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博 士 論 文

乱流予混合伝播火炎とその燃焼 診断法に関する研究

平成 10 年 3 月

吉 山 定 見

(2)

博 士 論 文

乱流予混合伝播火炎とその燃焼 診断法に関する研究

平成 10 年 3 月

吉 山 定 見

(3)

乱流予混合伝播火炎とその燃焼診断法に関する研究 目 次

第 1章 緒 論 ‑ … ・ ・ … … … ー … … … 一 … … … ・ … 1  1.1 研究の背景 ‑…・ー・………・ー……...…一一・ー・……...……. .…・・………一 1

1.2 従来の研究 ‑…・…・ー…・・・・……・…・………ー・・・・…ー・・・・・………一一・…一… 2  1.2.1エンジンシリンダ内乱流予混合火炎の研究 ... ..一一……....一…・・・・・・・ー・ー・ 2  1.2.2燃焼診断法 .................. ...一一‑…一 ・・・・・……・・・・………... 5  1.2.3火花点火機関シリンダ内燃料濃度計測法 ... ••• ...一・ー・…・…ー・……..一一… 6 1.3 本論文の構成 …‑一……一・…...一……‑……..…………・・ー・・・…・・・…・… 7 文献  ... ... ••••• ......0................... ................................

第2章乱流予混合伝播火炎の構造 ・・……・・・・・・……・・・・……ー…・・・…・ー・……ー・・・……・ 13  2.1  緒言 ・ ・・ー・…‑一…・…・・・・・・・・一.•...•. 13  2.2  実験装置および実験条件 一一・一一一…・・・…・・・・…・・………‑…・ー・…・・…… 14  2.2.1円筒形定積燃焼器 一一‑一…・・・一……・ー・・・……・ー・一………・・…...….  14  2.2.2実験用火花点火機関 •• ........... ...……・ー・・・・・…………・…………一‑…… 16  2.3  乱流火炎の燃焼領域内微細構造 .............一‑…・・・・・・….......... 19  2.3.1イオン電流の時間スケールおよび空間スケール 19  2.3.2エンジンシリンダ内の乱流火炎構造の測定 ・・ー・ー・・・…・・・・・…・・・・・・…...•.... 21  2.4  火炎前面の凹凸  ..••• ... ...................・…・ー・・・ー・…・…・・…......... 24 

2.5  乱流予混合火炎の燃焼速度と質量燃焼率 ・……・…・……一..…‑…………・ー・・… 26  2.6  乱れの燃焼促進効果 一・ー・一‑一・…一... 28  2.7  火炎面積密度 一一・・・… .. ..……・・・・・・……・一一一一…・・・………ー….. 33  2.8  結 言 .......... ...•.. ........... ....................... ..................34  文献 … … …   35  主な記号 .,... ••...•••••• •.. ... •.• .............................. ...一……・・・・…・・ー・・・一.. 36 

第 3章乱流予混合伝播火炎のフラクタル特性 …・・…・・・・…・・・・・・…一.............. ... 38 

(4)

3.1  緒言 3R 

3.2.3火炎断面のフラクタル解析 44 

9 0 0 2 5  

/

δ6

0 δ 0 0

⁝ 系 の 法 学 度 件 方 光 精 条

定 定 定 験 緒 測 測 測 実

1i

1

2J

AAA

1 A U

AU

T

3.2  フラクダル解析 ‑一・ー・ ......0.......... ....................................一一.. 40  3.2.1フラクタル特性値の定義 •••• ... •••• ...  ... ・…......................... 40  3

2量子化誤差の補正 ........ ......... ........…一........0.. ・・・・…...........••.•. 41 

3.2.4フラクタル次元の拡張 3.3  実験方法および笑験条件

46  48 

4.4  乱流データの解析 86 

3.3.3 レーザトモグラフィ光学系 51 

4.4.1  ディジタルフィルタの特性 ... ...  ...  ... ..... 87  4.4.2平均流速と乱れとの分離 ・・・…・……・…・……・・一……・ー…‑………‑…・・ 89  4.5  乱流燃焼速度と乱れ強さとの関係 ……・・・・…・ー・一‑…………・………….. 91  4.6  結言 .... ...........•.. ........ ....・ ・・.........…... ."….....96  文 献 ....................  ..............…・・・・・・…… 97 

