定 で き る 簡 易 的 手 法 の 構 築 , さらには,寿命伸長のための搭載位置ローテーション法の提案等を行った. 第 4 章 で は ,プ ラ グ イ ン ハ イ ブ リ ッ ド バ ス を 対 象 と す る 研 究 成 果 を ま と め た . 本方式は,エンジンを搭載している事により航続距離の制約が無く,バッテリ も小容量で済み,さらには車両基地における夜間充電と給油のみで運用できる 事から,極めて使い勝手の良い電動車両と言われている.しかし,普及促進の ためには動力システム複雑化がもたらす車重増の問題に対処した車づくりと, 軽油消費低減に向けたエンジン使用方法最適化が必要である.さらには,2 種 のエネルギーと 2 種の走行モードが存在することで生じる車両瞬時性能変動問 題 等 に 対 処 で き る ,包 括 的 で 正 確・容 易 な 性 能 評 価 方 法 の 構 築 も 必 要 と 言 え る . こ れ ら の 問 題 へ の 対 応 と し て ,4.2 節 に お い て ,2 種 の エ ネ ル ギ (電 力 と 燃 料 ) を 考 慮 し つ つ , 2 種 の 走 行 モ ー ド (電 力 消 費 (Charge Depleting, CD)モ ー ド と 軽 油 消 費 (Charge Sustaining, CS)モ ー ド )中 の 瞬 時 性 能 を ,電 費 .燃 費 , CD レ ン ジ等の基本車両性能指標のみを用いて走行距離の関数として標記出来る,新た な簡易的性能評価手法を構築した.また,エンジンモータ併用制御を採用する 際 に , 効 果 的 な エ ン ジ ン ア シ ス ト が 実 現 さ れ て い る か 評 価 で き る 新 指 標 ( E n g i n e p e r f o r m a n c e i n d i c a t o r, E P I ) も 提 案 し た . 最 後 に , 実 運 用 時 に お い て 導 入 路 線 長 に 合 わ せ て 最 適 な CD モ ー ド エ ン ジ ン 使 用 方 法 を 選 択 す る た め の 方 法論をとりまとめた. 次 に , 4.3 節 に お い て , レ ン ジ エ ク ス テ ン ダ シ ス テ ム 搭 載 プ ラ グ イ ン ハ イ ブ リッド中型バスの車両設計と性能評価を行った.ここでは,はじめに最小値定 理に基づき搭載機器諸元と制御方式の最適化等を行い,最終的には,前述の本 方 式 に お け る 3 つ の 長 所 を 有 す る と と も に , 実 運 用 時 の CD: CS モ ー ド 比 率 に おいては,車重増と軽油使用に起因する環境性能悪化が顕著とならないレベル まで抑えられた車両を,シミュレータ上にて構築した. 最 後 に ,4.4 節 に お い て ,4.2 節 に て 検 討 ・ 提 案 し た 各 種 性 能 評 価 方 法 や エ ン ジ ン 制 御 方 針 等 を , 4.3 節 に て 構 築 し た プ ラ グ イ ン ハ イ ブ リ ッ ド バ ス , な ら び にプラグインハイブリッドバスシミュレータに基づき再検証し,実機に即した 状況においてその有用性と妥当性を明確化した. 2.
(4) 第5章では,本論文において研究対象とした各種電動バスを中心に,それら の適合領域について考察した成果をまとめた. は じ め に , 5.2 節 に お い て , 低 炭 素 効 果 の 観 点 よ り 電 気 バ ス /プ ラ グ イ ン ハ イ ブ リ ッ ド バ ス / ハ イ ブ リ ッ ド バ ス 間 に 存 在 す る 適 合 領 域 に つ い て 考 察 し た .こ こ では,プラグインハイブリッド方式の欠点である車重増に起因する電費や燃費 の 悪 化 現 象 を 考 慮 し た 後 に 各 方 式 の C O 2 排 出 率 走 行 距 離 依 存 性 を 数 式 化 し ,そ れらの挙動を詳細に分析する事で,短距離運用側より電気バス,プラグインハ イ ブ リ ッ ド バ ス ,ハ イ ブ リ ッ ド バ ス の 順 に 良 好 な 性 能 が 得 ら れ る 事 を 指 摘 し た . ま た ,そ の 際 に 生 じ る 性 能 逆 転 ク ロ ス ポ イ ン ト 走 行 距 離 に つ い て も 明 確 化 し た . 次 に ,電 動 バ ス 導 入 ニ ー ズ が 最 も 高 い 都 市 部 高 密 度 ダ イ ヤ 路 線 を 対 象 に ,5 . 3 節において短距離走行・高頻度充電型電気バスとプラグインハイブリッドバス 間 の 適 合 領 域 に つ い て , ま た , 5.4 節 に お い て 日 中 走 行 ・ 夜 間 充 電 型 電 気 バ ス と プ ラ グ イ ン ハ イ ブ リ ッ ド バ ス 間 の 適 合 領 域 に つ い て , さ ら に は , 5.5 節 に お い て 電 気 バ ス に お け る 両 コ ン セ プ ト 間 の 適 合 領 域 に つ い て 考 察 し た .こ こ で は , はじめに現状のバッテリや充電装置の技術レベルを前提とする電気バス導入限 界領域を数式化する事でプラグインハイブリッドバスとの適合領域を明確化し た 後 , 一 般 路 線 に お け る 走 行 距 離 や 便 間 待 機 時 間 (充 電 時 間 )等 の 情 報 を 考 慮 し つつ,ディーゼルバスの完全代替を実現できる電気バスのバッテリ性能と充電 装置性能の要件について定量化した.最後に,得られた情報を国内におけるバ ッテリ技術開発ロードマップ等と比較する事で,各種電動バスの近未来の適合 領域拡大の程度を予測した. 第6章では,本研究で得られた知見をまとめ,今後の課題を明らかにした.. 以上,本研究は各種電動バスの優れた性能を明確化しつつ,それらの適合領 域について詳細に考察したものである.また,新たなバッテリ寿命伸長策や性 能評価方法,さらには評価指標の提案等も行われ,それらの有用性は理論と車 両実験から検証されている.成果は今後の重量車の電動化を促進させるものと し て 高 く 評 価 で き る た め ,博 士 ( 工 学 ) の 学 位 論 文 と し て 価 値 あ る も の と 認 め る . 2018 年 2 月 (主査)早稲田大学教授. 博士(工学)早稲田大学. 早稲田大学名誉教授 早稲田大学教授. 紙屋雄史(電気工学) 大聖泰弘(内燃機関工学). 工学博士(早稲田大学) 勝田正文(機械工学). 早稲田大学特任教授 博士(工学)東京都立大学 中西要祐(電気工学) 早稲田大学客員教授 博士(工学)北海道大学. 廣田寿男(自動車工学) 3.
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