3.3.1円筒形定積燃焼器 48 

3.3.2j視化エンジン 50 

3.4  フラクタル次元 52  3.4.1定積燃焼室内伝播途中の火炎断面構造 一…・・・・・…‑一一・・・・…・………一 52 

主な記号 98 

3.4.2エンジンシ リンダ内乱流火炎の断面構造 55  3.4.3フラクタル次元に及ぼす混合気密度の影響 ... ..一‑……・・・・・・・一一..... 57 

3.5  フラクタル下限値 ... .. .. ー・・・ー・・・・…................. ...........一………... 58  5章火花点火機関内タンブル燃焼場における火炎構造 99 

3.6  フラクタル上限値 61 

5.1  緒言 .............. 99  5.2  供試機関 ……ー・・…...……・・・…・ー・…・……・ー・………… … … … 一 一.100  5.2.1吸気管形状および燃焼室形状 ・・……・ー・……一一・……・…...・H ・‑……・・・・…一..100  5.2.2シリンダ内乱流特性 ・ … … … … ・ … ー … ・ … … … ・ … … … 一 … … … ‑ … … . .101  5.2.3実験方法および実験条件 …・・…ー…・一………・……一..……・・……・・・…....103  5.3  燃焼に及ぼすタンブル流の影響 ... ••••••••• ... ...…・………‑一一…...107  5.4  イオン間際法による乱流火炎構造の計測 ... ... ...…・・・・……・・・・・…...112  5.4.1燃焼領域内の燃焼素面数と燃焼率との関係 ・・……一‑一一一...…一・・…………・・ 112 5.4.2燃焼素面厚さおよび燃焼素面間隔 ...  ... •.••• ••• ...…・・・・・……一...117  5.4.3希薄燃焼限界付近での火炎構造 ・・一……・・・……・・……一‑…・……・……‑一一 119 5.5  結言 ・・……ー……..,..…………一一……...一…・ー……一..………., 123  文 献 ‑……・一……・・・……・一‑……一・一……・・・・…...一・……ー・一一………・・一一 124  主な記号 ... ... .....・・・…一・ ・............…・・・・・・・……・ー・…一一.....125  3.7  フラクタル燃焼モデル   ... ... ... ...…・・・・…一... 62 

3.8  乱流燃焼のシミュレ‑ション ••••••••••••••••••••••••••••••••••••••.••••.•••••••••••••••• 63  3.8.1燃焼モデル ••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••.••••••••••••••••••••••••.•••.•••••••••••• 63  3.8.2 火炎伝播モデル ・・ー・・・・一............. •.. .......... •.. ............. ...• ....……・・・・・・・・ー・ー・・・・・ 64  3.8.3初期火炎核の取り扱い • .…一一一……ー ・・…・・‑・・・………ー・ー・……・… 66 

3.8.4計算結果および考察 66 

3.8.4.1フラクタル特性値の検討 ・・…・ー・ー・一............  ............ ......... ....…・・・・・・….........66  3.8.4.2計算結果と実験結果との比較 ... ........................一・ー・ー・・・…・・・・….......67  3.8.5フラクタル燃焼モデルによる火炎面積密度の記述 ... ..…・・・ー…・ー・・・…・・・・・・・ 72  3.9  結言 ・・………・一…・・・・・…一一‑一……・…・・・…… ........ ..………...  73 

文 献 74 

主な記号 76 

第4章舌し流燃焼速度と乱流特性 79 

第6章点火電極イオンプローブによる燃焼診断 ……一....…..…・ー…………...….126  6.1  緒言 •••••••• .... .................•. ...•. .... .........…一一・・…... 126 

(5)

6.2  点火電極イオンプローブ法

127  6.3  燃焼状態とイオン電流波形の特性値

130  6.4  初期火炎伝播とイオン電流波形 ... 0.... ...一...••• •••••

133  6.5  イオン電流波形に及ぼす;燃焼室壁面の影響 ・・・ ・・・・ー・・・・・・…・・・……・・・・・・・ 136  6.5.1燃焼室壁面接地の有無の影響

136  6.5.2点火位置がイオン電流波形に及ぼす影響 ‑

140  6.6  イオンプローブ印加電圧の極性とイオン電流波形 ・・・・・ー・・・・‑一...一‑一・一...141  6.7  火花点火機関の燃焼診断

142  6.7.1実験方法および実験条件

142  6.7.2イオン電流波形 ....  ... ... ... . .

143  6.7.3燃焼期間とイオン電流特性値との相関

145  6.7.4閃示平均有効圧力とイオン電流特性値との相関 ・・・・・・ー・ー・・・・…・・・・…一...150  6.8  結言

152 

文 献 153 

主な記号 154 

第7章赤外吸収法による気体燃料濃度の計浪JI

155  7.1  緒 言

155  7.2  測定方法

156  7.3  モル吸光係数に及ぼす圧力・温度の影響 ‑

159  7.4  エンジンシリンダ内点火電極近傍での燃料濃度測定 一一‑一…・……… 164 7.5  排気管内H C濃度の測定

7.6  結言 169 

175 

文 献 176 

主な記号 177 

第8章 結 論

178 

謝辞

181 

第 1 章 緒 論

1. 

研究の背景

C O2低減は地球規模の問題として,各方面でその対策が検討されている.今日の自動車 社会においては,自動車から排出されるC O2の総量は増えることはあっても,減少すると は考えにくく,発展途上国における自動車の普及とともに,さらに多くのC O2が排出され ることは,避けられない状況にある.今後,予想されるC O2の急激な増加を食い止めるた めにも, 自動車1台あたりのC O2排出量の低減が重要となってくる.

自動車用火花点火機関の熱効率向上と有害排気物の低減手法として,希薄混合気の燃焼 技術がこれまでも数多く利用されてきた し か し 混 合 気 を 希 薄 化 す る と 燃 焼 変 動 が 増 大するため,燃焼変動限界あるいは希薄燃焼限界によって希薄化の程度が制限される.均 一予混合火花点火機関では,吸気ポート形状や燃焼室形状等を工夫することにより,燃焼

室内に強いガス流動を生成させ,圧縮上死点において強い乱れを作ることにより,急、速な 燃焼を行わせ,燃焼のサイクル毎の変動を抑えようとしている. したがって,シリンダ内

の乱流特性と火炎伝播との関係についてはこれまでにも多くの研究が行われてきた(1)~(3) 火花点火機関の燃焼は,燃焼室内を伝播する乱流予混合火炎によってなされる.この火炎 構造が,ガス流動および乱れ,混合気密度,混合比とどのような関係にあるかは,火花点 火機関の燃焼経過を予測する上で重要となる.

エンジン内の燃焼過程をシミュレートする手法としては,現象論的モデル(擬次元モデ ル)と多次元モデルとがある.前者には. Tabaczynskiら(4)が提案したエントレインメン トモデルが有名である.このモデルでは. Tennekes(5)が提唱する渦構造をもっ乱れ場にお いて渦管内を乱流燃焼速度でもって火炎が高速で伝播するとしている. この渦流中の高速 火炎伝播については. Ishizukaら(6)によって基礎的な研究が現在行われている. 一方,最 近では, しわ状層流火炎面をフラクタル幾何学でモデル化した現象論モデル(7)・(叩)も提案さ れている.後者には.Magnussenら(11)の渦消散モデルが有名である.しかしこのモデル では,壁面近傍での火炎伝播過程が実際の火炎伝播と異なることが指摘されており,最近 では,フラクタル燃焼モデル(12)やコヒーレント火炎モデル(13)な ど が 提 案 さ れ て い る 近 年 のレーザ計測技術の進歩により,シリンダ内の火炎伝播過程, とりわけ,その断面構造が 明らかになってきた(14).現象論モデル,多次元モデルのいずれのシミュレーションにおい ても,測定結果に基づいて, しわ状火炎の総表面積や面積密度(単位体積あたりの火炎面

(6)

積)をモデル化することが燃焼モデルの主流となってきた.エンジンシリンダ│什燃焼瓜象 は,比較的高温高圧条件ドでの玩象であり, また,火炎伝播とともにその条件は変化す るため,常Jl条件ドで調べられた燃焼モデルをそのままエンジン燃焼のシミュレーション に適用することはできない.最近,小林らの研究グループ(15)によって,高

J ‑ E

雰開

5 d

での乱 流予混合火炎の構造が詳細に調べられているが,常圧条件での乱流火炎に比べ,高[1̲ドの 乱流火炎はしわ構造が微細化し,乱流燃焼速度が非常に大きくなることが見いだされてい る. したがって 常圧条件から高圧条件下までの広い範開で適用可能な燃焼モデルの構築 が望まれている.

実際のエンジンではサイクル毎に燃焼状態が変動している. これは,サイクノレ毎の当量 比,希釈率,乱流特性などの変動に帰国するものである.希薄燃焼限界条件付近で機関を 運転する際には これらのパラメータをサイクル毎にモニタリングし,機関を制御しなけ ればならない.実験室レベルでは,光学的測定を可能にするための観測窓を取り付けるな ど,測定条件を整えることによって,サイクル毎の混合気濃度分布や流速分布など,非常 に詳細な測定が行えるようになってきた(附υ7). しかし実用機関では,新たに燃焼室の加 てを行うことはできないため これらの光学的手法を用いることはできない.したがって,

機関に本来取り付けられている部品を使って,サイクル毎の燃焼状態や混合状態を検出す る万法が求められてい る 中 で も 点火プラグは,唯一燃焼室内に設置された部品で¥取 り外しが可能であるため この点火プラブを利用した燃焼状態の検出手法が数多く提案さ れている(18)

1.

従来の研究

1 .  2 .  1 

エンジンシリンダ内乱流予混合火炎の研究

乱流予混合火炎の構造は大きく分けて しわ状層流火炎構造と分散型火炎構造とに分け て考えられている. Klimov and Williamsの分類によれば,層流火炎厚さが乱れのコルモ ゴロフスケールに比べて小さい場合 局所的な火炎構造は乱れによって影響を受けず,乱 れによって表面がしわ状化される(しわ状層流火炎構造) .一方,層流火炎厚さが乱れの コノレモゴロフスケールに比べて大きい場合 乱れによって火炎帯が拡げられ,火炎面は引 きちぎられるようになる(分散型火炎構造)

エンジンシリンダ内の乱流火炎の構造に関しては Abrahamらの研究(19)により, Da一‑

ReL線図表示による火炎構造の分類もされている. 彼らは,線図上に機関の運転条件に相

当する範囲を示し,ほとんどの運転条件がしわ状層流火炎構造で表せるとしている.また,

Abdel‑Gayedら(20)は, Borghiのダイアグラムを用いて, 火炎によるストレッチの効果を 示すカルロビッツ数 Kaをパラメータとして火炎構造の分類を行っている. また,分散型 火炎になる前に火炎は消炎することを示している.この消炎限界条件については,脇坂ら の Kovasznay数を用いた整理結果(21)もある城戸ら(泣)は,無次元乱れ強さの増加ととも に, しわ状層流火炎から燃焼ガス中に未燃焼混合気塊が生成されるとした群島状火炎へ変 化すると考え,群島状火炎と前しわ状火炎の燃焼割合の比を用いて火炎構造の分類を行っ ている. しかし Mantzarasら(14)が行った

4

シートレーザ光による断面計測結果からは 未燃焼混合気塊は観察されず エンジンシリンダ内の乱流予混合火炎は単一結合したしわ 状層流火炎構造を呈していると考えられる. したがって,多くの燃焼モデルは, 全体的な 燃焼率(燃焼室全体)Mb あるいは局所的な燃焼率(単位体積あたりの燃焼率)ω を以下 のような簡単な式で与えている.

MbPuSLA{ [kg/s]  ω

PuSLL  [kg/(m3s)] 

ここで puは混合気の密度, SLは局所燃焼速度, A fはしわ総表面積,Lは火炎面密度であ る上式では,乱れによる局所燃焼速度 SLの変化,総表面積 Afの変化あるいは火炎面密 度エの変化を記述することができればよい.さらに,局所的な層流燃焼速度が乱れによっ てあまり影響を受けない条件であれば しわ状層流火炎構造モデルとは 火炎のしわ表面 積のモデル化を意味する.近年,複雑な表面などを記述する方法として, Manderblot(23) 

によって提唱されたフラクタル幾何学は 火炎の表面を記述する最適なモデルと考えられ る.乱流のフラクタル性については, Sreenivasanと Meneveaue(24)によって,理論的,

実験的研究が行われ そのフラクタル次元も求められている.化学反応を伴う乱流場であ る乱流火炎で,このフラクタル性を有することは容易に想像され特に 反応特性時間に 対して乱流混合時間が短いような場では そのフラクタル特性値は乱流のフラクタル特性 値に漸近すると考えられる.フラクタル幾何学の乱流火炎への適用は 1980年代から盛ん に行われているが 定常バ‑ナ火炎の断面計測への適用がほとんどであり,フラクタル次 元,下限値,上限値が求められている(25)‑(27) エンジンシリンダ内の乱流火炎いについて はMantzarasらの研究開が挙げられる. Santaviccaら(却)は,多くの研究結果をもとにフ ラクタル次元を与える経験式が示している.また, Smallwoodら(27)はフラクタル下限値が カルロビッツ数の関数として表されることを示した. Gouldin (30)は上限値を乱れの積分ス

(7)

ケール,下限値を乱れのコルモゴロフスケールから積分スケールの範囲で変化するとした フラクタル燃焼モデルを提案した城戸ら(22)も上限値を積分スケール,下限値をコルモゴ ルフスケールと層流火炎厚さの関数とするフラクタノレ燃焼モデルを提案している.

Gouldinの燃焼モデル(30)はエンジンシリンダ内の燃焼シミュレーションにも頻繁に利用さ れている多次元数値シミュレ‑ションにおいても,火炎のしわ状化の程度を火炎面密度 で表し,火炎面密度の輸送方程式を解いて,火炎伝播をモデル化している(日) Weller(31) 塩路ら(32)は火炎面密度の輸送方程式を直接解く代わりに,乱流燃焼速度を用いてモデル化 する火炎進展モデルを提案している.この火炎面密度の分布を直接測定することも

Deschamps(33)Shepherd(34)によって試みられている.火炎面密度をフラクタルモデル で表すことも Zhao(12)によって行われている.最近では,乱流燃焼モデルを構築するた めに,直接数値計算シミュレ‑ション(35)による研究も行われている

以上のように,燃焼モデ、ルを記述するパラメータとして層流燃焼速度および乱流特性値 (乱れ強さ,乱れのスケーノレ)が用いられる.定常的な流動場であれば, これらの値を決 定することは簡単であるが,エンジン内乱流場は非定常な場であるため,時系列で得られ た流速データから平均流と乱れとを分離する際に,どのような方法で分離を行うかによっ て乱流特性値は異なってくることが指摘されている(36) また,火炎のしわ構造も火炎の進 行とともに変化していくため,ある瞬間での火炎に影響を与える乱れをどのように定義す るかが問題となる.浜本ら(37)は燃焼領域内での特性時間を燃焼領域幅を乱流燃焼速度で割 った値とおいて, この時間をもとに乱れのカットオフ周波数を決定することを提案してい る.また, Abdel‑Gayed(38)は火炎伝播初期において火炎に影響を与える乱れの波数成分 が高波数成分であること考慮した有効乱れ強さを定義しているこの問題を解決するため には,ある瞬間での火炎構造とその直前の乱れの特性を調べて火炎に有効な乱れの成分を 検討しなければならない.乱れが強くなると,局所的な層流燃焼速度は乱れの影響を受け ない層流燃焼速度と異なってくることはよく知られている.この局所燃焼速度に及ぼす燃 焼素面のストレッチや湾曲の影響(39),選択拡散による影響(却)等の研究も現在,盛んに行わ れている.

近年,タンブル流を生成させるぺントルーフ型燃焼室がガソリン機関においては数多く 用いられている吸入行程中に生成されたタンブル流は圧縮行程中に崩壊し, タンブル流 のもつ運動エネルギは乱れのエネルギーに変換されると考えられている. この乱れ強さの 増加が燃焼率を増加させ,燃焼期間を短縮し,引いては,機関の希薄燃焼限界を拡大する

と考えられる. タンブルエンジンのシリンダ、内ガス流動については,桑原らによって詳細 に調べられている(41). また,浜本ら(42)(必)はディジタルフィルタ解析により,乱れと平均流 の分離を行い,圧縮行程でのタンブル崩嬢による乱れエネルギ、の増加を示している.桑原 ら(44)はこのタンブル崩壊時の乱流火炎構造が分散型火炎構造に類似していることを,火炎 からの発光強度の解析から指摘しているが, タンブ、ル流方式エンジンのシリンダ内乱流火 炎構造について調べた例はほとんどない タンブル流が崩壊した後の乱流場を伝播する火 炎がしわ状層流火炎ではなく,分散型火炎となっているのかは非常に興味深い問題である.

また,混合気を希薄化していった場合,火炎伝播限界付近においては当然、分散型火炎に 近づくものと考えられるので,火炎構造と失火限界との関係についても興味があるところ である.

1 . 2 . 2

燃焼診断法

近年の希薄燃焼エンジンの開発に伴って,実用機関においてサイクル毎の燃焼状態を測 定する方法が望まれている.従来の異常燃焼(ノッキング)の検出等に比べて,現象はき わめて連続的に変化するため,サイクル毎の僅かな変化を検出することが要求される.サ イクル毎の燃焼状態の変化は,実験室レベルでは圧力変換器をシリンダ内に取り付けるこ とによって容易に知ることができる. しかし圧力変換器を実用機関に取り付けることは 容易ではなく,燃焼室形状を変更する必要などが生じる.最近,点火プラグ内に光ファイ ノミーを挿入し,燃焼光を検出する方法(45)(51)や点火電極に印加電圧を加え,放電電圧の変 化(52)(53)やイオン電流の変化を検出する方法(54)(57),ガスケットに多数のイオンプローブを 取り付けて火炎伝播時間を検出する方法(58)(59)などが開発されている.

大東ら(54)は,火炎の電気的な性質を利用し,点火電極自身をイオン間際として用いるこ とで,燃焼室形状を変更することなく,火花点火機関の着火遅れ時間のサイクル毎の測定 を行った.その後,同様なシステムでの燃焼状態の検出が行われ,失火サイクル,ノッキ ングの検出等に利用されている. しかし, このようなイオン電流波形がシリンダ内の火炎 伝播とどのような関係にあるかについては詳細に調べられてはいない.点火電極自身をセ ンサーとして用いるため 装置は簡便であり,イオン電流波形の物理的な意味が明確とな れば,実用機関での燃焼状態をサイクル毎に検出することができる.

火炎の電気的性質(60)やイオン間際法(イオンプローブ法,静電探針法)(61)(62)については これまでに多くの研究が行われており,乱流火炎構造の計測法(63)として,有用な方法とさ

(8)

れている.火炎の反応帯付近においては非常に高い濃度のイオンが存在することから,電 極を挿入することにより燃焼領域内の燃焼素面(反応帯に相当)を応答性よく検出するこ

とができる. したがって,

J

視化実験等を行うことのできない実用機関において乱流火炎 構造を調べる場合には非常に有効な手段となる(64)

1.2.3  火花点火機関シリンダ内の燃料濃度計測法

予混合火花点火機関においてはサイクル毎の燃料濃度の変動は燃焼変動の主要肉である.

また,直接噴射式成層燃焼機関においてもサイクル毎の点火電極近傍で、の燃料濃度は,機 関を制御する上で重要な要閃となっている. これまでにも,シリンダ内の燃料濃度の計

u W

は数多く行われている.ガスサンプリングによる方法(65)(66),赤外線吸収法(67), レーザレー リ散乱法(68), レーザ誘起蛍光法(69)(叩)などが挙げられる.ガスサンプリング法は,多成分を 精度よく分析することができるが,時間分解能,空間分解能をとげることは難しい.最近 では,高速FIDによる高応答性での濃度測定(71)も可能にはなってきている.赤外線吸収法 は炭化水素系燃料が赤外線領域に吸収帯を持つことを利用して燃料濃度を測定する. した がって,時間分解能はある程度,高くすることは可能であるが,線計測であるため,空間 分解能をあまり上げられない. レーザレーリ散乱法やレーザ誘起蛍光法はレーザシート光 にして照射することによって,空間的な測定も可能であり,撮影装置の分解能を上げるこ とができれば,空間分解能,時間分解能ともに上げることは可能である.基礎的研究とし て,可視化されたエンジンシリンダ内の燃料濃度分布を測ったり,気体噴流の燃料濃度分 布を測ったりする場合には非常に有用な方法である. しかし撮影される散乱光や蛍光が きわめて弱いため,イメージインテンシファイアなどにより画像強度の増強を行う必要が あり,シリンダ内にほこりや塵といったわずかな粒子でも混入するとその散乱光のため撮 影できなくなるなどの問題がある.

実用機関において.点火電極近傍での燃料濃度をサイクル毎に測定する方法としては,

前述したもの中では,測定の容易さ,時間分解能が高いとの理由から,赤外線吸収法が最 適ではなし、かと考えられる.点火プラグに光ファイバ一等を挿入し,光学系を作成すれば,

実用機関でも十分測定することが可能であると考えられる.この方法では,気体燃料のモ ル吸光係数が重要なパラメータとなり, Tsuboiら(72)により,圧力,温度の影響が調べられ ている.エンジンシリンダ内正力,温度は急激に変化するため,モル吸光係数の圧力,温 度依存性を知ることが吸収法により濃度計測を行う上で重要となる.

1.  3 本論文の構成

本論文では,エンジンシリンダ内の乱流予混合火炎の構造をイオン間際法およびレーザ トモグラフィ法を用いて調べ, しわ状層流火炎モデルに基づいた燃焼モデル(フラクタル 燃焼モデル)を提案する.また,燃焼に影響を及ぼす乱れの周波数成分を調べる目的で,

火炎面直前での流速から乱れ強さを定義し局所的な乱流燃焼速度との関係を論じる 現 在,多くのガソリン機関で用いられているタンブル流を生成させた火花点火機関での火炎 構造をイオン間際法を用いて調べた結果について述べる.最後に,実用機関での燃焼状態 をサイクル毎に検出する)j法として,点火電極イオンプローブ法による燃焼診断法と赤外 吸収法による点火電極近傍での燃料濃度計測法について述べる.

以下に各章での概要を述べる.

2

章では,スワール流を生成させた定積燃焼器および火花点火機関において乱流火炎 の内部構造をイオン間際法を用いて解析した.燃焼素面の間隔と乱れのスケールとの比較 を行った定常な乱流火炎では,乱流燃焼速度(エントレイン速度)と乱流燃焼率とは等 価なものとして良いが,非定常な乱流火炎では両者が異なることを示し,乱れによる燃焼 促進効果を表す値を定義した

第3章では,第2章とほぼ同様な燃焼装置を用いて, レーザトモグラフィ法により火炎 断面の測定を行った.火炎の境界線を抽出し,フラクタル解析を行うことにより,フラク タル次元,下限値,上限値を求める方法について述べる. これらのフラクタル特性値が乱 れの特性値(乱れ強さ,スケール),反応の特性値(層流燃焼速度,層流火炎厚さ)とど のような関係にあるかを示す.また,これらの値を用いて燃焼率をモデル化する方法につ いて述べる.

第4章では, レーザビーム屈折法とレーザドップラ流速計とを用いた局所的な乱流燃焼 速度を測定法について述べる.火炎直前での乱流特性値をディジタルフィルタにより求め,

乱れを分離する際のカットオフ周波数と乱流燃焼速度との関係について論じる.

5

章では,タンブル流方式の火花点火機関の燃焼について述べる.圧縮比を変化させ ることにより,タンブルの崩壊による乱れの強化が燃焼に及ぼす影響を調べた結果につい て述べる. また, この時の火炎構造をイオン間際法を用いて調べた.また,火炎伝播限界 における火炎構造をイオン間際を用いて調べた.

第6章では,実用機関におけるサイクル毎の燃焼状態を調べる方法として,点火電極自

(9)

身をセンサーとして用いる方法について述べる.計測されるイオン電流波形と火炎伝播と の関係について詳細に検討する.また,火花点火機関において実験を行い サイクル毎の 燃焼状態の検出が可能であることを示す.

7

章では, 3.39μm赤外吸収法を用いて点火電極近傍での燃料濃度のサイクル毎の測定 を行う目的で,モル吸光係数の圧力,温度依存性について調べた.火花点火機関の燃焼サ イクルにおいて点火直前までの燃料濃度の測定を行った.さらに,排気管内の

F I C

濃度の 測定も試みた.

8

章は結論である.

文 献

(1)浜本,火花点火エンジンシリンダ内乱流予混合火炎, 日本機械学会創立 100周年記念 講演会講演集, (1997). 

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色レーザシート法による流れ場構造の

3

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12 

第 2 章 乱流予混合伝播火炎の構造

2 緒言

本章では,イオン間際法を用いて,定積燃焼容器および火花点火機関内を伝播する乱流 予混合火炎の内部構造を解析し未燃焼混合気の乱流特性との関係について述べる.

乱流火炎の燃焼領域の内部構造については,未だ不明な点も多く その空間的な構造を 把握することを目的に,さまざまな手法を用いて火炎の計測が行われている.本章では,

イオン間際法を用い,第

3

章ではレーザトモグラフィ法を用いて火炎構造の計測を行った.

イオン間際法あるいは静電探針法を用いた火炎計測法は,広く用いられているが, この 方法は火炎面の導電性を利用して乱流火炎の燃焼領域内の燃焼素面を検出し,乱流火炎の 空間的構造を観測しようとするものである.小型のイオンプローブを用いれば,局所的測 定も可能であり,実用機関のエンジンシリンダ内での火炎構造を他の光学的手法に比べて 比較的簡単に計測することができる.

乱流予混合伝播火炎では,火炎面直前の流れ場や圧力 温度条件が時間とともに変化す るため,定常な乱流予混合火炎で得られた乱流燃焼速度をそのまま適用することはできな い.本研究では,火炎前面から流入する未燃焼混合気の速度と燃焼領域内で燃焼する平均 的な速度(燃焼率)とを区別して考える.すなわち 両者の差によって 乱流火炎の燃焼 領域幅が時間的に変化すると考える.

本章では,このうちの燃焼領域内で、の火炎構造について検討する.スワール流を生成さ せた定積燃焼容器を用い,ガス流動場や燃焼特性についての豊富な実験結果をもとに,イ オン間際法により得られるイオン電流波形を解析した.さらに 火花点火機関のシリンダ 内にイオン間際を挿入し,実際の運転条件に近い条件で、の乱流火炎の構造を調査した乱 れによる燃焼促進効果を表すパラメータとして新たにZ値を定義し Z値とイオン電流の ピーク数すなわち燃焼素面の数や乱流火炎の燃焼領域厚さとの関係について述べる.最後 に,乱流火炎の燃焼領域内の単位体積あたりの平均反応速度とZ値および燃焼領域幅との 関係についても述べる.

13 

参照

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